Digimon/Grand Order 作:LAST ALLIANCE
その中での第2話投稿です。タイトルを変更しました。
今までのタイトルだとありきたりで、地雷小説に思われている事に気付いたので、アニメをリスペクトした上で『デジモンアドベンチャー』まんまっぽくしました。
今回は第3節:大橋を調べるから、第7節:大聖杯を目指せまでの内容となっています。
章タイトルはアニメにタイアップしたロックバンドの曲を付けています。
変更しましたけど、今回は『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の第2期の2クール目のオープニング、『Fighter』にしました。
※後で予告を削除します。
立香、マシュ、オルガマリーの3人を乗せ、低空飛行で冬木市を探索しているオメガモン。彼らは冬木市の探索を行いつつ、時には骸骨兵の集団を倒していたが、ここでちょっとした問題が起きていた。
その問題とはオメガモンが今回の異変について全く知らない事だった。それを知ったオルガマリーは説明を始める。協力者たる聖騎士が何も知らないのは流石に良くないと思ったのだろう。何故立香達マスター候補生がカルデアに集められたのか。それをオメガモンは静かに聞き始める。そして演説中に居眠りをしていた立香も。
2015年。『人理継続保障機関カルデア』によって、人類史は100年先までの安全を保証されていた。しかし、近未来観測レンズ“シバ”の観測結果によると、人類は2017年で滅び行く事が証明されてしまった。何の前触れもなく、何が原因かも分からないまま。
カルデアの研究者達が調査した結果、“シバ”によって西暦2004年の日本にある冬木市に今までにはなかった、”観測できない領域“が観測された。カルデアはこれを人類絶滅の原因と判断し、レイシフト実験を国連に提案して承認された。
レイシフトとは人間を霊子化させて過去に送り込み、事象に介入する行為。過去への時間旅行だが、誰にでも出来る訳ではない。優れた魔術回路を持ち、マスター適性のある人間にしか出来ない。本来ならば彼らがサーヴァントのマスターになる筈だった。
「説明ありがとう。そちらの事情は大体把握した。ここが過去の世界で、この場所は冬木市だと言う事は貴女に会う前に把握している。だが……過去を変革して良いのか? 現代に何かしらの影響を及ぼすと思うのだが……」
「貴方の心配は分かるけど、そこは問題ないわ。ここはこれまでの観測記録に無かった場所。つまり突然出来た穴だから、本来の時間軸と独立しているの。前後の辻褄合わせを考える心配はないわ」
「そういう事か。それなら通常の時間旅行より安心安全に出来る上に、歴史改変を行っても時間改変でどうにかなると言う事だな?」
「貴方が物分かりが早いのね。分かりやすく言うと、この特異点は人類史と言うドレスに染み付いた汚れのような物。その汚れを綺麗にする事が私達の使命」
まだ関わって少ししか経っていないが、オルガマリーはオメガモンとの信頼関係を築き始めている。先ずオメガモンが神霊であり、自分を助けてくれた事。
聖騎士の口調が若い男性の声で、威厳のある物なので、気軽さと聖騎士らしさが同居している事。聖騎士らしく威厳がある中で物腰が柔らかくて穏やかで、丁寧な人格である為、所長も信頼を置きつつある。
「ところでサーヴァントとはこの世界で一体どういう物なのだ? 私と立香君はパートナーデジモンとテイマーの関係だが、それと近い物と考えた方が良いのかな?」
「それも分からないのね……良いわ。このまま教えるわ。まぁ貴方の言った関係に近いと言えば近いわね……」
オルガマリーはオメガモンにサーヴァントについて説明を始める。サーヴァント。魔術世界における最上級の使い魔。人類史に残った様々な英雄、偉業、概念。それらを霊体として召喚した物。
