十三世界でただ一人   作:来海杏

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話がとっ散らかってる、題材に対して作風が暗い、おもろ無い


ロボ×異世界×フルダイブ1

いつも通りだ、いつも通り、何てこと無い。

 

 

 

 

 

通信を通して彼女のハミングが聞こえる、なんて曲だったか。

 

 

 

 

 

「クイーン、集中してくれ」

 

 

 

 

 

僕の呼びかけにクイーンがはぁい、と柔らかに答えた、各機、準備は良いか?いつも通りの手順でそう、僕は仲間達に呼びかける。

 

 

 

 

 

 

 

「何てことないさ、何てこと無い」

 

 

 

 

 

 

 

こちらからの音声入力を切り、僕は仲間達に聞こえない様に呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 何時だって出撃の前は緊張する、だって、僕達はこれから戦争をするのだ、戦争だぞ?戦争、ゲームの中とはいえ普通緊張すると言うか、ハミングなんか出来てしまうクイーンはもう、一種の天才と言うかちょっとアレと言うか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こういう時は何時も無線を通して聞こえる仲間達の声に集中する、ヒトの気も知らず皆好き勝手喋っちゃってまぁって、そういう気分にもなるんだけど、同じぐらい勇気とか暖かいモノをくれる、そういうの、本人達には言わないけど。

 

 

 

 

 

 

 

無線の向こう、クイーンのハミングが最近流行り始めたアイドルのものだとブルが言い、それに反応してカールがあの曲いいよねとクイーンに話しかける、それにクイーンが同調して、ドーベルが日本の音楽がダメだとかやっぱり洋楽が最高だとか言って。

 

 

 

 

 

 

 

「はい皆、そろそろ集中ね、点呼取るよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 特別な呼び方をし合おうとクイーンが決めたあだ名と言うか、ドーベルが言うにはこういうのタックネームって言うらしいんだけど、兎も角、今後もこういうイベントに参加するなら必要だからと彼女が決めた僕達の中だけの名前、僕達の女王様に貰った特別なそれで仲間達は準備の完了を告げていく。

 

 

 

 

 

ただ

 

 

 

 

 

僕達は皆クイーンの事が大好きで、同じぐらいお互いの事が大好きだったけど、一つだけ問題があって。

 

 

 

 

 

 

 

「クラン名がわんわん王国って、もうちょっとなんかあったよなぁこれ」

 

 

 

俺が小さく呟いた声が聞こえたらしくクイーンが抗議の声を上げる。

 

 

 

 

 

「ちょっとぉ、レティ?」

 

 

 

 

 

「わんわん王国、ブルドックⅣ、レディ」

 

レトリバー、やっぱダサいよなクランの名前。

 

 

 

 

 

「同じくレディ、ドーベルⅢ」

 

やっぱり?やっぱダサいよねこれ?

 

 

 

 

 

 

 

「みんな良いよって言ったじゃん!ねぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「カールⅡ、レディ」

 

 

 

……クイーン、私は好きだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢だ、この夢を見る時、俺はいつもこの辺りで夢だともう気付いていて、夢の中ぐらい自由にさせてくれよと思いながら、それでも皆と一緒に居たくて、昔みたいに話しがしたくて、ぎゅっと、胸が苦しくなって。

 

 

 

 

 

 

 

そうして、僕は目が覚めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆっくりと目を開ける、心臓はまだバクバクと音を立てて居て、窓の外では雨が降っている。

 

 

 

 

 

枕の横に置かれたスマホを確認すると充電が残り僅かである事と17時を示していて、幾つか連絡が入っていた。

 

 

 

 

 

小遣い稼ぎの為の動画編集の依頼が一件、妹から一件、後は切り抜き動画の為に追いかけて居る配信者のライブ配信が始まったと、そう言う連絡で計五件。

 

 

 

 

 

 妹からの連絡を確認すると今日は帰るのが遅くなるから先にご飯を食べておいてくれと、母さんには言って無いから口裏を合わせてくれと言う内容で、僕はただ了解とだけ妹に返信する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多分、この時間なら母さんもどこかに出掛けて居るだろう、そんな事を考えながらゆっくりと呼吸して僕は心拍数を整えた。

 

 

 

 

 

 窓の外の雨音に集中する、大丈夫だ、大丈夫、何てこと無い、必死に繰り返し唱えてそれでどうにか自分を保つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……冬は嫌いだ」

 

 

 

 

 

 

 

 寒いし乾燥するしロクな事が無い、静電気は痛くてビックリするしすぐ暗くなるし、何より、彼女の命日がやって来るから、僕は冬が嫌いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりとベッドから起き上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 気力に欠ける身体を何とか動かして立ち上がる、暖房もつけずに居たから部屋の中は酷く冷えて居て、スウェットにTシャツしか着てない僕には酷く寒い。

