【完結】デジモンクロニクル――旧世界へ、シンセカイより。 作:行方不明
コータとドルガモンはティラノモン
あの後、どこからやって来たのかさらに数が増えて、結局両手で数えるくらいの相手と戦うことになってしまったのだ。
数十分かけて、息絶え絶えになりながら、コータたちは何とか最後の一体を倒し終えたのである。
ちなみに、メイクーモンは怖いのだろうか、最初の一体の死骸の影で隠れ続けていたりする。まぁ。それでいて、やはり申し訳なさがあったのだろう。隠れながらも石を投擲することで相手の気を逸らすという隠密攻撃をしてくれたのだから、割とありがたい役割をしてくれた。
「つっか、れたぁ……」
「コータぁ、早く移動しようぜー」
「にゃー……」
コータたちは疲れた身体を引きずって、移動していた。さすがにティラノモンの残骸の上で休む気にはなれない。いろいろと目立つし。
幸いにして近くに川が見えたから、そこへ向かうことにした。
「川、川かぁ。昨日のこともあるから、何だかなぁ」
「そう言うなよ。人間の世界の話だけど、川から流れてくるものにはいろいろと良いものがあるんだぞ」
「コータ、いろいろって何があるんだにゃ?」
「えっと、大きな桃とか……桃とか……もも、とか?」
言っておきながら、それしか思い浮かばなかったコータである。
「桃しかねーじゃんかっ」
「うるさい、他にももっと――」
ドルガモンのツッコミに、コータは必死に頭を働かせる、と。
「あっ、本当に桃が流れてきてるにゃ!」
メイクーモンが川を指さして叫んだ。
見れば、ピンク色の丸い物体と白色のちょっとてっぺんが尖り気味の丸い物体が川をどんぶらこっこどんぶらこっこと流れていた。
「……まじか」
「マジだな。採ってみようぜ、コータ! メイクーモン!」
「にゃっ!」
呆然としているコータを差し置いて、ドルガモンとメイクーモンは川へとダッシュ。
そして、川を流れている桃を収穫する――。
「アウゥウ……」
「はぇええ……」
なんとその桃はデジモンだった!
いや、ドルガモンとメイクーモンはともかくとして、コータはそんな気がしていたのだが。
見れば、ボコモンとトコモンである。
「おい、大丈夫かー?」
ドルガモンがツンツンとつつき、起こそうと試みる。
「にゃー……」
一方で、トコモンたちがX抗体持ちでないことに気づいたメイクーモンは、コータの後ろに恐る恐る隠れた。
そして、ついに彼らが目を覚ます。
「アウ? アウ!」
「ほにゃにゃ……むっ。どこはそこ、誰は私!」
「……」
まぁ、起きてすぐふざけられるくらいには、トコモンもボコモンも元気そうだった。
「いやぁ、助かった助かった!」
「アウ!」
そして、数分後。
コータたちはトコモンたちと自己紹介を交わしていた。
「どうして川を流れてたんだ?」
「ふむ、コータよ。それがな、爆発で吹っ飛ばされてな。いやぁ、落ちた先が川で助かったわい!」
「アウ!」
最後まで一緒にいた
薄情だと非難するべきか、死を理解していないのだと哀れむべきか、大物だと呆れるべきか。
「それで、そちらは?」
ボコモンが聞いたのは、未だコータの後ろに隠れているメイクーモンである。
聞かれて、そろりとメイクーモンは僅かに顔を覗かせる。
瞬間、ボコモンとトコモンの顔が険しくなる――!
「っ、おい!」
もしかして、とコータが怒鳴った。
すると、ボコモンたちはハッとして正気を取り戻したかのように首を振って、ぎこちなく笑った。
「いやぁ、すまんすまん」
「アウ……」
「ふむ、聞いたことも見たこともないデジモンじゃのー。どれ」
ボコモンはその胴体の腹巻から、本を取り出した。そこそこ大きい本だ。というか、どうやって入れていたのだろうか、と気になるサイズだった。
「ふむ、ふむ……」
ボコモンは取り出したその本のページをペラペラと捲る。
「何だ、それ?」気になったドルガモンが背後からその本を覗き見る、と。
「見ちゃ行かんっ」
ボコモンは焦ったように本を閉じ、隠した。
「これはデジタルワールドのことが詳しく書かれている“もの知りブック”、誰にも見せられん!」
「なんだよー。ケチー」
「ケチと言われてもダメじゃっ」
どうやってもボコモンはその本を見せようとしないので、先にドルガモンが根を上げた。ドルガモンがようやく諦めたのを見て、ボコモンは再び本を開く。
「ふむふむ、なるほどなるほど。成熟期デジモンのメイクーモンのぅ」
「にゃっ」
「お前さんが何を危惧しているのかはわかった。そして、それは正しい。が、わしとこのトコモンだけは特別じゃ」
それはつまり、ボコモンとトコモンはX抗体を持っていないのに、メイクーモンを襲わないということだ。
その言葉に安心したように、メイクーモンがコータの後ろから恐る恐る出てくる。だが、その顔にはやはり不安があって、ほんの少しの疑問もあった。
「ちょっと待っておれ。いくぞ」
「アウッ!」
