【完結】デジモンクロニクル――旧世界へ、シンセカイより。   作:行方不明

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第四十三話~黙示録の竜~

D.C.2018 NEWデジタルワールド?

 

 コータたちは会話を続ける。

 まぁ、一方的にコータがドルモンに説明していくだけで、時折ドルモンが質問するという感じをとっていたのだが――何はともあれ、その甲斐もあってだいたい此処に至るまでの経緯は話せた。

 経緯はわかった。であれば、次に気になるのは、

 

「で、ここどこ?」とドルモンは座ったままで辺りを見回しながら聞いた。

 

 場所についてである。

 見回せば辺りは真っ暗だ。かろうじて少し先くらいまでは見えるが、その先は見通せない。

 天には輝ける星は一つとしてなく、地面は不毛の大地とばかりの荒野が続いている。そして、その唯一視認できる大地すらも、しばらく進んだ先で暗闇に呑まれて消えている。

 真っ暗だからといって、ここは洞窟の中とかそういうことでもなさそうで――まさにここは闇の世界というに相応しい世界だった。

 

「ここは……」

「ここは?」

「オレにもわからん」

 

 コータの言葉に、ガクッとドルモンは肩を落とした。

 

「なんでわからないんだよぉ!」

「いや、オレだって穴に投げ込まれてから気絶してたんだぞ!」

「穴ー?」

「それからお前に叩き起されたんだ。ここがどこかなんて知ってるはずないだろ」

 

 旧世界とも、過去世界とも、現在世界とも、未来世界とも違う、どこか。

 推測するにしても情報が少な過ぎる。というか、新旧両世界以外の世界――それこそ御伽噺に聞く異世界とかに飛ばされていたとしたら、コータたちに自力で判別する術はない。

 結局、わからないのだ。

 

 ********

 

「あーあ、せっかく究極体にまで進化したのになぁ」

 

 一通りの情報共有が終わって、現状を何とか認識したドルモンはスコ座りしながら嘆いた。

 実にリラックスしている様子でいるのは良いのだが、骨格的にどうやって座っているのか。

 まぁ、気にしないことにして、

 

「……メイクーモンにも申し訳ないしな」

 

 コータはそう返答した。

 

「だよねぇ。はぁ」

 

 ドルモンは溜息を吐く。

 せっかくある程度の実力が付いて戦闘面での不安はなくなったのに、ここに来て初期化である。しかも、生死のかかる戦闘の多いこのご時世で。

 ドルモンではなくとも誰だって嘆くし、いくら嘆いても嘆き足りないことだろう。

 

「ま、嘆いたって仕方がないんだけどな。生きているだけで儲け物だろ」とコータが気休めにもならないことを言う。

「それはそうだけど。失ったものの大きさを考えれば、ねぇ?」

「はは、贅沢になったよなぁ」

 

 生きている事実だけに満足せず、それ以外を求める。それは贅沢なことだ。特に、この極限状態に陥ることが多い今の世界ならば尚更。

 それでも、まぁ、悪い気はしなくてコータは笑う。

 

「それじゃあ、いつまでもこうしているわけにもいかないし、行くか」

「そうだね。これからどうするの?」

「そうだな。トコモンの話だと、オレたちはいろいろと知らなければいけないみたいだ。そして、その諸々を知ってるやつがここにいるらしい」

「ここ、にねぇ」

 

 ドルモンは辺りを見渡した。

 相変わらず暗い。彼らが目を覚ましてからしばらく時間が経ったはずだが、それでも辺りに変化はない。明るくなることもなければ、逆に暗くなることもない。どうやら、この世界はこの暗さで固定されているようだった。

 

「なんか気が滅入るというか、あんまり居たくない場所だね」

 

 ドルモンがそう言うと、コータも「そうだな」と頷く。

 

「ねぇ、コータは知りたい? そのいろいろを」

 

 そんな周りに振り回されるのなんて気分良くないし、というか、ここにはいたくないし、さっさとこんなところ出てこうぜ! とドルモンのそんな心の声が聞こえた気がした。

 

「……そうだな」

 

 コータは考え込むように腕を組む。確かにドルモンの考えているだろうことも一理ある。

 だが、しかし、彼は思うのだ。

 

「多分、知りたい。いや、知らなきゃならない。無知は罪だって言うけどさ、問題が目の前にあるのに考えないのも、答えがあるのに知ろうとしないのも、きっとダメなことだ」

 

 永遠に今という時間に留まるのなら、今のままでいいだろう。だけど、生き物に永遠など有り得ない。どんな生物にも、未来は来る。

 未来に進むためには、今のままではいられない。例え今のままがよくても、未来は来る。今のままでいようとしたら、やがて来た未来に押し潰される。

 未来に進むためには、常に自分をアップデートしていかなければならない。適応させていかなければならない。

 面倒だからと、嫌だからと、そんな自分の都合が通じるはずもない。

 

「きっと知らなきゃ前に進めない。未来にはいけない。……オレは生きたいんだ。目を閉じて耳を塞いで、そんな死んだも同然で在りたくない」

「……だから、行くんだ?」

「ああ。そりゃ、周囲に振り回されてるのなんて薄気味悪いけどさ。今度はこっちが振り回せるくらい、何もかも知ってやろう!」

 

 そう言ってコータは笑う。

 ドルモンも「おう!」と力強く返した。

 

「ま、コータにそれだけの頭はないけどね」

「それはお前も同じだろーが!」

 

 そう言って笑い合いながら、コータとドルモンは立ち上がって歩き出した。

 

