Digimon/Grand Order 作:LAST ALLIANCE
今回はカルデアでの話が中心です。英霊召喚に事情説明。
そろそろ本編の続編(何のこっちゃ)も書き始めたいので、投稿ペースを落とそうかなと思います。
「此処は……何処だ?」
「おっ、目を覚ましたようだね。良し良し。元気そうで何よりだ。」
オメガモンが目を覚まし、最初に目にしたのは白く無機質な天井。上半身を起こすと、目の前に広がるのは真っ白い景色。どうやら何処かのお部屋にいるらしい。
後頭部のある枕の感触から自分はベッドで寝ていたと気付かされると、オメガモンの顔を長い黒髪の絶世の美女が覗き込む。
「おはよう、そしてこんにちは。意識はしっかりしているかい?」
「おかげ様で。ところで此処は何処で、貴女は何者なんだ? 取り敢えずサーヴァントなのは分かるのだが……」
「成る程。所長の言う通り冴えているね。私はダ・ヴィンチちゃん。カルデアの協力者で、召喚英霊第3号。ここはカルデア」
「ダ・ヴィンチ!? まさか、貴女かの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチなのか!? いやでも……貴女は女性と言うより『モナ・リザ』ではないか!」
レオナルド・ダ・ヴィンチ。ルネサンス期に誉れ高い万能の天才芸術家にして発明家。文明の発展に数多の影響を与えた、人類史に名を残す有数の天才。
本来は男性なのだが、生前の作品の“女性”を再現している。その女性は有名な『モナ・リザ』。まるで絵画が実体化して歩いているような物だ。
「うん。まぁ君の言いたい事や聞きたい事は分かるけど、話は後にしよう。管制室に行きなさい。待っている人がいるよ?」
「ありがとう。では失礼する」
オメガモンはダ・ヴィンチに教えられ、管制室に向かっていく。カチャ、カチャと言う金属音を鳴らしながら。
管制室に入ると、立香とマシュが出迎えてくれた。立香はカルデアの制服を身に纏い、マシュは眼鏡をかけ、パーカーを着ている。どうやらこれが普段着のようだ。
「おはようございます、オメガモンさん。無事で何よりです」
「ありがとうオメガモン。助かったよ……」
「おはよう2人共。無事で何よりだよ」
「再会を喜ぶのは良いけど、全員揃った所で話をするわ。その前に立香、ミッション完了。お疲れ様。全て押し付ける形になったけど、事態を乗り越えた。心からお礼を言いたいわ」
「あぁ、そして話はここからだ。現実と向き合わなければならない」
オルガマリーが姿を見せた後、カルデアの復旧に追われていたロマニの話が始まった。マシュが回収した水晶体は聖杯だった。カルデアスは依然として赤いまま。外部との連絡が取れず、カルデアから外に出たスタッフは戻って来ない。
レフの言う通り、既に人類は滅んでいる。カルデアスが深紅に染まっている時点で、未来が焼却された。カルデアはカルデアスの磁場で守られている。外部との通信が取れないのは通信機の故障ではなく、受け取る相手がいないから。
カルデアの内部の時間が2016年を過ぎれば、この宇宙から消滅してしまう。今は崩壊直前の歴史に何とか踏み止まっている状態。まるで宇宙空間に浮かぶコロニーのようだ。
「シバを復興させて過去の地球の状態をスキャンしてみたんだけど、冬木の特異点は消えた。でも未来は変わらない。他にも原因があると僕らは仮定したその結果がこれだ」
ロマニが見せたのは何かが狂った世界地図。新たに発見された、冬木市とは比べ物にならない程の時空の乱れ。過去を変えれば未来は変わるが、ちょっとやそっとの過去改竄では未来を変えられない。
歴史には修正力がある。例え少数の人間を救う事が出来ても、その時代が迎える結末、決定的な結果だけは変わらないシステムとなっている。
これらの特異点は人類史におけるターニングポイント。現在の人類の在り方等を定めた究極の選択点。それらが崩されると言う事は、人類史の土台を崩されると言う事となる。この特異点が出来た時点で未来は決定した。人類に未来はない。
