【完結】デジモンクロニクル――旧世界へ、シンセカイより。   作:行方不明

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第十七話~トゥエニスト~

「よぉ、心配したんだぜ? 一応は」

 

 ドルグレモンの背中から降りつつ、コータがメイクラックモンVMに声をかける。

 

「……」

 

 一方で、メイクラックモンVMは答えなかった。まるで話すことはないとばかりに。あるいは、話したくないのかもしれない。

 

「ふぅ。メイクーモン、あのな――」コータが口を開いた、その瞬間のことだった。

「っ、コータ!」ドルグレモンが叫ぶ。

 

 メイクラックモンVMがコータめがけて突撃したのだ。

 咄嗟にドルグレモンがコータの前に飛び出した。そして。

 

「ぐはっ」

 

 ドルグレモンは頭に痛みを感じた。メイクラックモンVMに頭を踏み台にされたのだ。

 ドルグレモンの頭を踏みつけたメイクラックモンVMはそのまま勢いづけて上へと逃げた後、木々を足場にその隙間を縫うようにして森の奥へと消えていく。

 

「逃がすかっ。追うぞ、ドルグレモン!」

「ぅ……おぉー」

 

 痛む頭を堪えて立ち上がったドルグレモンの背中に、コータは飛び乗った。

 そして、すぐさま飛び立つ。だが、しかし――

 

「逃げられた」

 

 ――いかに群生しているのが背の高い木々だとはいえ、ドルグレモンの巨体では森の中を思うように進むことはできず、かと言って上空に上がれば木々によって目視することは叶わず。

 結局、小回りの利くメイクラックモンVMに、まんまと逃げられたのだ。

 

 ********

 

 メイクラックモンVMに逃げられた後、ドルグレモンとコータはボコモンとトコモンが待機する洞窟へと戻ってきていた。

 現在世界でレジスタンスのアジトであった洞窟だ。まぁ、もちろん、現在世界に比べて小さく狭いのだが。

 過去、現在、未来――とある名前は伊達ではない。同時並行的に存在するため、正しい意味で時間としての連続性はないものの、地形など繋がりを思わせるものは存在するのだ。

 もしかしたら新世界創造時に、この世界は月日が経てばこうなるだろう、という推測や推定でそれぞれの世界が設計されたのかもしれない。

 何はともあれ、当面の拠点となりうる場所を簡単に見つけられたのは僥倖だった。

 ちなみに、その可能性を提案し、当たりを付け、発見に多大なる貢献をしたのはボコモンである。正確に言えばもの知りブック(チート本)の力なのだが、その時のボコモンはとても誇らしげにドヤ顔していた。

 とてもウザい。コータたちはそう思った。ついでに言えば、トコモンに噛み付かれていた。

 

「で? メイクーモンには逃げられた、と」

「アウ」

 

 帰って来たコータたちを見ての第一声がこれだった。

 もの知りブックから顔を上げたボコモンは呆れてものも言えないとばかりに、コータたちを見る。

 

「ついでにヘンテコなやつを連れてきた、と」

「連れてきたっていうか、ついて来たっていうか……」

「ヘンテコな奴は否定しないんだな、コータ」

「否定できないだろ」

「まぁ、うん」

 

 ボコモンに指摘されて、ドルグレモンとコータは背後を見る。

 そこにいたのは、

 

「否定しろよ! オレはトゥエニストであってヘンテコなやつじゃないぜ!」

 

 そこにいたのは、メイクラックモンVMと戦っていた黄金の獣だった。

 ズバイガーモンと言う成熟期デジモンらしい。

 

「いやぁ、そのトゥエニストってのがよくわからん。どういう意味なんだよ」コータが聞けば、

「トゥエニストはトゥエニストだ」とズバイガーモンは自信を持って答える。

 

 会話になっていない。

 まさに、ヘンテコなデジモンだった。

 ちなみに、コータたちが彼を連れて来たのは、彼がメイクラックモンVMを知っていること、今のこの世界の状況においてまともに会話できそうな相手だったこと、その二点があったからだ。

 

「トコモンとボコモンか。アンタたち、ベルサンディから来たんだってな! オレはトゥエニストのズバイガーモンだ。よろしくなっ」

「おぅ、なんじゃろう。地味にちょっと鬱陶しいタイプな気がするぞい……。まぁ、よろしく頼むぞ」

「アウ!」

 

 ズバイガーモンにボコモンとトコモンが挨拶する。

 すると、ズバイガーモンの目が光った。

 

「おっ、その本は――」

 

 彼が目ざとく見つけたのは、ボコモンのもの知りブックだ。

 ボコモンは慌て気味に「だめじゃーっ」と叫んで、もの知りブックを隠した。

 

「ちぇ。ま、いいけどよ。でも、その本から感じたぜ。アンタもなかなかのトゥエニストだな?」

「いや、えぇっと……その……うぅ」

 

 ズバイガーモンの言葉に、ボコモンは何も言えなかった。いや、何かを言いたいようではあったが、言えない理由があって口に出せないような、そんなもどかしい顔をしていた。

 まぁ、ズバイガーモンにとっては、ボコモンの反応などどうでもいいらしかった。彼はボコモンが同じトゥエニストだと確信しているようだったから。

 

「いやぁっ、こんな時代でオレと同じトゥエニストに出会えるなんてなぁっ。いやぁ、今日はすっげぇ良い日だな!」

 

