十三世界でただ一人   作:来海杏

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TS 練習 ハリポタ

「アルゴン兄さん、これはどうかな?」

 

 

 

目の前でドレスを着たドラコが楽しそうにくるりと回りこちらを見る、どちらかと言うと爬虫類似のその面持ちが赤らむ様はナルシッサ小母様やルシウス小父様なら垂涎の光景だが生憎こちらはタダの従者である。僕の前でだけデレる、なんて素敵に聞こえるかもしれないが純血の社交界で矢面に立たされるのは立場の弱い僕なのだ(何故ドラコは貴様にだけ!何でドラコは!なんで、付き合ってられないがそうもいかないのが狭い世界の悪いところだ)そもそも今日買いに来たドレスも入学記念のパーティー用の物だ

 

 

 

 

 

「ドラコ様、貴女はもう間もなくホグワーツに通いルシウス小父様の様に立派な魔法使いを目指さねばならないのです、私を兄さんと呼ぶのはお止め下さい」

 

 

 

幼い時から一緒だったのだ冷たく当たるのは辛いものがあるがそれ以上に優先せねばならない道理がある。それに

 

 

 

彼女の様な美少女が一個人と仲良くなりすぎるのは余計な誤解を招く

 

 

 

「ごめんなさい、気を付けます」

 

「謝る事もこれからは禁止です、貴女は私の主人であり私は貴方の従者なのですから」

 

「…もう、アルゴンに…アルゴンの前でくらい気を抜いても良いじゃない」

 

「なりません、人目がありますから」

 

 

 

 

 

ぷぅと膨れる彼女に腰を曲げ耳元で小さく囁く

 

 

 

「二人きりでしたら今まで通りでかまいませんので、なんとか慣れてくださいドラコお嬢様」

 

 

 

花が咲いたようにパッと笑顔になると彼女は両手を腰に当て立場と生まれにふさわしい態度で俺に問いかける

 

 

 

「ふむ、おいアルゴン、正直に答えろ。このドレスをどう思う?僕に似合っているか?」

 

その調子です、そう言って微笑みながら俺は正直に答える。正直にって言われたからね、うん

 

 

 

「とてもよくお似合いです、ただ、お嬢様は髪色や瞳の色が落ち着いておりますのでもう少し派手な色味でも問題ないかと」

 

 

 

「あんまり派手すぎると子供っぽくならないか?」

 

「えぇ、度が過ぎれば品がありませんが、適度ならばより美しくなります」

 

「それに、」

 

 

 

そこで言葉を区切りまた彼女の耳に囁く様に口元を近づける。

 

 

 

もう少し派手な方が私の好みです

 

 

 

顔を赤らめたドラコお嬢様に俺は柔らかく微笑んだ、なんせほら、正直にって言われたからね。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

俺は14年前、聖28一族の末席に居たバレンタイン家に生まれた

 

 

 

居た、過去形だ。俺が生まれて暫くの事だ、おれの母親は生来夢見がちな人物だったらしいのだが、ある日愚かな事にマグルの青年に恋をしたのだ。

 

 

 

海岸沿いの海の見える土地、偶々立ち入ったマグルを迷わせる各種の魔法が掛かった森。

 

 

 

母は海岸に貝殻を取りに行っていて、父は名前を呼んではいけない例のあの人とおぞましい仕事に出ていた。私はただ、車が故障したという彼に親切にする母を屋敷の窓から遠く眺めていた。

 

 

 

 

 

一体私に何ができたというのだ、悪にひた走る父に、あんな人になってはいけないと私の目を見つめこの屋敷に火をつけ逃げ去ろうという母。何度も何度も母とマグルは逢瀬を重ね、遂にそれが父にバレたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覚えているのは、マグルの青年の悲鳴、魔法で首を切り落とされた父の死体に、紅蓮に燃え盛る屋敷と高笑いする母。父は婿養子だ、代々純血としての受け継がれた血の素養を持ち立場相応の高度に魔法族的な教育を受けた母に、高々小間使いとして悪の道に落ちたぐらいで勝利できる筈も無かった。

 

 

 

父の死体を切り裂き、その肉片を豚に変え、豚を切り裂き、その肉片を鶏に変え、鶏を切り裂き、その肉片を蠅に変え、悪霊の火で燃やし尽くす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの人がもうこの世に居ないのなら、何の意味もないわ」

 

アルゴン、一緒に行ってくれるわよね?

 

 

 

母は俺を一切見ていなかった、何処か遠くか、あるいは彼女にとって近い場所に居るマグル青年の幻影に恋する瞳を向けていた。

 

 

 

 

 

あれ以来、俺は女の子の恋する瞳というものが苦手だ。あそこまで精神が腐り落ちようとも恋により瞳だけがキラキラと輝く。

 

 

 

それはどんな魔法よりもたちが悪い

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