十三世界でただ一人   作:来海杏

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デットマンズ

誰か助けてくれなんて少し前の俺なら腹の底から笑ってたんだろうけれど、そのツケが周って来たのかも知れない、笑う代わりに今俺は腹の底から叫んでいた。

 

「誰かッ!!誰かッ助けてぇぇぇ!!」

 

ポイントは2つだ

 

①この物語は俺達の死から始まる

②この物語はハッピーエンドで終わる。

 

②に関しては俺達の努力次第だが、その点も含めて俺は絶対にハッピーエンドで終わらせるつもりだ、あぁ非常に嫌だがそろそろ来るぞ。明け方より少し前、疎らに人が居るだけの繁華街、逃げ込んだ路地、ビルの隙間に差し込む月光を背に誰かが俺にナイフを振り下ろす、キラリと反射した月光は見てるだけで冷たそうで、だからソイツが俺の喉に滑り込んできた時、予想通り冷たかった事に俺は少しだけ驚いたんだ。

 

そのまんまかよ!

 

後は大体予想通り道路にドウと倒れ込みそこからは頭の中が大洪水、熱い苦しい痛い息ができない誰か、誰か、誰か、誰か助け

 

思い出しながら書いてて楽しいもんじゃ無いしこの辺で、要するに俺は死んだ。

 

 

一人目 釘宮 錠

 

 

次に意識を取り戻した時、俺は嫌に高そうな部屋の中に居た、説明としては落第かもしれないがそうとしか言いようが無い、俺の部屋が4つは入りそうな広さに加え、ビリヤード台まで置かれている(おまけににキッチンまで!チグハグな部屋!)親父に鍛えられた目利きは俺の寝かされて居たソファーは間違いなく本革のよく手入れされた高級品だと示していたし中央に置かれた大きな円卓は確かイギリス国内限定生産の職人の手作業で作られたものだ。

 

意識を取り戻した俺は次にゆっくりとソファーから身を起こし周囲を見渡した。

 

人種がバラバラ(ここで言う人種ってのは生き方って意味だ、ダンサー風の女の子からすげー鍛えられた体つきの男まで色々、一人はおそらく両脚の膝から下が無い)の連中が同じようにソファーで眠りについていた。

 

 

俺含め全員で7人「おはようございます、アナタも目が覚めたのですか?」

 

うおぉぉっっ!?!t

 

死ぬ程驚いた、どうやら俺含め全員で8人、死ぬ程?死ぬ程?そこで俺は思い出した、月光と冷たさ、そして、俺は。

 

奇声を上げながら首元を抑える、穴は空いて無いし息も出来るし血は吹き出しても居ない、??何故?深呼吸だ、深呼吸、夜を思い出せ、俺達の時間、夜を思い出すんだ。

 

「飲んで下さい、僕ら皆死人みたいに身体が冷えてますから、少しは暖まりますよ?」

 

先に目覚めていた男がティーカップを差し出してくる、比喩表現なのかジョークなのか、自分自身の最期の記憶を思い出せばどちらにしたって死人みたいに、なんて最低で笑えなかったが俺はありがたく頂くことにした。

 

「もしかして、アナタも死んだ記憶をお持ちで?」

 

メガネ越しでも分かる無遠慮な瞳はブチのめしてやりたくなったがそうもいかない(必要以上に敵を作るな、親父の言葉、最期は背中から撃たれて死んだ)状況が分かる前から敵対する必要は無い。

 

 

「何だテメェこの野郎」

 

失敗だった、余裕が気に喰わない。

 

 

コイツ、普通は自分が死んだってのに落ち着いて茶なんか飲めねぇ、普通じゃねぇって事だ

 

1秒程で脳内に後付の理由を作るがそれは確かにそうだと思った、言い訳にしちゃ筋が通ってる。

 

珍しくまともな思考を働かせて居たがそこで皆が目覚め始めた、呻くヤツ、悲鳴をあげて膝を抱えてソファに小さく縮み込まるヤツ、誰かにすぐに駆け寄るヤツ、ただ身体の調子を確かめるみたいにコキコキと首を鳴らしストレッチを始めるヤツ。部屋は心地良い暖かさなのに皆が酷く震えていてそれで理解った、多分ここに居る全員が。

