【完結】デジモンクロニクル――旧世界へ、シンセカイより。   作:行方不明

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第五十四話~再戦~

 オメガモンAlter-Sを倒したビクトリーグレイモンとズィードガルルモン。だが、その表情は浮かれたものになることはない。いやむしろ、険しさを増している。

 最も、それも当然だろう。

 この事態、つまり“デジモンクロニクル”が発動されている場において、デジモン召喚機能は展開中永続だ。つまり、イグドラシルが召喚した者だろうが、アポカリモンが召喚した者だろうが、

 

「少し侮っていたようだ」

 

 死んだところで甦る。

 オメガモンAlter-Sの死体が泥に変わり、捏ねくり回されたかのように蠢き、もう一度オメガモンAlter-Sの姿となった。

 完全復活だ。先ほど与えたダメージの欠片も残っていない。

 

「……もはや私が行くのは遅いか」

 

 オメガモンAlter-Sは横目でドルモンが消えた方向を見る。ドルモンの姿は見えなかった。

 彼が今からビクトリーグレイモンたちを殺してドルモンの元へ行くよりは、他の誰かしらに任せた方が効率が良いだろう。

 

「貴様らの勝ちだ。貴様らは見事、私を相手に時間を稼いだ」

 

 オメガモンAlter-Sは狼剣を構えながら、ビクトリーグレイモンたちを賞賛する。いや、どちらかといえばそれは自嘲の言葉だったのかもしれない。

 

「ここからだね」とズィードガルルモンが言い、

「ああ、ここからだ」とビクトリーグレイモンが頷く。

 

 意地でもって、ビクトリーグレイモンたちも自分の武器を構えた。

 

「だが、もう貴様らは勝たせない」

「は。何度でもボクたちが勝つ!」

 

 そのオメガモンAlter-Sとビクトリーグレイモンの言葉を皮切りに、再び彼らは戦い始めた。

 

 ********

 

 一方その頃、ドルモンはえっちらおっちら走っていた。

 時折、流れ弾――というには怖すぎる火力のミサイルやら何やらがピンポイントで飛んで来ていたが、何とか無事に彼は走っていた。

 未だ目的地(アポカリモン)は遠い。それでも、前進はしていた。

 

「カッ。これ以上は先に行かせぬよ」

 

 斬撃。

 ドルモンは何とか躱す。が、止まらぬ斬撃はそのまま突き進み、幾人かを敵味方諸共に切り捨てていた。

 

「っ、タクティモン――!」

「主、いやさ、相棒を何が何でも助けようとする……その意気や良し。だが、我々の進退が関わる以上、これ以上は進ませぬよ」

 

 立ち塞がったのは、抜刀状態の蛇鉄封神丸をその手に持つタクティモンだ。

 彼もオメガモンAlter-Sと同じく、誰かしらと戦っていたはずなのだが、おそらくは倒してきたのだろう。彼自身はともかく、抜刀状態の蛇鉄封神丸の性能は卑怯の一言だ。底上げされた暴威的な力でもって、誰であろうと蹴散らせるだろう。

 抜刀状態の蛇鉄封神丸を持つタクティモンを倒せるものなど、到達者や偉大なる者を除けば、それこそひと握りだ。

 そして、今のドルモンはそのひと握りではない。

 

「さて、故にここで終わりだ」

 

 蛇鉄封神丸が振るわれる。

 先ほどとは違い、はっきりとドルモンを狙った一閃。それを、ドルモンは躱せない。

 

「っく、“メタルキャノン”!」せめて、とドルモンは鉄球を吐き出す。それが無為に終わったとしても、彼は諦めたくなかった。

 

 そして、世界に響き渡るほどに重く大きい金属音が鳴り響く。

 次いで、聞き逃してしまうほどに小さく軽い金属音が鳴った。

 

「――!」

 

 ドルモンはまだ生きていた。そんな彼が見たのは、自分の前に立つ金色。

 

「トゥエニスト!」

「おう、トゥエニストだぜ!」

 

 ああ、そこにいたのは“あの”トゥエニスト――剣のデジモン、デュランダモンだ。

 ドルモンたちは最後の最後まで剣の姿しか見られなかった彼だが、デジモンとしての姿でそこに立って、両腕の剣でもって蛇鉄封神丸を防いでいた。

 

「歴史を祝う盛大な祭りって聞いて来たぜ! 真のトゥエニストとして見逃せねぇからな!」

 

 楽しそうに、嬉しそうに、デュランダモンは言う。

 トゥエニスト(歴史を愛する者)として、このデジモンクロニクルの発動はそれこそ絶対に見逃せない光景だったのだろう。

 だが、一方で、タクティモン(歴史を否定する者)の機嫌は急降下の一途だ。

 

「また、貴様か……!」

「おう、またオレだ。アンタらにゃ負けねぇぞ」

 

 蛇鉄封神丸が音を立てて引かれ、タクティモンに構え直される。

 同じように、デュランダモンもその両腕を構え直した。

 

「ドルモン行け!」

「うん、ありがとう!」

 

 ドルモンは駆け出した。

 すぐさま、そんなドルモンに向けて蛇鉄封神丸が振り下ろされる。発生した黒の斬撃が切り這ってドルモンめがけて突き進んだ。

 

「させるかぁっ」

 

 その黒を、黄金が切り裂く。

 