例え彼らが実在した英雄だったり、実在しない英雄だったとしても、“地球で誕生した情報”である事には変わりない。地球に蓄えられた情報を人類の利益となる形に変換する事、それが英霊召喚だ。
過去の遺産を現代の人間が使用するのは自然であり、それを使って未来を残すのが生き物の本能でもある。立香は人間以上の存在であると共に、人間に仕える使い魔と契約している事になる。だからサーヴァントと呼ばれている。
「そういう事なのか……つまり過去の英雄を使い魔にしたのがサーヴァントで、彼らと契約して使役するのがマスターと言う事だな?」
「そうよ。そしてサーヴァントにはクラスがあって、英雄達の逸話や能力によって色々と変化する。英雄その物を霊体として完全再現するのは難しいのよ。何しろメモリに限界があるから。だからその英雄が持つ一部分を固定化する必要がある。それがクラス。大体7種類に分類されるわ」
サーヴァントのクラスは7種類ある。
中にはマシュのような
「クラスがあるにはもう1つ理由があるの。サーヴァントの正体……英雄としての名前、もとい真名を隠す為でもある」
「そうか。英雄達は強い反面、有名だから弱点も知れ渡っているのか。例えばジークフリードで言う背中とか、アキレウスで言う踵みたいな感じで」
「理解が早くて助かるわ。だからサーヴァントはクラス名で名前を隠すの。真名を知られなければ、正体や弱点を知られる可能性は先ずないから。後もう1つ理由があって、サーヴァントが持つ切り札で真骨頂。その英霊が持つ奇跡、存在が具現化した物。それが宝具と言うんだけど、その宝具が分かればサーヴァントの真名も知られてしまう。それを防ぐ為なの」
―――何だか色々と複雑と言うか、難しい話ばかりだな。でも理解して吸収しないと、この先大変だから頑張ろう。私はこの世界に関する知識が何もないから。
オルガマリーからサーヴァントについて簡単な説明を受けると、今度はカルデアについて説明を受ける。『人理継続保障機関カルデア』。正式名称は『人理継続保障機関フィニス・カルデア』。
人類史を長く、強く存続させる為に魔術・科学の区別なく、研究者達が集まった研究所であって観測所。魔術だけでは見えず、科学だけでは計れない世界を観測し、人類の決定的な絶滅を防ぐ為の各国共同で成立された特務機関。
カルデア設立の出資金は各国合同となっているが、その大半はロンドンの魔術協会もとい時計塔のアニムスフィア家が出資している。名目上は研究施設だが、その重要性から内部規律レベルは軍隊と同等。
(何やら所長も大変だな……せめて私が相談役になったり、居場所になれれば)
その後はロマニからの通信でオルガマリーの事を聞く事になったが、オメガモンは彼女の立場の事を考えて彼女の力になりたいと思う様になった。
元々は立香と同じくマスター候補の一人だったが、3年前に父親が亡くなって学生であるにも関わらず、カルデアを引き継ぐ事となった。そこから毎日が大変となった。何しろアニムスフィア家の当主となったのだから。
カルデアを維持する事で精一杯だったのに、小型の疑似天体―疑似地球環境モデル・カルデアスに異常が発見された。
今まで保証されていた筈の百年先の未来が視えなくなり、協会やスポンサーから非難の声が山のように届いた。一刻も早く事態を収束させなければ。今のオルガマリーはその脅迫概念で動いている。
「それにしても、資料にあった冬木市とこの冬木市はあまりにも違い過ぎますね……」
「一体この街で何が起きたのかな?」
「歴史が僅かに狂ったのか……それとも何かが起きたのか。いや起きているのか。そこまで私にも分からないわ。でも分かっている事が1つあるの。それは……」
その後はオルガマリーが再びカルデアについて説明する。カルデアスという地球モデルで未来を観て、ラプラスという使い魔で過去の記録を集計する。
