この作品に登場する武器防具は私の趣味であり、特に深い意味はありません。
では今回もお楽しみください!
翌朝。
ミレイナは任されたクエストに必要な道具の整理をしていた。
狩猟対象は蛮顎竜アンジャナフ。
『アステラ』近辺の『古代樹の森』に生息する獣竜種。
気性が荒く、高い縄張り意識を持つ、と調査班のレポートにまとめられていた。
その激しい気性から森の暴れん坊とも呼ばれているらしい。
依頼はこのモンスターを狩猟し、調査を進めたいとの事だ。
「ま、このくらいでいいでしょう。後は・・・」
道具の整理、持っていく武器の選別も終わったミレイナ。
しかし、問題が1つ。
それはマイラだ。
ゾラ・マグダラオスの背中でマイラの『回復笛』が機能しなかったことだ。
新大陸の影響なのだろうか。
理由がわからない以上、使うわけにはいかない。
もしかしたら笛以外にもオトモたちの道具は使えなくなっているのかもしれない。
「とにかく、2人には気をつけておかないと」
ミレイナは大剣を背負い、マイルームを出る。
「ご飯も食べたし。よしっと。クリス、マイラ行くわよ」
彼女の呼びかけにオトモ2人は走って、ミレイナの元に集まる。
「それじゃあ、シェリー。行ってきます」
一応コンビになったシェリーに声をかける。
「あぁ・・・。お姉様!今日もお美しい!その銀の輝きはリオレウス希少種すら霞むほど・・・。そんな美しさを私は毎日見れるなんて・・・」
「聞いてないわね。行きましょう」
自分の世界に入り込んでしまったシェリーをおいてルームを後にした。
『アステラ』のハンターは飼い慣らした翼竜に掴まってクエスト地に向かう。
ミレイナもそれにならい、翼竜が止まっている門の下に向かう。
「やあ」
食事場の前でここまで案内してくれたあのハンターがミレイナに声をかける。
「あら?リーダー。どうかしました?」
彼は総司令の孫で調査班のリーダーをしている。
「アンタに敬語やリーダーと呼ばれるほどの腕はないんだが・・・」
「関係ないですよ。ここでの私はただの新入りなんですから」
「・・・まあいい。ここでの狩りは初めてだろう?キャンプまで案内をしよう」
「助かります」
ミレイナはリーダーの提案を受け、翼竜に掴まり、『古代林の森』へ移動を始めた。
「着いたぞ。ここがベースキャンプだ」
ベースキャンプにはテント、支給品ボックス、そして簡易の食事場があった。
「テントにはアンタの装備品もある。ここに戻って武器の交換、道具の補充もできる」
「え?どうやって持ってくるんですか?」
「君の相棒、シェリーと言ったか?あの子と翼竜たちに任せているよ。もうしばらくすると到着するはずだ」
そういった矢先、数体の翼竜がアイテムボックスを吊るして飛んできていた。
その中にはシェリーも翼竜に捕まっている。
「翼竜って力持ちね・・・」
「食事場だが、これは料理長が釜戸で温めれば食べれるような物を定期的にここへ輸送している。好きに食べてくれるといい」
「便利なのね」
「そして新大陸は広い。そこで各地店にベースキャンプもある。どこのベースキャンプもここと同じようになっている。困ったら指笛で翼竜を呼んで飛ぶといい」
「ありがとうございます、リーダー」
ミレイナはお礼を言う。
「さて、いよいよ狩りだ。使えるものはなんでも使う。そして生き残る。これが新大陸のハンターの鉄則だ。では、健闘を祈る」
リーダーに激励を貰い、ミレイナたち3人は歩き出した。
歩き始めて数分。
アプノトスの死体があった。
その死体は腹を食いちぎられている。
「また酷く荒い食べ方ね」
ミレイナが呟くと、腰の導虫が発光し、反応を示す。
後ろに納刀している剥ぎ取りナイフを抜き出し、捕食跡を少し採取すると籠に入れる。
