復讐の舞姫   作:梨善

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随分久しぶりの投稿ですが、よろしくお願いします。


赤き獣は鮮血と舞う(前編)

瘴気を払いながら最下層へ進んでいくと瘴気が漂っていない鍾乳洞のような場所に辿り着いた4人。蒼く光る水が幻想的な空間を作り出しており、さっきまでの死が蔓延する空間と同じ場所にあるのが不思議なくらいだ。

 

「綺麗・・・」

 

ソフィーはその光景にポツリ、と呟き、辺りを見渡す。

 

「さっきまで腐ったような土地だったのに、一変してこんな景色になるなんて。本当によく分からない場所ね」

 

ミレイナも呟く。

そんな中、マイラが蒼く光る水に近寄り、観察し始めた。

 

「・・・これ、酸だニャ」

「え?」

 

マイラの呟きが聞こえたミレイナは間の抜けた声を出す。

 

「見て欲しいニャ」

 

マイラは小石を広い、水の中に落とす。ぽちゃん、と高い音を出すと同時に水に浸かった小石は泡を立てて溶けてしまった。

 

「・・・本当ね。ここ一帯が酸に囲まれてる訳か」

「せんせーい!!」

 

少し離れた場所でミレイナを呼ぶソフィーの声がした。

 

「何ー?」

「ありました!ゾラ・マグダラオスの『痕跡』が!」

「本当!?」

 

ソフィーの元へ駆け寄るミレイナたち。

確かにソフィーの所には火山岩のような大きな岩がそこにあった。

 

「間違いなくマグダラオスの物ね。じゃあ、奴はここを通っていたのね」

 

ミレイナとソフィーが火山岩の1部を採取し、本来の目的を達成させ、その場から立ち去ろうとした瞬間だった。

 

ワォオオオオオオオオン!!

 

狼のような声。その声の主が岩壁から飛び降り、4人の前に姿を現せた。

 

「オドガロン・・・」

 

この『瘴気の谷』の覇者、オドガロンが、自分のテリトリーに入った異物を排除するためにミレイナたちの前に立ち塞がったのだ。

 

「やれるわね、ソフィーちゃん」

「はい。いつでも」

 

ミレイナはその返事にニヤリ、と笑いクリスタルと共にオドガロンへ向け、走り出した。

 

「せぇいっ!!」

 

走りながら繰り出す、抜刀縦斬り。

しかし、『ハイジークムント』の刃は空を割くだけで、オドガロンを捉えることはなかった。

 

「こいつ!」

 

オドガロンはその場から跳び、ソフィーの前に着地する。

 

「このっ!」

 

ソフィーも太刀、『鉄刀【禊】』を振り下ろすも呆気なく躱される。

 

「思っていたよりも速い!?」

 

ソフィーの側面に回り込んだオドガロンは前足を振りかぶり、ソフィーへ目掛けて振るう。

オドガロンから距離を取るように後方へローリングし、ソフィー何とか爪を避ける。しかし、オドガロンはすぐさま口を大きく開き、ソフィーへ食らいつく。

 

「ソフィー!!」

 

咄嗟にクリスタルがソフィー目掛け、体当たりをし、突き飛ばしたことにより、オドガロンの牙は空を砕く。

 

「あ、ありがとうございます!クリスさん!」

「早く立つニャ!ご主人とマイラが後ろから回り込んでいるから引きつけるニャ!」

 

クリスタルの言葉通り、ミレイナとマイラはオドガロンの後方の左右から回り込み、距離を詰めていた。

 

「とった!!」

 

オドガロンの右後脚に一撃を加えたミレイナ。だが、オドガロンはなんの反応を示さず、再び跳び、ミレイナの背後に回る。

 

「こんの・・・。すばしっこい!」

 

飛び込むように噛み付いて来たオドガロンを『ハイジークムント』を盾にし、受け止める。

 

「マイラ!!」

「おまかせニャ!」

 

マイラの愛刀『猛レイアネコレイピア』をオドガロンの頭へ斬りつける。これにも特にアクションはない。

 

「これでどう!?」

 

マイラが斬りつけたと同時にミレイナはローリングで距離を詰め、その勢いを利用し肩でタックルをする。そのまま強・溜め斬りを頭部へ叩き込む。

続けざまにソフィーとクリスタルが飛び込み、太刀の攻撃を2撃とクリスタルの愛刀『猛レウスネコブレイド』の1撃を与えるも、怯むことなく距離を取られる。

 

「やっぱり、タフな上に速い」

「想像よりも何倍も速くて・・・。っ!来ます!」

 

ソフィーの声と同時にオドガロンは大きく跳ぶ。

ソフィーとオトモたちは前に。ミレイナは後ろに避ける。

4人が居た位置にオドガロンは着地すると、前足を器用に使い、体を捻らせ、黒い尾をミレイナ目掛け、地面へ叩きつける。

 

「なっ!?」

 

オドガロンの尾が地面を叩き、土煙を上げる。

ミレイナは尾の1撃を腹部に貰い、大きく吹き飛ばされる。

 

