【完結】デジモンクロニクル――旧世界へ、シンセカイより。 作:行方不明
D.C.2003 NEWデジタルワールド中枢
どことも知れない、空間。
天は遥か遠く、地は果てしなく、しかし、見える風景はどこまでも機械的。ああ、これが生命溢れる世界の一部だとは誰だって思わない。
見れば誰しもがこう思うだろう。まるで機械のような箱庭だと。
そこは日が沈んだ直後に電気を点けずにいた部屋のように、仄かに薄暗い。
だが、しかし。そんな場所で、光るものがあった。しかも、二つ。まるで星の輝きのように明滅するそれらの光は、たびたび激しくぶつかり合って止まない。
光り輝いた瞬間に確かに見えるのは、黒と白。黒と白がぶつかり合っている。いや、戦っているのだ。
白と黒、それはどちらも人型で、あるいは戦士か――否、聖騎士だ。
黒い聖騎士がその手に光の剣を持って果敢に切り込む。白い聖騎士が未来を読むかのようにそれに応じる。
「ふっ」
「はっ」
また、技がぶつかり合う。
彼らのどちらが繰り出すどれもが、相手の命を刈り取るための必殺の一撃。それなのにどちらが傷つくことも決してない。
まさに永遠を錯覚する、戦闘という名の舞踊。
そう見えるのは、この光景が互いに命を燃やす決戦だからこその光景だからだろう。
彼らは自らの信念で以て戦っているのだ。自らの信念はたかがこれくらいで折れるものではない、と証明し続けているのだ。敵の信念の込められた必殺を、こんな柔いものは必殺足りえないと、証明し続けているのだ。
どれだけの能力があろうと、どれほどの強者だろうと、この戦闘の中には混ざれまい。この戦いは希少でさえ言い足りぬ一部の強者が、更に己を研ぎ澄ますことで、実力差を、常識を、ありとあらゆる壁を乗り越えた末の奇跡の一戦なのだ。
「らぁっ」
「はぁっ」
これはまさに頂上決戦だ。
だが、ああ、しかし。どれほどの戦いだろうと。始まりがあれば終わりがある。
往々にして、それは唐突に。
黒い聖騎士が駆ける。
「■■■■■■■――!」
死を切り裂き未来を切り拓いた黒金の大剣が、万を斬る。
世界を、空間を、敵を、信念を、斬る。
己の相棒との日々を、己の信念を、託されたものを、その全てを込めて斬る。
「っ、■■■・■■■■!」
未来を知り動く白い聖騎士を無理矢理に越えて、その一撃が刻まれる。
ああ、果たしてそれは白い聖騎士に限界が来ていた結果だったのか。それとも、白い聖騎士の対応力を凌ぐ一撃だったのか。はたまた白い聖騎士の知る未来さえも切り裂いた奇跡の一撃だったのか。
幾度となく繰り出された必殺の一撃が、ようやく必殺の名を冠する。
たった一撃だ。されど、この史上最強の決戦に終焉をもたらした、大いなる一撃だ。
「……なるほど。これが結末か」
振り抜かれた黒金の大剣が、白い聖騎士を切り裂いて――それが、決着。
ああ、これが、これこそがこの
崩れ落ちていく白い聖騎士を眺めながら、黒い聖騎士は天を仰ぎ見る。機械的なまでの天がその目に映って、その無粋さに苦笑った。
「ああ、勝ったぞ……俺たちは未来を掴めたんだ。なぁ、■■■。お前との約束通り、俺は――」黒い聖騎士の呟き。そこには万の想いが込められていた。
ああ、だがしかし。悲しいかな、この結末こそが契機だった。
――この結末は、認められません。
唐突に、声が聞こえた。
機械的で、女性的な、声が。
「な、に?」意味がわからないとばかりに、黒い聖騎士が呟きを漏らす。
ああ、きっと彼は、否――彼らは間違えてしまったのだ。選択を、対応を、結末を、必死に激動の時代を生きた彼らは間違えてしまったのだ。
いや、あるいは彼らは哀れにも前提からして勘違いしてしまっていたのかもしれない。選択や対応を間違える以前に、初めから間違ったレールの上にいたのかもしれない。
どちらにせよ。
我武者羅に突っ走ってようやくたどり着いた、望んだ結末が切欠とはまた皮肉でしかないか。
――『ふざけるな。なんだこの結末は』
声が聞こえた。
どこからか生物的で、男性的な、声が。
――この結末では、いけません。
――『ふざけるな。こんなもので納得がいくものか』
声が重なる。
そして。
――ホストコンピュータ《イグドラシル》の名において、世界を
――『ふざけるな。今度こそ、我々は――』
そして、聞こえてきた声、その内容。
それは黒い聖騎士が断じて認められることではなかった。
「っ。待て、イグドラシル――!」
声を上げる。だが、黒い聖騎士の想いはどこにも届かない。
世界の電源が切れる。まるでパソコンを強制的にシャットダウンしたかのように、世界のありとあらゆる感覚が黒で落ちる。
「すまん、しくった。■■■……」黒い聖騎士はここにはいない者に謝る。
やがて、黒い聖騎士も黒に呑まれた。
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D.C.2018 人間世界?
ああ、またこの夢だ。
■■■は静かに思う。いつから見始めているのか彼は覚えていないが、何度も見ていることだけは覚えている夢。
どこか、何か変な生き物がたくさんいる異世界としか言いようがない世界、そこで自分が生きている夢。
その世界はコンピュータの中のような光景がいくつもあり夢の中にしては凝っていて、夢というよりは一昔前のSFの仮想世界のようにさえ思える。
そこで生きている生き物も、妙に凝っている。機械、虫、ドラゴン、恐竜、動物、人、神、天使、悪魔――さまざまな存在が同じ規格の生物として生きていて、節操のない漫画のようにさえ思える。
ああ、そんなごっちゃ混ぜの変テコなビックリ面白世界だから、そんな世界に生きれる夢というのなら楽しいと思えるはずなのに。
何故だろうか、どうしてだろうか、■■■はどうしてもその夢が悪夢だと思うのだ。内容も覚えていないのに。
そして、今日も彼は目を覚ます。夢の中へと、目を覚ましていく。
というわけで、ちょっと前に活動報告で述べた通り、また長編をぼちぼちはじめていきます。
いろいろと独自設定・独自解釈・原作改変・オリジナル展開等のある、相変わらずクセの強い作品になってしまうとは思いますが、何とか皆様に楽しんでいただけるように頑張ります。
感想、誤字脱字報告、批評、アドバイス等は随時受け付けております。
物語の総文量としてはあまり長くならないとは思いますが、今作もどうぞよろしくお願いします。
追記:新作ということで、プロローグから序章部分の第三話までを一気に公開します。
よろしかったらよろしくお願いします。