十三世界でただ一人   作:来海杏

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訳ありおっさんと訳あり少女

仕事で死に掛けた。

 

色々と、それだけ言われても何にも言えないよと、本当に色々な人に言われたが。こればかりはどうしようもないと言うか、多分死に掛けたって言う経験の中でも特上のその、死に掛けた?と言う経験は俺から人と繋がろうとか色々な言葉として心の内を吐きだそうと言う気力や選択肢も抜き去っていて。いや正確に言うなら拭い去ったと言うか、感覚的には【喰い去った】とでも言うのが一番近いのだけれど。

 

ともあれ

 

殆ど何も説明せず死に掛けた事と疲れた事を淡々と伝える俺に、多くの人間らしい付き合いをしていた筈の友人とも知人とも言い難い連中は同情的な表情だとか哀れんだ顔だけを残して、酷い時には表情と同じような言葉も一緒に残して消えて行った。「暫くそっとしておいてあげよう」だとか、「なんでもいいからこまめに連絡をくれ」だとか、「また連絡するからな」だとか

 

だとかだとかだとか。

 

スマートフォンを捨てれば俺の人生からそのまま跡形も無く消えて行く連中とそんな連中の言葉。

 

酷く疲れていた。

 

 

どうしようか?精々10分か15分の短い船旅、瀬戸内海の落ち着いた波は民間用のフェリーに乗ると本当に僅かにしか感じられなくなって。その微弱さが何とも太平洋の荒々しい嵐の荒れた夜を逆に思い起こさせて俺を酷く憂鬱にさせる、どうしようか?実家は既に誰も居なくなって久しいがそれでも田舎らしくある程度の土地の広さがある筈だ、そこで農業でも初めてみようか?あるいわ、あるいわなんだ?

 

何もない。

 

取り合えずスマートフォンを投げ捨てようかと僅かな衣服と本が一冊に最低限の日用品が詰まったバックパックからそれを取り出す。人の気配が無い甲板、スマートフォンを握り締め鍛え抜いた体に任せ弓の様に身体中で振りかぶる。

 

「どっかに消えちまえ何もかも忌々しいッ!!」

 

腹の底か出て来た言葉に乗せて一秒でも早く見えない所に消してしまおうとして、忌々しい着信音が鳴り響き身体に染み付いた習性で反射的に動きを止めてしまう。行き場のない苛立ちを飲み込み、これで最後だと画面を確認して

 

「ハァ…、もしもし」

「仕事辞めたらしいな?暇だろ」

 

ちょっとな?仕事手伝えよ

 

「…疲れてんだよ」

「働いてないのにか?」

切るぞ、そう言って耳元からスマートフォンを離すがそれでも聞こえて来る程のボリュームで制止の声が響く

「まてまてまて!悪かった!冗談が過ぎたよ俺が悪かった!」

ハァ…

「…もう、色々と疲れてんだよ」

「…聞いてるよ、それこそ色々とな、だけどお前は俺に借りがある筈だろ?東ザンバールの山奥、忘れたか?」

「……」

「お前が何を思おうが何を願おうが何したかろうが勝手だがな?お前は俺に返さなきゃならない訳だ。左足と左目の分、仕事を受けてくれるなら指の何本かに関してはサービスしといてやるよ」

 

…。

 

……。

 

………。

 

「…合法な仕事か?」

「当たり前だろ?合法も合法、政府公認の御用仕事だぜ??」

心底愉快そうなそんな返事が返って来て、俺は忌々しいスマートフォンとオサラバする事はもう暫く難しそうだと諦めて甲板のベンチに座る。

「内容は?簡単で良い、詳しくは直接聞く」

何時の間にか本島のフェリー埠頭が見えて来て、そこに見慣れた杖を突いた男の姿を見付け思わず渋面を浮かべる。

 

おいおい、そんな面ァしてくれるなよ?久々のコンビ復活だ喜べよ。

 

「あぁ、で、仕事の内容だっけか?」

 

子守だ

 

「は?」

内容が分からず反射的に聞き返す

「だァーから、子守りだよ!」

 

こ!も!!り!!!