「でも私達は違う。この場所はまだその未来に到達していない。私達だけがこの特異点を修復する事が出来る。崩れた特異点を元に戻すチャンスを掴もうとしている」
「つまりこの7つの特異点にシフトし、特異点を修復して歴史を本来の形に戻す。それが人類を救い、世界を守る手段と言う事ですね?」
「そうだ。でも僕らには力がない。マスター適任者は立香君以外は凍結。サーヴァントはマシュだけ。マスター適性者48番、藤丸立香。人類を救いたいなら。2016年から先の未来を取り戻したいのならば。君はこれからたった1人で、この7つの人類史と戦わなければならない。その覚悟はあるか? 君はカルデアの、人類の未来を背負う力はあるか?」
ロマニの問いに立香は押し黙る。状況は最悪だ。マスターは自分しかいない。サーヴァントも半人前のマシュだけ。相手は7つの人類史。歴史その物との戦い。
自分だけが生き残った。自分一人だけの戦い。大役を自分に押し付けられようとしている。しかし、自分しか出来ない。自分にしかやれない大仕事。泣き言は許されない。
現実を突き付けられ、どうすれば良いのか分からず、俯く立香の肩を優しく叩くオメガモン。自分を見上げる立香と目が合うと、彼を勇気づけるように大きく頷いた。
オメガモンは分かる。かつての自分も同じだった。自分しかできない。自分がやらなければならない。泣き言は許されない。逃げることも許されない。そんな戦いを経験して勝利したものの、代償として命を落とした。
だから目の前にいるテイマー、もとい立香の為にこの世界に来た。彼のパートナーデジモンとなった。その答えが見つかった気がした。
「ロマニ殿。貴方は言った。“たった1人で、この7つの人類史と戦わなければならない。その覚悟はあるか? 君はカルデアの、人類の未来を背負う力はあるか”と。今ここで立香君にその問いを投げかけるのはどうかと思う。彼は一般人。元々平和な日常で暮らしていた人間。貴方は彼にしか出来ないと言って、責務を押し付けようとしているのではないか? それは無責任な大人の考えではないのか?」
「……確かに君に言う通りだよ、オメガモン。でも彼しかマスターはいないんだよ? それは分かるよね?」
「ならば問おう。誰がマスターでないと7つの人類史と戦えないと言った!? 誰がマスターでないとカルデアの、人類の未来を背負う力はないと言った!? 私は宣言する。例え藤丸立香がマスター適性が無い一般人だとしても、生き残った最後のマスターだとしても、必ず人類史に打ち勝つ事が出来ると! 彼が最後まで諦めず、勝利に向かって突き進む意志がある限り! 7つの人類史とそこに待ち受ける強敵はこの私、“終焉の聖騎士”オメガモンが戦う。私のテイマー、藤丸立香の為に! そして戦えない全ての人々の為に!」
「オメガモン……!」
オメガモンの宣言。戦えない立香の代わりに戦う。その強い意志。それを感じ取り、立香の瞳から涙が零れ始める。目の前にいるのは本物のオメガモン。かつて両親と共に映画を観て、そこから憧れてファンになった聖騎士。
パートナーデジモンになってくれたのも嬉しいが、自分の為に戦ってくれる事が何より嬉しかった。自分の事を誰よりも理解し、その上で戦ってくれる最強にして最高の相棒。その思いが伝わった。
「凄いな……君は本物の聖騎士だ」
「かつての私も立香君と同じだった。元一般人のデジモンだった。人類とデジモン。2つの種族の未来を背負い、2つの世界を救う為に戦った。2つの種族と世界を救う事は出来たが、その代償に私は命を落とした。だから立香君の剣となり、銃となって戦う。私のような経験をさせない為に」
「そうだったのか……僕は特異点でのやり取りは聞けなかったけど、君が物凄く強くて高潔な聖騎士なのは分かった。立香君。こんな最強で最高の聖騎士を従えている君はどうする?」
「俺に人類を救えるかどうか、人類史と戦えるかどうか分かりません。戦う力はないけど、目の前の現実から逃げ出す勇気もありません。俺は戦います」
オメガモンの宣言に勇気付けられたのか、立香は戦う事を決めた。英雄になりたい訳ではないが、英雄と共に戦いたい。それは誰もが一度は抱く願い。
