peaceful days   作:楡野 透

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第10話

 小一時間ほど、二人は街の中を丹念に歩き回ったものの、目立った収穫はなかった。

 線路下の暗い道を、二人並んで辿りながら、

「意外と、ここの魔戒騎士は優秀みたいね。」

 残念そうに禍燐がぼやく。

「ゲートになりそうなエレメントは、ちゃんと浄化されてる。これじゃ、あたし達がいつけないわ、…仕事がないもの。」

 そんな禍燐に対し、魅風は柔らかい笑みを向けながら、

「ふふ、禍燐さんは、封滅が専門みたいですね。」

 すると早速、禍燐は明るくおどけた口振りで魅風に笑い返しながら、

「あったりぃ。実をいうとさ、あたしってば、地味で繊細な仕事って、本っ当、向いてないのよねえ。」

 同業者を探すのに一番手っ取り早いのは、ホラーと出くわすこと。そうすれば、そのホラーを封滅するためにその地の魔戒騎士や法師が、必ず姿を現す。

 しかし、この街のように、魔戒騎士が日々、邪気の溜まったエレメントを浄化する任務をきちんと果たしていれば、ホラーはそう簡単には出現できない。

 仕方なく、二人は街のあちこちに巣くっている小さな闇の中に、騎士や法師が力を使った痕跡を探り出して、追いかけることにしたのだが、それはかなり神経を擦り減らす作業だった。

