【完結】デジモンクロニクル――旧世界へ、シンセカイより。   作:行方不明

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せっかくのGWなので、ストックから連日投稿します。
それでは、どうぞよろしくお願いします。


第二十四話~レジスタンス~

D.C.2018 NEWデジタルワールド――ウルドターミナル――

 

 現在と未来、他の二世界と比べてより過酷だったこの過去世界において、そこに行く着くのはある意味で当然のことではあった。

 数日前より起こった地獄。それに、デジモンたちは最悪の形で適応しようとしていたのだ。

 元より神による粛清(Xプログラム)にさえ適応し生き残ったのだから、この地獄にさえ適応するのも時間の問題だったのだろう。

 

「この動乱の時代において、今まで通りなど望めない」

 

 誰かが、そう言った。この狂気に満ちた世界で正気を保つことができる、X抗体を持つ誰かが。

 

「……では、どうする?」

 

 誰かが、そう聞いた。この狂気に満ちた世界で正気を保つことができる、X抗体を持つ誰かが。

 

「決まっている」

 

 誰かが、そう答えた。この狂気に満ちた世界で正気を保つことができる、X抗体を持つ誰かが。

 自信満々に、()()()()()()に聞かせるように。

 

「いつだって俺達は生きてきた。今度もそうするだけだ」

 

 誰もが、それに頷いた。この狂気に満ちた世界で正気を保つことができる、この場に集まった誰もが。

 

()()ぞ。我々は生き残るんだ」

 

 現在世界において、絶対的脅威(オメガモンAlter-S)に対抗するためにX抗体デジモンたちは徒党を組んだ。

 今回も、同じ。

 この過去世界において、自分たちを襲う脅威(狂気に囚われたデジモンたち)に対抗するために、X抗体デジモンたちが徒党を組む。自分たちが生きるために。

 ああ、奇しくもそれは、X抗体を狩ろうとしていた彼ら(通常デジモンたち)と同じで。

 数日前までは、狩る者と狩られる者は逆だったのに。今この瞬間に、狩る者と狩られる者が逆転する。

 

「いくぞ――!」

 

 今ここに、また一つレジスタンスが誕生する。彼らの目的はただ一つ。狂気に囚われた者たち、そして囚われる可能性のある者たち、その殲滅。

 元々弱肉強食の世界を生き抜いていた強者の、さらにX抗体持ちが――Xプログラムの時でさえ協力しなかった者たちが、ついに手を取り合って事に臨む。

 ああ、通常デジモンたちが耐えられるはずがない。

 元よりスペックで劣るのに、理性というそれを覆しうる可能性すらも狂気によって失ってしまったのに、それなのに自分たちよりも力を持つ者が数の暴力を振るっているのだから。

 

「アァアアアア――!」

「やめっ、やめてくれ! ボクはまだ狂ってないんだ!」

「ウォオオオオ!」

「ダギャァアアア!」

「な、なんでこんなことにぃいいい!」

 

 狂っている通常デジモンも、狂っていない通常デジモンも、等しくX抗体デジモンたちに駆逐されていく。

 ああ、時にはやり返す者も当然のようにいるし、一矢報いるとばかりにX抗体デジモンを倒す者も当然いた。だが、ダメだ。数の有利が失われるほどではない。

 そうしてレジスタンス誕生の二日後には、すでに大陸の通常デジモンの数は地獄の始まる前の二十分の一ほどに減ってしまっていた。

 最も、地獄の開始によって元々からして減っていたのだが、それを抜いても驚異の速度であった。

 

「やれヤレ殺れ、やれ――!」

 

 その掛け声は、果たしてどちらのものか。

 

「死んでたまるかぁああああ――!」

 

 そう叫んだ声は、果たしてどちらのものか。

 

「俺は、生きるんだ……生きたいんだよぉ」

 