大人の道具として利用される事になるのは分かっている。一般人に全てを託すと言う異常事態。それでも立香は前に進む事を決めた。自分は1人じゃない。オメガモンと言うパートナーデジモンがいるのだから。
「ありがとう。そしてごめんなさい。君に大変な仕事を押し付けて……でも君とオメガモンの言葉でこの世界の運命は決定したわ。予定した通り、人理継続の尊命を全うするわ。目的は人類史の保護・奪還。探索対象は各年代と、原因と思われる聖遺物たる聖杯。戦う相手は歴史その物。多くの英霊や伝説と戦うでしょう」
「これは挑戦であると共に、過去を冒涜する行為でもある。僕達は人類を守る為に人類史と戦うから。でも生き残るには、未来を取り戻すにはこれしかない。……例えどんな結末が待っていようと」
「カルデア最後にして原初の使命。作戦名は人理守護指定・グランドオーダー。魔術世界における最高位の使命を以て、未来をこの手に取り戻しましょう!」
オルガマリーの言葉に全員が頷いた。ここから先は人類を守る為に永きに渡る人類史を遡る、運命との戦いに突入する。
中心となるのは立香とマシュ、そしてオメガモン。様々な時代。様々な場所。7つの特異点を巡る長い旅が始まった。
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「所長、身体の調子は大丈夫か?」
「おかげ様で大丈夫よ。何か今までより調子良いかも。身体の疲れや、心の痛みとか前より感じなくなったわ。貴方の力のおかげかしら?」
ミーティングが終了した後、オメガモンはオルガマリーに身体の調子を尋ねると、彼女は微笑みながら答える。
冬木市の特異点にいた時は精神エネルギーのみで存在していた所長。レフによって管制室に設置された爆弾。それが彼女の足元に仕掛けられていた為、肉体的に一度死亡したが、オメガモンの力のおかげで蘇生する事が出来た。
「多分そうかもしれないな……こればかりは私にも分からないが」
「オメガモン、ありがとう。私は本当ならあの時死ぬ筈だったけど、貴方に助けられてもう1度生きるチャンスを与えられた。貴方が繋いだこの命を大切にするわ。本当にありがとう」
「どういたしまして。私は立香君のパートナーデジモンだが、このカルデアにいる職員でもある。もし何か力になれるのなら何でも頼んで欲しい。何か私に手伝える事はないか?」
「手伝える事……そうね。じゃあ早速色々と頼もうかしら」
オルガマリーの頼みを受け、早速オメガモンが動き出した。先ずは爆発と火災によって機能が大幅にダウンしたカルデアの復旧。職員達が寝る間も惜しんで復旧を進める中、オメガモンは瓦礫撤去や荷物運びを率先して手伝った。
瓦礫撤去や荷物運びのような力仕事。それは力持ちのオメガモンが加わったおかげで、予定よりも早く進んだが、聖騎士の本領が発揮されたのはカルデアのシステムや電子機器等の修理といった所だった。
オメガモンはデジモン、言わばデジタルモンスター。その関係からか、電脳機器にはかなり強い。破壊された機械の修理やシステムの立ち上げ、バックアップの保存等の一通りの処理で意外な本領を発揮した。
そして不眠不休で頑張るカルデアの職員達を労う為、エプロンを自作した上で食堂でカルデアにある食料を使って料理を作り、カルデアの職員達皆を喜ばせた。
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それから数日後。カルデアの復旧の目途がある程度付くと、オルガマリーはオメガモン達をとある部屋に案内した。
その部屋にあるのは『守護英霊召喚システム・フェイト』。2004年に完成したカルデアの発明の一つであり、冬木市で行われた聖杯戦争での英霊召喚を利用し、カルデアの前所長にしてオルガマリーの父親―マリスビリー・アニムスフィアによって作られた召喚式。
英霊とマスター双方の合意があって初めて召喚出来るのだが、使用する物はデミ・サーヴァントとなったマシュの宝具たる十字の大盾。これを触媒に用いて召喚サークルを設置し、特異点を修復して得たカードを使って召喚する。
