【完結】デジモンクロニクル――旧世界へ、シンセカイより。 作:行方不明
第四話〜新世界〜
D.C.2018 NEWデジタルワールド――ベルサンディターミナル――
それは新世界の一角、とある荒野エリアにおいての出来事だった。
機械的な鎧を身にまとった竜戦士――ウォーグレイモンX抗体が、そこに訪れたのは。彼は訳あって一人でここに来た。
その訳とは、一言で言えば会談だ。
「――」
「……」
「アウッ、アウッ」
「こ、こらっ。大人の話に茶々を入れるんじゃないぞっ」
相手は、X抗体を持たない普通のデジモンたち。
彼らは新世界創造時にこの世界に連れてこられた、いわばこの世界の正当な住人たちだ。
そんな彼らを相手に、ウォーグレイモンX抗体は自身の思いを訴えていた。
「頼む、睨んでないで聞いてくれ。このままじゃオレたちデジモンは全滅してしまう。もう争い憎み合っている場合じゃないんだ」
「今更勝手なこと言わないでよ! この危機を招いたのは貴方たちじゃないの!」
だが、彼らはウォーグレイモンX抗体の言葉など聞く耳持たず、といった体だった。ブロッサモンが強くウォーグレイモンX抗体を非難する。
「貴方たちがここに逃げてきて、ここも旧世界と同じように汚染してくれたせいでっ」
「っ、それは違う!」
「何が違うって言うのよっ」
「事の始まりはイグドラシルがXプログラムを発動したことにある。この世界が汚染されたのも、イグドラシルがX抗体を持つデジモンを狩り始めたからだ。連中はX抗体デジモンを駆逐する際、抗体の内部にあったXプログラムをこの世界に解き放ってしまった。であれば、イグドラシルこそが我々の共通の敵ということじゃないのか?」
ウォーグレイモンX抗体は拳を叩き合わせる。そこには殺された仲間の無念があって、元凶たるイグドラシルへの憎しみがあった。
「生きるためにも力を合わせなくちゃ行けない。君たちもそれがわかっているから来てくれたんだろう?」
「はっはっはっは」
笑い声。だが、それは決して愉快だから来るものではなくて。その声の主であるアンドロモンは、そんなウォーグレイモンX抗体を嘲笑していた。
「なかなか面白い話だ。だが、それが真実である証拠がどこにある?」
「それはっ」
「貴様の言い分は都合の良い敵を作ることで矛先を自らから逸らそうとしているようにしか思えん。イグドラシルが元凶だと? ロイヤルナイツは
「っ、それはっ、だけどXプログラムを発動したのは……――」
「そうだ。イグドラシルだ。だが、それはもう過去のこと。今起きている事態がイグドラシルの思惑であると考えることこそ、早計だ」
アンドロモンは嘲笑う。短慮に過ぎるウォーグレイモンX抗体を嘲笑う。
確かに、ウォーグレイモンX抗体は短慮なところがあった。
イグドラシルがXプログラムにより多くのデジモンを削除したのは事実だ。だが、それと今の危機的事態が結びつく証拠がない。今ある事実は何者かにX抗体デジモンが狩られ、その抗体内部にあったXプログラムが解き放たれ、この新世界も汚染されてしまった、その一点だけなのだから。
ウォーグレイモンX抗体は憎しみから、イグドラシルが犯人だと決めつけてしまっていただけだ。
まぁ、状況的にはそう思っても仕方ない部分は多々あるのだが。
「そもそも貴様の論はブロッサモンのそこから論点をすり替えている。貴様らは不法侵入者だ。貴様らのせいで危機に陥った。それに対する弁明をしていない。狡い手だ」
「っ、そんなつもりは――」
「なら、よほど頭がお花畑だということか。やはり我々と貴様らは違う。我々が貴様らX抗体デジモンと手を取り合うことなどないと知れ」
「っ、頼む。確かにオレの意見には穴があったもしれない! でも、オレたちは力を合わせないといけないんだ。昨日の旧世界の崩壊も見ていただろう! きっと近いうちに何かが起こる! その時のためにもっ」
「戯言を。しぶとく生き残るのは貴様らの特権。自分たちが生き残るために我々を利用しようとしているその魂胆など見え透いている。消えるのは貴様らX抗体デジモンだけだ。我々には関係ない」
「っ、それは――」
アンドロモンは、いや、この場にいる者たちは誰もが勘違いをしている。それがわかって、ウォーグレイモンX抗体は声を上げた。
だが、すべては遅かった。
「――っ!」
ウォーグレイモンX抗体が上空を見上げる。
そこにいたのは、白い聖騎士だった。今この世界で
「逃げろっ」
ウォーグレイモンX抗体が叫ぶ。だが、遅い。
白い聖騎士が右腕の狼の籠手を振るう。その口から現れた剣を振り抜いた。
「え、は……?」
何が起こったのかわからないとばかりに、アンドロモンは声を上げる。彼が最期に見たのは、両断された自分の身体だった。
「――……」
白い聖騎士が再び剣を動かす。だが、剣が再び振るわれるよりも早く――。
「っ、おぉおおおおおおお!」
ウォーグレイモンX抗体が駆ける。
これ以上殺させないとばかりに、その腕を振るう。その腕に装備したドラモンキラーが白い聖騎士を狙う。
だが、
「……――」
だが、
「っ」
だが、ウォーグレイモンX抗体の攻撃は白い聖騎士の左腕に阻まれた。
突撃に合わせて振るわれた白い聖騎士の左腕、それがウォーグレイモンX抗体を殴り飛ばしたのだ。凄まじい力によって、弾き飛ばされたウォーグレイモンX抗体。
そんな彼を気にすることなく、文字通り顔の周りを飛んだハエを払っただけかのような気楽さで、白い聖騎士は行動を続行する。
その剣が、残るデジモンたちを狙う――!