 

 

「ねぇ、私達皆死んだの?」

 

一人が立ち上がり話し出す、腹から出てるよく通る声、伸びた背筋、全員の視線を受けそれでも気圧されて無い。イヤに目立つ女だ(安全、それに中々の美人)

 

 

「多分な」

 

さっきまで全身の調子を確かめていた坊主頭の男が答える(鍛えられた身体、視線の運び方、要注意)

 

 

「待って、でも、私達生きてる」

 

ダンサー風の髪を編み込んだ女が震えの治まらない声で話す(安全、怯えてる)

 

 

「えぇ多分そうね、ねぇ?ショウゴ、凄く寒いの、暖房の温度を上げてもらえない?」

 

おそらくヤツがショウゴなのだろう、メガネの男が立ち上がる、確かコイツは起きてすぐ脚のない女に駆け寄っていた(注意、俺たちから絶対に視線を外さない、何時でも女と俺達の間に飛び出せるようにしている)

 

「使って下さい、皆さんより少し早く目が覚めて部屋の中を調べていたんです」

 

何故かキッチンの戸棚にブランケットがありました、そう言ってあの怪しい男がショウゴ?にブランケットを手渡し、女がありがとうと柔らかく微笑む

 

 

さぁ、一体何があったんだ?いや、何があったかは間違いない、だから、問題は俺達が震えてられる事だ。

 

「お茶が足りなくなってしまいますね」

 

何時の間に背後に周ったのか楽しげに耳元に囁いて来るお茶男を裏拳で振り払うが上半身を反らすだけで避けられた(キメェ、要注意)

 

「あの、自己紹介しません?お互いに」

 

して悪いことは無い筈ですし、ね?

 

視線を外したくなる位にエロい女が至極真っ当な事を言っている(もはや暴力だ、これはこれで要注意なのか?)普通の言葉ですらエロいってどういう事なんだ?じゃあ、言い出しっぺの私からいきますね?そう言ってエロい女が立ち上がり話し出す。

 

「私は西園寺アンナ、片仮名で書いてアンナで、今年で18才になります、趣味は推理小説を読むことで」

 

死因は多分、溺死です。そこに居る従兄弟も一緒の筈です。

 

何かヤベェ事も言ってる気がするがまぁどうでも良い(エロい)

 

お茶男が楽しそうに話し出す

「えぇ、僕も溺死の筈ですよ、僕は西園寺ガイ、片仮名で書いてガイ、そこに居る従姉妹と同じで今年18才になります、趣味は、そうですね?アンナの助手でしょうか?」

 

俺は酷い衝撃を受けて居た、コイツあの過剰なエロさを前に自然体で喋れてる(偉大な才能だ)

 

俺は聞かなきゃいけない事を聞いた。

「落ち着いてるんだな、アンタ等」

ほんとに聞いておくべき事だった。

 

「だって、ワクワクしません?(するでしょ?)」

 

少なくともコイツ等がイカれてることは理解った、俺は黙り込んだ。

 

「イカれてるぜ、アンタ等」

 

まっすぐな男だ、俺は頭の中で坊主頭の注意を引き下げた。

 

「俺は猩々原敬、猿とかそういう意味のショウジョウに野原のハラ、敬うのケイ、俺も今年で18だ、趣味はそうだな、トレーニングだろうか。死因は多分落下死、よく分からん内に空から落とされて死んだ」

 

自分の右拳を見つめながら淡々と話す猩々原にダンサー風の女がキレた。

 

「ちょっと待って!!なんで皆んな平気でいられる訳?!私達死んだかもしれないんだよ!!?」

 

この子もまっすぐだ、ヒステリックだが

 

「あぁ、恐らくそうだろう俺達は死んだ、違うな、他は知らんが俺は死んだ」

 

「次は負けない、俺が殺す」

 

前言撤回、コイツは要注意だ、コイツは、いや、コイツもイカれてる。

 

 

「そう、じゃあ皆自分が死んだ記憶があるってのは間違いないのね

?」

 

イヤに目立つ女が話し出す、よく分からないな?服装はそう高いものじゃないがよく手入れされてる、センスが良いが多分畳み方が雑なんだろう、一人暮らしだな、しかも最近始めた。忙しそうだな、洗い方は調べたか教わったが、畳み方は何故だ?