「このカードを置いて……と。これで準備は良いんですよね?」
「えぇ。それじゃあ始めましょう」
立香が置いたカードはセイントカード。英霊のクラスの絵が描かれたカードだが、誰が召喚に応じるのかは分からない。今回置いたカードは4枚。セイバー、ランサー、アーチャー》、ライダー。
今後7つの特異点を回りながら修復する事になるのだが、現状では戦力が足りない。オメガモンやマシュが弱いのではない。単純に数が少ない。戦力は多い方が良い。そう考えたオルガマリーの発案で、英霊召喚の儀式が行われようとしている。
サーヴァントの召喚を行うのはマスターたる立香。英霊召喚は通常の魔術儀式より簡単だが、同時に極限の神秘でもある。落ち着きながら大胆に行かなければならない。
4枚のカードを1枚ずつ並べ、その上に聖晶石を乗せて準備完了。英霊召喚システムとカルデアの電力が唸りを上げる中、英霊召喚が始まった。
凄まじい魔力が集束しながら眩い輝きを放つ中、オメガモン達の目の前に4騎の英霊が姿を現した。無事に英霊召喚は成功した。
1人は青い装束を身に纏い、右手に紅い魔槍を携えた男性。オメガモン達を見て笑顔を浮かべる。1人は浅黒い肌をし、赤い外套を身に纏った白髪の男性。周囲を見渡し、現状を把握した。1人はバイザーで視界を封じた妖艶な美女。バイザーを外して良いかどうか悩んでいる様子。最後の1人は常に凛とした空気を纏い、髪を後ろで結い上げ、青と銀の甲冑を着た見目麗しい少女剣士。
「すげぇ……!」
立香が感嘆に満ちた声を上げ、オルガマリーもその威容に目を奪われる。4騎のサーヴァントが一同に集結している。聖杯大戦ならまだ分かるが、同じ目的の為に手を取り合いながら共に戦う事は先ず有り得ない。
最初に口を開いたのはランサーのサーヴァント、クー・フーリン。この面々の中で立香達と短期間ではあるものの共闘した中だ。
「よぉ。久し振りだな、坊主。ちゃんとランサーで召喚してくれて嬉しいぜ!」
「ランサーで呼ぶように頼んだのは誰だよ?」
「ハハハ。あの時はキャスターの俺だったな。おっと、自己紹介してなかったな。俺はクー・フーリン。今後ともよろしくな!」
「俺は藤丸立香。よろしく!」
ランサーの真名はクー・フーリン。アイルランド神話『アルスター伝説』に登場する大英雄。セイバー、ランサー、ライダー、バーサーカー、キャスターの適性を持っているが、本人が一番好きで得意なのはランサー。
クー・フーリンと立香が握手を交わす一方、オメガモンが残り3騎のサーヴァントとの交流を開始していた。
「メドゥーサ……あぁ~あれか。姿が変わる前なのか」
「はい。この体は、アテナの呪いにかかる前の姿です。いつ怪物化するか私にも分かりません」
「その時は私達で止めるよ。だから今だけは力を合わせて欲しい」
「物好きなのですね、貴方は」
「ありがとう。最高の誉め言葉だよ」
ライダーの真名はメドゥーサ。有名なのは蛇の髪と石化の魔眼を持つ怪物の姿なのだが、今は呪いをかけられる前の姿をしている。
反英雄、正確に言えば英霊に敵対する魔物に近い存在だが、“かつて美しかった者”としての側面がある為、英霊として召喚する事が出来た。
「さて次は……こうして会って話すのは初めてだな、アーチャーのサーヴァント」
「驚いたよ。まさか英霊になって子供の頃に憧れたヒーローに会えるなんて……」
「……と言う事は私の事を知っているのか?」
「あぁ、俺はエミヤ。君に憧れたただの英霊さ、オメガモン」
「そうか……どうやら私はこの世界ではそこそこ有名みたいだな。ならば期待に応えられるように頑張らないと」
「お互いに頑張ろう」
アーチャーの真名はエミヤ。かつての記憶は殆ど失っているが、オメガモンの事は何故か覚えていた。それは子供の頃に『僕らのウォーゲーム!』を観た事があるから。
子供の頃に憧れたヒーロー、もといデジモンに出会えた事を嬉しく思い、微笑みながらオメガモンと握手を交わす。
その正体は人々を救う為に世界と契約し、その死後“抑止の守護者”となったとある平行世界の衛宮士郎の未来の姿。“正義の味方”になる事を目指し、たどり着いた先の果て。辿りうる可能性の一つ。