公にならなかった表の歴史、人知れず闇に葬られた情報を拾って観測するのがラプラス。それによる観測によって、2004年のこの街で特殊な聖杯戦争が確認されている。
「と言う事は……この街はサーヴァント同士の争いによってこうなったか、聖杯その物に異変が起きたか、或いは何者かによる介入があったかのどれかだな。考えられる可能性としては」
「本当に貴方の勘は鋭いわね、オメガモン」
「そうかな? これでも鈍い方だと思うのだが……」
冬木の聖杯戦争のシステムはシンプル。7人のマスターがそれぞれ競い合い、最後の勝利者が聖杯を手にする勝ち残り戦。
カルデアがこの事実を知ったのは2010年。オルガマリーの父親であり、カルデアの前所長―マリスビリー・アニムスフィアはそのデータを使って召喚式を作った。それがカルデアの三番目の発明―守護英霊召喚システム・フェイト。
「ここで7騎のサーヴァントが競い合い、セイバーの勝利で終わったと記録にあったわ。街は破壊される事なく、聖杯戦争の事は誰にも知られる事なく終わった筈なんだけど……オメガモンの言う通り、サーヴァント同士の争いか、聖杯の異変か第三者の介入によってこの有り様になった。どうやら特異点となった事で結果が変わったようね……」
「この異変が人類史に影響をもたらし、100年先の未来が視えなくなった。俺達の使命はこの異変を修復する。何処かに歴史を狂わせた原因があると……そういう事ですね?」
「その通りよ。それを解析・排除すればミッション終了。私達はカルデアに戻れるわ……ところでマシュ。貴女は宝具を使えないのよね?」
「はい。融合してくれた英霊が誰なのか分かりませんし、その英霊が持つ切り札たる宝具の性能を発揮出来ません」
サーヴァントには宝具と呼ばれる固有技能・武器がある。英雄達が持っているそれぞれの伝承、或いは偉業にちなんだ切り札。アーサー王ならエクスカリバー、ジークフリードならバルムンクと竜の血を浴びて得た無敵の肉体。
マシュの場合は宝具その物は使える。しかし、出力は低下しており、真名解放による真価を発揮する事が出来ない。そもそも武器たる十字型の大きな盾が一体何なのか分からないのだから。
「マシュの宝具の事は俺がマスターとしてどうにかしないとだな……」
「ッ! 悪いが直ぐに私から降りて欲しい。何者かの『
低空飛行している最中、オメガモンは前方から何者かの『
この世界に来てから戦って来た骸骨兵とは違う反応。もっと強力な力を宿している。異変の原因の手掛かりになるかもしれない。
「まさか……サーヴァント!?」
「マシュ、同じサーヴァントよ! 何とかなるでしょう!?」
「……はい。最善を尽くします……!」
目の前にいるのはサーヴァント。バイザーで視界を封じた妖艶な美女だが、黒いシルエットをしている。どういう英霊なのかは分からない。
同じサーヴァントたるマシュが戦おうと盾を構えるが、彼女が戦う事を怖がっている事に気付いたオメガモンが前に進み出る。カチャ、カチャと言う金属音を鳴らしながら、マシュの隣に並び立つ。
「私も戦う。2対1の戦闘は騎士のやり方に反するが、生憎私はそのような事は気にしない」
「オメガモンさん……!」
「頼んだよ、オメガモン! マシュ!」
身体の大きさを2メートル程に縮小しているオメガモン。彼はマシュとの共闘を自ら名乗り出た。彼もサーヴァント戦は初めてなのだが、自分が戦うしかないと腹を括る。
かつての自分と同じだったマシュと立香の力となる為に。この世界を守る為に。オメガモンは敵サーヴァントとの戦闘に挑もうとしている。
ーーーーーーーーーー
「お覚悟を……!」
「行こうマシュさん!」
「はい、オメガモンさん!」
邪悪な気配を漂わせるサーヴァント。彼女が右手に鎖付きの短剣を握り、左手で鎖を掴む一方、オメガモンは構えを取り、マシュは身の丈もある十字架型の盾を構える。彼らが敵サーヴァントとの間合いをゆっくり取る中、先にサーヴァントが仕掛けて来た。