「思い通りにはさせねぇぞ」

「某のすべきことは貴様を殺すことではない」

「だろうな。ってか、アンタ、オレに勝てる気なのか?」

「何?」

「確かにオレという剣はアンタの刀に負けた。けど、今度はどうかな? 振る者がいない剣は鈍ら以下、だっけ? 本当にそうかな」

 

 自信満々に、デュランダモンは笑う。

 タクティモンは「是非もなし」と呟いた。どのみち、デュランダモンを無視して逃げ行くドルモンを狙うことなど出来るはずもない。

 

「今度こそたった斬ってやろう」

 

 忌々しさを隠そうともしないタクティモンが蛇鉄封神丸を振るう。

 

「斬られるのはアンタさ。トゥエニストを舐めるなっ」

 

 凶暴に笑ってデュランダモンが両腕の剣を振るう。

 真の力を発揮していないLegend-Armsと、真の力を発揮している蛇鉄封神丸、両者がぶつかり合う。

 甲高い音金属音を世界に響かせ続け、黒と金の剣光を世界に輝かせ続け、両者は何度も交わる。

 

「はぁっ!」

「ふっ!」

 

 押しているのは、やはりタクティモンだ。

 押されているのは、やはりデュランダモンだ。

 それでも、勢いがあるのはデュランダモンの方だった。

 

「“無の太刀、六道輪廻”!」

 

 無数に放たれた斬撃がデュランダモンに襲いかかる。

 逃げ場を絶つように広域に飛んでいく斬撃だ。躱すことなど出来るはずもない。

 だからこそ、デュランダモンはそう選択する。

 躱せないのならば、斬るまで。

 

「“トロンメッサー”!」

 

 デュランダモンの全身は剣だ。足も、腕も、頭も、背も。だからこそ、回転するだけで全身による複数対象の斬撃が可能となる。

 ブーメランのように彼は己を回転させ、迫り来る無数の斬撃を逆に斬っていく。

 

「っ」

 

 斬り切れなかった分が僅かにダメージとなって蓄積するが、問題はない。まだデュランダモンは戦える。今度はデュランダモンの番だ。

 ブーメランのような彼はそのままタクティモンめがけて飛んでいく。

 

「ぬっ」

 

 タクティモンは蛇鉄封神丸を振るい、飛んできたデュランダモンを弾き飛ばした。

 上に弾かれるデュランダモン。だが、まだ()()()()()

 

「――!」

 

 デュランダモンは身体を捻り、即座に向きを反転。タクティモンに向かう。

 

「……!」

 

 タクティモンは蛇鉄封神丸を返し、即座に体勢を整える。デュランダモンを迎える。

 

「“ツヴァングレンツェ”!」

 

 デュランダモンの闘気が込められた両腕の剣が、

 

「蛇鉄封神丸――!」

 

 気合と共に振り抜かれたタクティモンの蛇鉄封神丸が、

 

「らぁっ!」

「はッ!」

 

 互いに交差する。

 耳障りな金属音。一瞬の拮抗。だが、それはすぐに終わる。

 金属の破砕音が響き渡った。黒が金を食い破る。蛇鉄封神丸がデュランダモンの両腕を斬り裂いた。

 やはり、真の力を発揮していないLegend-Armsでは真の力を発揮している蛇鉄封神丸には敵わない。

 

「っ――!」

 

 スローモーションになる光景の中、デュランダモンは悔しい思いが抑えきれなかった。

 伝説の剣として、最強の刀にまた負けたのだ。

 だが、

 

「勝負の勝ちは譲らねぇ!」

 

 デュランダモンはそこで終わらない。

 伝説の剣VS最強の刀の戦いは、確かに負けた。しかし、デュランダモンVSタクティモンの戦いは負けられない、と。

 デュランダモンは身体を回転させる。腕の剣はもうない。だが、それでも彼の身体は剣だ。

 

「“トロンメッサー”ッ!」

 

 回転したデュランダモンがタクティモンを襲う。

 タクティモンも当然、蛇鉄封神丸で対応するが――()()()()()()()

 蛇鉄封神丸はデュランダモンを弾き飛ばせず、その身体を両断するだけに留まった。普通ならば、それでも十分だ。

 だが、しかし、トロンメッサー中のデュランダモンは回転して勢いづいている。

 つまり、身体が両断されたところで、

 

「トゥエニストォオオオオオ!」

 

 回転の勢いはまだ生きている。

 デュランダモンの回転したままの身体がタクティモンの身体に突き刺さる。

 

「っぐぅ!」

 

 そして、タクティモンの身体は両断された。

 

 ********

 

 そして、光と共にデュランダモンは(再召喚され)る。

 一方で、泥からタクティモンも形作られ(再召喚され)る。

 

「引き分けか」

 

 湧き上がる感情を隠そうともせず、タクティモンが吐き捨てた。

 

「このぉ……!」

 

 同じように、デュランダモンも感情を隠そうともせずに力む。

 引き分けなど、認めない。互いに互いを認められない者同士として、剣と刀の戦いも、デジモンとしての勝負も、どちらも勝たなければ気が済まないのだ。どちらかだけ勝つ、どちらかが引き分ける、そんな中途半端は許せないのである。

 タクティモンはちらりと横目でドルモンの進んでいった方向を見る。その姿はもう何処にもなかった。今から即効で目の前のデュランダモンを片付け、ドルモンを追うのは非効率だ。故に、彼もオメガモンAlter-Sと同じ選択をする。

 すなわち、目の前の相手を潰すということ。

 

「斬る!」

「斬る!」

 

 そうして、タクティモンとデュランダモンは再び戦い始めた。

 

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