二度目の人生はちょっと辛い   作:秋の夕暮れ

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どもども、秋の夕暮れというものです。実にめんどくさい書き方をしている駄作ですがよければ読んでってください。


私の朝はコーヒーから始まる(大嘘)

ーピピピピ… 目覚まし時計の音がする。俺としてはこのまま寝ていたいのだが、これで起きなければそのまま寝過ごして学校に遅刻してしまう。そうやって気だるげに思考を働かせながら目覚まし時計を黙らせる。

くっとベッドの上で背伸びをすると横のカーテンから朝日が漏れていることに気付く。カーテンを開けると目一杯に朝日が入ってきて、これでは二度寝をする気にもならないな、と溜め息をつくとベッドから降り、顔を洗いにいく。少し部屋を歩いて洗面台に立つ。鏡を見ると眼が死んでいるセミロングの女性が映る。…やはり、夢では無いか。今さらながら本日二回目の溜め息をつくのであった。

 

そう考えてしまうのは前世が男だからなのだろう。…別に今さら思春期特有の病を患ってる訳ではないし、変な宗教に入団している訳でもない。俺自身、神様を信じているつもりもない。むしろ居るならぶん殴ってやりたいくらいだ。

こういった神様転生云々を前世の時、オタクであった友人にライトノベルで貸して貰ったことがあったが…読んでみて、こんな都合の良いことばかり在るわけないだろ。そう言ってすぐに返した覚えがある。俺自身、神様に会った覚えなどない。気が付いたら小学生からこの身体でスタートしていたのだ。そんな理不尽を抱えながらもう17歳。高校二年生である。親はいない。小学生の頃は一軒家暮らしだったのだが父親の会社が倒産してしまい父親は母と借金を残して蒸発。母親は俺を連れて安アパートに移って借金を返す生活を送っていたが、さぞ辛かったのだろう。首を吊った。そんな親もいなければ金もない、ないないの状況でいたときに母方の祖父に拾って貰った。たまたま母親に用事があって電話をしたが繋がらなく、仕方なくアパートに見にきた時に首を吊った母親の足元で倒れていたらしい。なんでもあと少しでも遅ければ俺も死んでいたという。そうして拾って貰ってからは祖父の元で過ごした。

 

小学生の頃は周りに合わせるのが辛かった。俺だけが精神年齢が上なものだから周りと合わせるのにはとても苦労した。だが、これはこれで何か新鮮なものを感じてはいた。そうして成長して二度目の中学生を迎えた俺はマイペースに過ごした。中学生を二回もやるとなるとどうしても怠く感じたが流石に中学生となるとある程度はしっかりとした考えがある奴が居るので苦労はしなかった。…まぁ今となっては顔も名前も忘れてしまったが。これは前世の時からなのだが、他人のことを覚えるのがどうしても苦手なのである。ある程度は思い出せるのだが、それが顔と名前に結びつかないのである。中学校生活を送る上では苦労はしなかったが。単純にボッチだったからである。…自分で言うとなんだか悲しくなってきたな…。まぁ、閑話休題(それはそれとして)。ある程度の成績を保ちながら普通に中学校生活を送ってきたのである。今思えば前世と比べて顔の良い女子が多かった気もするな…思いだせないのでなんとも思わないが。

そしてやっとの高校生である。此処までくるのに本当に長かった。もう2度と転生(やりなおし)は御免である。

…下から祖父が呼んでいる。朝飯の時間だろう、すぐに行かなければ。長々と俺の自分語りを聞いていた何処かの誰かには申し訳ない、と形だけ謝っておこう。後悔もしていなければ反省もしていない。こうして俺もとい私こと榊原葵の1日が始まるのであった。

 

ここで私の祖父について触れておこう。私の目の前で朝飯を一緒に食べているのが私の祖父ことお爺ちゃんである。…未だに祖父と孫という関係には慣れないのだが。歳は66歳で趣味は読書とテレビを観ることという歳さながらの趣味を持っている人だ。寡黙な性格で必要以外には話しかけてくることもないのだが、私自身も必要以外には話しかけない性格なのでお互い静かな生活を過ごしている。それが今まで過ごしてきて分かったことである。あと料理も上手い。御飯はいつも祖父が作ってくれている。とくに漬物が美味しい。この今食べている胡瓜の浅漬けなんて「…なぁ、聞きたいことがあるんだが」