 

「私は満夜海月、満ちる夜に海の月でミチヤクラゲ、私も今年で18才、すごい偶然だよね」

 

「クラゲって、本気か?」

猩々原が鼻で笑うように問う。

 

「あー!!、鼻で笑うって酷い!でも鋭いね猩々原くん、私ちょっとだけ舞台とか映画に出てて、役者なんだ」

 

だからくらげは芸名なの、休業中なんだけどね、そういって満夜は人好きのするウィンクを猩々原にする(要注意だ、本能に従うことにする)

 

 

「はい、じゃー次はアナタの番」

 

そう言って元気一杯って笑顔で満夜が俺を指名する、そうだ、スッキした、空元気かサイコだろ、自分が死んだって時にこれは、この感じは。

 

コイツはよく出来た偽物だ

 

 

「ねぇ、貴女の死因と本名は?」

 

ブランケットの女が満夜を見つめる、淀んだ瞳に口元だけの笑顔、満夜と微笑み合えばまるで怪獣大決戦だ。

 

「そっか、そうだよね、ごめん」

 

本名は満夜椿、お花のツバキで椿、死因はね、誰かが私を刺したの、ナイフで何度も、何度も、あの熱さ、そして冷たさ、最期に苦しさ

 

「良い勉強になったよ」

 

そう言って満夜はもとの笑顔に戻った(コイツもイカれてる、要注意だ)

 

「おかしいよ、私達」

 

ダンサー風の女は誰にも見付からないようにでもしてるみたいソファの上で出来るだけ小さくなっている、俺は最初彼女が話出したんだと気付かなかった。

 

「皆んな、声が落ち着き過ぎてる、まるで、こんなの、こんなの」

 

「誰も死んで無いみたい、か?」

 

詰まって居た彼女の言葉を俺が引き継ぐと彼女は、痙攣でもしているみたいに細かく、何度も頷いた。

 

「えぇ、そう、私にはそれが怖い」

 

だって、私はあの時確かに死んだから

 

そうだ、そうだよな、そこが問題だ、なにせ俺も自分自身疑う余地が無いぐらいに死んだのだ。

 

「アンタ、名前は?」

怪訝な表情をする彼女に俺は思った通りに伝えた。

 

「アンタはまともだよ、俺にはそう見える」

 

「ありがとう……私は景、漁火景」ケイって呼んで。

 

彼女はまともだ、助かった。俺は彼女に右手を差し出し握手をしようとした。

 

「貴女の死因と年齢も教えて頂けますか?イサリビさん??」

 

お茶野郎の声に驚き、自分の死に様を思い出したのかケイはソファに隠れるように深く座る。彼女はまた心に閉じ籠ってしまった、白くなるまでギュッと抱え込んだ膝、また激しくなった震え、俺はなんだかとっても気に喰わなかった。

 

「おい、お前モテないだろ?」

 

「えぇ、その通りです、素晴らしい名推理ですね、何故そう思ったのか理由を聞かせて頂いても??」

お茶野郎の顔を見る、ニヤケ面だ、なんだかとっても気に喰わない。

 

「何が楽しい」

いえ、特には?

「笑ってるぜアンタ」

そうですか?

「そうだ」

腹が立ちます?

「かなり」

 

まだニヤケてやがる

 

「テメェおちつけよ、殺すぞ」

落ち着けも殺すぞも両方よく言われます。

「何が楽しい」

いえ?得には??