 

 

 

 

ーーーーーー

和歌山県南部 明日華学園 第四寮 日曜日 11時39分

 

「卵と鶏どっちが先だ!」

また徹夜で何か俺には理解も出来ない様な作業をしていたのか、瓶底眼鏡に白衣の少女がキッチンに立つ俺に寝ぼけ眼でそんな事を問いかけて来る、と言うか喚いてくる。

 

「卵が先だろうが鶏が先だろうが今日の昼ごはんは親子丼だ、あと実験に使った白衣は脱げ」

 

食卓に彼女の分の親子丼と味噌汁、簡単なほうれん草のお浸しを置くと脇目も振らず親子丼を掻き込みだしたので致し方無く俺はムームーと嫌がる彼女の抗議を無視しながら白衣を脱がせていく(何の実験をやっているかは知らないが単純に洗っていないのか薬品でも付いているのか非常に汚く、不衛生と言うか事と次第によってはシンプルに危険なのだ)器用に食事の手を止めずに片方ずつ袖から手を抜いてのける彼女に呆れ半分で俺は問いかけた。

 

「まだ気になるか?卵と鶏」

ムームーと首を横に振る彼女に俺はよろしい、と冷たい麦茶を入れてやる。

「大浴場、行くんなら明日一日改装だから今日中に行けよ。寮の風呂は17時からだから腹いっぱい食ったら一回寝てろ」

ムームーと頷く彼女を確認し俺は小汚い白衣を専用の洗い物入れにぶち込み、そろそろ起き出す連中の事を考える。

 

「ヤぁバい!!遅刻だ!終わった死んだ!」

バタバタと跳ねるように階段を駆け下りてくる二人目の少女に俺は夜の練習の前に食べる分と親子丼を詰めた分の二つの弁当箱を渡す。

「走れば間に合う、こっちが夜の部活練習の前に食う分でこっちは昼飯の親子丼を漏れないように詰めといたから向こうに着いたら食え」

それからこれ、魔法瓶に味噌汁詰めといたから。そう言って用意していた分二人目の少女のカバンに詰めると彼女は心底驚いたような嬉しい様な腹が立った様な顔で俺を見つめてきて

 

 

「なんだ?部活頑張れ」

 

「だ!」

「だ?」

「だったら起こしてよ!!!!」

「仕事の範疇外だ、良いのか?俺に怒ってる間に昼飯食う時間が無くなるぞ?」

 

うわもうサイテー大っ嫌い!!お弁当ありがとう大好き!!

 

そう言ってバタバタ子犬だか兎が跳ねる様に駆け抜けていく二人目を見送り、小さな口と身体でどうやってそんなに早く詰め込めるのかどうやら既に食べ終わったらしい一人目の食器を下げる。

 

「おかわりは?」

「大丈夫だ、少し寝る」

 

腹も膨れてもう眠気も限界に近いのだろう、眠そうに瞼をごしごしと擦る一人目に俺は少し匂うから今日はちゃんと風呂に入れと強めの口調で言うと、分かった、君が言うなら今日はちゃんと風呂に入る事にしようと言いながら一人目はフラフラと地下室に消えていった。

 

これで大体何時ものメンツは処理できた筈だ。

 

 

 

さて、今日はあと誰が寮に居たのだったか。

 

 

「ねぇ」

 

後ろから唐突に話しかけられ反射的に殴り飛ばしかける。

 

 

「ダメだよぉ、君ぃ、恐怖心が隠れて無いよー?」

厄介な、八番目が何故ここに居る。

「私はどこにでも居るし、居たい場所に居る、それが何か問題?」

拳が空を切り、真後ろから掛けられた筈の声の主が何時の間にかキッチンに立ち親子丼を味見している。

 

「勝手に能力を使うな、あと俺の頭の中で考えて居る事に勝手に答えるな」

鬱陶しい

「能力に関しては謝ろう、でも鬱陶しいは酷くない?」

「謝るつもりは無い、正直な感想だ」

「より酷いな君は」

「お前自身の怠慢だ、人の心が分かるならお前は誰かの為になる事が分かるだろうに」

 

なのに彼女はチシャ猫の如く

 

「不思議の国のアリスは嫌いだ」

「知ったこっちゃないね、俺の頭の中だ。勝手に覗いてる癖に被害者ぶるなよ」

親子丼食うか?

