呪いの玉手箱【完】   作:coltysolty

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次にルルダの玉手箱を開けようとしたのは、街に潜む一人の女。


二人目:街の女

町はずれに住む、娼婦を生業(なりわい)としている女がいた。その女は業界ではトップの座に君臨し、来る日も来る日も多くの客をあしらっていた。

 

なによりのごちそうは、人から常に注目されていることだった。自分の立場を揺るがす存在が現れると、時・手段を選ばず、それらをけ落とし、女王の座を守り抜いていた。女という生き物は、自分が守りたい事に関しては貪欲になれるものらしい。

 

男なら一度は透明人間になりたいと思ったことがあるのではないだろうか。女風呂に侵入してみたくなったり、更衣室であったり。人知れず女体のあらわな姿を見物してみたいと思うのが、男の本性だ。女性であっても、自分の姿を現さず、気になることをそっと覗いてみたい衝動に駆られることもあるやもしれぬ。

 

ところが街の娼婦の場合は、自分がみえない存在になることがなによりも怖かった。そこに自分がいるのだという、存在意義が見いだせなければ、気が狂いそうになるほどもがきくるしんだ。

 

いかにして、世界中の男が自分に注目するか。そればかりを考えていた。

 

ある時、客の一人がルルダの玉手箱の話をその女にした。金銀財宝の他に、自分の思い通りにさせることができる秘薬も入っているらしい。女は興味を示し、玉手箱の入手方法を客から聞き出した。

 

一点の曇りも汚れもない心の持ち主だけが、その玉手箱を安全に開き、中身を手にすることができるのだと。

 

女は客の男から、ルルダの場所を聞き出し、移動手段を考えた。女は馬に乗ることができない。ルルダにたどり着くまでには道のりがある。どうやったら、目的地にたどりつくことができるか。

 

そこで客の中に、馬術を得意とする男がいたので、その男を利用しようと考えた。その客がきた日に、早速提案をしてみることにした。

 

「ねえ、旦那さん。馬に乗せてくださらない?あるところまで連れて行っていただきたいの。もし、お願いをきいてくれるなら、2回の来場分は、ロハにして差し上げるわ」

男は娼婦の条件をのんだ。

 

約束の日に、街の娼婦と馬術師は待ち合わせの場所から馬に乗ってルルダに向かった。かなり遠い道のりだったが、自分の願いが叶うなら、馬の振動からくる股ズレの痛みも我慢できた。

 

ルルダに到着すると、大きな岩の手前で馬がいなないた。これ以上馬は進めない。馬術師と娼婦は徒歩で、岩の間を進み、洞窟までたどり着いた。

 

「足場が悪いから、気を付けて歩きなさい」

馬術師の男は街の娼婦を促した。

 

足下に気を付けてゆっくり進むと、奥にはなにか大きな固まりがあるように見えた。

 

「あ!あれじゃなくって?あの大きな箱のようなものが、宝の箱ではないのかしら?」

興奮して女は声を高めて言った。

 

「ただし、安全に開くためには、条件があるのです。」

男は言った。

 

「あら、悪いことをしてなければ、よいのでしょう?」

女は、少々イラだって問いかけた。

 

「いいえ、行いだけではいけない。心がきれいでなければ、この箱の中身を手にすることはできないのです」

女は、更に語気を強めて言った。

 

「あたしは、仲間の世話を十分にしているし、仕事だって一生懸命やっているわ。来るお客様に喜んでいただけるよう、誠心誠意を尽くしているわ。だから高級娼婦の称号を得ることができたのよ」

男は黙って女の目を見ていた。

 

「とにかく、あたしはこの中に入っている宝を手に入れなければいけないのよ。さっさと、開けるのを手伝ってくださらない?」

男は大きくため息をつくと、玉手箱をあけるのを手伝った。

 

重い蓋を開けると、中には眩く輝いているたくさんの宝石とガラスの瓶が入っていた。

 

「これね!これが秘薬なのね!これさえあれば、世界中の男達はあたしに注目するのね!」

 

街の娼婦は喜びいさんで玉手箱の中身をスカーフに包み、馬術師の男と共に街に戻ってきた。

 

翌日、街の娼婦は、同じ場所で働く女達に薬をふりかけたパンを配って歩いた。

「さあ、これを食べて。特別なパンなのよ」

 

娼婦の目的は、客のすべてが他の女達の方を向かないようにすること。それを念じながら薬を振りかけた。また、来る客達にもパンを施し、自分だけを注目するようにと願いを込めた。

 

「これですべては、あたしの思う通り。どんな男も、あたしに注目するわ」

 

街の娼婦は、喜んで市場に買い物に出かけた。

「ねえ、このリンゴおいくら?」

 

娼婦が尋ねると、八百屋の主人はクビをかしげた。

「はて、どこかで女の声がしたようだが、姿は見えぬ。わしもボケてきたのかのう」

 

娼婦はもう一度話しかけてみた。

「あたしはここにいるでしょ?旦那さん、リンゴくださいよ」

 

八百屋の主人は、気味が悪くなり奥にひっこんだ。

「かあちゃん、おいらに気付け薬をくれ。仕事しすぎて幻聴をきいちまうみてえだ」

 

娼婦の女は何が起こったのかわからなかった。おかしいと思いながら、とぼとぼ歩いていると、客の一人とすれ違った。

(あ、タンゴのマスターだわ)

 

「ごきげんよう!マスター。次回のタンゴフェスティバルはいつ?」

アルゼンチンタンゴのプロダンサーであるその男は、辺りをきょろきょろ見回した。

 

「はて?今、女の声がしたようだが。ダンスフェスが近いから、僕も少し神経質になっているのかもしれない」

そうつぶやくと、足早に露店の方に消えて行った。

 

「なんなの!いったいなんなの!」

 

すると、一枚の紙切れが空から落ちてきた。

 

「そなたは、自分の目的を果たすために、人の見えないところで悪行の限りをつくしていた。同じ働き場での女達にいやがらせをしたり、女達の悪口を吹聴し、客を奪い取り、自分の常連にした。表向きは親切を装い、影では非道な行為も厭わなかったであろう。

 

ルルダの玉手箱を手にすることができるのは、一点の曇りもなく汚れない心の持ち主だけなのだ。そなたの様に二枚舌で裏表のある行為は、許し難いものである。魂そのものが汚れきっているのだ。

 

従って、そなたの姿は他人からは見えない。永遠にだれもそなたを見ることはないのだ。

 

ー馬術師ー」

 

 

 

女はその場に倒れ込み、絶叫しながら地面を殴り続けた。




あれですね、どーん!の喪黒福造を思い出しちゃいますね。あなたのお悩み解決いたします、でしたっけ?

邪な願いは叶いませんよ~っていうね。あれみてるとスッキリしましたねー。理不尽なことがあっても、甘い汁を吸おうとするやつは、いつか泣きをみるんだぞ!

って、思えましたね~。

必殺仕置き人とかも好きですね。世の悪と戦う正義の味方。これって永遠のテーマじゃないかなあ、と思うのは、私だけでしょうか?

そうそう、日本人の金・銀メダル獲得、おめでとうございます!!!すごいですね。感動しました。日本中が感動に包まれた日ですね。
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