十三世界でただ一人   作:来海杏

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探偵 魔法少女 テロ

君の胸から出たものでなければ。

 

人の胸を胸へとひきつけることは決して出来ない。

 

 

 

17:30

 

 

 

 クリスマスの夜であった、多くの人々が幸福を甘受し、あるいは勝ち取り道を行く中、一人の少女が交差点の真ん中に立って居た。

 

 

 

 背後の街灯モニターは様々なニュースを流していく、魔法少女達のボランティア集団、劇団ぐりしゃによる魔物被害者達への支援活動が行われている事、日本企業、夏目製薬により新薬の発表があった事、今夜は降雪が予測され、ホワイトクリスマスになると言う事。

 

 

 

そんな情報を背負いながら、少女はただ道路の真ん中に立ち尽くしていた。

 

 

 

 クラクションが鳴り響く、信号が赤に変わり自動車が走りだそうとして、そうして少女にクラクションを鳴らした。

 

 

 

少女は交差点の真ん中に立って居る、俯いたまま立って居て。

 

 

 

彼女を迂回して走ろうとした車が一台、泡のように膨らんで爆発した。

 

 

 

「うぇへへぇ」

 

 

 

 少女が笑う、ガソリンや鉄やプラスチック、それと人の焼ける匂い、嗅ぎなれた匂いに笑って、人びとの悲鳴に合わせ両手を広げて、そうして周囲の人々の頭が泡の様に膨らんで、そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

18:00

 

通報を受け現場近くを巡回中の警察官と近隣の派出所から計5名が急行、少女を取り押さえようとし殉職

 

同刻

 

警察官2名の殉職を受け警視庁は本事案を魔法少女事案と認定、国内における3番目の事案、対魔3号事案と以降呼称するものとし特殊部隊の出動を要請

 

18:30

 

特殊部隊、現着

 

18;45

 

特殊部隊隊員12名、殉職

 

19:00

 

上記隊員の殉職を受け、本事案の全権は警察庁に移行、警察庁からの要請により魔法少女学園、劇団ぐりしゃ(以下劇団と表記)が現場に投入される。

 

同刻

 

劇団ぐりしゃの投入を受け、警視庁生活安全部少年育成課、佐々木正成(ささきまさなり)警部補は非公認の捜査協力を名探偵・来海重悟へと依頼。

 

20:00

 

現場に劇団員3名が到着し対魔3号と交戦、対魔3号はこれを撃退するも、右前腕部を欠損する形で負傷。

 

同刻

 

劇団員3名が対魔3号の魔法により爆発、現場警察官の呼びかけにも答えられない状況で現場交差点に取り残される、現場警察官たちによる決死の救出作業が行われるものの状況芳しく無く、更に5名が殉職、劇団員三名の救出は叶わず。

 

20:05

 

降雪が始まる、劇団員3名に関しては呼吸が辛うじて確認できるものの予断を許さない状況。

 

 

 

 

 

同刻

 

 

 

名探偵、来海重悟が現場に到着する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 警察車両、警察官達、そして野次馬が少女を取り囲む様にして円を作っている、そんな中心に一人の男がツカツカと歩みを進めて行く。

 

 

 

いや、男だろうか?よくよく観察する者がいれば気づいただろう、仕立ての良いスーツの中の女性的な曲線、女だ。

 

 

 

男装の麗人が、爆殺魔の少女のもとへと歩みを進めて居るのだ。

 

 

 

 

 

「ちょっとちょっと!!アンタ!!危ないから現場から離れて!!!」

 

 

 

 そう言ってしようとする一人の警察官を別の男が止めた。

 

 

 

 元は良い物だったであろうくたびれたスーツに無精ヒゲ、中途半端な長さに伸びた髪は容姿への無関心を投影する様にカサついた様な、僅かに脂ぎっている様な滑りを見せている。

 

 

 

「良いんだ、彼女はその道のプロだから、私が呼んだ」

 

 

 

 男は警察官に手帳を見せる、警部補、佐々木正成。

 

 

 

そんな文字を見て取った警察官は敬礼し、失礼しましたと道を開けた。

 

 

 

 

「来海重悟、随分と遅かったじゃないか」

 

男が、佐々木が男装の麗人へと並走しながら話し掛ける。

 

「これでも急いだ方だよ、高速で名古屋に向かってたんだ、色々と褒められない様な事もしてやっとこの時間だ」

 

それで、と男装の麗人、来海重悟と呼ばれた女は佐々木の顔を見る。

 

 

 

 

 

もう少し容姿に気を使った方が威厳ってものが生まれると思うんだが、とか。

 

隈が酷い、ちゃんと眠れてるのかね?君は、とか。

 

 

 

そう言う言葉を飲み込んで、来海重悟は続く言葉を発する。

 

 

 

「それで、もう私の出番と言う事で良いんだね?」

 

 

 

 

 

 佐々木がそんな言葉に重々しく頷いて、来海重悟はツカツカと交差点の中心へと歩いて行く。

 

 

 

さあて、どうしようか?

 

 

 

 とりあえずの優先順位を考え周囲で死にかけて居る劇団の魔法少女達を回収する、ジャケットを彼女達に駆け、細い身体の何処からそんな力がと、思わずそんな事をと思わせる様な確りとした力強さで少女を持ち上げる。

 

 

 

「まだ生きてるね、良かった」

 

 

 

 一人目の少女を警察官に渡す、周囲の人々が好き勝手に声を掛けたりスマートフォンをこちらに向けて来る中、来海重悟は同じ様に他の二人の少女も抱え込んで交差点から助け出した。

 

 

 

遠く包囲の外、スマートフォンを向けて居た男が爆発し、雪崩の様に周囲の人々が逃げ出していく。

 

 

 

それをただ、不思議そうに来海重悟は眺めている。

 

 

 

 遠く、寒そうな顔で佐々木が煙草に火を着けているのが見えて、逃げたら良いのに律儀な人だな、と、来海重悟は小さく微笑んだ。

 

 

 

ツカツカと、来海重悟は交差点の中心へと歩いて行く。

 

 

 

「……アンタ、だれ?」

 

 

 

 酷く苦しそうな声で話しかけて来る少女に来海は酷くサマになる様子で胸を張って答えた。

 

 

 

「私の名前は来海重悟、名探偵だ」

 

 

 

君を助けに来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それで、要求は?来海は端的に質問した、

 

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