 何だかよくわからないが、同類に出会えたことが嬉しいらしい。ズバイガーモンはずいぶんとゴキゲンな様子で、その前足でポンポンとボコモンの頭を叩く。

 一方のボコモンは少し恥ずかしそうにしながらもされるがままといった様子で、今までにはない光景だった。

 

「アウアウ……」

「へぇー。ボコモンもあんな顔すんだなぁ。なぁ、ドルグレモン」

「それは、まぁ、そうだけど。これ、俺たち後で大変なことにならないかなぁ」

 

 そんなボコモンを、ニヤニヤと笑いながらコータたちが見ていたのだった。

 

 ********

 

 数分後、本の角で思いっきりぶん殴られたような()()を頭に作ったコータたちは、気持ちだけ正座させられながらズバイガーモンと向かい合っていた。

 

「で、アンタらがあのバケモノと知り合いってことでOK?」

「バケモノって言うなよ」

 

 コータが苦言を呈する。同意するように、ドルグレモンも首を縦に振った。

 だが、そんなコータの言葉を聞いても、ズバイガーモンは謝らない。その表情は複雑そうだった。コータたちが悪者に見えないからこそ、彼にはコータたちとメイクラックモンVMとが知り合いだというのが結びつかないのだろう。

 

「バケモノはバケモノだろ。どういう関係なんだ?」

「っ、お前な……!」

「……アンタらわかってるのか? アンタらがあのバケモノとどういう関係かは知んないけど、あのバケモノは今の状況の元凶だぞ」

「……」

 

 ズバイガーモンの言葉に、コータたちは言い返せない。

 コータたちも馬鹿ではない。記憶を掘り起こし、今のこの世界の現状を合わせて見れば、いい加減に気づく。

 かつてメイクラックモンVMが未だメイクーモンだった時、コータたちは“なぜかデジモンに襲われる”と聞いた。

 ああ、それが間違いだったのだ。

 襲われるのではなく、()()()()。病気のように狂気を感染させ、伝染させる。それが、メイクーモンの――メイクラックモンVMの特性。

 故意かどうかなど関係なく、そんな傍迷惑と言っても言い足りないほどの災厄の特性を備えていたのだ。

 

「もう一度聞くけど、アンタらはあのバケモノとどういう関係なんだ?」

「……友人だ」

「旧世界で出会ったんだ。それから数日観だけだけど、一緒に旅をしていた。その人となりもわかってる。だから、俺たちには信じられないんだよ」ドルグレモンがコータから言葉を引き継いで言った。

 

 そうだ。コータたちには信じられない。

 メイクラックモンVMはメイクーモンとはまるで別人で。

 さらに、コータたちはどうしてもメイクーモンとして見てしまうから、頭では理解していてもこの元凶だとは思えないのだ。

 

「……なるほどなぁ」

 

 コータたちの言葉を聞いて、ズバイガーモンは考え込むようにして目を閉じる。少ししてカッと目を見開いた彼は、叫んだ。「わかったぜ!」と。

 

「何が?」

「わかったんだ?」

 

 コータとドルグレモンは首を傾げる。

 一方で、ボコモンだけが「はぁ」と溜息を吐いていた。

 

「アンタらもそれなりのトゥエニストだってことがなぁ!」

「は?」

「え、ぇぇ……」

「いやぁ、最っ高じゃないか! まさか隠れトゥエニストだったなんてな!」

 

 いきなりの豹変に、コータたちはついていけない。ちょっとだけ距離を取る。……すぐに詰められた。

 

「じゃあ、()()()()()()()、あのバケモノはアンタらがどうにかしないとな!」

「お、おう」

 

 ズバイガーモンの言葉の真意を、コータとドルグレモンはその時に理解することはできなかった。

 

「よし、他ならぬトゥエニストのためだ。オレの知ってることを教えてやるよ!」

 

 そして、ズバイガーモンはコータたちに教えてくれた。

 メイクラックモンVMは数日前にこの過去世界に現れ、この大陸に落ちてきたこと。時を同じくして、デジモンたちが暴走を始めたこと。メイクラックモンVM自身もX抗体問わずデジモンを狩りつつ、暴走するデジモンを増やしていること。

 聞くたび、コータたちは嫌な予感を増していった。

 

「なるほど。……ちょっと複雑だけど、情報ありがとうな」

「いいってことよ!」

 

 一通り聞き終わったコータはズバイガーモンに礼を言うと、今度は我関せずともの知りブックを読んでいたボコモンに視線を向ける。

 その視線に、ボコモンはすぐに気づいた。

 

「なんじゃい?」

「……いや。ひとつ聞きたくてさ。今思ったんだけど」

 

 話を聞いていてコータは思ったのだ。

 メイクーモン――メイクラックモンVMの持つ特性はまるで病気みたいで。であれば、メイクラックモンVMは病気の感染源のようなものと考えられる。

 そこに思い至れば、思い出すのはボコモンだ。

 

「ボコモンは知ってたのか?」

 

 ボコモンはベルサンディターミナルで出会った時に手洗いうがいなどという発言をした。それはつまり、知っていたということではないのか?

 

「……」

 

 少し考えて、やがてボコモンは口を開いた――。

 




トゥエニストがいっぱいですね。
ちなみにこの作品の独自設定として、トゥエニストには独自の意味をつけてあります。
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