 あてどなく街を徘徊し、闇の者の力の、わずかな残滓を気配として拾い上げ、辿る。

 確かに、地味で、繊細な作業と呼べるかもしれない。

 ずっと神経を張りつめていたせいで凝り固まってしまったらしい首筋や肩を和らげるように、軽く伸びをしながら禍燐が天を仰いだ時だった。

 ちょうど、電柱に取り付けられた街灯の上へと視線が流れた時、その上にいる、人にあらざるものの姿が目に入ってしまう。

 こちらを見下ろしている白い双眸が、わずかに細まったのが見えて、禍燐は一瞬で自身の肌が粟立ったのを感じた。

「やっば!魅風さん!」

 咄嗟に、禍燐は魅風を抱えるようにして、来た道へと飛び退く。

 と、同時に、一瞬にしてその場に土煙が立ち上った。

 俊敏で剛腕なホラーらしく、先刻まで二人のいた地点を一撃で深く抉ったらしい。

「こいつ、でかいくせに、手が早っ!」

 すぐさま禍燐は立ち上がりながら体勢を立て直し、魔導筆を手にする。

 だが、魅風がまだ身体を起こしきれていない。恐らく、赤子を身体で庇ったせいだろう。

 禍燐は魅風の前に立つと、素早く防御の円法陣を描く。

 最低でも、次の一撃はこれで凌げるはず。

 収まりつつある土埃の中、彼女は法陣を維持したまま背後へ振り向き、魅風に逃げろと叫ぼうとしたが、その時、魅風に肩を貸し、逃げる手助けをしている人影が目に入った。

 禍燐は瞬時に次の一手を変える。

 防御の円法陣を魔導筆の穂先に宿したまま、わずかに肘を曲げると、強い踏み込みと共にホラーへとそれを撃ち出した。

「破!」

 防御陣を前に攻めあぐねていたところへ、間髪なく、その円法陣だった法力の塊をぶつけられ、ホラーは怒りに喚く。

「グゥッ、…グギャアァ」

 天へ吠えるそのホラーは、通常のそれより倍近い大きさで、太い両足と長い尾を持っているためか人型というより小さな竜に近い。

 奴の怒号に気をよくした禍燐は、すぐさま奴に向かって一直線に駆け出す。と、すぐに大きく跳躍し、すらりと上空で身をよじりながら奴の頭上を軽々と飛び越えた。

 そして、舞い降りるかのように、わざと膝を深く折って柔らかく着地する。

 スカートを軽くつまんで捌きながら、ゆっくり立ち上がると、余裕たっぷりな笑顔で振り向き、可愛らしい猫なで声で、

「こっちよ、…ブサイク。」

 軽くウインクまでしてみせる禍燐に、ホラーは標的を、遠退く魅風達か、目の前に立つ彼女か、僅かに迷い、だが剣呑に、禍燐へと身体を向け直した。

 それを見て、禍燐はにんまりと口元の笑みを深くする。

 幼い面差しにはあまり似つかわしくない、狩人の眼が炯々と輝く。

「私を見くびったこと、後悔させてやる、化け物。」

 禍燐は腰に下げていた界符の束から、二枚、右手に取ると、すばやくホラーの両足まで飛ばした。

 魔導筆を両手で構え、一度胸の前で念を込めてから、それぞれの界符めがけて力を放つ。

 法力を受けた界符は、術を発動させ、青白い光りでできた鎖でもって、大きなホラーの両足を大地へと強固に縛り付けた。

 歩けなくなったことに苛立ったホラーは、すぐにぐるぐると喉を鳴らし唸ったかと思うと、彼女に向かって大きく口を開く。

 汚らしい乱杭歯と、唾液にまみれた巨大な黒い舌が見え、禍燐が眉をひそめた瞬間、その喉奥から瘴気の塊らしきものを撃ち出してきた。

 赤く淀んだ黒い塊が、禍燐の身体を掠め、それが地面を腐らせるのを目の当たりにし、

「最ッ低。せっかちなあげく、…生意気!」

 禍燐は本気で腹を立てているらしい。

 冷徹な声でそう呟くと、禍燐は再び胸元で魔導筆を握る。

 小さく顎を引いたのが合図。

 奴を見据えたまま疾走し、長い房飾りを揺らめかせながら、一気に懐に飛び込む。

 瘴気の塊も、長い尾も、その動きの全てが見えているのか、禍燐は紙一重ではあるものの奴の攻撃を全てかわし、無防備なホラーの左腕にまでたどり着くと、筆の穂先を直接当て、術を発動させた。

「破!」

 ホラーの肩下の腕に円法陣が赤く輝き、うっすらとした光の珠が出現する。

 人の頭くらいの大きさをしたその珠は、ホラーの腕を包み込み、直後、その珠の内部は激しい炎と共に爆発した。

「グギャアアァ」

 爆発によってちぎれ落ちた左腕に、ホラーは悲鳴を上げる。

 狂ったように右手や尾を振り回すが、禍燐にそれは届かない。

 奴の速さに慣れ始めたらしい彼女は、小さな動作で確実にそれらを避けながらも、奴の胴体に幾度も筆の穂先を当てる。

 その度に、光の珠が現れ、その内側が炎爆し、着実にホラーへ深手を負わせていく。

 光の珠が小さな結界となって、ホラーの血を散らすことなくその内側を爆散させ、そのまま傷口を焼いているらしい。

「火炎珠、とでもいうのかな。よく解んないけどさ、便利よね、実際。」

 禍燐は楽しそうにホラーに話しかけながらも、奴の足元に眼を走らせる。

 もう、地縛の術が尽きそう。

 界符の消耗が早すぎる。

 こいつ、やっぱり、ただのホラーじゃないのかも。

 ならば、一気に押しきってやる。

 禍燐は魔導筆を構え直すと、再びホラーへと駆け出して行った。

 

 

 