すると導虫は籠から飛び出し、この『痕跡』の主の元へと誘導を始めた。
「どうやら当たったみたいね。行くわよ、2人とも」
「「はいニャ!」」
木のトンネルや木の根のが道となっている独特な地形を進み、人の背丈以上の大きなキノコや背の高い樹木が並んだ場所に案内される。
「視界が悪いニャ。木も大きいしボクらは見えなくなりそうニャ」
「そんな訳ないでしょう。しっかり狙われるから安心しなさい」
ミレイナはクリスタルの発言を否定する。
「ほら、いたわよ」
木に隠れ、様子を伺う3人。
目の前の巨躯こそターゲットであるアンジャナフだ。
赤の鱗と青の毛皮、そして強靭な脚で二足歩行をしている。
「仕掛けるわよ。まずは私があのキノコの上から飛びかかって、乗りを狙うわ。2人は自分のタイミングで攻撃を始めて。頼んだわ」
ミレイナはアンジャナフの視界に映らないよう、身を屈め、少しずつ距離を詰める。
アンジャナフは立ち止まり、周囲を見回している。
(チャンスね)
ミレイナはアンジャナフから最も近い位置にある巨大キノコの上に登り、背中の『あかねさす紫微両断剣』に手を添える。
短く息を吐き、手を添えたまま走り、ジャンプする。
空中で抜刀したミレイナは、滞空時間を活かし、大剣の真髄である『溜め』を行う。
「・・・せぇい!!」
落下と溜めの力が込められた一撃はアンジャナフの胴体に直撃する。
!?
不意の一撃に驚いたアンジャナフはよろける。
その隙をミレイナが見逃すわけはなく、乗りへ移行する。
「クリス!マイラ!いいわよ!」
「任せるニャ!」
「お役に立ってみせるニャ!」
2人も木の影から飛び出し、手にしたオトモ武器で攻撃を仕掛ける。
ミレイナは背中に張り付き、剥ぎ取りナイフで背中を何度も突き刺す。
背中に乗った異物を退かすためにアンジャナフは体を動かし、ミレイナを吹き飛ばそうとする。
すると、アンジャナフはミレイナを乗せたまま壁際まで移動し、身を引き、弓の弦のように体を弧の字にした。
「嘘・・・」
とっさにミレイナは尻尾に飛び移る。
その瞬間、アンジャナフは壁に体を叩きつけた。
潰されなかったことに安堵したのも束の間。
その尻尾を地面に叩きつけようとする。
「こんの・・・」
再び背中に飛び乗り、振り落とそうとするのを避ける。
ミレイナもナイフを突き刺し、アンジャナフに抵抗する。
次第にアンジャナフはよろけ、力も弱まる。
「クリス!マイラ!離れて!倒れるわよ!」
ミレイナの声で2人は少し距離を置き、様子を見る。
頭に飛び移ったミレイナは『あかねさす紫微両断剣』を抜刀し、そのまま力を溜める。
「フッ・・・!」
その一撃はアンジャナフの顔面に食い込んだ。そのまま豪快に引き抜くと巨体は倒れ、攻撃のチャンスを生み出す。
ミレイナは飛び降り、体勢を立て直すと、素早く距離を詰める。
抜刀縦切り、強・溜め斬りをあえて溜めずにそのまま振り下ろす。
ミレイナは大剣で円を書くように後ろへ下がり、再び溜め始める。
「はぁっ!!」
真・溜め斬り。
ギルドの研究で使用できるようになった新たな攻撃手段。
溜め斬りの反動を活かし、縦に1回転しながら最大火力の溜め斬りを叩き込む大剣の新たな切り札。
その一撃はアンジャナフの頭部へ容赦なく直撃し、牙をへし折る。
ミレイナはそのまま横へローリングし、その反動を活かし、体重を乗せたタックルを頭部に当てる。
そこから強・溜め斬り、そして真・溜め斬りに。
しかし真・溜め斬りのモーションに入った瞬間、アンジャナフは立ち上がる。
「まっず!」
ミレイナが思ったよりもダウン時間が短かった。
反撃を覚悟し、グッ、と歯を食いしばる。
が、アンジャナフの鼻がまくれ上がり、鼻骨がむき出しに。そして、背中からは翼のように皮膜が広がる。
ゴガアアアアアアアアアアアアア!!
