これは彼女がプロヒーローとしてデビューする前の話である。
今回はギル描写はないです。っていうか話の趣旨が変わってきている。修正せねば!
けどまあたまにはいいかなと思っています。
ではイケメンギル様をご堪能ください。
「はぁ、憂鬱だわ」
私はヒーロー志望の高校をあと少しで卒業し、念願だったプロヒーローとしてデビューを果たす。その為に個性の調整でとある山の麓の平原までマネージャーと何人かで一緒に来ていた。何故こんなとこまで来なければならないのかというと、私の個性は都心部ではあまり派手な動きができないからである。その個性の名は「巨大化」。文字通り、身体を巨大化させる個性だ。
「せめて、でかくなるのを調整できれば…」
溜息を吐く。だが、彼女を憂鬱にさせているのはこの事ではない。マネージャー達が勧めてくるコスチュームが原因である。
「なんなのあのボディライン曝け出すコスチューム!ほぼエロ目線の男を引き寄せるためみたいなもんじゃない!」
そう卑猥なのだ。人気を取るためとはいえあれを着るのは気が引ける。ていうか、絶対作った人の性癖が混ざっている。
「こういう愚痴を1人で言いたいから、こんなところまで足を運んでいるわけなんだけど」
それは昼頃だった。巨大化している時に山奥にある岩場のところに湯気が湧き出しているのを発見し、目を凝らして見てみるとそこには温泉があった。だが、この地域には温泉がある、といった話は聞いたことがなく、まさに誰も知らない秘湯だったのだ。その自然の景色と温泉の絶妙なバランスが心をくすぐった。だからマネージャー達には先に帰ってもらい、私は夜にその秘湯に1人で入ることを決意したのだった。
「ふぅ」
服を脱いで入る。何とも心地よい温泉、外で服を脱いでいるのに誰にも見られない解放感。コスチュームを来ている時の舐め回すような目を向けられない嬉しさ。彼女からしたらここは天国だったのだろう。だが、景色も堪能しようと思ったのだが、温泉の湯気が立ち上がっていてあまりみることができない。
「景色も見たかったのだけれども残念…」
「我も残念だ。ここを知っているのは我だけと思っていたのだがな」
男の声が聞こえ、慌ててそちらを向いた。
「ん?お前は確か…なるほどもう始まるのか…」
襲われるかと思ったが、襲わず男は私をじっと観察している。全裸である私を性的な目で見られてると思い胸を隠したが、違うようだ。どちらかといえば私を見てなにかを確認しているかのようだった。
「まあ、どちらでも良いか」
そう言い、男は急に服を脱ぎ出す。その行動にびっくり仰天し、手で目を覆い隠した。
「ちょっと!なにしてるのよ!まさか一緒に入る気⁉︎女が入ってるんだから普通目を隠すとか我慢してどっかいくとかあるでしょ⁉︎」
「何故お前のために我が我慢せねばならん。しかも、我の裸体を拝謁できるのだ。むしろお前の方が喜ぶべきではないか?」
そう言った男は私の向かい側に行き普通に温泉に浸かる。信じられない!何でこいつこんなに堂々といられるのよ!そう言いながらも私は指の隙間を開けて男をチラ見する。…確かに堂々とできるわけだ。筋肉のつき方や顔つき、どれを見ても誰もが完璧だ、と思うだろう。ていうかこの男見たことあるな…、ってギルガメッシュ⁉︎
「ほう、ようやく気づいたか。危うく不敬罪になるところだったぞ。小娘」
オールマイトと実力を並べる、いや、それ以上かと噂をされるくらい危険なヴィランであるが、その反面、最近では子供から大人にまで人気のあるヴィランである。噂では『ギル様ファンクラブ』『ギル様に撫でられ隊』『ギル様に見下され隊』『ギル様に踏まれ隊』など様々な団体が出来てきているらしい。私は興味は無かったのだが、友人が『ギル様ファンクラブ』に所属していて会う度に彼の魅力について聞かされたりしていた。