オメガモンは改めて決意する。立香とエミヤ。彼らのように自分を知っている者達の為に、彼らが期待している自分で在り続ける事を。本家本元のオメガモンに勝るとも劣らないイメージを保ちつつ、大活躍をしてみせると。
「最後は貴女だ、セイバー。いやアーサー王と呼ぶべきか」
「アルトリアと言います。先の戦いでの武勇、お見事でした」
「ありがとう。私の世界にもデジモンとなったアーサー王がいる。彼女には勝てなかったから、悲願の1つが叶えられたよ」
「成る程。貴方の世界は面白い世界なんですね……」
セイバーのサーヴァント。彼女はアーサー王。アルトリア・ペンドラゴン。『アーサー王伝説』に登場するブリテンの伝説的君主。選定の剣を引き抜き、不老の王となった騎士王。
冬木市の特異点で戦った時の記憶を持っている為、オメガモンの実力を認めている。真っ向勝負で自分を倒せると言い切る程。
「所長、この後の時間は大丈夫か? 私ことデジモンについて説明したいのだが……」
「良いわよ? 貴方の事を知る上で必要になるだろうし……会議室に案内するから付いて来て」
全員はオルガマリーの案内に従い、部屋から出て別の部屋に入室した。そこは会議室のように広く、丸くて大きなテーブルが中央にある。椅子も沢山の数がある。
ご丁寧にホワイトボードもある。自分以外の全員が座ったのを確認すると、オメガモンはこの世界に生きる人々と英霊に自己紹介と、デジモンの紹介を始めた。
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「はい。では改めて自己紹介すると共に、デジモンについて紹介しよう。私の名前はオメガモン。人間ではなく、デジタルモンスターと言う種族。私達や人間達はデジモンと呼んでいる」
「デジモン……初めて聞く種族です」
「そんな種族がいたなんて……世界は広いな……」
ホワイトボードに黒いペンで書きながら、オメガモンはカルデアの皆と英霊達に説明を始める。先ずはデジモンの説明から。マシュとロマニは感心するように頷き、立香は目を輝かせ、ダ・ヴィンチは興味津々そうに聞いている。
レオナルド・ダ・ヴィンチ。カルデアの技術部を統括する、技術局特別名誉顧問であり、技術部のトップ。非常に奇天烈でクセの強い性格だが、決して冷酷な人物ではない。デジモン達に個人的な興味はあるが、解剖したり、実験したいと言う邪悪な思いは抱いていない。
「デジモン達は人間と違って多種多様な姿をしている。ドラゴンや恐竜、天使、悪魔。私のような騎士の姿をしている者もいる。デジモンと言う種族の特徴は世代がある事。中には世代がない個体もいるが、大半のデジモンには世代がある。世代が一段階上に上がる事を進化と呼んでいる」
「デジモンと言う生物の世代は幾つあるのですか?」
「大体は5つだ。幼年期、成長期、成熟期、完全体、究極体。中には幼年期をもう1回経験する個体もいれば、アーマー体や超究極体等の様々な世代がある。私は最終段階の究極体の中で、2体の究極体デジモンが合体した合体究極体。実質超究極体扱いされている」
アルトリアの質問にオメガモンは答える。デジモンの特徴たる進化。それに興味を見せているアルトリアに対し、聖騎士は質問に丁寧に答える。
オメガモンの言葉に頷くように立香が補足説明を入れて確認を求めると、オメガモンは微笑みながらそれに頷いた。
「オメガモンはウォーグレイモンとメタルガルルモンが融合した聖騎士なんです。右腕がメタルガルルモン、左腕がウォーグレイモン。であっているよね、オメガモン?」
「あぁ、ありがとう。立香君とマシュさんはマスターとサーヴァントの関係だが、私と立香君はパートナーとテイマーの関係。だから魔力とかそういう心配は必要ない。私は単体で動く事が出来る」
オメガモンは自分やデジモンの事を知っている立香の気持ちを尊重し、彼のパートナーデジモンになっているが、何気にパートナーデジモンになったのは初めての経験。内心ではかなり喜んでいる。ましてやそれが自分に憧れている一般人なら猶更だ。