…これは驚いた。話しかけてくることなどなかったからつい驚いて反応が遅れてしまった。

「…なんでしょう」

「…お前ももう高校二年生だな」

「…えぇ、そうですね。ここまで育てて頂いたのにはとても感謝しています」

「…なにかやりたいことなど見つかったか?」

…これはどう返せば良いのだろうか、まずこんなことを聞いてくること事態初めてである。かといってやりたいことなど特にないのでそのままいうしかないだろう。

「いえ…特にはありません。ですが卒業後は就職してこれ以上はご迷惑をかけないようには、と考えてはいます」

と、無難に返した。これでどうだろうか?

「…そうか」

それ以降会話は無かった。一体何だったのだろうか?そう考えながらふと時計を見ると登校の電車の時間が近づいていることに気付いた。

「…それじゃあ、私はそろそろ学校に行きますから」

「…あぁ」

そうして朝飯を食べ終えると私は準備を終えて学校へと向かうのであった…。

 

電車に揺れること40分、目的の駅に降りて学校へと向かう。あぁ、今日は快晴で良い天気だなぁ、と呟いていると

「おはよう葵。確かに今日は良い天気ね。心地良いくらいの朝だわ」

と、背後から挨拶が飛んでくる。振り返ると馴染みの顔が見えた。確か名前が…

「…あぁ、おはよう速水。今日は洗濯日和だな」

「フフッ、言い方が主婦みたい。でも今日みたいな天気なら洗濯もよく乾くのでしょうね」

そうだ、速水だ。こいつの名前は速水、高1の頃に知り合って今では登校を一緒にする仲だ。…とはいえ名前は忘れそうになってしまうのだが。だが周りの奴らと比べてまだ覚えている方の名前である。なので大丈夫だ…何がだ?そんなくだらない禅問答をしていると

「…ちょっと、私の話を聞いてるの?」

おっと、話を聞いていなかった。すぐに意識を速水に向ける。

「ごめん、少し考え事をしていたよ。…それで何だったかな?」

「もう…貴方って考え事をするといつも周りが見えないわよね」

「あはは…申し訳ないな」

「別に今始まったことでもないし気にしていないわ。それで、今週の土曜日にクラスのメンバーでボウリングに行くのだけれど葵もどう?」

「おや、ボウリングかい?それは楽しそうだね。残念ながら私はアルバイトで参加できないけど楽しんでおいで。」

「…葵っていつもこういうのには参加しないわよね。いえ、参加できないのなら仕方ないのだけれど…」

「重ね重ね申し訳ない。けど、誘ってくれるだけでも嬉しいものさ。いつもありがとうね」

「謝罪なんて欲しくないわ。そうね…キス、してくれたら許してあげようかしら♪」

そういえば速水はいつもキスをねだるキス魔だったな…前世の頃の俺ならまだしも今の私にねだった所で仕方ないだろうに…

「こらこら、そのキスはもっと大事な人のために取っておいてあげなよ。少なくとも私以外にね。」

そういって私は苦笑いしながら返す。うん、返しかたとしては大丈夫だろう。

「もう…つれないわね。いいわ、この借りはまた別の日に私とデートして償ってもらうから♪」

「ん〜そうだねぇ。その時には私も付き添わせて貰おうかな」

そう話ながら学校へと向かう。普通の高校生の登校風景だ。どこか懐かしみさえ感じる。そういえば前世の頃の俺はどんな高校生だったろうか?きっと多分俺のことだから夢いっぱい溢れていて文武両道、生徒会長でモテモテな高校ライフを過ごしていただろう。思いだせないのでそうしておく。なにか文句でも?ないなら良し。

