森の中から激しい爆音と猛々しい咆哮が絶え間なく鳴り響く。
戦地は大樹から根元の森へと変わるも尚、攻防を繰り返すソフィーたち。大きな傷はまだないが、激しさを増していくリオレウスの攻撃に傷を増やし続け、防具の至る所に血がついていた。
「くそっ、コイツ底なしかよ」
相当な数の攻撃をリオレウスの体に浴びせているが、弱っている気配を感じられずフレッドが弱音をこぼす。
「まだ元気に見えるけど私たちの攻撃はちゃんと届いてるよ。証拠に翼はボロボロだよ」
ソフィーの言う通り、リオレウスの右の翼爪は折れ、翼膜は裂かれていたり、破れている。
「大丈夫、勝てるよ兄さん」
その言葉を告げると同時にソフィーは駆け出し、リオレウスとの距離を詰める。
「おいっ!」
遅れてフレッドもソフィーの後を追う。
「誰に似たんだよ、クソッタレ・・・!」
納刀していた彼の武器『ディア=ルテミス』を抜刀し構える。
「まあ、諦めるニャ。良くも悪くもご主人の影響力ってスゴい凄いのニャ」
フレッドの横に立っていたクリスタルがケラケラと笑う。
「笑ってる場合か!」
「ほら、行くニャ!」
「だーっ!クソっ!」
四足で走っていくクリスタルを追ってフレッドもリオレウスとの距離を詰めていく。
接近してくるソフィーを喰いちぎろうとリオレウスは強靭な顎を開き、ソフィーへ牙を立てる。
(噛みつき、くる・・・。避けないと・・・。どっちに?後ろ?横?いや・・・、前・・・!)
ソフィーは走る速度を上げ、リオレウスの前で強く踏み込み、跳ぶとさらにリオレウスの頭を踏み台にして跳ぶ。
「でゃああああああああああ!!」
空中で抜刀し、『パルサーショテルⅡ』に練気を込め、空中気刃斬りを首元に切りつける。
ギャァ!!?
その一撃でリオレウスは体を振らせながら仰け反る。
「でやぁぁぁぁぁ!!」
着地と同時に鬼刃大回転切り。リオレウスの脚を切り抜ける。
「兄さん!」
「ああ!この位置なら!」
リオレウスの顔の真正面の位置に立つフレッドは左手の剣を振るい、リオレウスの頭部を切りつける。刃はリオレウスの鱗を裂き、血飛沫が舞うと同時に『ディア=ルテミス』の刀身も赤く染まり、煙を上げていた。オーバーヒートだ。
フレッドの持つ武器、『チャージアックス』は剣にモンスターを切りつけることで蓄えられる斬撃エネルギーを内蔵されたビンに蓄積される。このエネルギーを使用し、剣と盾の強化。さらには剣と盾を合体させた斧モードはそのエネルギーを放出され、膨大な破壊力を生み出す。
剣を盾に差し込むとカチャン!と仕掛けが作動した音が鳴り、盾が剣の鍔までスライドする。そして大盾が回転を始めると同時に眩い光を散らす。
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
武器を左回りに大きく円を描き振り回し、リオレウスの頭を軽く裂く。
「うぉおりゃぁあ!!!」
遠心力によって盾は剣先に位置を変え、その姿を大斧に変えた。斧が真後ろに来たタイミングで真正面に垂直に振り下ろす。大斧はリオレウスのこめかみ辺りを捉え、甲殻を砕き、血飛沫をあげた。
「ふん!!!!」
さらに力を込め、斧を地面へ振り下ろし、次は眉間に刃が食い込み、切り裂く。
グギャァアアアアアアアア!!??