「食べるー」

能力を使うとお腹が減るとかあるのだろうか?俺は親子丼を温め直す為にコンロに火を着ける。

 

「お腹が減るとかは無いよー、でもたまたまお腹は減ってるし君の料理はとても美味しい、何と言うか、心が籠ってると言うのかな?誰かが僕の為に作ってくれた料理って感じがするんだ」

 

食卓に腰掛けながら八番目の彼女そんな事を楽しそうに俺に言う、料理について褒められる事は気分が良い、俺の料理の始まりは今は亡き母であった。

「お母さん、料理上手だったのかい?」

思考より早く俺は前の仕事で先輩から習った摺り足をベースにした縮地を使い彼女の喉に包丁を向け逃げられない様に彼女の髪を掴む。俺には理解すら出来ない数学的な空論に基づく彼女の能力は他人と接触している間は発動する事が出来ないと知っている。

 

 

「俺の母さんについて二度と聞くな」

出来るか?俺は読まれている事を分かった上で彼女に敢えて言葉で聞く

「聞こうとすることが罪なの?」

「少し違う、お前の能力が罪なんだ。ホントならそんな何の役にも立たない力は使わずにお前は俺に大事な事を問いかける段階まで進むべきなんだ」

殺すと言うその意思のまま髪を放し、空いた手で喉を力の限りに締め上げる。彼女の喉に力を籠めれば彼女の声帯が圧迫され少し低い声が出る、ここから先は彼女には未体験であればいいなと思う。全て、全て彼女に覗き見られてると分かった上で俺は彼女に対して正直に考える。

「初めてじゃないね、殺意の処女は両親だった」

 

哀れみ、必要かと考え要らないと考え直す、自分と世界の誤差に対して冷静で居られなかったコイツが悪い。

 

「親子丼食うか?」

「食べるよ」

俺は喉と包丁を手放し、熱されたフライパンで丁度良い音を立てる親子丼の具の部分をどん丼ぶり皿に盛る。

 

「わうかった」

???分かった??わぅ??あぁ、悪かったか、なんでも良いけど飯を食いながら喋るな八番目。

「ンぐ、はぁ、八番目じゃない。北大路君子だ」

「脳内だよ、俺の自由だ」

「正論だ、黙って頂く事にしよう」

 

そうして、掻き込みだす八番目に俺は黙って味噌汁と麦茶を入れてやる。

「後誰が居たっけな??」

こうなれば聞く方が早い。

「私以外では君が言う所の六番目だな、二十秒後に部屋から出て来る」

便利だな、流石

「都合のいい女って感じか?」

「スマホよりは役に立つな」

 

原始人め、そんな言葉を残し八番目が丼ぶりと共に何処かに消える。

「…洗い物は戻せよ」

米が乾燥すると大変なんだけれど

 

「おはよう、もうコンニチハ、かな?」

柔らかに微笑みながら伸びをする彼女に思考を切り替える。

「こんにちは、だろうな。今日の昼ごはんは親子丼だ」

喰うか?そう問いながら俺は親子丼を丼ぶりに盛る、なんとも、彼女はここに居る十二人の中で一番苦手だ。

「おねがいするよ、君の料理は好きだ」

「俺も、料理を褒められるのは好きだ」

テロリストの脳天を打ち抜いて勲章を貰うよりやりがいを感じる。

「なぁ」

そっと、一歩ずつわざとらしく足音を立てて歩き六番目が俺の肩に触れる。

「昨日、夜に出動があったんだ。疲れててね仕事が落ち着いてからでいい、マッサージして貰えないだろうか?」

仕事の範疇外だろうが、充分にお礼はさせて貰うよ?