 その呟きは、誰のものか。

 生存闘争――それは原初の戦いであり、始まりから今にまで続く、逃れられない決まり。正誤善悪美醜など関係のない次元の、ある意味では低次元な、それでいてある意味では高次元な戦い。

 それに則れば、これは聖戦とすら言えるかも知れない。

 だが、どうだろうか。

 生存闘争ならば、何でも良いのか。

 生存闘争ならば、何でも許されるのか。

 

「誰か……助けて……」

 

 生存闘争ならば、こんな声がどこにも届かないのも当然なのか。

 もはや、過去は地獄にとって変わられた。ああ、そうだ。この開戦をもってして、地獄は真の地獄になった。生存闘争を強要される、地獄に。

 大雑把に見れば、元より在った生存闘争がより過酷になっただけの話ではあるが――規模が違う。

 Xプログラム(死の病)には完全に出来なかったことが、狂気(理性の病)によって引き起こされた。そう見れば、これはとても皮肉の効いたことだった。

 

「……」

 

 そして、そんな地獄の始まりにおいて、彼はそこにいた。和風な鎧を身に纏う、落武者がいた。

 落胆を隠そうともしない、失望に沈んだ暗い顔をして、鞘に収まったままの大太刀をその手に持った彼は地獄を見つめる。

 

「これこそは我が主の望んだこと。我が主の望みは某の望みではある。しかし、これは……――」

 

 私情を振り払うように、武者は首を軽く振る。

 そして、冷徹な目で地獄を見つめた。その先にいるのは、狂気デジモンたちを襲うX抗体デジモンたちだ。同種同士で固まって行動しているらしい。深紅の魔竜(グラウモンX抗体)六体と巨大なる魔竜(メガログラウモンX抗体)三体が取り囲むようにして狂気デジモンたちを攻撃している。四方からの連携攻撃に、狂気デジモンたちは為すすべもなく倒れていっている。

 その光景を、落武者は嘲って――

 

「我が使命を果たす時」

 

 ――そして、大太刀を振るった。

 発生した衝撃波が、大地を割って突き進む。予想外の方向から飛んできた究極体クラスの一撃に、X抗体デジモンたちも狂気デジモンたちも対応できない。

 一瞬で、十を超える命が失われた。

 生き残ったのは、偶然にも仲間が肉壁となる形となったメガログラウモンX抗体一体だけだ。

 

「ナ、何?」

 

 唐突な事態にメガログラウモンX抗体は呆然と目を見開いて、目の前を見ている。敵も味方も失われた場所で、何もかもがわからなかった。

 ただ一つわかるのは、事を起こした犯人だけ。

 その犯人はゆっくりとメガログラウモンX抗体の前に立った。そして、侘びも入れずに言い放つ。

 

「悪く思うな。これこそが我らの使命故。某は貴様らを殺す」

「何ヲ――!」

 

 実力の差は明白。逃げることなど出来はしない。だが、殺すと言われて、大人しく殺される謂れもない。だから、メガログラウモンX抗体はその腕の刃を振るう。

 自らに目掛けて振り切られたそれを、落武者は軽々と掴んだ。そして、哀れみを込めた目で見る。

 

「ああ、貴様らは神が作り出したモノ――あるいは、我々に取って代わるデジモンの新しい形なのかもしれん」

「フザケルナ。我々ハ生キル意思ニヨッテ進化シタ! 断ジテ神ナドに作ラレテハイナイ――!」

 

 自分たちの意思が、自分たちの苦痛が、まるで神の思惑通りだと言われたようで、メガログラウモンX抗体は腹立たしげに武者を睨む。

 そして、その怒りが力を産む。

 

「馬鹿ニスルナァ!」

 

 誰だって、自分が生存すればいいと心の奥底で思っている。それは本能だ。ある者はこのように定義付けるだろう。感情とは、本能によって生み出される本能の子供なのだと。

 ああ、だから、これは。

 生存の本能が、自らを殺す者に怒りを向ける。メガログラウモンX抗体の中に眠る因子が、進化を利用して目覚める。

 それは、世界を滅ぼしかねない怒りだった。怒りそのものの体現者でもあった。

 

「アァアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 怒りの化身(メギドラモンX抗体)が降誕する。

 だが、それを前にしても武者は冷静だった。目の前の怪物はもはや、歴史に残りかねないほどの災害に化けたというのに。

 

「……怒りか。某にとっても、我々にとっても、慣れたものだ。だが、意味もない」

「ウァアアアア!」

「かつて存在したメギドラモンは、それは凄まじかったと言う。X抗体に引き出された力もある故、時間さえあれば、あるいはかつてさえ超えて歴代最強にさえなりうるかもしれんが」

 

 冷静に、武者は大太刀を構える。

 

「だが、貴様はここまでだ。貴様ら(X抗体デジモン)も、ここまでだ。我らは貴様らを認めぬ。故に、貴様らはここまでなのだ」

 

 そして、武者は大太刀を振るった。

 この日を境に、この過去世界に存在するX抗体デジモンは再び狩られ始める。少し前の現在世界と同じように、絶望の存在がX抗体デジモンを狩り始めたのだ。

 使命のために、彼は進み続ける。当然、大陸中のX抗体デジモンを狩ろうとしているのだから、その行く先には――。

 

 ********

 

 そして、さらに数日後。

 メイクラックモンVMを探して旅を続けるコータたちもまた、この過去世界の変化に巻き込まれていた。

 

「抗体を持ってない奴がいたぞっ。殺せ――!」

 

 毎日のようにX抗体デジモンたちに襲われるようになったのだ。

 主に狙われているのは、X抗体を持っているドルグレモン以外の面々なのだが――

 

「ちょっと待てよ! ボコモンたちは大丈夫だってばぁ!」とドルグレモンが叫ぶ。

「あいつ、抗体持ちの癖に庇い立てしてやがる! あいつも殺れ!」しかし、聞く耳は持たれなかった。

「なんでだぁー! いや、見捨てる気はないから否はないけど! ないんだけど!」ドルグレモンはうがぁーっと頭を振る。

 

 ――結局、ドルグレモンも襲われることになるのだ。

 まぁ、そこはいい。襲われたら迎撃するなんて、いつも通りのことだからだ。問題はただ一つ。

 

「やー。大変じゃのう」

「アウアウ」

「狙われてるのお前たちなんだけどっ」

 

 問題は、力も弱くて一番危機的状況にいる連中が呑気でムカつくということだけだ。

 何はともあれ、ドルグレモンは目の前の敵を見る。青き恐竜(アロモン)角竜型の恐竜(トリケラモン)に、仮面のマンモス(マンモン)――X抗体を持つ者たちが、各三体ずついた。

 

「どうする、コータ?」とドルグレモンが問えば、

「ま、いつも通りやるぞ」とコータが気楽に返す。

 

 その目の前で、「トゥエニストぉおおおおおお!」といつも通りに元気よく叫んだズバイガーモンが突っ込んでいっていた。

 その背中にボコモンが乗っていたのもいつも通り。珍しくトコモンが乗っていたのはいつも通りではなかったが、まぁ、

 

「……そうだね」

 

 もはや考えるのも馬鹿らしい。

 アグモンとガブモンがそれぞれライズグレイモンとワーガルルモンに進化したのと同時に、ドルグレモンも攻撃を開始しようとして――

 

「なるほど。不快だ。トゥエニストとは」

 

 ――斬撃が、敵を切り飛ばす。

 巻き込まれたらしいズバイガーモンの生死を確認する間さえない。コータたちは目の前の乱入者から目を離せなかった。

 

「抗体持ちを狩る。なるほと、使命さえなければ意気投合できそうではある。しかし、むぅ。残念だ」

 

 現れたのは、コータたちも噂として知った落武者。

 その刀は、コータたちにも向けられていた。

 

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