激しい苦痛の叫びを上げながら大きく後ずさる。
斧の刃が地面に強く叩きつけられると同時に盾部が展開し、ビンに蓄えられたエネルギーを全て放出させた。
その瞬間、地面から5本の眩い光が轟音と共に噴き上がった。
チャージアックスの切り札、超高出力属性解放斬り。その絶大な破壊力が後ずさったリオレウスを追撃し、全身を襲い、甲殻を砕く。
ドズン、とリオレウスはバランスを崩し、その巨体を地面に伏せ、起き上がろうともがく。
「今だぁッ!!攻めろ!!」
「うん!!」
ソフィーは気刃斬りの連続攻撃から気刃兜割りを。フレッドは2度目の超高出力解放斬りを使い、リオレウスを仕留めるために全力を出し切る。
だが。
「ダメっ!足りない!」
ソフィーの叫びと共にリオレウスは起き上がり、周辺を尾で薙ぎ払う。
「ぐっ!?」
「兄さん!」
足元に飛び込むことで尾を回避したソフィーとは反対にフレッドは尾に直撃する。
「だ、大丈夫だ・・・!防いでいる・・・!」
彼の言う通り右手の盾で攻撃をしっかり受け止めていた。超高出力解放斬りのあと強制分離が幸をなしたようだ。だが、彼の様子を見るに今まで戦っていたダメージの蓄積も相まって相当答えたようで、その場に膝をついている。
「一旦退いて手当を・・・」
「構うな!もう一押しだ!」
フレッドの言葉でソフィーは横目でリオレウスを確認する。身体中ボロボロで弱々しい声を出している。それにフレッドに意識が向かないようにクリスタルがリオレウスの注意を引いている。そこへソフィーが加勢に加われば・・・。
・・・いけるかもしれない。
「すぐ終わらせてくるから、待ってて・・・」
「・・・ああ」
ソフィーはクリスタルの加勢に加わるためにリオレウスの正面に立つ。
「フレッドは大丈夫かニャ?」
「本人は大丈夫って言ってますけど、ずっと注意を引いて、攻撃を受け止めてくれていましたからダメージは相当です。早く終わらせましょう」
「そうだ、ニャ!?」
空中を飛ぶリオレウスが炎ブレスを薙ぎ払うように吐き、その熱風がクリスタルの小さな体を転がす。
「クリスさん!?ってうわっ!?」
低空飛行でソフィーを目掛けて突っ込むリオレウスをなんとかギリギリで避け、納刀した太刀へ手を伸ばす。
躱されたリオレウスは突っ込んでいる勢いを殺すために翼と地面を器用に使い、スピードを抑えスマートに着地した。すぐさま首を振り火球ブレスを撃ち出し、ソフィーたちを近寄らせない。
明らかな逃げ、守りの姿勢。リオレウスも追い込まれているのを分かっているのだろう。
それでもなんとか接近できたソフィーは太刀独特の動きで回り込み、常に位置を変えながら的確に攻撃を加えていく。
右の薙ぎ払い。突き。切り上げ。気刃斬り。これらの攻撃でリオレウスは小さく怯む。
腹の下にいるソフィーを覗き込むように見たリオレウスは小さく跳ね、踏み潰そうとするが、それに気づいたソフィーはバックローリングで回避するが、すぐさま追撃の尾の薙ぎ払いに対処できず、横っ腹に直撃する。
「ガハッ・・・!?」
「ソフィー!!」
痛みを抑えるために回復に専念していたフレッドが声を荒らげ、名前を呼ぶ。
彼女の華奢な身体が数メートル地面を転がる。
「・・・ぅ・・・、あっ・・・。・・・ゲホッ!!ガホッ!?」
細い腕を震わせながら起き上がろうとするソフィー。しかし、受けたダメージは相当なもので吐血し、地面を赤く染めた。
「ま、・・・だ・・・やれ・・・る・・・」
そんな彼女を横目にリオレウスは脚を引きずりながらフラフラ移動を開始した。あの傷だ。自分の巣で回復するつもりなのだろう。
「間に合わない!」
回復を終えたフレッドがリオレウスへ接近するが距離が遠すぎる。間に合わない。
人とモンスターの回復力は雲泥の差があり、ソフィーたちが体勢を整えている間に彼女たちを退けるには充分な時間が生まれてしまう。
「逃がさ、ないから・・・」
太刀を杖替わりにゆっくり立ち上がったソフィーは自分の真横を通り過ぎて行くリオレウスを睨みつける。
左足を引きずりながらリオレウスを追うソフィー。だが、離されていくばかりだ。
「まあ、慌てるんじゃないニャ」
クリスタルがソフィーに歩み寄り、支える。
「で、でも・・・!逃がしたら・・・」
「見てるニャ」
クリスタルの言葉と同時に少し前を行くリオレウスが突然苦しみの叫びを上げ、その場で動きを止めた。
「え・・・?」
「『シビレ虫かご』を置いたニャ」
オトモ道具の1つである『シビレ虫かご』。それはハンターが使用する罠、『シビレ罠』と同じ効果があり、装置に触れたモンスターを感電させ、動きを短時間だけ止めることができる。
「動きは止めたニャ!さあ、ソフィー!」
ソフィーの腰をポン、と押すクリスタル。
押された勢いにふらつきながらもソフィーは倒れることなく、足と太刀を地面に引きずりながらリオレウスの真正面に立つ。
「・・・・・・・・・・・・」
片手に持った『パルサーショテルⅡ』を無言で地面と水平に構えると、刀身は練気の輝きを強くする。
「やぁあああああああああああ!!!!」
真っ赤に染まった刃が真っ直ぐリオレウスの額を貫く。
太刀の長い刃の7割程がリオレウスの頭部に突き刺さり、夥しい量の鮮血を撒き散らす。
赤い飛沫を浴びながら、ソフィーは刀から手を離し、その場にへたり込む。
「・・・・・・はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・・・。やりました、先生・・・」
拳を上空に突き上げ、大の字に寝転ぶ。
気づけば陽は傾き、夕焼けが『シビレ罠』の効果が切れ、立ったまま絶命したリオレウスと寝転ぶソフィーを照らしていた。
ソフィーたちの勝利。そして、試練の成功だ。