 一方、魅風は駆け寄って肩を貸そうとしてくれている人物の横顔を見て、正直、困惑した。

 まだ、少年じゃない…。

 助けてくれようとしているのは嬉しいけど、これじゃ、みんな殺られてしまう。

 魅風はあわてて立ち上がり、赤子を強く抱えると、少年に抱えられたもう片方の肩と腕で、逆に彼を捕らえ、

「貴方も一緒に逃げるの!」

「え?俺、…え?」

 少年はびっくりした顔をして見せたが、魅風は問答無用に走り出す。

 禍燐は封滅専門。

 今はその言葉を信じるしかない。

 魅風はとにかく、ホラーや禍燐の気配が感じられなくなる地点まで走った。

 幸い、追ってくる気配はない。

 禍燐…。

 きっと、彼女は私たちを逃がすために戦うことを選んだんだ。

 会ったばかりなのに、命をかけてくれるなんて。

 それとも、彼女には彼女だけが知っている勝算があったからなのか…。

 ぐるぐると考えを巡らせながらも魅風は駆けた。

 これ以上誰かを巻き込んではいけない。

 そう思っても、なるべく人の気配のない道を選ぶくらいしか、今の魅風にできることはなかった。

 もう膝が砕けそう、と泣きそうになった時、少年が駆ける足を緩め、歩き出す。

「その先に、誰もいない工場跡地がある。そこまで行こう。」

 彼の言葉に嘘はなかった。

 まもなく、灯りひとつない一角にたどり着き、彼らはその中へと足を踏み入れる。

 途端に、油の嫌な臭いが鼻をついた。

 喉に押し込まれてくるような機械油の臭いに、魅風は眉をしかめる。

 と同時に、胸元の子を強く抱き込む。

 しかし、少年はというと気にする様子もなく、軽い足取りで大きく張り出している屋根の下へと進んでいってしまう。

 壁のない正面から入り込めば、そこには鉄骨の柱が何本も並び立っており、それらを覆うように凹凸のついた頑強そうな金属板が屋根として乗っているのがわかる。

 柱と並行に走る幅広い通路を見つけ、そのまま少し進んでみると、その両側には、人よりも背の高い金属製の機械が、むき出しの地面に直接置かれており、手入れをされている様子もない。

 油と埃と錆にまみれた、ただの金属の塊りとなり下がったもの達。それらが整然と通路の両側に並び立っている様は、古代遺跡さながらだな。

 辺りを見回しながら、彼がそんなことをぼんやり思っていると、とうとう魅風の歩みが止まった。

 肩で大きな息を繰り返していた彼女だったが、通路と通路が交わる比較的広い場所に出た途端、力尽きたように座り込んでしまった。

 彼女は、腕の中にそれがあることを再度確かめ、安堵してから改めて呼吸に専念しようとするが、

「お姉さん。」

 少年に呼ばれて、何の気なしに傍らの彼を見上げたら、目の前に淡い蒼炎を突きつけられた。

 魔導火!

 瞬時に、それが何であるか、その行為が何を意味するのかを理解する。

 冗談じゃないわ!

 頭に来て、少年を睨みつけると同時に、彼が持っている魔導具を手で払い退けようとしたが、彼は難なくその手首を掴んで阻んだ。

 彼は、炎が照らし出す魅風の瞳を覗き込み、魅風もまた、彼の瞳を覗く。

 まもなくして、

「ごめん、ごめん。そんなに怖い顔しないでよ。」

 彼はにっこり微笑むと、それをコートのポケットにしまった。

 そして、まだむすっとした顔で睨んでいる魅風の手を離し、

「念のための確認だよ。信用したいでしょ、お互いにさ。」

 そう言って、少年は人懐っこい笑顔を彼女に向ける。

 確かに、彼の言う通りだった。

 お互い、緊急事態の中で出会ったのだ、まず人であってもらわなくては話にならない。

 ホラーはそういった、心の隙や油断にさえつけこんでくる。

 自分たちが何故存在するのか、改めて思い出し、

「…そう、ね、…貴方の言う通りだわ。…ごめんなさい。」

 結局、魅風は素直に謝罪した。

 そして、ようやく自身の呼吸が落ち着いてきたことを自覚する。

 感覚にも余裕が生まれ始め、辺りを見回し、耳を澄ます。

 暗がりばかりを選んで駆けてきたせいで、眼だけはもう十分闇に慣れており、こんな明かりひとつない暗闇の中でも、苦も無く状況を把握できた。

 大丈夫、何の気配もない。静かなものだ。

 彼女はローブの胸元を小さく開けると、赤子を覗き込み、小さく笑いかける。

 そうしてから、改めて、魅風は少年へと目を向け直した。

 腕を組んで、来た道を見つめている彼の横顔。

 そこでやっと、彼の面差しが、実は思っていたよりも幼くないことに気付く。

 そう言えば、二人して並んで駆けている時も、途中から彼に引っ張られている感じがした。

 あれは、彼の方が背が高かったから?

