ダンジョン転生   作:ppが足りない

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隔日投稿しようとしてたらお気に入りが4件に増えていたので投稿しました(語録無視)



第三話

 

 

 

 

「これから……どうする……」

 

 

壁に背中を預けながら脚と腕を投げ出して座り込む。

透明な木から出てくる甘い液体を飲んでいたら体に力が入るようになってきた。

けれど減った体力は戻らなかったから今は体を休ませる事に集中しよう。

 

 

「っ!」

 

 

落ち着いてきたからか痛みがぶり返してくる。

左足は感覚すら感じなくなっている。

もう動かす事も出来そうにない。

痛みを堪えながら周りを見渡してみて気づいた事があった。

ここが部屋のような形になっていて、中心に透明な木が生えている事。

木の下は窪みになっていてクレーターみたいになっている事。

部屋の大きさはけっこう大きくてミノタウロスが10体くらい横に並べる位の長さがある正方形のような形になっている事。

 

 

「多分……ここは食事場。なら……いずれここにも……」

 

 

アイツらがやって来る。

それも確実に。

今の状態で逃げれるのか。

答えは……否。

 

 

「どうする……」

 

 

このままここにいたらいずれ死ぬ。

それも今すぐにでもおかしくない状況。

そんな中で出来る事といったら……

 

 

「考えろ……考えろ……」

 

 

今まで出会ってきたモンスターは全てその体に合った何かしらの特性があった。

その見た目で出来る事は出来ていた筈だ。

だったら……私にも何か出来る筈だ。

 

 

「……」

 

 

自分の体を見つめてみる。

ゴツゴツした鋭利な手。

頭をすっぽり覆える程の大きさの手は黒く染まっていて地脈の様に赤い筋が拡がっている。

指は鋭利に尖っていてその長い爪も相まってまるで刃物の様な印象を受ける。

それは足も同様に。

 

 

「……動く」

 

 

背中に力を入れれば蝙蝠の様な羽はバサバサと動き音を立てる。

しかし一向に飛ぶ気配はなくて、今は只の邪魔者になってる。

飛べさえすればこの高さだ。

逃げ切れる事も難しくないのに……

 

 

「この頭の角は……何もないか……」

 

 

頭の角は二本あって根元が三角形の形をした部分から先に向かってとんがっている。

赤い筋が見える所からこれも手と足と同じ様になっている事が想像つく。

 

 

「あとは尻尾だけ……」

 

 

背中から生えている尻尾は同じ様に黒く赤い筋が走っている。

根元は腰辺りから生えていて背中の半分を締める位太い。

お腹を一周出来る位の長さがあって、鎧のように硬いものが層になって重なっている。

そのお陰か硬さの割りには柔軟に動かせる。

 

 

「そういえば……手と足と尻尾は……傷つかなかった……」

 

 

足の黒い所は脹脛の半分より下辺りから染まり始めている。

焼け爛れた所片足もそこだけは無傷だ。

 

 

「これは……武器に出来るかも……」

 

 

身体の状況は確認できた。

でも、足りない。

これだけじゃ足りない。

武器に出来るものが見つかっても逃げる事が出来なかったら意味が無い。

 

 

私が探索している時に見た。

ミノタウロスがあの火を吐くモンスターを切り刻んでいる所を。

私の片足を奪ったモンスターを簡単そうに屠っている所を。

戦える手段が見つかってもあんな奴に見つかったら……

 

 

「……」

 

 

今私が見つけるべきは戦う手段じゃない。

戦いを避けれる手段なんだ。

逃げれるだけの速さが欲しい。

それが駄目ならどこか隠れられる場所を探さないと……

 

 

「このままじゃいけない……」

 

 

取り敢えずここから逃げないと……

ここにいたらいずれモンスターが来る。

この逃げ場のない空間にいたらいけない。

 

 

「うぐっ……あ、あぁっ!……はぁ、はぁ……」

 

 