そう速水と話ながら思考していると学校に着く。クラスは違うので途中で別れる。

「それじゃあ」「えぇ、また昼休みにでも」互いに別れの挨拶をすると教室まで歩いていく。あぁ、やはり高校生は楽しいな。高校生活の平和を登校朝一番に噛み締めるのであった。

 

キンコーンカンコーン昼休みを告げるチャイムが鳴る。授業を適当に受けたり、休み時間の合間本を読んでいたりするともう昼時だ。前世でも高校生の時間の流れはこうも早かっただろうかと考えるが結果どうでもいいことが私の脳内での円卓会議で可決された。鞄から祖父が作ってくれた弁当を取り出して教室を出る。さて、どこへいこうか。なんてどこかの鬱ゲーっぽく呟いてみる。別に今のところさよならを知りたくはないのだが。すると校庭のベンチが空いていたのが見えたのでそこへ向かう。…教室で食べれば良いじゃないかって?煩い、今日は外の気分なのだ。決してボッチだからというわけではない。そういうことにしといてくれ。そう自身を無理に納得させながらベンチに座る。今日は本当に天気が良いのだ。外で食べなければ勿体無い。さて、今日の中身はなんだろ「隣、空いてるかしら?」

聞き覚えのある声にふと顔をあげると速水が映る。またお前か。

「構わないよ。今日は一人だからね」

「今日はって、いつも昼御飯の時は一人じゃなかったかしら?」

痛いところを突かれてしまった。速水の言うとおり、昼飯の時はいつも一人で食べることにしている。モノを食べる時はね 誰にも邪魔されず自由で なんというか 救われてなきゃあダメなんだ 独りで静かで豊かで……。嘘である。単に一緒に食べる友達が居ないだけだ。そんな一人グルメを楽しんでいる訳ではない。それもそうだね、と返す。

そんなことよりどうしてここに速水がいるのだろうか?速水はクラスではトップに上位する奴だ。容姿端麗・文武両道ときたらそんじゃそこらの奴らには余裕で勝つだろう。そんな奴が私とどうしてこうも一緒に弁当を食べているのだろうか、そう考えていると。

「…朝、約束したじゃない。また昼休みって私言ったわよ。また聞いていなかったのね…」

はて、そうだっただろうか…

「それに今日は他の友達が食堂の方に行ってるのよ。だからたまには貴方とも一緒に食べるのも良いかもって思って。迷惑、だったかしら?」

「そんなことはないさ。私もたまには誰かと食べたかったからさ、迷惑だなんてことはないよ」

「そう?なら良かったわ♪」

そうして黙々と箸を進める。ふむ、祖父の弁当はいつも旨い。これを期に料理を習うべきだろうか…?

「葵の弁当っていつも美味しそうよね…自分で作ってたりするのかしら?」

「いや、私の祖父が作ってくれているんだ。あいにく私は料理の一つも出来なくてね…そういう速水は自分で作ってたりしてるのかい?」

「たまに作ったりするくらいね。いつもは親が作ってくれているわ。私もあまり料理は出来ない方なのよ」

「そっか…これを期に料理してみるのも良いかもしれないね」

「あら、意外ね。なら、私も練習してみようかしら♪」

そう互いに会話しながら箸を進めていく。そういえば速水とこうして食べるのは久しぶりだ。前回は…確か高1の頃だった気がする。いや、どうだっただろうか。全く覚えてない。

