キング : 彼女達の王国
予想と大きく違っていたと言うべきか、いや充分に予想は出来たことなんだが。
凄腕のIS乗り、キングを擁する傭兵部隊。彼等の、いや、今となってはこの認識も間違いか。彼女等の駐屯地に脚を踏み入れた印象を一言で言うなら
「……なんと言うか、大学の女子寮を思い出すね」
ゲンナリとした俺の表情に、横に立つトムが苦笑いを浮かべた。
女性特有の魅力的な匂いは、機械油や俺自身の汗の匂いと混じり合い酷く俺の気力を衰えさせるし、楽しげにおしゃべりを続けながらチラチラこちらを見る視線は俺を妙に落ち着かない気持ちにさせた。床に散乱した超大国の女性向け雑誌やお菓子の袋を見て誰が此処を空軍基地内の格納庫にあるブリーフィングルームだと判断できるだろうか。
確かにこの傭兵部隊はISのみで構成された実験的編成と言う話だったがまさか誰も男が居ないとは思わなかった、いやパイロット以外も込みでと言う意味でだが。
バカでかい格納庫の中は整備中のラファール・リヴァイヴ3機が吊り下げられており、その他にもIS用の補給物資や換装用の兵器類が置かれているがそれでも酷くスペースが余っていた。
残りの空間を女性らしい丁寧さでパーティションで区切り自分達の為の部屋にしているのだろう【アリサの部屋】そんな文句と一緒に四つ葉のクローバーがペンキで書かれた鉄板がパーティションから吊り下げられて居るのが見えた。
「こちらが以前お前達に話した、この基地を取材したいとおっしゃっているジャーナリストのアラン・バーンズさんと現地ガイドだ、顔を覚えておけよ」
スーツを着たアジア系の女が俺の紹介を始める、おしゃべりがヒソヒソ話に変わっただけで彼女達は話を辞めるつもりは無い様だ。学生じゃなくなってから随分と経っている筈だが、沢山の美女や美少女がこちらを見ている状況はどう頑張っても落ち着けそうにない。
「皆さん、あー、アラン・バーンズと言います。よろしく、暫くはこの基地に滞在する予定ですのでその間に詳しく内戦やこの部隊について取材をするつもりです」
聞いたぁー?詳しくだってサァー?そんなヤジと共にキャーキャーと冷やかされ堪らず今度は俺自身が苦笑いを浮かべた。高校の教師にでもなった気分だ、それも女子高の。
普通はこうは行かない
内戦の国や紛争地帯で傭兵連中や平和維持部隊なんかに同行するときは形ばかりのプレスと顔合わせがあるだけで、カメラ越しに戦争を見張る俺達ジャーナリストは邪魔物扱いされる。
失せろ、俺達は生き残るのに必死なんだ。
俺は何時もそう言う視線に晒されてきた。
ハイハイと彼女達の一人が手をあげ、円滑な広報活動の為にと自己紹介をし会おうと言い出す、それを見て顔をしかめながらもアジア系の女が頷いた。
彼女はガーネット、この部隊の二番機でムードメーカー。これからの取材で俺は彼女の朗らかさや人当たりの良さに随分と助けられる事になる。
そして彼女に頷いたアジア系の女が、リー・バンデラス
本当の名前かは結局わからず仕舞いだったが
全て終わった後の印象を言うなら、流れる様に出てくる罵倒とキレのある指揮から考えて何処かの軍隊でそれなりの地位についていた経験があったのではと思う、それにパイロット達が少しでも人間らしくあれる様に努力する人だった。
肩書きとしては戦闘中のパイロット達のサポートをするために警備会社から送られて来たオペレーター、実質的なこの部隊の指揮官にあたる人物だ。俺は此処から蹴り出され無いよう彼女に精一杯気に入られなければならない。
そうして、俺が彼女達の自己紹介を聞いて居るとブリーフィングルームの扉が開いた。
扉を空け、誰かに手を貸すダークブルーの少女。
ISのパイロットなら女の筈だ、キングじゃなくてクイーンが正しい筈だろ?
そんな疑問を抱いては居たが、なるほど実際に会ってみれば彼女をキングと呼ぶ理由がわかった。
バカでかい山と言うよりは何処か柔らかさのある、海や大空の様な絶対さを放つ少女。まだ精々ハイティーンと言った所の年齢でありながら言葉使いや居住まいを正してしまうそんなオーラを表してキングと呼んでいるのだろう。
空の絶対王者、恐らくだが今この国で最強のパイロット。
先程迄おしゃべりを続けていた全員が立ち上り彼女に敬礼を送る、苦々しい顔のリー氏、楽しげにそんなリー氏とキングを見るガーネット。
「よしてくれ、敬礼は要らんよ」
男のような言葉使いでそう言う彼女に、俺はやっと呼吸を止めていた事に気付いた。
彼女がキングだ、第一印象と共に俺は確信した