この作品全般に言えることですが、頭をからっぽにしていただけると読みやすいかと思います。
「幻想郷のあの店は 第一回」
幻想郷の人里を外れて、更に遠くへ。あまり人も寄り付かないような場所にある。
もう既に人が普段ならば寄り付かない辺りに少し木が並ぶ。その店はその木の辺りにポツンとある。
青い暖簾がかかっていて、玄関には赤い提灯をぶら下げてあれば間違いないだろう。
人里離れたこの場所に酔狂にも店があった。
その店の屋号は、呑み屋『和み』。店の主人は半妖怪だそうだ。
ここは、普通ではない者達が集う小さな呑み屋といわれている。
食べたいものがあれば出来るものなら作るし、何なら食材を持ってきてくれれば作る。酒も幻想郷では中々お目にかかれない外の世界の物や、鬼の酒なんてものまである。それにツケがきくから便利と、どこかの巫女は話している。噂では酔いつぶれたら送ってくれるとまで言われる。お人好しで甘いの店主が営む店だという噂だったが事実のようである。常連客に聞けば、返ってくるのはお人好し、甘い、ということだらけ。
そして幻想郷でも少ないこの店の常連客である八雲紫氏に取材時、この店の店主に関して一言伺うことが出来た。
曰く、ここの店は変わり者の店主の変わった店、でも悪い奴ではないから安心して訪れてみては?だそうだ。
あの賢者がこうまで言う店、気になるなら貴方も1度訪れてはどうだろうか。私としても料理の味や酒の品揃えについては保証する。
ひとときの和みを味わうなら、あの店だろう。
***
「あながち嘘が無いのがまた手が込んでるわ。あのブン屋も毎回こんな記事を書いてくれれば何も起きないのにねぇ」
新聞を読み上げるのが終わって少し。最初に言われたことはそれだった。新コーナーがあるんです、第一回はマスターさんで!と言われて付き合ったのが運の尽きだったらしい。
「うるさいぞ、紫。だいたいお前もあの賢者が、とか書かれてるだろう」
「でも大方事実よ?」
「確かにお人好しなのは多少自覚しているがなぁ……」
「ツケはあるとき払い、酔いつぶれたら送ってくれるどころか宴会になったら皆泊めたこともあったでしょ」
「あの時はしかたないだろ、あんな人数運べるか」
「ホント変わり者でお人好しよ、貴方は。間違ったことが書かれてないんだから良しとしなさい」
「まぁそうするさ、さて仕込みの時間なんだかな」
「なら味見役がいるんじゃないかしら?」
「さっさと仕事にいけ、今日は妖怪の山との会議じゃなかったのか?」
「あら、よく覚えてるわね。それに免じて行ってくるわ。ちゃんと私の分残しといてね」
「はいはい、たまには二人も連れてこい」
幻想郷の賢者、八雲紫はスキマを開けてそのまま消えていった。最後の言葉に返事はなかったが。書いてあった記事のとおり、ウチの常連客の一人であり、初めての客である。
元の始まりは新聞の取材を受けたところからだ。それが記事になったのを見つけてつつきに来たのだろう。
暇な筈がないんだが、そういうことを見つけてはつつきにくる。だからどうだ、という訳でもないんだが。
止めていた手を動かし始める。今日の仕込みを始めなければ。
今日はどんなお客が来るだろうか。
それを楽しみして仕込みを始めた。