「上に戻る?」
向こうで話している人間共。
話してる内容を聞いてみる限り人間共が暮らしているのはこの上にある様だ。
他にも重要な事を話していた。
魔石に回収義務……恐らくさっきのモンスターを殺した時に出てきたものだろうな。
回収義務という言葉からこいつらの所属している集団があるのか、もしくは総元締めが存在していてそいつらから命令でもされてるのか、他に何かあるのかもしれないがまぁ、そんなものだろうな。
「……恐らくそこまで強くはないだろうが」
あのミノタウロスを屠った人間共を見た時は分からなかったが、危機感を感じたお陰か観察する事でそいつらの強さが何となく分かるようになった。
あの四人組は今にして思えば脅威的な強さを持っていた。
何故アソコまでの強さを感じる事が出来なかったのか不思議でならない。
……だが、こいつらは……
「……」
一人一人が強く三人で襲いかかられたら確実に負けるし一人でも無理だろう。
しかし不意をつけば……何とかはなる。
「ふんふふーん……ッ!」
一番近くにいた女の顔を手で抑える。
急な事に驚いているのか硬直している。これはチャンスだな。
前の二人がこちらを見ていない内に影に入り込む。
と、同時に暴れ出した女の腹を殴って気絶させる。
あとはこちらのものだ。
コイツが起きたら粗方聞き出してやろう。
「で、教えろ。地上に出るにはどうしたらいい?」
「……な、んで、教えなきゃなんない……のよ!」
相変わらず抑え込まれてて逃げ出せない。
聞きたいだけだとか言っているけどこの状況あからさまにそんな事ないじゃない!
なんで抑える必要があるのよ!
普通に聞けばいいだけでしょ!?
それに地上に出る方法ってあんたどうやってここまで来たのよ!
ダンジョンに来たんだったら帰る方法だって…………いや、そんな事って……でも……まさか……
「聞かせて、貴方は……人じゃないの?その手みたいなのも脚も……作り物じゃなくて?」
「?人じゃない?……あぁ、やっぱりお前らは人間だったのか。お前達が私の様なものをなんと呼ぶのかは知らないが、そうだな、モンスターとでも名乗ろうか」
「ッ!!!」
モンスター!?人じゃない!?
そんな事って……じゃあ人の言葉を話すモンスターだとでも言うの!?
そんなの信じられるわけない!
でも……くっ、姿さえ……姿さえ見る事が出来たら……モンスターって名乗ってる人の可能性もあるし、でも否定しきれない……
何なのよコイツは……
もしコイツの言ってる事が本当なのだったとしても……
「教えられる訳……ないじゃない……」
「なに?」
「だって……そうでしょ?貴方が仮にモンスターなのだとしても、地上に出る方法を知らない貴方に教えたら人を裏切ってモンスターの手助けをした事になる……そんな事出来る訳ないでしょ」
「……それもそうだな」
……理解した。
私の言い分を理解するだけの知能はあるという事……ますますモンスターだなんて信じられなくなる……闇派閥か?それならこんな事するのも納得はいくけど……一体何の為に……?
「なら、いい……他の二人に聞くことにしよう……」
「他の二人もきっと話さないわよ。こんな状況。おいそれと口にする訳が無いわ」
「さぁ、それはどうだろうな?まぁ、取り敢えず二人相手にするのは面倒だ。本当はするつもりはなかったが……殺そう」
「……え?」
今……なんて言ったの?
殺す?……そんな、そんな事って……
「は、離してよ!!」
「暴れるな」
「聞くだけって言ったじゃない!殺すなんて聞いてない!さっさと離せ!」
「離すわけないだろう?お前は馬鹿か?」
「っ、この……今すぐ振りほどいて逆にアンタを殺してやるわ」
「それが出来たらもう私は殺されているだろうな」
「っ、この……」
どうするどうするどうする?
コイツの言ってる事は本当だ。
コイツが殺すと言った時に何も躊躇は感じなかった……きっとコイツは私を殺すだろう。
そしてその後に二人も捕まえて答えなかったら殺す……
「…………答えたら……」
「ん?」
「貴方の質問に答えたら……生かして帰すと約束する?」
「あぁ、そうしよう。ただし、質問はこれだけじゃない。ただ、難しい質問はしないつもりだ。聞くのは基本的な事だけだからな」
「……分かったわ。質問に答える」
……こうするしかないじゃない……もう、どうしようというのよ……
「あぁ、十分だ。ありがとう。聞きたいことは聞けた」
「……殺すとか言ってた癖に感謝は言えるのね」
「当たり前だろう?まだそこら辺の常識は残っているつもりだ」
「?じゃあ……離してくれないかしら?早く戻して」
「あぁ、そうしよう」
本当に帰すつもりの様だ。
私の腕を掴んでいる手が少し緩んでいる。
背中と頭を抑えている脚も…………今だ!
