継承の鋼2~空っぽの弾薬庫~   作:アザロフ

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第二章三幕 守りの術

 今まで装甲の扱い方を習ってきていたが、木曾の言っていた約束の日までの間教え方が変わり、攻防一体から防御メインの指導へと変化していた。

 

「防ぐ時のイメージは鎧よりも盾だ。そしてインパクトの瞬間に逆に押し返すくらいの勢いで装甲を出せ」

 

 言われたことをそのままに実演に入った。

 

 乗算記号のように胸の前で両腕を交差させ、来る攻撃に対して最大限の注意をする。

 

 眼の前にいるは臼杵鎮守府最強の艦娘。勿論加減はされるがそれでも一撃が、一瞬の油断が命さえ撃ち抜く可能性があるだけに、へらへらなど微塵もしていられない。

 

――………………来るっ!

 

 先日自分の弱さと見つめ合ってから一つ上のステージに上がれたのか、攻撃が来る瞬間というのがわかるようになった。まだ連続の読み合いなどはできていないものの、それでも始りが何となし知れるだけ心構えも違えば、

 

「――――ふっ」

 

 全てを貫きそうな木曾の拳とて受けられる程度には、装甲の展開ができるようにもなった。

 

 とは言えだ。まだあくまで防いでいるところへ殴ってきてくれるからこそできていること。実際これがランダム性のある攻撃ならば、恐らく気付けただけで終わってしまうだろう。加減状態の木曾相手でもまだまだ自由に動きながらの防御は、武蔵にとって高等テクニックといえた。

 

 木曾の連撃は常にクロスされた腕の中心に集まり、一撃一撃が兎に角重い。装甲を使えるようになったからこそわかるが、砲撃時にも装甲が無意識に強く展開されるようになっており、衝撃を拡散させている。四十六センチともなればその反動も大きく、わざと和らげると全身を揺さぶるほどの衝撃に襲われるのだが、木曾の加減した拳はそれと同程度か、それ以上だった。

 

 それから二十分は続けていただろうか。時間の感覚が消え去るほどの重圧に耐え続けたが、遂に終わりがやってきた。

 

「ご苦労さん」

 

 今まであった重い空気が風と消え、紫煙が鼻先をかすめる。

 

 目を上げると木曾は構えを解いた状態でシガリロを吸っていた。

 

 終了したことに安堵を覚えるよりも先に、恐る恐るながら自分の腕がまだなんとも無いか確認してみる。防御の訓練を始めた初日は自分が気を抜いたことから、両腕どころか胸骨までもへし折られた。その翌日も同じく。昨日はやっと無傷で終わることに成功したが、どうやらそれは今日も継続できたようで、傷跡もなければ艤装へダメージが流れた形跡もない。

 

 文句の付け所のない状態で本日の訓練は終了できたようだ。

 

「まぁこれだけできているなら問題はなさそうだな」

 

 今日の手応えに小さくガッツポーズを取っていると木曾にも合格点を貰え、自然と頬が緩む。一度成果を反芻してから浮かれてしまいそうな気持ちを切り替え、まだ聞いていない特別な訓練の内容を問いかけてみた。

 

「明日の件か。そういえば結局何をやるか聞いてないんだが、戦場で盾役でもするのか?」

 

「明日になってからのお楽しみと言いたいところだが、教えても構わないか。取り敢えず出撃はない。明日はお前にとある奴と実戦形式の組手をやってもらう。流石に相手までは教えられないが」

 

 木曾がニヤつきながら言ってくるがどうも胡散臭さが見え隠れし、先程まであった達成感は消え、一抹の不安を覚える。

 

「……本当に大丈夫だろうな」

 

「安心しろ。何かあっても最悪オレが止めてやる」

 

「つまり何か起こる可能性があると」

 

「もしくは何かさせるかもな」

 

「尚悪いわ」

 

 言い方から察するに、相手の名を聞いてもどうせ教えてはくれないだろう。

 

 呆れてため息が溢れるが、気にしたところで自分が今できることをやりきる以外何もないため、大人しく引き下がった。

 

「ただやらせるわけじゃないから経験にはなる。それだけは保証してやる」

 

 そうでなくては困るとは口にせず、代わりにシガリロを咥えて安っぽいガスライターを取り出して火をつける。

 

 ルールが予め決まっているようで、軽く内容の説明を受けてから解散した。

 

 その後は今日の成果を体で思い出しながら、残りの時間をのんびりと過ごすことに。

 

 

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