「ところで、どこにどうやっていけばいいの?」

 

 先行きは不安しかなかったが。

 

 ********

 

D.C.2018 NEWデジタルワールド――スクルドターミナル――

 

 一方その頃。

 それは今は無き旧世界、デジタルワールドに語り継がれていたモノ。

 ありとあらゆる世界の“終わり”について書かれた書物――黙示録。

 元々、力ある者が多いデジタルワールドだ。黙示録に書かれている世界を滅ぼす要因となるのも環境や自然的なものではなく、その多くが邪悪なる者だった。

 もちろん、黙示録の中には偉大なる者や到達者も書かれている。善なる者だけが、偉大なる者や到達者とは限らないが故に。

 だが、しかし、黙示録の最後にはこう書かれている。

 

――全てが無に帰す終わりの時代、あらゆる偉大なる者が、あらゆる到達者が、あらゆる歴史が消え去った後に残る最後の時代。

 

――過去への情景を以て、子等は希望を燃やして再びの栄光のために未来を目指す。

 

――その時こそ、七つの罪源を奪った傲慢なる竜は現れる。

 

――最後の到達者、最後の偉大なる者、古き時代の楔としてこの世に顕現する。

 

――魔王の名を継ぐ光、それこそがこの魔神である。

 

 偉大なる者も到達者も、その位が意味を失った遥かな未来の時代、そこに現れる最後の破滅の因子。

 さて、世界の終わりの要因だけが書かれている黙示録だが、本来は世界守護の予言や預言の書物も別にあり、黙示録はそれらとセットだったというのが旧世界に住んでいた賢人たちの定説だった。

 理想の名を冠する到達者に対応した、青の到達者がいたように。

 故に、最後の竜と対応する者もいるのだろう、と賢人たちは考えていた。

 同様に光を名を持つ天使を倒した最初の十か、あるいは同じく光の名を持つ堕天使を殺した偉大なる破壊神か。

 そういった者がいなくなった時代に現れるのだろう、だから対応する者もいない、正真正銘の世界の最後なのではないか――そんな反論によって議論は盛んになるのだが、それはほんの余談。

 何はともあれ、今において重要なのは、

 

「さぁ、世界を滅ぼそうか」

 

 時代を数万年ほど先取りして現れただろうその最後の竜――頭上に七つの大罪の冠を抱き、地獄の具現である暗黒の球体を抱える、竜――ルーチェモン:サタンモードが命を守るために世界を滅ぼすということである。

 

「こりゃあー! 何をしとるんじゃいー!」

 

 何気に生き残っていたらしいボコモンの叫びも、ルーチェモン:サタンモードは聞き入れない。

 というか、命を滅ぼす者と世界を滅ぼす者が争ったところで、どちらが残っても世界を滅亡させる者が残るだけだ。

 無意味というか、目的を失っているというか。

 

「お前さん、そこまでせんでもいいじゃろーが!」

 

 地団駄を踏みながらのボコモンの言葉に、ようやくルーチェモン:サタンモードは答える。

 

「指図される謂れはないなぁ。僕がいつその気になるかなんて、僕が決めることさ」

 

 もちろん、この時代ではルーチェモン:サタンモードに比肩する実力者は未だ絶滅していない。

 だから、彼としても無駄な労力を使う気にもなれず、その時ではないとずっと先送りにしていた。

 それでも、今こうして顕現したのは――

 

「ま、アレにいずれ僕のものになる世界を滅茶苦茶に作り替えられるも鬱陶しいし」

 

 ――彼にとっても、この旅に思うところがあったからなのだろう。

 

「アウアウ! ……なんてね。“パーガトリアルフレイム”!」

 

 まさにドラゴンブレス。竜というもののイメージ通り、その口から吐き出された業炎が世界を焼き払いながら突き進む。

 射線上にある何もかもを破壊し、焼き尽くし、浄化して突き進んでいく炎がデクスモンを襲う。

 

「――!」

 

 さすがのデクスモンも、自分と同レベルの世界を滅ぼす者の一撃は効くらしい。

 両腕の爪が炎を切り裂き、霧散させ、防ぐ。だが、それだけだ。その爪は炎を超えてルーチェモン:サタンモードまで届くことはない。

 

「ははは! 気分がいいなぁ! 動けないだろう? 自分が活動停止するその瞬間を、見ていることしかできないだろう? ああ、君が生物じゃないのが残念だよ」

 

 生物であったのなら良い顔をしてくれただろうに、とルーチェモン:サタンモードは残念がりながら次の行動へと移行する。

 口からの攻撃でデクスモンは動けない。つまり、邪魔はされない。

 で、あるならば、

 

「同時発動とか。ずいぶんと気に食わないが……ま、あれ()を圧倒できると思えば少しはマシか」

 

 今こそがその時だ。

 

「“ディバインアトーンメント”!」

 

 頭上の七つの冠から光が放たれる。ルーチェモン:サタンモードを中心として放たれた光は放射状に突き進み、存在するあらゆるものを消滅させていく。

 命も、建物も、地面も、何もかも。

 

「――!」

 

 唯一それに耐えるのは、存在そのものが世界の法則の一種であるデクスモンだけだ。光を受けてその姿が霧のように歪むが、それだけだ。消滅する気配はない。

 だが、しかし、それも時間の問題だった。この世界から命がなくなれば、デクスモンはその存在を保てない。

 

「はっはっははははは!」

 

 高笑いと共に光が世界中に広がる。

 そして、この未来世界は消滅した。

 

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