「あぁ、言っておくが私を見ようとしても無駄だ。お前は起き上がる事はないからな。安心するといい」
「え?」
言葉と同時。
私の身体は地面に吸い込まれるように落下した。
「…………は?」
どういう……事?
今確かに私の身体は……
「あ!ミア!お前何してるんだよ!こんな所で!」
「え?あ、ミア!さっきまでいなかったのに……それとどうして寝ているの?」
「え?あ……私……どうして……」
「どうしてもこうしてもないだろう!今までどこ行ってたんだ!」
起き上がって二人を見る。
二人ともどこにも異常なんてなくてさっきのまま……やっぱり私はここじゃないどこかに連れてかれていて……でも、言葉通りなら私はこの場に寝ていた……場所は変わってない?……ダメだ……意味が分からない。
さっきまでのは全て夢?
いや、そんな訳ない……あれが夢だったなんて……それこそ信じられない……
「聞いてるのか?ミア」
「え、えぇ……大丈夫よ。聞いてるわ」
「なら今までどこにいたんだ?」
「それは…………私にも分からないわ。気付いたらここに寝ていて……」
「なんだそれ?……はぁ、まぁいいや。兎に角戻ろう。怪我は……ないようだし、今日の事は神様に聞いてみよう。何かわかるかも知れない」
「えぇ、そうするわ。心配かけたわね」
「本当よ!心配したんだから!」
……まだこの二人には言えない。
あんな事私でも信じられないんだから……
神様には……嘘を付いてるのはバレると思うけど……その時はその時ね……後で考えましょう。
今はもう……疲れたわ……
「迷宮都市オラリオ……ここはダンジョンで一階層から始まり確認出来ているのは五十九階層まで……地上には神が降り立ち恩恵を貰い人間は力を得る。レベルがあり、今の最高レベルは7……金髪の剣士と褐色の二人はレベル5でもう一人は3……さっきの三人はレベル2……ミノタウロスはレベル2……か」
あのミノタウロスでレベル2……レベル5ともなれば……通りで強い訳だ。
しかしあの人間は同じレベル2にしてはそこまで強く感じなかった。
杖を持っていたから近接タイプじゃなかったのか?
それにしても……モンスターと人間では同じレベルでも同じ強さという訳じゃないのか……?
「ここは十五階層……地上に出るにはあと十四階層ある……けど、深くなる程にモンスターが強くなるという事は浅い程弱いという事……なら、いけるか?」
今日中にダンジョンを出れるか……辞めておこう。
またあの様な強い人間に出会う可能性がある。
あの人間でレベル2だ。
下から二つ目のレベル2であの強さ。
上にはあと5つある。
今の私が行っても殺されるだけだ。
なら……今の内に少しでも強くならなければいけない……
「魔石を食べて強くなる個体がいる」
確かにあの人間はそう言っていた。
モンスターを殺して出てくるのが魔石で、私もモンスターの一つなのだとしたらそれを食えば私も強くなれるのではないか?
試してみる価値は……ある。
「私は早く地上に出たい。あの人間を抑えられる強さがあるのだとしたら私は1と2の間くらいか……せめてミノタウロスを殺せる程までには強くなっていたい」
暫くはここでモンスターを殺して魔石を食って強くなろう。
それが出来なかったら……強くなるのは諦めて地上に出る。
そこで私は殺されるかもしれない……けど、地上に出て殺されるのなら……それでもいい。
「ヘルハウンド……か」
口から火を吹くモンスター。
さっきは不意をついて殺したが……何故だろうな。
今はコイツをすぐに殺せそうな気がする。
『ガアッ!』
犬型のモンスターが口から火を吹く。
が、その時にはもう目の前には誰もいない。
敵が何処に行ったのか……周りを首を振ることで探し出そうとしているモンスターの上から黒い影が落ちてきたのに気付くことなく、二度と意識が戻る事はなかった。
「この層は……影が多くて楽だ。時間をかけずに出入りすれば……隙をつける」
灰になったモンスターからコロンと石が転がり落ちる。
薄く輝く石。これがモンスターからドロップする魔石。
「頂きます」
無造作にその魔石を拾い口に含む。
噛み砕けそうにないからそのまま飲み込む。
「あぁ、なるほどな……」
そこから移動する。
目標は……手頃なモンスター共。
「アルミラージか」
目の前に出てきたのは兎型のモンスター。
名はアルミラージ、数は……5匹か……
前会った時は敵とすら思われなかったのかその角を使う事すらなく噛み付いてきた。
けど今は……5匹とも唸り声をあげて角を向けてくる。
今の私はあの時よりも強いということか、それとも……
「まぁ、いい。今はそんな事より……なぁ、アルミラージ」
「モンスターを何匹殺して食えば……ミノタウロスを殺せるんだ?」
10400円課金して旧チノ1枚新チノ1枚リゼ3枚……まま、ええわ