「御免だな」

「何ゆえ?」

「仕事の範疇外だからだ」

自称異世界の女騎士で、自称魔法が使えて、自称世界を救った英雄で。そんな事を全て抜きにしても俺は赴任時に彼女が戦車砲に量産品のスウェット姿で耐えて素手のまま戦車をバラバラにしてのける映像を見たのだ。

 

そうだ、見た、俺は彼女がここにぶち込まれるだけの理由がある生き物だと知っている、生き物である事に安堵し生き物であるからこそ殺せる事に感謝している

 

「頼むよ」

今まで考えて居た小さな思考が全て、俺の袖を掴み眉をへの字にした彼女の一言で消し飛ぶ。

「死ぬのはごめんだ」

「私は君を殺さない」

「君は戦車砲やヘリの対地ミサイル相手ですら無傷で立っていた」

「私の戦闘力と私の人格は別の話だ、それに、あんなものは簡単な呪文の複合展開でしかない」

「この世界に呪文なんてものはない、訳の分からない事を言うな」

「本当に無いなら発動もしない、君達は見付けて居ないだけなんだ」

六番目の顔が近い、彼女は俺の左頬の火傷跡を見詰め、火傷跡を優しく撫でて来る。

 

「顔が近い、手が冷たい、俺には未成年と盛る趣味は無い、離れてくれ」

「君が私に盛る事は長期的な作戦目標の一つだ、しかしだな?今日は寝ぼけて下着を上下別の物にしている気がして来た、確認してくれないか?」

「馬鹿言うな、下着が上下違ったら俺は恐らく君に気を使い機会をまた別の日に移す」

「私としては何時でもウェルカムなのだが?」

「自己解決以上の満足感に関しては完璧さで得るしか無いと思っている」

「本心か?」

「強がりだ」

「良い強がりだ」

 

そう言って彼女は優しく俺に口づけしもう一度火傷跡に触れる。

 

「これで君は未成年に対して淫行を働いた訳だ」

「この寮に監視カメラの類は無い」

「つまり?」

「君らを処理しても適当に言い訳を並べれば済む」

 

スーツ姿の連中は俺の書いた報告書と上官の承認の判子しか見やしない。

 

「マッサージだろうが何だろうがやってやる、だが今は」

キッチン、彼女のつむじの匂いを嗅げる距離まで身体を密着させて俺はコンロ下の収納スペースに仕込んだ九ミリ拳銃を後ろ手に取り出し彼女の顎に押し付ける。

 

「その弾丸で私は死ねるだろうか?」

「結果はさておき君が死んだ方が良いと思って俺は引き金を引くぞ」

「何にそんなに怯えて居るんだ?」

馬鹿な事を聞く

「その気になったら素手で俺の事を引き裂ける生き物が俺に触れられる距離に居るんだ」

 

虎やライオン、下手をすれば恐竜みたいな生き物を目の前にしてはしゃげるのはバカかマヌケのどちらかだ。ここは動物園でもなんでもないのだ、俺を守ってくれる檻も鉄格子もスーツも装甲も隔壁も無い。

 

「私はただの女の子だよ」

「過分に控えめな表現と言わざるを得ないな」

「臆病だな、それなりに、自分の容姿には自信があったんだが」

「中身の話をしてるんだ」

もう一度俺に口づけしようとする六番目の動きを封じるべくもう一度ごりごりと

銃口を押し付けた。

「動くな、管理番号六番。貴様は黙って昼飯を食って訓練して果たすべき義務を果たせ」

「私にはサリーナと言う」

「黙れ、貴様は日本政府の保証があってやっとこの世界での人権を保障されている事を忘れるな」

 

「君の不安を少しでも減らしたいだけなんだ」

「余計なお世話だ、必要なら専門家に頼むさ」

 

五番目が部屋から出て来る

 

「おはよー」

「「おはよう」」

 

五番目は俺と抱き合う様な距離に居る六番目に怪訝な顔をした後、俺の方を向いて聞いてくる。

「出直そうか?」

「「大丈夫だ」」

 

 

 