「お前やっぱりモテないだろ?」

 

 

落ち着いてきた、俺はカッとなって悪かったなと言い、自分のソファにに戻るふりをしてエロい女(誰だっけ?そう、あれだ、アンナだ)に中身が入ったティーカップをワザとゆっくり投げつけた。

 

狙い通りお茶野郎がアンナをかばう、(お茶野郎は辞めだ、コイツは糞だ、性根が糞だ)糞の背中にかかる紅茶、中身は冷めてるから熱で怪我させてやる事は出来ないのが残念だ、この糞を野放しにするならイトコだろうが同罪だ、取り敢えず一旦死刑で。後の事は後で考えよう。

 

二人纏めて頭を砕いてやるつもりで糞の後頭部目掛けて蹴りを放「ストップだ」

 

誰かが俺の蹴りを片手で掴むように受け止める。誰だ?そうだ、猩々原

 

「良い蹴りだ、だから止めた、コイツは俺も気に喰わないが、その蹴りで後頭部は軽い怪我じゃ済まないぞ」

 

???

「そうか、で??」

 

フウーとハアーの中間ぐらいのため息を猩々原がつく

「やめとけよ」

「なんでだよ?取り敢えず脚離せよ」

「もう暴れないか?」

「大丈夫だ、俺は落ち着いてる」

「もう暴れないなら離す」

「猩々原だっけか?アンタごとブチのめすかもしれねえとは思わない訳?」

 

「無理だ、お前はやらないよ」

「なんでだよ」

「イサリビさんが怯えてるからだ」

 

 

その言葉に俺は慌てて彼女の方を振り向く。酷く怯えた瞳。

 

参ったな

 

そう思うと同時に俺の身体はふわりと浮いて(多分猩々原が投げた)元々自分が座っていたソファーにふわりと座らされた。

 

「大丈夫か?あんたら、確かガイとアンナだったかな?」

 

猩々原は190はありそうな背を窮屈に折りたたんで西園寺達に目線を合わせる。

 

「正直、俺はアンタ等が何か気持ち悪いし嫌いだ。特にガイだったか、さっきのはお前が悪いと俺は思う。だが、アイツもやり過ぎだ、お互い一度ゼロにして落ち着かないか?」

 

ニヤケ面は消え、イトコだかを背中で庇いながらヤツがゆっくりと頷く。

 

「あんたも、それでいいか?」

 

「俺はニヤケ面が消えたのを見れて充分だ、満足した」

 

ソファの背もたれに身体を預け、天井を眺めながら親指を立て俺は猩々原に同意を示す。

 

あぁ、そうだ、自己紹介な

 

「俺は、釘宮錠、五寸釘のクギに宮殿のミヤ、錠前のジョウで釘宮錠、俺も今年で18才、多分ここに居る全員がそうだ、趣味は観察、死因はそこに居る元役者と一緒だよ」

 

ナイフだ、これでいいか?頭を上げ周囲を見回す、異論は無さそうだった。

 

 

「アンタ等は?とっとと済ませようぜ」

 

おれはメガネとブランケットに話を振る、自己紹介よね、立って話した方が良いかしら?ブランケットの女、両脚の膝から下がない女が絶好調なジョークを飛ばしクスクスと笑っている。俺はどこが笑えるのか分からなくて周囲を見渡した、幸いな事に猩々原も同じ表情をしている(正気じゃねぇって顔)そこで、何だか酷く疲れている事に気付いた。

 

うんざりだった。

 

部屋の端に行って少し眠りたい、歩いて行こうとした俺の手を誰かが引き止める。

 

「ねぇ、ジョウって、カッコいいね」

 

響きの事ね?音が良い、イサリビさんだった、少し眠気が飛ぶ。

 

「ありがとう、イサリビもかなりクールな響きだと思うよ?」

 

ありがとう、彼女はそう言って、俺達は奇跡的な事に笑い合う事が出来た。

 

「悪い、さっきは、アイツにイラッとして、俺、結構育ち悪いんだ、多分、言い訳にはならないけど」

 

「んー、確かに、言い訳にはならないかな。……けどまあ、私も似たようなもんかも、ねぇ?タバコ持ってない?」

 