 

 

 

 

 

殆ど物の無い部屋、ベッドに机、中身の殆どない本棚には通信制高校の為の教科書が幾つか入っているだけで、趣味のものと言えば一つだけ、ずっと昔に仲間達から貰って捨てられなかった本が一冊あるだけだ。

 

 

 

 

 

僕達の冒険が製本されたリプレイ本、クイーンが許可を出して有志達がインタビューや取材の基に作ったそれ。

 

 

 

 

 

見て居るのも辛かったから背表紙を壁に向けたそれを視界に入れない様にしながら、僕は本棚の上に置かれた箱からそれを取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フルダイブ用のヘッドセットにパッケージの草臥れた箱に入ったゲーム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルトリア・キングダムオンライン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今流行っているらしい、動画編集や切り抜き動画の為にはどうしても幾つかの動画サイトを漁る必要があって、そうしているとどうにも世間はこの、世界で唯一のフルダイブゲームに夢中になって居るのだと言うのが嫌でも目に入る。

 

 

 

 

 

僕らがやっていた頃はこんなに世間には受け入れられて居なくて、そもそもフルダイブ技術自体に懐疑的であったからプレイヤーの中に未成年は少なくて、だから当時子どもだった僕や仲間は自然と集まる様になったと言うのもあるんだけれど。

 

 

 

 

 

 

 

「……どうでも良いさ、何てことない、何てことない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兎も角、今日は彼女の命日で、彼女はゲームの中にお墓を作ってと、私を思い出す時はそこに来てと言っていたから。

 

 

 

 

 

 

 

だから僕は彼女の命日にはゲームの中へお墓参りに行く様にしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ご飯、作っとかないと」

 

 

 

 

 

 

 

 細かな理論は分からないが、このゲームと言うか、フルダイブ自体が体力を使う行為だし、向こうで食事を摂っても現実の僕には何の影響も、いい意味でも悪い意味でも与えないのだ。

 

 

 

 

 

それに妹も帰りが遅くなるとは言え食事は家でするそうだし、疲れた体で帰って来る母さんの為にも作っておかないといけない、僕だけがずっと家に居るのだ、それ位の事はしておかないと。

 

 

 

 

 

 

 

「何にしようかな?」

 

 

 

 

 

 

 

細かい事は冷蔵庫の中身を確認してからにしよう。

 

 

 

 

 

今日の献立は何にしようかと考えて居ると何とか心と体に力が湧いて来るのを感じて、僕は机の上にフルダイブセットを置いて、キッチンへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キッチン、冷蔵庫の中にはロング缶のビールが二本に豆腐とひき肉とほうれん草、残り僅かの合わせ味噌に少しだけ余ったキャベツがあった。

 

 

 

 

 

壁と冷蔵庫の間の棚には母さんが晩酌の為に買ったのか小分けの鰹節と各種の調味料に小麦粉が、豆腐も鰹節も多分晩酌に合わせて母さんが食べようとしてたんだろうな。

 

 

 

 

 

豆腐と鰹節を使っても良いか連絡を入れるとすぐに母さんから不思議な動物のスタンプでOKと返事が来た。

 

 

 

 

 

「なんだこれ?」

 

 

 

 

 

マヌルネコらしい、我が母ながらに不思議なセンス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ともあれだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お米を研いで三合炊く、そうしてお米が炊けるまでの間に僕は他の料理へと取り掛かった。

 

 

 

 

 

ほうれん草はお浸しに、半分程豆腐を使ってひき肉を嵩増ししてハンバーグを作り、申し訳程度に鰹節で出汁を取りながら一緒にキャベツに火を入れて、味噌の残りを使い切り余った豆腐を入れお味噌汁に。

 

 

 

 

 

そうしていると白米を炊けて、炊けた内の半分程を予熱を取って冷凍する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし」

 

 

 

 

 

 

 

やるべきことはやった、写真を撮って家族用の連絡グループに挙げると既読が二件付く、僕はそれを確認してお米を凍らせてある事、使用した食材を共有して食事に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食べ終わり食器洗いを済ませるとリビングの壁に掛かった時計は19時30分を示していた。

 

 

 

 

 

出来るだけ昔の仲間達には会いたく無かったから、時間としては丁度いい。

 

 

 

 

 

時折ブルから送られてくる仲間達の近況、ブルは受験勉強で忙しく、僕とブルより幾つか年下だったカールは全寮制の女子高に入りゲームの出来る時間が限られている、そしてドーベルは両親の都合で海外に引っ越して日本の僕とは時差がある。

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと息を吐く、行こう、行かないと、何てこと無いさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は自分の部屋に戻り、鍵を掛けてフルダイブの準備を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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