「ヴィランがこんなところでなにをしているの?」
「いやなに。以前からここを愛用していた。誰にもバレないよう隠蔽したはずだったのだが、お前の個性は巨大化であろう?岩を使い巧妙に隠していたのだが、角度を変えてみればすぐわかる。だからお前は運良く発見できたのであろう」
確かにこんなところではあるが誰も気付かない、というのはおかしい。飛行機やヘリコプターはこんな山は通らないだろう。つまり私が気付けたのは偶然であって、本来ならば見つけることは不可能に近いはずだ。
「先程お前は愚痴を吐きにきたと言っていたな。話してみよ、我が許す。せいぜい、肴程度にはなるだろう」
そう言って黄金の波紋から酒を取り出す。私の愚痴を肴程度と言われたのがムカついたので嫌味を込めてこう言った。
「小娘の愚痴を聞いてもあなたにメリットもないはずよ?」
それを聞き、彼の眉毛がピクリと動く。この発言は彼の機嫌を損ねるものだった。
「2度は言わぬぞ」
睨みつけられて、体が強張ってしまう。これ以上機嫌を損ねてしまっては何をされるか分からない。ここは大人しく彼に私の愚痴を全て吐く事にした。すると、どうしたことか彼は下に俯き、徐々に顔をあげていき、最後は笑い出したのだった。
「フハハハハ!くだらぬ、だが一周回ってくだらぬ話も笑えるではないか!」
「なっ!くだらないですって!」
カッ、と怒りが込み上げてきて思わず反応してしまう。もうすぐプロヒーローになる、と言ってもまだ高校を卒業する直前、まだ18歳なのだ。コスチュームの問題は女にとっては深刻な問題なのだが、この男はくだらないと断言したのだ。
「お前はヒーローの本質を履き違えている。ヒーローが人を助ける大前提は『慈善』でなければならない。そこに富、名声、権力を求めてしまってはヒーローという理念は腐敗していくばかりであろう。そこに気付くべきだったな。見た目などは些細な問題なのだ」
思わず納得してしまった。確かに彼の言う通りだ。私が何になりたかったのか、その原点が記憶の底から発掘されていく。まさかヴィランに諭されるとは思わなかったが。
「だがまあ、見た目の問題ならば気にすることはない。何せこの我と共に温泉に浸かれるのだ」
その言葉に唖然とする。まさかこの男にこんなことを言われるとは思いもしなかったからだ。何故か少し胸が熱い、男の言葉は私の心によく響いていくのだ。
「さて、我は上がるとしようか」
「あっ」
温泉から上がる彼に手を咄嗟に伸ばす。だが、私が止めれると思わなかったので、手を引き、一言だけ言った。
「ここに来れば、また会えるかしら?」
「もうここには来ん。秘湯では無くなってしまったからな」
彼は振り返り、黄金の波紋から布を取り出す。その布がふんわりと巻きついていくと同時に彼の姿は消えていくのだった。その後の数分間、彼が消えた後を眺めていたのだった。
そして数年後…
「本日デビューと相成りました! Mt.レディと申します!以後お見シリおきを!」
彼女はプロヒーローとなったのであった。
余談ではあるが、彼女はあの彼の目線が忘れられず『ギル様に見下され隊』に加入したらしい。本人曰く、
「ほら!あくまで敵を知るためにしているからっ!決して他意はないから!」
と公言しているのだった。
カリスマA +を遺憾なく発揮。
この時、オリ主は思考停止して、本能の赴くままにギルガメッシュ様になりきっていた。ほら、よくあるじゃん?何も考えずに喋ることって。
斜め上をいくヒロイン化、作者は暴走。だが彼女はもう二度と出てこないだろう。使い捨てのティッシュみたいなMt.レディであった。
次回はオールフォーワン絡ませようかと…悩み中…
感想待ってます