「それにしても私達って出会ってからもう一年経つわよね?」

「そう…だったかな?月日の流れは早いものだよ」

「何時になったら私のことを奏って呼んでくれるのかしら?」

「…唐突だね。」

「えぇ、唐突にでも言わないと私のことずっと速水で呼ぶつもりだったでしょう?あまり他人行儀にされると傷付いちゃうわ♪」

わざとらしげに悲しそうな顔をする。そう言われてみると…初めて気付く。そういえば下の名前で呼んだことがなかった。

「ごめんごめん、次からちゃんと下の名前で呼ぶよ」

「次じゃなくて今言ってちょうだい?」

まっすぐな目で此方を見てくる。…これは言わない訳にはいかないか。

「…分かったよ、奏。これで良いかな?」

…なんだか妙に照れ臭いな。それよりも返事が返ってこない。ふとみると固まっているのが見えた。

「…奏?どうかしたかな?」

「っ…なんでないわ」

なんだ、今日はいつもに限って様子がおかしいな…

キンコーンカンコーン 昼休みが終わる五分前のチャイムが鳴った。おっとそろそろ教室に戻らなければ。

「それじゃあ、そろそろ教室に戻ろうか。」

「…えぇ、そうね。教室に戻らないと、ね。」

共に立ち上がって互いの教室へと歩いて向かっていく。さて、次の授業はなんだっかな…なんて考えていると。

「葵」

「なんだい奏」

「…フフッ、いえなんだかこの状況って付き合い始めた彼氏彼女みたいよね♪」

「…馬鹿なこと言ってないで早く教室に戻りなよ」

「そうするわ。じゃあ、また会いましょうね」

そう言って別れる。なんだか今日のあいつはどこか変だったな…そんなことを思ったが、まぁどうでもいいかといつものように能天気に考えるのだった。

 

 

私と彼女が出会ったのは高1の夏だった。その頃の私は最初の高校生活を楽しんでいながらもどこかつまらないと感じていた。別段、クラスでは孤立している訳でもない、むしろ逆だ。周りからは流石、速水さんだなんていつも言われるくらいだ。()()()()()()()()()()()()()()()のもあって先生達からの印象も良い。そんな代わり映えのない高校生活を送っていたからだろう。今の現状に面白く感じなくなってしまった。皆が真面目な私を誉めてくれる。けど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()だからなのだろう、どこか空虚じみたのを感じていたのだ。そんな中で彼女と出会ったのはある日の放課後だった。いつもの退屈な学校を終えて帰路につく。帰ったら何をしようかしら…なんて考えながら歩いていると、その時にたまたま小さな喫茶店が目についた。いつもなら素通りしていたのだけれど、その日は気分が向いて喫茶店に入った。中は普通の喫茶店で意外と人が多く入っていた。従業員の人が席が埋まっていて相席でも大丈夫ですか?と聞いてきたのでその相席の場所に案内してもらった。そこで初めて彼女と知り合ったのだった。知らない他人ならそのままコーヒ一杯でも飲んでスルーするつもりだったが、奇しくも同じ制服を着ていたので思わず話しかけてしまった。…今思えば、普段の私らしくない行動ばかりだ。だけど、彼女なら本当の私を見てくれるかもしれない、と僅かな希望を持っていたのだ。彼女は寡黙な性格で必要以上に話しかけてくることがなかった。だが、それでも私の話に対して的確に答えてくれた。そんな途切れ途切れ会話中で彼女は私に言った。

「速水さんは…寂しがりやなのですね」

その時、心にズキッとくるものがあった。初めてだった、誰かにそう言われるのは。いつも真面目な面でしか見てないクラスメートと違って彼女は数分程度で私のことを見抜いたのだ。

「…どうして?」と私が聞くと

「…聞いている限りではいつも学校でキャラを作ってる感じでしたから。今まで誰かに甘えられる人に出会えたことがなかったのですね、だからこそ自分を見てほしい、本当の自分を受け入れてほしいのでしょう?」

そこからはあまり覚えてない。彼女と話し込んでいて気付いたら夜になっていて賑やかだった喫茶店も静かだった。そこで一度お開きにしようとなって彼女とはそこで別れた。…そういえば、名前を聞いていなかった。名前を聞くと「…榊原 葵です。好きに呼んでください」と言って夜に消えてった。榊原 葵…脳内でその名前を繰り返しながら家に帰った。当然、連絡もなしで遅くかえってきたので親には叱られた。だけど、それ以上に頭の中では彼女のことばかり考えていた。

今はもう学校は退屈ではない。彼女が居るからだ。早めに家を出て、今日もあの駅から降りてくる彼女を待つ。そしていつものように話しかけるのだ。

「おはよう葵」と…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




奏ってめっちゃ可愛くない?
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