震える足を堪えて立ち上がる。

その際に壁についた腕が悲鳴を上げた。

見てみれば赤く腫れ上がっている。

思い返してみればモンスターに噛まれた時に何かが折れるような音が聞こえた気がする。

恐らく腕の骨にヒビが入ってるか、もしくは折れている。

 

 

「うぅっ……」

 

 

一歩、また一歩と足を動かす。

本当は立ち止まっていたい。

こんな苦しみを味わいながらすぐ目の前に広がる死から目を逸らして生きていく苦痛に耐えられない。

もう死んでもいいから楽になりたい。

苦しいのはもう嫌だ。

なのに、なんで……どうして……

 

 

「私は……生きようとしてる……?」

 

 

……もっと私に……力があれば……

ただ、生きていけるだけの力さえあれば……

こんな事にはならなかったのに……

 

 

生きたい……

 

 

ただ……生きたいだけなのに……

 

 

どうして………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………え……」

 

 

 

 

何かがすり抜ける様な感覚。

まるで空気を掴むかのような感覚が壁についていた左腕を襲う。

何かがおかしい。

だって、私は腕を曲げて壁についていた筈だ。

なのに、なんで……腕を伸ばしている?

 

 

「……え?」

 

 

顔を向けた先。

そこには非現実的な現象が起こっていた。

 

 

 

『……ドシン』

 

「え?」

 

『……ドシンドシン』

 

 

何か重たいものが地面を揺らす音が聞こえてくる。

それはどんどんと大きくなっていき近づいて来ている。

 

 

「……あ」

 

 

ふと透明な木の方を見ればあの窪んだ場所。

木の真下から拡がっている場所にいつの間にか水溜りが出来上がっていた。

どこか夢を見ているような頭の中であの窪みは木から出た蜜が溜まる為の場所なんだとなと漠然と思考している。

そして、それを目当てにこうやってモンスターが集まってくるという事も。

 

 

『ドシンドシンドシン!!!』

 

 

あぁ、音はもう目の前にある。

案外すぐだったな。

こうやって死はあっけなくやって来るものなんだ。

 

 

『ヴモオオオオオオオオオ!!!!!』

 

 

壁に手を引っ掛け部屋の中に顔を出したのは私が最初に、そして最後に見る事になるモンスター。

 

頭から生えている角は雄々しく、その筋骨隆々な体ははち切れそうな程に膨らんでいる。

その赤い目は爛々と輝き、目の前を見据えている。

毛皮に包まれた肌や、その見た目はどこか牛を想像させる。

まぁ、二足歩行の牛などどこにいっても存在しないだろうが。

 

 

そんな怪物。

ミノタウロスは透明な木を見つめている。

いや、透明な木越しにこの弱者を見つめていた。

 

 

『ヴモオオ……』

 

 

足音を響かせながらこちらに近寄ってくる。

その巨体は距離など関係ないとばかりに一瞬で木を超えて目の前にまで近寄って来た。

私とミノタウロスとの距離は目と鼻の先。

ゆっくりとその手に持つ鉈を振りかぶる。

それをただじっと見つめる。

今か今かと振り下ろされるその時を待って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは偶然だったのかもしれない。

けれど、その偶然が、思考を停止していた私の命を救ったのだとしたら、私はその偶然に感謝しなくてはいけないだろう。

 

ただ、ただ今は感謝しよう。

この偶然というものを送ってくれた神様に。

ありがとうございますと。

心の底から。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見えたのは灰色だった。

 

性格には今まで見ていた世界。

 

 

中心に透明な木が生えていて、その真下には窪みがある。

その窪みには今は透明な液体が溜まっている。

地面も壁も天井も岩で覆われていてまるで洞窟の中のよう。

ただ今までと違うのはミノタウロスがこの世界にはいないこと。

 

 

ただ全てが灰色のこの世界で私が出てきた所はまるで全てを飲み込む闇のように黒く染まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




お気に入りなんて空想上のものだと思ってました(夢淫夢)
ありがとナス!
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