偶々、偶然、奇っ怪な事に俺は未成年だが上着の内ポケットには封の切れたラッキーストライクとライターが入っており、俺はすぐさまこの奇跡を彼女と分かち合う事に決めた

 

「俺も分けて貰っていいか?」

 

「猩々原?」

意外なヤツだ、俺はもちろん寛大に彼にもタバコを分け火をつけてやる。丁度灰皿に良さそうな皿がキッチンにあった。

 

「驚いたな、猩々原、アンタはこういうのやらない人かと思ってた」

 

「似たような勘違いは良くされるよ、意外だろ?チャームポイントなのさ」

 

それに、正直うんざりだ、どいつもこいつも隠すつもりも無い。何を?とは俺もイサリビさんも聞こうとはしなかった、多分、俺達は同じものに疲れていた。

 

「意外と笑うと幼い顔になるよな」今日よりもっと後、猩々原に俺が言ったんだ、ヤツは酷くキュートにハニかんだ(ここだけの秘密な?)それからまた別の日には俺はイサリビさんに「無理に優しい声を出そうとするとアンタは悪人声になる、そのまま喋った方が人を安心させるよ」優しい声だから、と言われ死ぬ程顔が紅くなったり。イサリビさんの作ったサンプリングを聞いて男二人で何故だが泣いてしまったり。

 

 

 

三人とも死ぬ程疲れていたが、ここがそういうものの最初だった。

 

俺は聞くべきことを聞いた

「イサリビさん、何で死んだのか聞いても良いかい?」

多分、聞かなくても良いことだった

 

俺達はペアになってる、西園寺達が溺死ペア、イカれブランケットは何で死んだか知らないが多分メガネとペア、俺はあの休業中の役者とペア。余りもので合わせるなら彼女は何処かから突き落とされて死んだんだ。

 

 

「そう、そうよね、私もそこの彼と一緒、クラブの帰りにどっかから落とされて死んだ」

 

あの時見た月は忘れられそうもない

 

そう言って彼女は、震える手でタバコを灰皿(の代役)に押し付けた。

 

もう一本吸うかと彼女に目で確認する

 

「ありがとう、貰うわ」

その余りに堂々たる吸いっぷりに猩々原が眉を上げるようにして驚く。

 

「あのさ、イサリビさんっての、止めてくれない?」

 

なんかムズムズするからさ、サリーって呼んで、彼女はそう言い死人にしては爽やかな笑顔で俺に微笑んだ。

 

 

「良いのか?死人仲間にしたって俺は悪い死人かもしれないぜ?」

気を許し過ぎじゃないか?これは聞くべきことだし言うべきことだ。

 

「分かるんだよ、昔から耳が良いからさ、声を聞けば分かる」

 

その言葉に俺は少しだけ笑いそうになって、やっぱり気が変わって心から笑った。

 

「ありがとう、素直に嬉しいよ」

 

なあ、ぬっと猩々原が顔を突き出す。

 

「俺、邪魔ならあっちに戻ろうか??」

 

 

「「いや、良いよ、大丈夫」」

 

そうか、と猩々原は長くなった灰を灰皿(の代役)に落とした。

 

「ハイ、私も混ぜて」

 

声の方を向けば、どうやらアチラの方は終わったらしい、海月が指先をヒラヒラさせながら楽しげに歩いてくる(要注意、要注意だぞこの女は)

 

俺はゲッ、と言う顔をし、猩々原はよう、と片手を上げ、イサリビ(サリーは中々勇気の要る呼び名だろ、呼ぶのにな?)は俺と猩々原(殆ど猩々原)の影に隠れた。

 

「あれ?私嫌われる様な事したっけ?」

イサリビの態度が全てだ、聞けば分かると言った彼女が聞いて怯えている、暴れた俺でもその気になればこの場の全員を素手で殺してのけそうな猩々原でもない、この女をだ

 

炭鉱のカナリア(直感を信じろ、親父の口癖)(俺達みたいな人種は直感を信じなきゃいけない)(軍人、船乗り、犯罪者、俺達みたいなのは人一倍自分自身と直感を信じるんだ)(ジョー、分かるだろ?)(ジョー)