 それとも彼の方が、速く駆けていたから?

 彼を抱えていたはずの腕が、いまなお、びりびりと痺れて力が入らない。

 駆けている最中だって、腕の痛みに、思わず何度か彼の顔を覗いた。

 その時、彼は息を乱していたか?

 まっすぐ前を見据えて駆ける彼は、息ひとつ切らせていなかった、とようやく思い当る。

 端正な顔立ちには、まだあどけなさが残ってはいるものの、その眼差しは厳しく、ただの少年ではあり得ない。

 黒のロングコートで、もしや、と疑い、魔導火と彼の胸元に輝く銀色のペンダントで確信する。

「貴方、魔戒騎士、だったの?」

 魅風の呆れるような高い声に、彼は顔だけで振り向くと、表情もなく頷いた。

 それから、軽くため息混じりに、

「女の子に後を任せるような真似だけは、したくなかったんだけどな…。」

 残してきた彼女が気がかりらしく、後ろを気にするような素振りで彼は呟く。

 がっかりとしたその口振りには、確かに小さな刺があったような気がして、魅風は口を尖らせるも、おずおずと、

「だって、貴方がもっと、…子どもに見えたんだもの、みんな殺されてしまう、と思って…。」

 拗ねたような魅風の声色に、彼は目を丸くするも、すぐに明るく笑った。

「優しいんだね、お姉さんは。」

 柔らかく穏やかな彼の笑顔に、魅風は戸惑う。

 さっきから、ずっとこう。

 私の知っている魔戒騎士達と、印象が全然違う。

 魔戒騎士たる者たちは、もっと厳しい表情を常とし、会話も必要最小限しか交わさない。人生を楽しむことなど初めから諦めきっていて、守りし者の矜持だけを拠り所としている者の方が多いくらいだ。