マシュに向けて鎖付きの短剣が放たれる。目にも止まらぬ速さで迫り来る短剣に対し、マシュが反応する。手にしている盾で短剣を防ぎ、返す刀で突進を開始してシールドバッシュを叩き込む。
「やぁっ!」
「クッ!!」
マシュの怒涛の攻撃の前に敵サーヴァントが防戦に追いやられる中、オメガモンはメタルガルルモンの頭部を象った右手の籠手から黒光りする大砲を展開し、敵サーヴァントに照準を合わせる。
体内に貯蔵している絶対零度の冷気を砲身の内部で砲弾の形に圧縮し、凝縮した絶対零度の冷気を蒼く煌めく冷気弾として撃ち込んだ。
「マシュさん、一旦離れろ!」
「は、はい!」
オメガモンの言葉を聞いたマシュがその場から飛び退くのと、絶対零度の冷気弾が発射されたタイミングは一緒だった。
敵サーヴァントは咄嗟に砲撃を回避するが、冷気弾が身体を掠めた事でその部分が瞬く間に凍結していく。冷気弾が着弾した場所は瞬く間に凍結し、氷の世界と化した。
「そんなっ……!」
「今だマシュさん!」
「はい!」
「怒りましたよ……!」
自分の身体が凍り付いた事に驚愕する敵サーヴァント。その隙を見逃すオメガモン達ではない。マシュは盾を構えながら追い打ちをかけようとしたが、その直前に敵サーヴァントがとある行動に出た。
両目を覆い、視界を封じていたバイザーを外し、今まで見せなかった両目をマシュに見せた。その両目から不気味に輝く赤い光が放たれ、マシュは咄嗟に盾を目の前に突き出した。何かの攻撃が来ると思ったのだが、実際には違った。
「ッ……これは!」
「マシュ!?」
「まさか……私の魔眼に耐えられるとは。石化すると思っていましたが……」
「魔眼……石化? マシュ分かったわ! あのサーヴァントの真名が! あれはメドゥーサよ!」
『メドゥーサ!?』
マシュは凄まじい重圧を掛けられたように、地面に片膝を付いてしまった。オメガモンと立香が驚く一方、敵サーヴァントは表情を歪めた。
本来ならばマシュを石化させたかったのだが、魔力のパラメーターがBと中々高かった為、そう上手くはいかなかった。
その上、オルガマリーに真名を言い当てられてしまった。敵サーヴァントはメドゥーサ。ギリシャ神話に登場するゴルゴン三姉妹の末妹。見たものを石にする蛇の怪物として描かれていた。
「気は乗りませんが、貴方達も石になりなさい」
「させるか!」
メドゥーサが立香とオルガマリーを石化させようと魔眼を輝かせるが、彼らを庇うようにオメガモンが彼女の前に立ち塞がる。
立香達は石化を免れる事になるが、オメガモンは少なからず魔眼による影響を受ける。そう思われたが、何故かオメガモンの身体は石化する事も無ければ、凄まじい重圧がかかる様子が一向に見られない。
「私の魔眼が効かない……!? 貴方はサーヴァントではない。何者ですか?」
「ただの聖騎士だ!」
オメガモンは英霊で無ければ、魔力を保有していない。しかし、純白の聖鎧による加護と、神霊の格の魂、そして生前の戦いで築き上げて来た実力によって無効化している。
目の前にいる聖騎士には石化の魔眼が通用しない。そう悟ったメドゥーサは、凄まじい重圧で動けないでいるマシュに標的を変える。未だに動けないでいる彼女に向けて鎖付き短剣を飛ばそうとするが、それは出来なかった。
「私の、負け……ですね……」
「私ではなく、彼女を先に攻撃しようとしたのが敗因だ」
マシュに攻撃すると言う事は、オメガモンから攻撃を喰らうのと同じ意味だ。聖騎士はガルルキャノンを構えると共に砲身の内部に絶対零度の冷気を集束させ、砲弾の形に凝縮して蒼く煌めく冷気弾をメドゥーサに向けて撃ち込んだ。
攻撃を繰り出そうと思っていた時に攻撃が放たれた。咄嗟に回避しようとしたメドゥーサだったが、絶対零度の冷気弾の速度が彼女の速度を上回り、蒼く煌めく冷気弾が直撃した。