「ガハッ・・・!」

「先生!?」

 

オドガロンが元居た位置まで戻り、着地すると同時にミレイナも地面に墜落する。

 

「マイラさんは先生の方へ!私とクリスさんでアイツを引き付けます!」

 

ソフィーの指示でオトモはそれぞれ動く。

 

「動きは少しだけど読めてきた。確かに速いけど攻撃は予備動作が少し大きい。それを見切れば・・・。クリスさん!」

「分かっているニャ!」

 

クリスタルはオドガロンの腹下へ潜り込み、『猛レウスネコブレイド』で突き上げる。

うざったそうにオドガロンは横へ跳び、ソフィーの正面へ動く。

ソフィーが縦切りを振り抜いたと同時にオドガロンは前脚で引き裂こうとする。

 

「見えた!!」

 

弧を描くように距離を取り、完璧な見切り斬りがカウンターのようにオドガロンの頭部に入る。そのまま流れるように鬼刃大回転切りを同じく頭部へ命中させるとオドガロンはその場で小さく怯む。

 

「よしっ!先生は!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、吹き飛ばされたミレイナは未だに立てずにいた。無理矢理体を起こそうとするも上手く力が入らない。

 

「ご主人様、立てるニャ?」

 

マイラは不安そうな顔をしてミレイナの顔をのぞき込む。

 

「ごめん、ちょっと・・・。無理・・・」

「そうなのニャ。少しおしゃべりでもしますかニャ?」

「それ、名案・・・。その前に、ポーチから『回復薬グレート』出して・・・。頭からかけてくれない・・・?」

「はいニャ」

 

この2人はいつでもどこでも相変わらずのようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソフィーたちが対峙するオドガロンは口から蒸気のような息を吐き、真っ直ぐ2人を睨んでいた。

 

「怒り状態ですかね・・・?」

「多分そうだニャ」

 

あまりの迫力に若干へっぴり腰気味のソフィーに対してクリスタルはいつも通り冷静だった。やはりソフィーとクリスタルでは踏んできた場数が圧倒的に違うのが見て分かる。

 

「ビビってるニャ?」

「そ、そりゃ・・・。初めて戦うモンスターですし、怒るとどうなるかなんて・・・」

「ま、それも分かるニャ」

「クリスさんは冷静ですね・・・」

「あんなご主人と一緒に居たらこんな状況嫌でも慣れてしまうモノニャ」

「あはは・・・。体がいくつあっても持ちませんね・・・」

 

ソフィーは太刀を持つ手に再び力を込める。

 

「もう大丈夫みたいだニャ」

「全然大丈夫じゃないですよ・・・。怖くても立ち向かわないと。それがハンターなんですから」

「上出来ニャ!」

 

そういうとクリスタルは走り出す。

後を追うようにソフィーも駆け出し、オドガロンへ詰め寄る。

 

「速すぎる!追いつけない!?」

 

走って詰めてもさらに速度の上がった圧倒的な跳躍力で翻弄されてばかりの2人。次第にオドガロンの攻撃を捌けなくなり、体に傷を作り続けていく。

ソフィーの防具も所々破け、傷口から流れる血が『ウルムーシリーズ』の白を赤く染める。

 

「っくぅ・・・!」

 

オドガロンの前脚がソフィーの頬を浅く裂き、血が少しだけ飛び散る。

 

「ソフィー!?大丈夫かニャ!?」

「大丈夫です!少し掠めただけです!」

 

心配するクリスタルを止め、ソフィーは武器を構え、太刀を振るうもオドガロンの動きを捉えきれず、決定打はなかなか生まれない。

 

(どう、しよう・・・。似たような骨格をしているトビカガチとは全然違う・・・。怒ってから動きが読めない・・・。それに頭も・・・)

 

ソフィーは自分の体がいつものように動かないことと対峙するモンスターの動きを捉えきれていないことに焦りを感じていた。それにどこか彼女の意識も呆然とし始めていた。

 

オドガロンは小さく助走を付け、自身の脚をダイナミックに使い、ソフィー目掛けて飛びかかる。

 

「あっ・・・」

 

今から動いても間に合わない。もうダメだ、とソフィーの思考は死を受け入れ始めていた。

 

「ソフィー!!」

 

動こうとしないソフィーを庇うため、クリスタルは走るが間に合う距離ではなかった。ソフィーも目を閉じ、襲ってくる衝撃に覚悟を決める。

 

その時だった。

 

「ゴメン!待たせたわね!」

 

ソフィーの真後ろから大好きな声が聞こえた。

 

「え?」

 

ソフィーの真上を銀の風が舞う。

儚く美しい銀には不釣り合いな無骨な獲物がソフィーを狙う赤い獣の頭部へ躊躇いもなく振り下ろされ、オドガロンは1歩後ずさる。

 

「うっおらぁぁぁぁぁああああああ!!!」

 

着地すると同時にミレイナは大剣を体ごと回転させ、全体重の乗せた薙ぎ払いで追撃する。

ガキン!!と鉄と骨がぶつかる音が響く。その一撃はオドガロンの頭へ深く入り、荒々しくむき出していた牙をへし折る。

 

ギャオン!?

