さて、一人目は誰がこの箱を奪おうとするのでしょうか。
さて、一人目はある貴族の男が、その玉手箱を開けようとした。
男は全ての物を手に入れたいという野望を持っていた。豪邸に住み、世界中の美女を侍らせ、装飾品に囲まれながら、人々をこき使い、思うがまま気の向くままに生活し、そして政治を司り、富と権力を我が物にしようとしていた。
貴族の男は、玉手箱の噂をききつけ、早速使者を出し、どうすれば箱の中にある金銀財宝手にすることができるのか調査をするように命じた。
「ご主人様、ルルダの玉手箱には、金貨や銀貨、宝石、不老不死の媚薬などが入っているようでございます。この箱を手にすれば、一生楽に暮らせ、各国の美女を娶ることができます。」
使者はそう伝えると、貴族の男は尋ねた。
「それでは、どうやってその玉手箱を手にすればよいのだ」
使者は跪いたまま答えた。
「はい、ご主人様。その玉手箱を開けられるのは、一点の汚れのない心を持つ者だけにございます」
貴族の男は目を剥いて立ち上がった。
「なんじゃと?汚れとはいかばかりか」
使者の男は、目を伏せたまま答えた。
「それは、純粋無垢な心、私利私欲に溺れていない心にございます。」
貴族の男は唇を噛むと、声を振るわせた。
「それでは、わしにどうしろというのじゃ。何をすればよいのだ?」
使者は言葉を詰まらせながら、小声で話し始めた。
「・・・・貧しい者に寄付を施すなど、奉仕の活動を行いださいませ。また、人に親切にし、ただし見返りを求めてはいけません。困っている者がいれば、すぐに助けに行き、救ってあげなければいけません」
貴族の男は腕組みをしながら考え、こう答えた。
「では、貧しい者を探し出し、蔵にある食糧を与えよ。病気の者がいれば、薬を届け、年寄り子供には暖かい布団を届けよ」
使者は居住まいを正し返事をした。
「御意。すぐにそのように致します」
使者の男は、人を集め貴族の蔵から食糧を貧しい人々に施し、調剤師には病人へ薬を届けるよう手配をし、お年寄りや小さい子供のいる家に新品の布団を届けるよう注文した。
数ヶ月後、貴族の家には続々とお礼の手紙が届いた。
貴族の男は大声で笑いながら
「どうじゃ。わしの功績が皆にたたえられておる。これで、わしはルルダの玉手箱を手にすることができるのじゃ。おい、すぐに馬を出せ」
貴族の男と使者は、一番若い馬に乗り、ルルダへと向かった。川沿いに馬を走らせると大きな岩が二つあり、その間を抜けて行くと奥に洞窟がある。そこに玉手箱があるという。
馬を岩の後ろに待機させ、貴族の男と使者は岩の間を通り、洞窟の中に入っていった。松明(たいまつ)で、闇を照らし、奥へと進んだ。
しばらく行くと、なにか四角い岩の様なものが見えた。松明で照らすと、そこには宝箱と思われる箱があった。
「これに間違いないか」
貴族の男は使者に確かめた。
「はい、大きな二つ岩の奥にある洞窟でございますので、間違いございません」
使者は答えた。
貴族の男は、箱に近づき、蓋に手を載せた。ギィイイという音を立てながら、玉手箱の蓋が開く。すると、まぶしくて瞬き出来ない程の、金銀財宝と媚薬がぎっしり詰まっていた。
「これだ!これぞ、不老不死と永遠の富となる財宝じゃ!わしは世界を手にしたのじゃ!さあ、袋にこれらをすぐに詰めるのじゃ」
使者は言われるまま、持参した革袋に玉手箱の中身を詰め込んだ。持ってきた5つの袋にちょうど収まり、それらを貴族の男と使者の男で、馬につけて家に戻ろうとした。
すると、岩の間から天女が現れた。
「おたずね申す。そなたはそれらの品を持ち帰られるのですか?」
「そうだ。わしは貧しいものに施し、病人を助け、年寄り子供を救ったのだ。だから、これを持ち帰る権利がある」
貴族の男は答えた。
「それでは、その袋の中身を私にいただけますか?私の家族は飢えて今にも死にそうなのです。それらがあれば、すぐにでも助かるでしょう」
天女は貴族の男に問うた。
すると貴族の男は
「家族ならこのぐらいあればいいだろう」
と、袋の中から金貨5枚を取りだし、天女に差し出した。
その瞬間、岩の下から赤い煙が立ちこめ、あたり一面が真っ赤に染まった。
「な、なんだ!!!なにが起こったんだ!」
しばらくして、貴族の男があたりを見回すと、天女の姿は消えてなくなっていた。また、使者の男もどこにも見あたらなかった。
「仕方ない、一人で運ぶとするか。」男は、馬2頭に袋をくくりつけ、それらと共に家路についた。
少し前に世界中の美女へ招待状を送っていたため、数日後には彼女たちが到着する予定だ。貴族の男は、召使いにごちそうを用意させ、美女達を待ちわびていた。
すると、家の前には人並みが押し寄せている。ドアを開けると老婆が列をなして待っていた。
「な、なんじゃ。これはどういうことじゃ」
貴族の男は狼狽した。
すると、一人の老婆がこう言った。
「私達は、あなたが送られた招待状をみて、はせ参じたのでございます。」
「な、なんじゃと!わしはそなたのような年寄りを呼んだ覚えはない!」
老婆は答えた。
「ご主人様、お鏡をご覧下さい。あなた様も老翁なのでございます」
貴族の男はすぐに鏡を取り出すと自分の顔をみて愕然とした。そこには獣の様な醜いしわだらけの男の顔が写っていた。
別の老婆がこう言った。
「あなた様は、ルルダの岩で全ての財を捨てることができるかと問われ、それを全うせず財宝を持ち帰ろうとなさいました。あの玉手箱は、一点の汚れのない心の者だけ、手にすることができるのでございます。あなた様は、貧しい者や病人に寄贈をしましたが、汚れた心のままで、行為だけを行ったのでございます。あなた様は、この姿のまま永遠に生き続けるのでございます。」
貴族の男は悲しみにむせび、一晩中泣き叫んでいた。
煙が出てきて老人になっちゃうって、浦島太郎か!ってつっこみ入りそうですけど、(金の斧、銀の斧も入ってなあい?)まあ、良いことをしたとしても、心が汚くちゃだめよん、ってことを伝えたいのでございます。
人はだませても、神様はだませませんからネ。
二人目は女性がこの箱を開けようとします。