十三世界でただ一人   作:来海杏

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とっ散らかってた


魔女のヤツ1

「お祖母ちゃん!」

 

 

 

 大陸の西、帝国と王国の国境近くの森の中、暖かな日差しが降り注ぎ小鳥たちが楽し気に囀る小さな広場にその家はあった。

 

 

 

ぱたぱたと子犬の様に跳ねながら少女が祖母を呼び家の中に駆け込んでいく。

 

 

 

「はいはい、シンシア、走ると危ないわよ?」

 

 

 

 古いドルイドの魔法だろう、何かを鍋で煮ていた老女が嬉し気に玄関の少女に振り返り微笑みながらそんな言葉を掛ける。

 

 瞳の中には幸福と慈愛が溢れ、この世の全ての祝福がこの暴れん坊の孫娘に降り注げばいいのにと願っている、少女は、シンシアはそんな祖母の愛を全身に感じ、それに応える様に祖母を愛していた。

 

 

 

「隣村のジョニーさん!薬が効いたみたい!お祖母ちゃんにありがとうだって!!」

 

 

 

 シンシアの両親は早くに死に、それ以来、緑の派閥に属する魔女である祖母のもとで暮らしていた。

 

 

 

「そう、それは良かった、孫娘が生まれたばかりだって言うからね、元気で居ないとね」

 

 

 

「やっぱりお祖母ちゃんって凄ぅっごい魔女だわ!!」

 

 

 

嬉しくてたまらない様子で、叫ぶ様にシンシアはそう言った。

 

 

 

 本当にすごい、誇らしくてたまらない。シンシアはそんな事を考えながら楽し気に祖母のかき混ぜる鍋を覗き込んだ。

 

 実際、シンシアの祖母は素晴らしい魔女であった。緑の魔女の派閥に所属するドルイドとして9歳の頃から80年近く人々と自然の間に立ち多くの人々を癒して生きて来たのだ、その年月と経験は並大抵のものでは無い。

 

 

 

ずいぶん前、シンシアは若く、何だかとっても高そうなローブを着た魔女が祖母に話を聞くため家を訪ねて来たのを見た(しかもその魔女は跪いて祖母の手に口づけをした!!)

 

 

 

だから、シンシアにとって、祖母は唯一残された家族で、自慢のお祖母ちゃんで、大好きな人で、最高の師匠であった。

 

 

 

「……ねぇお祖母ちゃん?」

 

 

 

「なぁに?」

 

 

 

優しく答えるその声も、鍋をかき混ぜ続けるシワシワのその手も、祖母から香る緑の青々しい香りや、たまに香る枯れ木の様な香りも、シンシアは全てが大好きだった。

 

 

 

「昔の冒険の話を聞かせて?」

 

 

 

シンシアは祖母が話す昔話が大好きだった、九色の魔女の派閥が協力しあい悪い魔女王を倒したおとぎ話。

 

 

 

「良いわよ?何が聞きたい?」

 

 

 

「黒の魔女とお祖母ちゃんの話!!」

 

 

 

おとぎ話の黒の魔女、寂しがりで悲しがり、臆病で泣き虫な彼女がシンシアは祖母の次に大好きだった。

 

 

 

 

 

「いいわよ、シンシアは本当に彼女が大好きね?」

 

 

 

「うん!!だって!!」

 

 

 

こんなに優しい魔女、彼女とお祖母ちゃん以外には居ないもの!!

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