よろしくお願いします。
動けるようになったソフィーを気遣いながら4人はオドガロンが逃げて行った瘴気が蔓延するエリアに向かう。
「ソフィーちゃんは無理しないで。オドガロンは私たち3人で抑えるから、貴女には寄ってくる小型モンスターを捌いて欲しいの。露払いみたいになるけどいいかしら?」
ミレイナの提案にソフィーは申し訳なさそうな笑顔を浮かべ、頷く。
「はい・・・。いつも足を引っ張ってごめんなさい・・・」
「そんなことないわよ!むしろ今回は私が不甲斐なさすぎるわ。ソフィーちゃんには助けて貰ってばかりだからここからは私がソフィーちゃんを助ける番よ」
ミレイナはソフィーの頬を撫で、微笑む。
思いもよらぬ行動でソフィーは顔を赤らめ、俯く。
「どうかした?」
「い、いいえ!なんでもないです!」
「?とにかく、追いかけるわよ」
鍾乳洞から出てすぐの広がったなだらかな斜面のエリアの中央にオドガロンは佇んでいた。
よく観察してみると口からはヨダレをだしており、消耗しているようだ。
「・・・畳み掛けるなら今か・・・。準備はできてる?」
「いつでもいけるニャ」
ミレイナの問いかけにクリスタルが答える。ソフィーとマイラも同じようで深く頷く。
「じゃあ、手はず通りに。行くわよ!」
火打石を『スリンガー』で撃ち、瘴気を払い、4人は一気に駆け出し、オドガロンへ突撃する。
それに気づいたオドガロンは1度、雄叫びを上げ、4人に相対するが、疲れからか、動きは鈍い。
足元に深く入ったマイラの1太刀でオドガロンは転倒する。流れるように追撃に移ろうとした4人だが、どこからかこの『瘴気の谷』に生息する小型の鳥竜種、ギルオスが数匹姿を現した。
「ソフィーちゃん!」
「はい!こっちは任せてください!」
ソフィーはオドガロンから離れ、小型モンスターの迎撃に移る。
起き上がったオドガロンは大きく腕を振るい、ミレイナたちを引き剥がす。
1度退き下がるかのようにエリアの端に移動すると、落ちている何かの腐った死骸を食べ始めた。
「ちっ・・・。仕留めきれなかったわね」
どうやらミレイナはオドガロンが回復を済ませる前に討伐してしまいたかったようだ。
「・・・何?あれ・・・」
理解できない、とでも言いたげにミレイナは小さく呟く。
腐肉を食べ終えたオドガロンは口と上半身から蒸気を出し、背中の筋肉は盛り上がり、筋が青く光だした。
「・・・どうなってるのよ、あれ」
「ボクも検討がつかないニャ・・・」
ミレイナの動揺した呟きにクリスタルも理解できないと続く。
ウオォオオオオオオオオオオン!!
オドガロンの大咆哮が谷中に木霊し、大きすぎる音に4人は耳を塞ぎ、蹲る。そして、オドガロンが最初に標的にしたのはマイラだった。
「マイラ!避けて!」
その瞬間、オドガロンはマイラを爪で引き裂こうと、飛びかかる。
ミレイナの声に咄嗟に反応したマイラはその場から大きく壁の方に横っ飛びをし、オドガロンの爪を避けるが、その爪はマイラの背中に浅く傷をつける。
クリスタルが咄嗟にマイラのフォローに入り、彼女とオドガロンの間に立つ。
「マイラ、大丈夫かニャ?」
「だ、大丈夫ニャ。少し掠めただけニャ」
そう言うとマイラは立ち上がり、自身の武器を構える。
オドガロンはその場から跳躍。
2人を狙って飛びかかるが、彼らはそれを危なげに避ける。
「気を抜かないで!次が来るわよ!」
さらに速度を上げたオドガロンを間合いに入れるために走って追いかけるミレイナが声を上げる。
オドガロンは着地した勢いを殺さず、そこからもう一度跳躍。壁の方に跳躍し、そのまま壁を蹴る。三角蹴りの容量でミレイナへ突撃した。
「くぅ・・・!!」
彼女はオドガロンの腹の下を潜るように転がり、間一髪で避け、起き上がると同時にオドガロンへ体を向ける。
なおも暴れ続けるオドガロン。
3人は攻撃に転じることができないまま、防戦一方だ。
不意にオドガロンの動きが止まり、ミレイナとオドガロンは向き合い、睨み合う形となった。
「尋常じゃないほど暴れるわね・・・」
ポツリ、と呟き、ミレイナは背中の大剣の柄に手をかけ、オドガロンの動きに備える。
先に動いたのはオドガロン。全ての脚を使い、ミレイナに飛びつく姿勢を一瞬見せた。
「これでも・・・」
彼女は左腕に付けたスリンガーを地面に向け弾を射出し、腕で目を覆う。
「喰らいなさい!!」
その瞬間、ミレイナの足元は眩い光を放った。
その光の正体は彼女の撃った『スリンガー閃光弾』。本来、打ち出した弾は一定距離を進まなければ炸裂しない。だが、あえて地面に撃つことにより、弾が炸裂する時間を短縮させたのだ。
!?!?