 

流石のオドガロンも余程応えたのか、後方へ転がるように怯む。だが、すぐさま体勢を整え、ミレイナへ飛びかかる。

 

「こんの・・・!!」

 

『ハイジークムント』を盾にしオドガロンを受け止めるミレイナ。しかし、体格差は歴然で押し倒されようとしていた。

 

「みんな!お願い!!」

 

ミレイナの声と共にマイラ、回復を終えたソフィーとクリスタルの3人は詰め寄り、各々攻撃をしかける。それに察知したオドガロンはミレイナを突き飛ばし、はそれぞれを追い払うかのように爪を振るう。それはソフィーの腹部を切り裂いた。

 

「くぅ・・・・・・!?」

 

腹を裂かれると同時にソフィーは鬼刃斬りをカウンターのように振るい、オドガロンの爪を断ち切る。

それにより分が悪いと判断したのか、オドガロンは颯爽とこの鍾乳洞のようなエリアから去って行った。

 

「ハッ・・・!ハッ・・・!ハッ・・・!」

 

苦痛を荒い呼吸で誤魔化そうとするソフィー。足に力が入らないのか、自分の武器を杖にして辛うじて立っているようだ。

幸いなことに防具があったことで爪は内臓までは届いてはいなかったが、ウルムーメイルには5本の傷が荒々しく刻まれた。

 

「大丈夫!?これを!」

 

駆け寄ったミレイナがソフィーの肩を持ち、取り出した1粒の丸薬を彼女の口に入れる。

 

「んくっ・・・。・・・・・・あれ?痛く、ない・・・?」

 

ソフィーは自分の手を握ったり開いたりしながら不思議そうに首を傾げる。

 

「『秘薬』よ。ある程度の傷なら一瞬で治せる激薬よ」

「えっ!?そんな高価なものを!?」

 

『秘薬』は激的な効果があるものの、調合に必要なものは貴重なものばかり。買うとしてもかなりの額になるのだ。

 

「いいのよ。取り置きはまだまだ沢山あるから。さ、追いかけましょうか」

「はいっ!・・・ってあれ?」

 

歩き始めたソフィーはその場で膝をつく。

 

「どうかした?」

「な、なんだか痛みがまた・・・。それに血も・・・」

「・・・そこに寝て」

 

ミレイナは1度ソフィーを横になるようにいい、ポーチの中を探る。

 

「おかしいニャ。顔色がよくないニャ」

 

横になったソフィーの顔を心配そうな顔をしたマイラが覗き込む。

 

「ごめんなさいね。少し恥ずかしいかもしれないけど、見せてね」

 

ミレイナはソフィーの銅の鎧を脱がせ、インナーだけにする。

 

「・・・やっぱり。傷も塞がってないし、血も止まってない」

 

ソフィーの腹には5本の抉られた傷が生々しく残っており、血がゆっくりと溢れだしていた。

 

「『裂傷』ね。ソフィーちゃん、今痛みは?」

「い、今は全く・・・。ただ、体を動かすと・・・。いたっ・・・!」

「動かないの。これ、食べなさい」

 

そう言ってミレイナが差し出したのは『サシミウオ』の切り身。その1切れをソフィーの口にゆっくり運び、静かに食べさせる。

 

「あぁー!!それボクのおやつニャ!!」

 

ソフィーの口に切り身が入った瞬間、クリスタルが大声をあげる。

 

「うるさいわね!そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」

「確かにそうかもしれないニャ!でも!そもそもご主人が持ってるのがおかしいニャ!」

「べ、別に空いた時間にツマミにしようなんて思ってないわよ・・・?」

「自爆してるニャ!」

「2人ともうるさいのニャ!!」

 

収まりそうにない言い合いに痺れを切らしたマイラがどこからか取り出したオタマで2人の頭をコン!と1発ずつ殴る。

 

「いいニャ?今は狩りの最中でソフィーさんもケガをしててツラいのニャ。そんな時に2人がくだらないことで言い合ってる暇はないニャ」

「ぐたらなく・・・!ギニャッ!?」

 

クリスタルが反発しようとした瞬間に再びオタマが炸裂し、ミレイナとクリスタルは頭を抑える。

 

「・・・なんで私まで・・・」

「とにかく、分かったのなら返事をするニャ?」

「「・・・はい」」

「聞こえないニャ!!」

「「は、はいっ!!」」

「ソフィーさんが動けるようになったらオドガロンを追いかけるニャ!」

「「はいっ!!」」

 

サシミウオの効能で傷が塞ぎ始めたものの、体にまだ違和感の残って、寝たままのソフィーはマイラだけは怒らせないようにしよう、と決めたのだった。

 

「・・・だってあのマイラさんの雰囲気、ヤバいモンスターのそれだよ・・・」




お読み頂きありがとうございます。
少しずつペースを戻せるように頑張ります。
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