そして魔力等の心配が一切ない為、単独で普通に戦う事が出来る。これから回る7つの特異点において重要な戦力となるだろう。この世界では神霊扱いされているからだ。
「と言う事はオメガモンも今の姿になる前の姿があったのですか?」
「あぁ。だが私の場合は少々事情が違う。普通のデジモンはデジタマと言う卵から生まれるのですが、私の場合はそうではない。立香君が説明した通り、人々の平和を願う強い意志と願いによって、ウォーグレイモンとメタルガルルモンが合体して誕生したデジモン。生まれた時から今までずっとこの姿のままだ」
「そうなのね……そう言えば、オメガモンは身体の大きさを自由に調節していたけど、あれは能力なの?」
「究極体になると、出来る事とやれる事の幅が広がる。例えば身体の大きさを調整する能力。私は普段20メートルくらいの大きさなのだが、冬木市に来た時は2、3メートルくらいだった。状況に応じて自分で調整出来る。身体の大きさを調節していたのは移動手段としてだったが……」
「ず、随分と大きいんですね……」
女性としてはかなり身長の高いメドゥーサが驚く程、本来のオメガモンの身長は高い。普段は20メートル程で、分かりやすく言えばマンションの5階~7階に該当する程の大きさとなる。今は人間と同じサイズに縮小しているが、それでも不自由はない。
オメガモンの分かりやすい説明を誰もが聞く中、ロマニと所長とダ・ヴィンチの3人はメモを取っている。これから新しく来る英霊やメンバーの為だ。
「デジモンにとって、正直身体の大きさはあまり関係は無い。大きいデジモンもいれば、小さいデジモンもいる。でも小さいからと言って油断してはいけない。人は見かけによらない。それはどの種族にも言える」
「成る程な……1つ聞きてぇけど、デジモンは何処に住んでいるんだ?」
「デジモンはデジタルワールドと言う異世界に住んでいる。この世界のような人間が暮らしている世界……我々はこれを人間界と呼んでいるが、そこから流れ込んだ情報やデータに伴って発展して来た。デジモン達は流れ込んできたデータを使って独自の社会を形成しているが、中には人間界の神話・伝説の中に存在するグループをモチーフにした軍団や勢力がある」
「オメガモンが所属している『
「エミヤ殿の言う通りだ。だからアーサー王はある意味生みの親に当たるな……」
オメガモンの言葉を聞いたアルトリアは赤面する。自分達円卓の騎士がまさかオメガモン達の生みの親になるとは、思ってもみなかったのだから。
『
しかし、彼らは絶対的な“善”ではない。彼等がデジタルワールドの秩序を維持する為に必要と判断すれば、時には大量破壊や大量殺戮等を行う時がある。
更にそれぞれの思想も異なっており、自分達が信じる“正義”に従って行動している為、それを巡って内乱が起きる事もある。
「もう1つ質問。デジモンは普段何やっているんだ?」
「平和に暮らしている者もいれば、戦っている者もいる。デジモンは野生の本能による闘争心が強いから、至る所で戦いが繰り広げられている。日常茶飯事なのであまり気にするな」
「成る程な。デジモンと言う種族は俺達英霊より強いのか?」
「それは一概には言えないな……技の威力や効果が異なるからな……でも純粋な威力の話で言えば、完全体の時点で攻撃力は核兵器クラスになっている。分からない人は小さな島の1つが一発で消滅する威力の攻撃が連続で放てると考えてくれ」
「何よそれ!? それより一段階上の究極体は化け物じゃないの!? 上位クラス、最上位クラスの英霊でないとまともに戦えないわよ!?」
「流石に英雄王や施しの英雄になると、普通に戦えるとは思うけど、問題はマスターがいる事なんだね。マスターがいなくて、単独で戦える状態なら究極体デジモンと余裕で戦えると思うけど、こればかりは分からないな……」
英霊とデジモンの両方と戦った経験持ちのオメガモン。彼は純粋な攻撃力で言うと、デジモンの方が上だと考えた。そもそも規模が違い過ぎる。
英霊の宝具は多種多様な効果を持っているが、デジモンの必殺技や特殊能力は過酷な環境や壮絶な戦争の中で生き残り、勝利する事に特化している。