 けれど、彼からはそんな重苦しさは感じられない。

 彼には、人の気持ちを軽くしてくれるような安心感がある。

 優しい、か…。

 たまりかねて、はぜるように顔をあげると、魅風は彼へ向かって、

「彼女、禍燐さんていうの。」

 いきなり声をかけられ、彼は何のことか分からなかったようだが、魅風は続けて、

「今日初めて会ったのに、私に手を貸してくれて、さっきも私達を逃がすために戦うことを選んでくれた。」

 走り去る際、ちらりと視界の端に見えたのは、美しい珠簪と、雅に流れる房飾り、そして、彼女の小さな背中。

 泣きたくなるほど、凛としていた。

「……、私なんかより、禍燐さんの方がよっぽど優しいわ…。」

 言いながら落ち込んでいく魅風を、彼はしばし見下ろしていたが、

「じゃ、俺もそっちに行かないと。」

 踝(くるぶし)まであるコートの裾を軽やかに捌くと、彼は魅風に背を向け、歩き出す。

「ま、待って。貴方がここを担当しているの?」

 魔戒騎士の中には、管轄領域を任されている者もいるし、また、ジキルのように絶えず移動しながらホラーを封滅する者もいる。

 問われて、彼は足を止めると、身体半分で振り返り、

「まあね、一応知り合いだよ。でも、何故?」

 魅風は地面に座り込んだまま、両腕でそれを抱きしめ、すがりつくような必死さで、

「人を探しているの。この子の薬を作れる人を。この子、病気なのよ、…誰でもいいの!、法師でも、薬師でも、導師でも!…誰か、知らない?」

 しかし、彼は困ったように首を傾げる。

 そして、ゆっくりと魅風の前まで戻ってきて、膝を抱えるようにしゃがみこんだ。

 同じ目の高さになった彼に間近から見つめられ、魅風は知らず、どぎまぎとしてしまう。

 そんな彼女の胸の内など知る由もなく、彼は屈託のない様子で、

「それ、お姉さんの、子?」

 そう尋ねる彼の声は、穏やかで、少しの陰りもない。

 だが、魅風は頭を撃ち抜かれたような衝撃に息をつめる。

 この子、は…。

 私の、子、は…。

 驚いた顔で、こちらを見つめたまま答えない魅風に、彼はさらに、

「男の子?、それとも、…女の子かな?」

 楽しげな彼の問いかけに答えようと、魅風は口を開きかけたが、何故か唇が震えるばかりで声が出ない。

「よかったら、その子の顔、見せてよ。」

 重ねてそう言われても、魅風の腕はことさらそれを強く抱き込んでしまう。

 はりつめた眼差しで顔を強ばらせ、固く抱き締めるばかりの魅風の様子に、彼は地面に向かって細い息を吐いた。

 改めて、彼女の目を覗き込み、尋ねる。

「お姉さんは、それでいいの?」

 微かに色合いのある黒曜石のような瞳で、彼は瞬きすらできずにいる魅風を、表情もなく、ただ見守る。

 時が止まったような静寂の中、ふいに人の気配がした。

「魅風さん!」

 叫びながら、駆け寄ってきたのは禍燐だった。

 二人の姿を認めるなり、彼女は怖い顔で走ってきて、どんと彼を押し退け、魅風の前に片膝を着く。

 そして、魅風が胸に抱えているものに両手をかけると、ぐい、と引っ張った。

「寄越して!魅風さん!」

 力任せに奪おうとする禍燐に、魅風は血の気のない顔で懸命に抗う。

「嫌!やめて!」

 しかし、禍燐はさらに力を込めて、魅風の腕からそれを引き抜いてしまう。

 禍燐は急くように、それを正面から覗き込んだ。

 そして、その中身を知るなり、目を大きく見開き、呟く。

「何、これ…。」

 大切そうに布にくるまれていたのは、陶器でできた赤ん坊の人形だった。

 実際の赤子より幾分小さく、丸くなって眠る乳児の姿を写している。

 釉薬によって、濡れたようにとろとろとした白磁の肌が、赤子の傷ひとつないふっくらとした身体やその無垢さを巧みに表現した作品、だったのだろう。

 作られた当初は確かにそうであったろうが、時を経た今では、ひびや欠けがそこかしこに見受けられる。

 とても本物の赤子と見間違えるような代物ではない。

 それでも、

「返して!お願い!」

 痛ましいほど取り乱し、手を伸ばしてくる魅風に気づくと、禍燐は表情を険しくさせ、それを両手で頭上高く掲げた。

「こんなものがあるから!」

「!、止せ!」

 禍燐の次の行動を察した彼が、その刹那、制止の声を上げたが、禍燐は構わず、憎々しげにそれを足元に叩きつけた。

 ガシャン、という破滅的な音が響き渡り、

「きゃあああぁぁ!」

 魅風は絶叫する。

 破片になってしまってもなお、何振り構わない様子でそれに駆け寄ろうとする彼女を、禍燐は正面から押さえ込む。

 魅風と向き合う形になり、禍燐は彼女の両肩を掴んで訴える。

「しっかりしてよ!あれは、子どもなんかじゃないわ!」

 禍燐の声に嘲りの色はない。まっすぐに魅風を受け止めようとしている。

 少なくとも、彼にはそう見えた。

 だが、その若い魔戒騎士の胸元から鋭い声が飛ぶ。

「この気配、ゲートよ!奴らが来るわ!」

 

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