「一緒に食べようか」

妙に照れた様な感を出しながら六番目が離れ食卓に着く。止めろ、髪の乱れを直すな、意味深にこっちに視線を送るな、頬を赤らめるな、何かあった空気感を出すな。

「今温め直すよ」

俺は六番目の視線を無視してキッチンに9ミリを置きコンロの火を着ける、八番目のヤツめ、こうなる事を分かっていて五番目が居る事を黙って居たな。

「ねぇ、それ、本物?」

五番目の言葉を無視して俺は親子丼を盛る。

 

「まさか、おもちゃだよ」

「そうだ、おもちゃだ」

 

妙にシンクロする俺達に五番目は怪訝な顔をする。分かった、それに関しては聞かないけどさ、不満を隠そうともしない子供らしさに俺は苦笑が漏れ、それにまた五番目は頬を膨らませて不満を表す。まあいい

 

「じゃ、早く食べちまってくれ、宿題やったか?」

やったよ、そう言いながら目を逸らす。これはやって無いな、十二人の中で最年少である五番目はまだ小学生で、他の子どもは知らないがこの子は年相応に嘘が下手だ。

 

「勉強を見て貰うと良い、ソイツは一日暇の筈だ」

先ほどの腹いせに六番目に話を振る。

「構わないさ、お昼を食べたら早速取り掛かろう」

ウィンクして来やがった、クソ、余裕だな。

「ねぇ、二人は付き合ってるの?」

 

キッチンに味噌汁を入れに行って背を向けると後ろからそんな囁き声が聞こえて来る。おい、聞こえてるっての

 

「まだだ、中々心を開いてくれなくてな」

「管理人さん、性格クラいもんね」

 

「おぉい!聞こえてるぞ!」

 

味噌汁を二つ持って振り返れば楽し気に額を寄せていた二人が楽し気に舌を出す。

 

「ほら、ゆっくり食べろよ」

「「はぁーい」」

 

と楽し気に二人で食べ始める二人に念のため俺は言っておく事にする。

「まだじゃないし俺は今後もこいつと付き合う様な事は無い」

「だそうだ」

「気長に付き合ってあげて」

そう言って妙に洋風に肩を竦める五番目の頭を乱暴に撫でる、生意気な子だ。キャーと楽し気に悲鳴を上げる彼女の毛の細い柔らかな感触を楽しむ。

 

「タバコ吸ってくる」

 

何人か面倒な子はいるが総体として悪くない仕事だ、煙草の匂いが嫌いだとかあんまり吸い過ぎない様にとか言われるが無視する、小うるせぇ、俺の寿命も身体も俺のもんだ、食堂にある勝手口の鍵を空け外に出る。

 

悪くない景色、悪くない空気、エプロンのポケットに入れていた煙草ケースから1本取り出し街並みを眺めながら煙草に火を着ける。鷹と星条旗の刻印されたケースは射撃訓練の成績で賭けをして沖縄の連中から手に入れた物だ。

 

「悪くない朝だ」

 

本当に?もちろん嘘だ、俺の仕事は彼女達の健康管理兼監視、必要に応じて処分までが許可されている。ふざけた話だ、アイツと結んだ半年間の契約、十何枚かの書類にサインして知れた事(あるいわ巻き込まれた事)は、ここに集められた女の子達は人類の敵と戦うため集められた存在であると言う事、そして全員が自由にさせては人類に有害だと判断されるだけの何かしらの事件や事故を起こしていると言う事。

 

見せられた資料はどれも災害やテロと呼んでも差し支えない規模の被害報告書であり、彼女達が思いのままにその力を揮った時どんな状況を作り出す事が可能かを表していた。

 

ふざけた話だ、何処までも、何処までも何処までも何処までも。

 

ただの女の子達だと言う自身の認識を煙を一吸いする毎にかき消す、怒りを共有しあい感情の暴走とも言えるそれでお互いを殺し合う日曜のショッピングモール、学校内で爆発する爆弾、火薬や薬品の類は使われて居なかったというがその実、警察ではそれに使われた技術が一体どんなものなのか理解する事も出来なかっただけだ(爆弾は小規模でありながら硝子化現象すら引き起こしていたという)