中には一撃で世界を滅ぼしたり、星を粉砕するような攻撃を繰り出す者もいる。しかし、こればかりは一体どうなるのか分からない。何しろオメガモンですら答えに悩んでいるのだから。
「取り敢えず説明はここまでにするよ。そろそろお昼の時間になるので、食堂でご飯を食べよう」
オメガモンの説明がちょうど良い所で終わった事で、一度ミーティングを終えてお昼休憩に入る事となった。
ここでエミヤが大活躍を見せた。何故なら彼は家事の達人。家庭料理をはじめとする家事一般に長けており、手馴れた様子で家事を取り仕切っていた。彼が作る料理が家庭的でとても美味しく、この日の朝食を作ったオメガモンも感嘆していた。
カルデアの職員達も絶賛し、エミヤはカルデアの食堂の料理長に任命された。満更でもなさそうな様子だったのは言うまでもない。
「凄い……同じ食材を使ってここまで美味しい料理が作れるのか」
「シロウ! お代わりです!」
「ってアルトリア殿!? もうお代わりなのか!?」
「知らないのですか、オメガモン。シロウの作る料理は至高なのです」
「あぁ……うん。それは同意するよ」
聖騎士の隣で食事しているアルトリア。気が付けばご飯は3杯目。かなり山盛りに盛られた筈が、何時の間にか無くなっている。
彼女の異名は腹ペコ騎士王。オメガモンも驚くほどの食べっぷり。その理由は彼女の時代の料理事情にある。彼女の故郷のブリテンでの料理は、ただ材料を磨り潰しただけの料理とはとても言えない代物だった。
そしてエミヤの事を“シロウ”と呼んでいる事については、あまり触れないようにしている。エミヤの本名が“衛宮士郎”である事は分かったが、一体どういう関係で何があったのかはいつか聞く事にした。
まだ関わって日が浅い為、個人の事情でとやかく言いたくはない。それでトラブルを起こしたくない。それがオメガモンの本心だった。
第1特異点に向かう当日までの間、カルデアにいる面々はそれぞれの時間を過ごしていた。ある者はカルデアの復旧に携わり、ある者はマイルームでのんびり過ごしたり、ある者はキッチンの設備を充実させたり、ある者は体育館で汗を流し、ある者はレクリエーションルームで遊んだりした。
LAST ALLIANCEです。
後書きとして、本編の裏話を話していきます。
・立香君の立ち位置
スマホゲーだからスルーしている人もいるとは思いますけど、冷静に考えてみれば結構ヤバいです。自分しかできない。自分がやらなければならない。泣き言は許されない。逃げることも許されない。そんな辛くて逃げ出したい戦い。
それに挑もうとしている(中には挑んでいる人もいますけど)彼は、本当に凄いと思いますが、大切な物を失おうとしています。書いていて辛くなりました。
・オメガモンの宣言
かつての自分を知っているから、立香君の力になろうと決めたオメガモン。
この信念のブレない所が聖騎士なのだと思いたいです。
・英霊召喚
今回来たのはアルトリア、クー・フーリン、エミヤ、メドゥーサ。
これから増えていきますが、カルデアの一日みたく彼らの日常を書いてみようと思います。何だか面白そうなので。
・デジモンの説明
正直デジモンとサーヴァントが戦ったらどうなるかは分かりません。
一応究極体=上位・最上位クラスの英霊と言う解釈ですが、この小説では基本的にデジモンVSサーヴァントはありません。
以上になります。
皆さん。よろしければ感想・評価・お気に入り登録の方よろしくお願いします。
あたたかい感想とか前向きなコメント、作品の質を向上させるようなアドバイスや、モチベーションが上がるような応援メッセージや高評価を頂くと、作者のやる気が究極進化します。それが執筆意欲に繋がります。
それでは次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!
次回予告
第1特異点に到着したオメガモン達一行。
そこは百年戦争末期である西暦1431年のフランスだった。
死んだはずのジャンヌ・ダルクが蘇り、竜の軍勢を率いて街々を滅ぼしているという事態を相手に、オメガモン達は初めての人理修復に挑む!
第6話 2人の聖女