自らの敗北を悟りながら、瞬間凍結していくメドゥーサ。一陣の風が吹いた瞬間、彼女は粒子レベルにまで分解され、そのまま消えていった。
ーーーーーーーーーー
「ハァッ……何とか勝てましたね……」
「あぁ。お疲れ様……と言いたい所だが、休んでいる暇はない。こちらに近付いて来るサーヴァントの反応をまた確認した。しかも2騎いる……!」
本来であれば、冬木市では聖杯戦争が行われていた。7騎のサーヴァントによる殺し合いが、何らかの理由で狂った。マスターのいないサーヴァントがいてもおかしくない。サーヴァントの敵はサーヴァント。
そのサーヴァントの反応を探っていた所、マシュ達を見付けて戦闘に突入した。しかし、先程のメドゥーサは英霊ではなく、亡霊に近かった。
「見付ケタゾ、新シイ獲物!」
「あれはアサシンのサーヴァント……! じゃあもう1体は……」
「サーヴァントデハナイ気配ヲ感ジルガ、御首ニハ違イナイ……」
「ランサーのサーヴァント……!」
オメガモン達の前に現れたのは2騎のサーヴァント。白い髑髏の仮面に黒いマント、黒い布で覆われた棒のような右手と不気味な外見をしているアサシン。厳つい姿をした僧兵のランサー。
先程はオメガモンとマシュの連携で1騎のサーヴァントを倒す事が出来たが、今度は2騎のサーヴァントと戦わなければならない。そう悟って雰囲気に飲まれるオルガマリーとマシュを励ますように、オメガモンは声を張り上げる。
「とある兵士が言っていた。“獲物を前に舌なめずりをするのは三流のやり方”と。お前達のような悪霊に負ける私達ではない!」
「そうだ! 俺は絶対に諦めない!」
「良いねぇ、気に入った。逆境の中でも諦めないその勇気。それに見た事ない騎士さんよ、お前はすげぇ物を持っている」
「誰だ!」
「何者? 見りゃ分かんだろ。キャスターのサーヴァントだ」
オメガモンの言葉に頷くように立香も声を張り上げる。聖騎士が2騎のサーヴァントと戦おうとしたその時、何者かがオメガモン達の所に歩み寄って来た。
彼はキャスターのサーヴァント。青いローブを纏ったケルトの魔術師。他のサーヴァントと違い、正気を保っており、オメガモン達に味方しようとしている。
「構えなそこのお嬢ちゃん。腕前じゃあ奴らに負けてねぇ。番狂いも夢じゃねぇ。坊主がマスターかい? 指示を任せる」
「分かった! オメガモンはランサーを、マシュとキャスターはアサシンを!」
立香の指示を受けたオメガモンはランサーと、マシュはキャスターと共闘してアサシンと戦う事となった。
単独でのサーヴァント戦は初めてのオメガモンと、何やら曰く付きのキャスターと共闘するマシュ。彼らの戦いが始まった。
ーーーーーーーーーー
「むぅん!」
聖騎士と僧兵の戦い。最初に動いたのはランサーだった。手にした薙刀を構えながら突進を開始し、間合いを詰めて全力で薙刀を振るう。
狙いはオメガモンの首。一撃必殺。必ずこの一撃で仕留めると言う意志が込められた攻撃だったが、オメガモンは身を屈ませて攻撃を避ける。
そして両足で地面をしっかりと踏み締めながら上半身を回転し始めるオメガモン。ウォーグレイモンの頭部を象った籠手となっている左手。そこからグレイソードを出現させながら一気に振り上げる。
「ぬっ!」
「終わりだ!」
右斬り上げによって弾かれた薙刀。これでランサーは無防備となり、胴体はがら空きとなった。その隙を逃すオメガモンではない。返す刀でグレイソードを振り下ろし、僧兵を一刀両断して戦いを終わらせた。
目の前で粒子となりながら消滅するランサーを見て、戦闘が終了した事を確認すると、オメガモンは背中に羽織っているマントを翻し、マスターの所へと戻っていった。
「シャアッ!」
「はあっ!」
「はっ!」
同じ頃、アサシンとマシュ&キャスターの戦いも始まっていた。先手を取ったのはアサシン。黒塗りの短剣―ダークを弾丸として投擲する