 

「ジョウ君?」

(親父は背中から撃たれて死んだ)

 

「あぁ、悪い、なんだっけ?」

イサリビが俺を呼んでる

「いや、ジョウって凄くカッコいい名前だから、ジョウ君って呼んでもかなって?」

違った海月か、マズイぞ頭の調子が悪くなってきた。

「んー、ダメ」

「ダメ?」

「上目遣いが素晴らしいがダメ」

「どうしてもダメ?」

「ダメったらダメ」

 

イサリビと猩々原がギリギリアウトって顔で俺を見てる、大丈夫、大丈夫だ。そう言う意味で笑顔で親指を立てる、不思議とアウト色が深まる。

「向こうは何だか楽しく無くって、仲間に入れてよー」

「タバコ吸う?」

「吸わないけどお仕事で吸う人の煙には馴れてるから気にしないよ?」

「吸わないんならダメ」

「じゃあ、吸ってみる」

「ダメダメダメ、そんなのダメ、吸っちゃダメ」

「じゃあ吸わないから仲間に入れてよ」

「ダメ」

「じゃあ吸っちゃう、タバコ吸っちゃうよ私」

「人質作戦とは卑怯な」

「どうする?ジョウ君のせいで私お婆ちゃんになる前に死んじゃうよ?」

「それはダメだろ」

猩々原が焦った顔で口を挟む

「おのれ猩々原裏切ったな」

脳の調子が悪い、熱で焼き切れそうだ

 

「裏切ったつもりは無いがお婆ちゃんになる前に死ぬのはなんかダメだろ、言葉のパワーが強過ぎる」

 

言われると確かになんとも言えない物悲しさがある。困った俺は円卓の上の黒猫を見るがしゃなりと尻尾を振るだけだ。役立たずだな

 

堪え切れ無かったと言う感じでイサリビが吹き出しケラケラと笑う、涙が出る迄泣いちゃってまぁ、こっちまで嬉しくなっちゃうじゃないの。

 

「何なの?3人とも面白過ぎ、いいじゃんジョウ君、優しい響きだよ?」

「待て待て、なんだこの俺がヤなやつみたいな感じ、後ジョウは良いけど君付けは止めてくれ」

「え、じゃあジョウって呼ぶね?」

「オメェに言ってねぇよこの毒くらげ」

「ひっどい!感電させてやる!」

 

あ、またイサリビがウケた、今度は猩々原も

 

「さっきも言ったけど、私漁火景、ジョウと一緒だと素敵な声が出るんだねアンタ」

「俺は猩々原敬だ、よろしく」

「私もさっき言ったけど、満夜海月、二人ともよろしく」

 

二人と順繰りに握手を交わした海月が勝ち誇った様に腕を組む、なんたるドヤ顔!!教科書にのせたい!

 

「さぁどうするジョウ君、後は君だけだよ!」

 

分かった、参った、降参、ニーハオズドラーズドヴィチェ。確かに俺も楽しかった、俺は降参の意思表示に両手を上げ肩を竦める(大丈夫だ、カナリアは楽しそうに鳴いてる、俺は直感を信じる)。

 

「分かったよ、仲良くしよう。ただし条件が一つと質問が一つある」

「なにー?スリーサイズは秘密だよ?ジョウ君のエッチ」

「黙れ貧乳くらげ、呼び方はジョウで良いから君付けは止めてくれ、ムズムズして発作が起きて死にそうになる」

貧乳呼ばわりにローキックを3発くらう、右ふくらはぎにイサリビ、左ふくらはぎにくらげ、最後に右ももに猩々原(一番効いた、プルプルしてきた)

 

「で、だ」

 

あの猫って最初から居たか?

 

俺が円卓を指差すと3人が弾かれた様に振り向き、それにつられ8人全員が同じ方向を向く

 

 

『良かった、やっと気付いてもらえたよ』

 

天使の様な声で黒猫が喋る、しゃなりと尻尾を振り、やっとこさ俺達は自分の身に何が起きたのかを知る

 

 

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