メイクーモンが何かを言うよりも早く、ボコモンとトコモンは川へと向かう。誰もが彼らの行動に口を開けて呆然としていると――ボコモンたちは、川に手を入れた。
そして、手を洗い始めた。
「よし、次は口じゃ。ガラガラガラ……ぺっ」
「アウ! アウアウアウアウアアウ……ウッ!」
さらに、うがいまでした。
「……」
「これで大丈夫じゃ!」
「アウ!」
自信満々に、ボコモンたちはメイクーモンの前に立つ。
一方で、メイクーモンは暗い顔――具体的に言えば、騙されたと思っている顔だが、そんな顔で彼らを見ていた。
「なんにゃ?」
「“もの知りブック”にはこう書いてあった。すなわち、手洗いうがいが予防の一歩! わしらはそうすればいい、と!」
「アウ!」
力強く答えるボコモンとトコモン。
メイクーモンは「にゃっにゃっ、にゃっ」と壊れたように笑った。コータとドルガモンはそっと距離を取る。
そして、メイクーモンはボコモンに近づき――。
「ひーどーいーにゃー!」
「あがががががが」
メイクーモンはボコモンを抱えて、まるでシェイカーのように思いっきり振り始めた。
「ニーは病原菌じゃないにゃー!」
「そそそううううわわわいいいいってってててもももももも」
「アウー……アウアウ」
トコモンがやれやれとばかりに首を振った。
「うっうっ。ひどいにゃぁ……」
「手洗いうがいは基本じゃぞ!?」
「そんなの知らないにゃーっ」
「勝手にそれ以上のことが分かると勘違いしたのはそっちじゃろう! なんでここまでガッカリされないといけんのじゃー!」
ボコモンは涙ながらに叫ぶ。
ちなみに、二人以外はもはやどうでもいいとばかりに少し外れたところで戯れていた。
********
そんなこんな、で。
旅は道連れとばかりに、コータたち一行にボコモンとトコモンが追加されることになっていた。
「別にいいけどさ」
まぁ、コータたちとしても殺伐とした時代の中で、こういった殺伐としない仲間が増えるのはありがたい。コータたちは別に戦闘狂でも修羅でもないのだから。
「人間との冒険! 心躍るのう!」
「アウアウ」
「殺伐としすぎてるけどなー」今までを思い返したのか、ドルガモンが思い起こしたように呟いた。
まぁ、事実である。
御伽噺のような冒険譚を夢見るボコモンには悪いが、コータたちの旅路はほとんど殺伐オア殺伐なもの。ちょっと油断すれば、
「見つけたァああああっ! X抗体、よこせぇええええ!」
すぐにこうして誰かしらに襲われる旅だ。
現れたのは、
彼らは誰もが通常デジモンで、やはりX抗体が欲しいのだろう。となれば、狙いはドルガモンだ。
「“パワーメタル”!」
「ぐはっ」
開幕、鉄球がオーガモンの腹にのめり込む。
オーガモンは腹を抱えてうずくまった。耐えた辺りそこそこ強いのだろうが、まぁ、ドルガモンには関係ない。
「おらぁっ、“パワーメタル”!」
二発目がオーガモンの頭をぶち抜く。
もはやそれだけでオーガモンは息絶え絶え、このリーダー格を落とそうとする鮮やかな手口にゴブリモンたちもどうしたらいいのかわからず、オロオロしている。
「あれ、どうなのかのー」
「まぁ、うん。間違ってはいない……けど、まぁ、うん」
「アアウ」
「にゃー……」
コータたちは呆れたようにドルガモンを見る。
まぁ、確かに襲われたのを返り討ちにしているだけで、別に卑怯なことも何もしていない。ちょっと実力と頭に差があって、見苦しい戦いになっているだけだ。
「うぐぐ、このぉおおおおお! どいつもこいつもぉおおおおおおおおお!」
「あ、立ち上がった。すげぇ」思わず、コータが呟いた。
オーガモンはドルガモンの攻撃を二度も無防備に受けておきながら、それでも立ち上がったのだ。そりゃあ、外野は感嘆する。内野としてはうんざりするだろうが。
「ぬ、おぉおおおおおおおお!」
「――!」
「……!」
「かかか!」
「るぁああ!」
まるで理性をなくしたようにオーガモンたちは震え叫ぶ。
嫌な予感を、その場の全員が抱いた。
「――!」
統率を失ったただの獣たちが、勢いのままに一斉に駆ける。そこにはX抗体を狙うという意思さえ感じられなくて。
「にゃぁぁぁぁー……」メイクーモンが頭を抱えて弱々しく鳴いた。
結局、ドルガモンが頑張ることになる。
ボコモンとトコモンの応援を背に受けて、コータとメイクーモンの補助をもらい、彼は喉がガラガラに痛くなるまで鉄球を吐き出し続けたのだった。
話の展開が遅いですね、はい。
短くまとめる能力がないからですね、はい。
申し訳ないです、精進します。はい。
一応、もう少ししたらドン引くくらい早くなっている、と思います。いや、個人の主観なんで何とも言えませんが。
あ、推敲とか校正とかの手間のせいで更新してないだけで、今は一章のラスボス戦辺りを書いていますのでストックはばっちりです。
それでは、次回もよろしかったらよろしくお願いします。