ノーモーションから繰り出された攻撃。それに対し、キャスターは手に携える杖を構えてルーンによる遠隔攻撃を放ち、魔弾を迎撃していく。
魔弾とルーンが激突して爆発が起きる中、マシュは爆炎と黒煙を掻い潜り、アサシンとの間合いを詰め、携えた盾で殴り掛かる。
アサシンは暗殺者。お世辞にも戦闘力は高いとは言えない。正面での戦闘より、暗殺・諜報活動を得意にしている。幾ら戦闘に不慣れなマシュが相手でも、百戦錬磨のキャスターの援護があれば猶更だ。
「アンザス!」
「これで、倒れて!」
「こんな、はずでは……!」
キャスターの火炎弾の直撃を喰らうと共に、体勢を崩したアサシン。追い打ちをかけるようにマシュの攻撃が入り、霊核を破壊され、粒子に変わりながら消滅していった。
ランサーとアサシンの2騎のサーヴァントとの戦闘。キャスターの助力のおかげで、オメガモン達はピンチを抜け出す事が出来た。
ーーーーーーーーーー
「あ、あの……ありがとうございます。危ない所を助けて頂いて……」
「おぅ、お疲れさん。この程度は貸しにもならねぇから気にするな。それより自分の身体を心配するんだな」
「ひゃん!」
ランサーとアサシンの2騎のサーヴァントとの戦闘終了後。自分を援護してくれたキャスターにマシュがお辞儀をすると、キャスターは笑顔で答える。
この程度は気にするな。兄貴分らしい懐の広さを見せたと思いきや、唐突にマシュの体を触って来た。誰がどう見てもセクハラとしか言えない。
マシュは顔を真っ赤にしながらキャスターから離れる一方、若干の怒りを覚えたオメガモンがキャスターに静かに歩み寄る。
「おぉ、中々良い体してるじゃねぇか! 役得役得っと」
「おいお前、私の仲間に随分な事をしているではないか」
笑みを浮かべるキャスターの後ろからガシャン、と言う音が聞こえて来た。キャスターがゆっくり振り返ると、自分の後頭部に黒光りする大砲を突き付けられている事に気付く。
白兜からは伺えないが、空色のつぶらな瞳から怒りを見せているオメガモン。若干険しい表情を浮かべている聖騎士を見て、キャスターは冷や汗を掻き始める。
「あ、あの聖騎士さん? 何で俺に物騒な物を押し付けているんだ?」
「何故? 理由は簡単だ。お前が私の仲間にセクハラをしたからだ。そういう事は自分の妻や恋人にするものだろう?」
「ま、まぁそうなんだが……」
「スキンシップのつもりでやったと信じたいが、相手は嫌がるかもしれないぞ? 気を付けてくれ」
「お、おう……済まねぇな」
言葉を言い終えると、オメガモンはガルルキャノンを戻した。相手を怒っているようでいて、それとなく諭しているように見えた為、キャスターは申し訳なさそうに頭を下げた。
その一幕を見ていた立香とオルガマリーは苦笑いを浮かべながらも、キャスターから詳しい話を聞く事にした。初めて出会ったまともな英霊。この異変に関して何かしらの情報を持っている筈と信じて。
先ずは自分達の状況を話した。立香がマスターとして現地調査を行っており、マシュがサーヴァントとなっている。オメガモンは立香のパートナーデジモンとなっている。
「そこの聖騎士さんはオメガモンと言って、デジモンと言う種族なのか。道理で俺達サーヴァントとは違う気配を感じたし、神霊の力を持っていてもおかしくねぇな」
「キャスター。貴殿はこの街で起きた聖杯戦争で召喚されたサーヴァントで、唯一の生存者なのか?」
「まぁな。負けていないと言う意味ならな」
キャスターがオメガモンの質問に答えながら、冬木市で起きている異変について話し始める。冬木市で起きた聖杯戦争は何時の間にか別の物にすり替わっていた。
経緯はキャスターにも分からない。街は一夜で炎に覆われ、人間はいなくなり、サーヴァントだけが残った。
そんな中、セイバーが聖杯戦争を再開させて大暴れを始めた。そしてランサー、アーチャー、ライダー、アサシン、バーサーカーが倒された。キャスターは生き残る事が出来たが、セイバーによって倒されたサーヴァント達は全員真っ黒い泥に汚染された。