「ほう」
再度、振るわれた斬撃。
だが、この場にいる誰も死ぬことはなかった。
「――」
ウォーグレイモンX抗体が、身を呈して彼らを庇ったからだ。
「貴方、どうして……」
「っく、か……さっさ、と……逃げろっ」
呆然とするブロッサモンを、ウォーグレイモンX抗体が怒鳴りつける。
その言葉に突き動かされたように、ブロッサモンは動き出した。
「誰も、殺させないぞ……! おぉおおおおおおおおおお! “ガイア――」
ウォーグレイモンX抗体が地面にドラモンキラーを突き刺した。瞬間、地の底より炎が上がる。大地のエネルギーが地面を突き破って登ってくる。
巨大な火球に収束したそのエネルギーを、ウォーグレイモンX抗体は放つ――!
「――フォース”」
放たれた火球。
それを、白い聖騎士は冷ややかに見つめていた。
「無意味だ」
白い聖騎士が左腕を振るう。その竜の籠手から、砲塔が現れる。
「“■■■■■■■”」
放たれたプラズマ。
それはウォーグレイモンX抗体の全力の技とぶつかり合う。ああ、だが、しかし、押されているのはウォーグレイモンX抗体の方だ。
それは彼自身もわかっている。
だから。
「あぁああああああああ! “ガイアフォース”!」
だから、命を使い切るつもりでもう一発。
二発の火球がプラズマとぶつかり合って、混ざり合い、弾ける。
弾けたエネルギーが熱を伴う衝撃波となって辺り一帯を吹き飛ばした――。
********
「……何があったんだ?」
コータは目を覚まし、第一声を呟く。
見れば、彼の周りにはドルガモンとメイクーモンが倒れていた。
辺りを見渡す。そこは草原だった。命が広がる、穏やかという言葉が似合う草原だった。空は青く、雲が緩やかに流れていって、自然溢れる場所だった。
「ここは、まさか――」
すぐにコータはピンときた。
こんな場所、旧世界にあるわけはない。ここは過去・現在・未来の三つの世界で構成される新世界――NEWデジタルワールド、その現在世界にあたるベルサンディターミナルだ。
「まさか、あの崩壊に巻き込まれて……?」
コータが愕然と呟くと、その背後で声が上がった。
見れば、メイクーモンとドルガモンが手を合わせて踊っていた。
「にゃーっ、にゃーっ!」
「お、おう? おぉう?」
いや、ドルガモンはメイクーモンに付き合わされているだけだったか。
「やったやったにゃ、新世界にゃー!」
まぁ、メイクーモンは念願が叶ったのだから、この喜びようもむべなるかな。
「さぁっ、新世界の第一歩にゃ!」
何はともあれ、意気揚々とメイクーモンは歩き出す。
その後ろをコータとドルガモンは苦笑いしてついて行った――のだが。
「うぐるぁああああああ!」
咆哮。それは背後から聞こえてくるもので。
「……」
「……」
「にゃぁー……」
コータたちは天を仰ぎ見た。
その背後から襲い来るのは、赤い肉食型恐竜――ティラノモンと呼ばれる成熟期デジモン。しかも、一目散に自分たちに向かって来ている。
ドルガモンのX抗体狙いか、メイクーモン狙いか、まぁ、どちらにせよ。
「やるぞ」
「おう……」
結局、戦わなければならないのだ。
いや、戦うことは別にいいのだが。コータとドルガモンが少しくらい休みたいと思うのは、まぁ、自然な心情だろう。
ショックを受けているのはメイクーモンだけだ。
「にゃぁぁぁぁ……」
メイクーモンは頭を抱えている。
そんなメイクーモンを尻目に見つつ――コータたちは駆け出した。
白い聖騎士か~誰なんだろうな~(棒)
と、そんな冗談は置いておいて。
前回で序章が終わり、今回から第一章が始まります。
それでは次回もよろしかったらよろしくお願いします。