勢いよく飛び上がったオドガロンは視力を奪われ、空中で藻掻く。平衡感覚を失った体はバランスを崩し、倒れ込みながら地面に落ちる。
「畳み掛けるわよ!」
その声に応じ、3人はオドガロンの頭へ集中攻撃を始めた。
「先生!私も!」
周囲のギルオスを追い払ったソフィーもオドガロンへの攻撃に加わる。
「まだ足りないの!?」
それぞれ渾身の一撃を与えるもオドガロンを仕留めるまでには足らず、オドガロンはゆっくり起き上がる。
「1度離れるわよ!」
追い込まれた獣は何をするか分からない、とミレイナの本能が告げ、3人に離れるよう、叫ぶ。
その声に反応した3人は距離を取り、オドガロンの出方を見る。
しかし、意外にもオドガロンは背を向け、別のエリアへ脚を引きずるように移動を開始した。その足取りと姿はミレイナたちから逃げるように見えた。
「・・・逃げた?」
武器を構えたままソフィーは少し拍子抜けだ、と言いたげに呟く。
「そうみたいね・・・。・・・ん?」
武器を納刀しながらミレイナが返答すると谷の上層から何かが落ちてきているのに彼女は気づいた。その何かはオドガロンが逃げていった方向へ墜落するようだ。
「みんなはあれが見える?」
なおも落下し続けている何かを指差し、ミレイナはソフィーたちに尋ねる。
「なんでしょうか・・・。飛竜のように見えなくはないですが・・・」
確かに、ソフィーが言うように二本足で2対の翼、長い首と尾が見て取れる。
クリスタルとマイラも同じようで首を縦に振っていた。
「確かめておくべか、よね・・・。ちょうどオドガロンが向かった先のようだし、行きましょう」
落下して来たモノとオドガロンを仕留めるために、一行は歩き始めた。
「・・・いた」
移動先で見つけたオドガロンは上空を見上げ、静かに佇んでいた。その視線の先には飛竜と思われる何か。そして何かはドスン、と低い音を響かせ、地面に墜落した。
「レイギエナ、なの?」
背の高い草むらに隠れた一行。
ミレイナの横でオドガロンを観察していたソフィーが不思議げに呟く。
「レイギエナって?」
聞いたことの無い名前にミレイナはソフィーに質問する。
「『陸珊瑚の台地』に生息している飛竜です。恐らくあれはそれの死骸です。死骸が落ちて、この『瘴気の谷』で分解されてる、という話は聞いていましたけど、まさか飛竜もだなんて・・・。驚きです」
落ちてきたレイギエナの死骸にオドガロンは近づいていく。
顔を上げ、周囲を見渡し、脅威がないかを確認している。
「捕食する気ね。行くわよ!」
ミレイナは茂みから飛び出し、大剣に手をかけ、いつでも迎撃できる体勢に入る。その後ろから3人も続く。
気配に気づいたオドガロンは4人を一瞥し、レイギエナの死体の喉を咥え、引きずりながら運び始めた。更に器用なことに、オドガロンは爪を使い、岩肌を登っていく。
「逃げる気!?」
走る速度を上げ、一気にオドガロンを仕留めようと接近するが、立ち塞がるように小型の鳥竜種と瘴気によって皮膚が爛れた翼竜が行く手を阻む。
「邪魔よ!!」
鳥竜種のギルオスを踏みつけ、跳びながら突き進む。
「先生!右!」
ソフィーの声でそちらを向くと翼竜がミレイナへ突進してきていた。
「こんの!!」
ミレイナはギルオスの背を蹴り、背面跳びで翼竜を避けると同時に、そいつに向かってスリンガーのアンカーを射出する。アンカーは足に引っかかり、引き戻すことでミレイナの体は振り子のように振られる。
「ふっ!!」
アンカーを上手く外し、崖を登るオドガロンへ勢いよく飛び出す。
近づいていくオドガロンとの距離。
抜刀。
狙いはオドガロンのクビ。
力を溜め、その刹那に全てを賭ける。
「やぁあああああああああああああああああああああああ!!!!」
振り下ろした一閃はオドガロンの肉を裂き、骨を砕いた。
オドガロンは力を無くし、崖から地面へと落ちていく。
ドスン、と重い音を響かせ、落下したオドガロンは活動を止めたのだった。
「うん。終わりよ」
着地したミレイナは『ハイジークムンド』を納刀し、3人に笑いかけるのだった。
ひとまず瘴気の谷でのお話は一区切りです。
次回からはまた別の場所での調査が始まる!・・・かも?