そして彼らは骸骨兵と共に何かを探し始めた。それにキャスターも含まれている。彼を倒さない限り、聖杯戦争は終わらないのだから。
「説明ありがとう。つまり、残っているセイバーを倒せば、この街の聖杯戦争が終わると言う事だな? この状況が戻るかどうかはさておき……」
「貴方はセイバーを倒したいけど、一人じゃ勝ち目がないから私達と協力したいって事ね……」
「その通りだ。悪ぃなぁ。俺がランサーとして召喚されていれば、セイバーを一刺しで仕留めていたんだがな……でもやっぱ俺にはキャスターは合わねぇな。冬木の聖杯戦争でキャスターなんてやってられねぇぜ、全く」
キャスターはオメガモン達の為ではなく、自分の目的で動いている。それが偶然にもオメガモン達と一致していただけだ。
キャスターのように、英霊の中には複数のクラス特性を持つ者もいる。例えば、ギリシャ神話で有名な英雄―ヘラクレスはキャスター以外の全てのクラス特性を持っている。本人が最も力を発揮する事が出来るのはアーチャーのクラスだが。
キャスターの場合、ランサーの適正もある。ただ本人が一番好きで、本業だと言い張るのはランサーみたいだが。
(槍を使えて、魔術も使える……誰だろう? きっと真名が分かれば、物凄い英雄なのだろう)
「サーヴァントの鉄則として、自分の時代以外の事情には深く関わってはいけない。あくまで戦いに協力するだけだ。アンタらはこの異常を調査したい。俺はこの聖杯戦争を終わらせたい。利害は一致している。どうだ? ここはお互いに手を組まねぇか?」
「私もそうしたいけれど、貴方のマスターは誰になるの?」
「そりゃあそこの坊主一択だろ。この街限定の契約だが、よろしく頼むぜ?」
こうして、キャスターがオメガモン達一行の仲間入りを果たすと共に、立香と契約を果たした。冬木市の異変を調査・排除するまでの間だが。いわば客将扱い。
やはり現地にいるサーヴァントが仲間にあるのはありがたい。戦力の増強もそうだが、詳しい事情を聞く事が出来る。
「後は目的の確認だな……アンタらが探す物は間違いなく大聖杯になる。大聖杯ってのはこの土地のいわば“心臓”みてぇな物だ。特異点がある場所と聞かれれば、それ以外考えられない。だが、大聖杯にはセイバーが居座っている。奴に汚染された残りのサーヴァントもな」
「ライダーとランサーとアサシンは倒したから、アーチャーとバーサーカー?」
「アーチャーは俺がいればどうにかなる。バーサーカーはセイバーでも手を焼くが、近寄らなければ襲ってこねぇから無視するのもありだな。案内は俺がする。突入のタイミングは坊主に任せる」
オメガモン達はキャスターの案内を受けながら、大聖杯を目指す事となった。早速オメガモンが巨大化して、立香、マシュ、オルガマリー、キャスターの4人を乗せる。
そこから低空飛行で移動を開始するが、オメガモンが飛行出来る事と身体の大きさを自由自在に変える事が出来る事を知り、キャスターが驚いていたのは言うまでもない。
LAST ALLIANCEです。
今回は特に裏話をするような事がないので省略します。手抜きじゃないです。
皆さん。よろしければ感想・評価・お気に入り登録の方よろしくお願いします。
あたたかい感想とか前向きなコメント、作品の質を向上させるようなアドバイスや、モチベーションが上がるような応援メッセージや高評価を頂くと、作者のやる気が究極進化します。それが執筆意欲に繋がります。
それでは次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!
次回予告
宝具が使えないマシュを特訓し、大聖杯がある場所に突入するオメガモン達。
門番ことアーチャーと戦うオメガモン。その思いとは?
第3話 宝具と思いと