 

自警団を気取り街中の反社会的勢力を襲撃し続けた者は結果として街中に抗争を引き起こしその被害者は単純な死傷者に限らなければ四桁を越える、たった一人で街一つを戦場に変え小国ながら軍隊すら制圧してのけた者。自称魔法少女だと言う5番目の彼女は人類の敵との戦闘で巨大なビルを倒壊させ、何の道具も使わずに科学兵器と生物兵器の両方を生成してのけた。

 

 

ふざけた話だ、何処までも何処までも。

 

 

 

俺の仕事はそんな彼女達に首輪をつけ(あるいは俺自身が首輪となり)充分に日本国、ひいては人類が謎の敵対者達と戦える力を蓄えるまでの時間稼ぎを行う事である。

 

 

ーーーーーー

管理番号六番 インタビューログA14

 

「どうしてこんな事をしたのかって?」

「待って?アナタ専門のカウンセラーなんでしょ?それなのに口から出て来るのがそんな言葉な訳?」

 

「…ははァ、面白い、アンタの娘があそこに居た訳ね?」

「やめておいた方が良いよ?そんな計画が成功する筈が無い」

「そんなに怯えないでよ、ん?成功する筈が無い何て分かってる?ハハハ、そういうのは開き直りってぇのよ」

 

「アンタは私のせいにして怒り狂っているけどどうしてあの時娘のそばに居なかったのか、都合よく忘れるつもり?ハハハハハ、そんなの許す訳ないでしょ?」

 

「アンタは娘の事なんか放って置いて浮気相手とホテルで、御大層な時間を過ごしてた訳じゃない?どうして?なのにどうして私に都合よく被害者ヅラして怒りを向けられる訳?」

 

 

「あぁ…、言葉は要らないわ、喋らないで鬱陶しい」

 

「アンタは、人と向き合うのが怖かったのね?何度も何度も私みたいな患者と話をする内自分の精神がマトモか分からなくなってきていた、んで、セックスに逃げた訳だ、子供も奥さんも投げ出して金と女に逃げといて、大事なものを奪われたから復讐?どっか頭腐ってんじゃないの??」

 

「私がどうこうするより早く、アンタは捨てたの、あの子も、アンタの奥さんも、皆自分で捨てたのよ、それなのにどうして被害者ヅラ出来る」

 

「…人間のこれだけは理解できない」

 

「あぁ、その顔、思い出したわ。アンタの娘、あの日アンタへのプレゼントを買おうとしてたのよ?母親にも内緒で、アンタとお母さんがまた仲良く出来る様にって」

 

「酷く怯えてたけどあの子は何度も殴られながら必死にアンタに助けを求めてた」

「アンタの奥さんはね?周り中サルみたいな顔して殺し合う中必死に子供の名前を呼んでたわ。喜ぶと良い、アンタの奥さんは死ぬ瞬間まで子供の事を必死に考えてたわ。アンタの事は少しも考えちゃ居なかった」

 

 

「分かる?そろそろ理解できた?」

「その鞄に入った安物のナイフで喉首掻っ切るべきなのが私とアンタとホントはどっちなのか」

 

「アンタは私に怒るだけの立派な人生を送って来たつもり?別れ際にアンタが奥さんに吐いた言葉、思い出せないならここで言って上げようか?」

 

「アンタの子供は聞いてたみたいよ?どうやら、それでもパパの事が大好きだった見たい」

 

「アンタとアンタの家族は本当は幸せになれる筈だった、アンタの娘は幸せな人生を送れる筈だった。その全部をアンタが台無しにしたの」

「ねぇ、アンタ」

 

 

「何様よ?」

 

 

 

 

インタビュー終了。

 

補足としてこのインタビュー中カウンセラーに関しては一言も声を発しておらず。黙ったまま部屋を出た。

 

三日後、カウンセラーの自宅にて原因不明の火災が発生、焼死体が発見され歯型からカウンセラー本人である事が確認された。

 

 

 

 


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