強烈な咆哮。
凄まじい音量に3人は耳を塞いで、動きが止まる。
追撃が来るかと思ったが、アンジャナフは後ろに飛び退き、ミレイナを威嚇する。
どうやら怒り状態になったようだ。
「炎・・・?」
ポツリ、と呟くミレイナ。
睨み合っているアンジャナフの口からは炎が溢れていた。
「あれ、マズいやつだニャ」
クリスタルがミレイナの元にやってくる。
「分かってるわ。2人共、無理はしないでね」
少し離れた位置で様子を伺っているマイラも頷く。
「さて、どう戦う・・・」
アンジャナフは一直線にミレイナへ突進するが、その攻撃を股下を転がり、回避するミレイナ。
小回りを効かせ、すぐさま縦切りをアンジャナフの尻尾に当て、後ろへローリングする。
武器を納刀し、足元に潜り、素早く縦切りを繰り出すとローリングし、離脱する。
ミレイナが離脱したタイミングでクリスタルとマイラが飛び込み、足元へ攻撃する。
これが3人の得意とする戦法。
一撃が強烈な大剣だが、その分溜めによる隙も大きい。
ミレイナはあえて溜めずに離脱する。
そのタイミングでオトモ2人の攻撃を与え、再びミレイナが攻撃に加わる。
そして、気が来た時に大剣の真髄をお見舞するのだ。
「ナイスタイミング!・・・クリス!!」
アンジャナフは足元をうろつかれるのを嫌うように、片足を虫を払うように蹴る。
何気ない仕草に見えるものもあの巨躯があっては破壊力は凄まじい。
それは足元に居たクリスタルに容赦なく襲いかかる。
「ギニャ!?」
クリスタルの小さな体は宙に浮き、小さな弧を描いて地面に倒れる。
「マイラ、こいつの注意を引くわよ!」
「ニャ!」
2人はアンジャナフの正面に立ち、注意を引く。
しかし、アンジャナフは2人に興味を示さず、起き上がったばかりのクリスタルを狙う。
「こんの・・・!!」
最大まで溜めた抜刀溜め切りを当てるも無視されてしまう。
「クリス走りなさい!」
ミレイナの声でクリスタルは走り出す。
それをアンジャナフは追いかける。
「止まりなさい!」
ミレイナはポーチから『弾』を取り出す。
それをスリンガーに装填し、突き出す。
パシュッ、という音と共に『スリンガー弾』が射出された。
弾はアンジャナフの真横を通り過ぎ、目の前で激しい光を放った。
ミレイナが撃ったのは『スリンガー閃光玉』。
その眩い閃光でモンスターの視界を一時的に奪うアイテム。
アンジャナフも例外ではなく、閃光の光に驚き、大きく仰け反るだけでなく、視界も奪われる。
「助かったニャ!」
「クリスは今のうちに立て直して!私とマイラでまた仕掛けるわ!」
ミレイナはアンジャナフの正面に立ち、抜刀し、そのまま力を溜める。
ガアアアアアアア!!
アンジャナフは声を上げると、頭を振り、すぐ前方を薙ぎ払う。
「うぐっ!?」
溜めのモーションに入っていたミレイナは回避できず、吹き飛ばされる。
「・・・いったぁ・・・」
吹き飛ばされ、地面に倒れたミレイナは吐き捨てるように呟く。
特に気にするような傷もなく、ゆっくり起き上がる。
「ご主人様!」
マイラが叫ぶ。
何を慌てているのだろう、と顔を上げると、アンジャナフの巨体が宙に浮き、ミレイナ目掛け、飛びかかっていた。
「えぇ!!??」
とっさに大剣を盾にし、攻撃を防ぐ。
凄まじい衝撃をなんとか耐え、納刀する。
どうやらアンジャナフは視界を奪っても暴れるタイプのモンスターのようだ。
少し距離を離し、念の為に『回復薬』を1つ飲み干す。
アンジャナフは視界が戻ったのだろう。
雄叫びをあげ、顔を降って、こちらに向き直った。
「また来たニャ!」
マイラが叫ぶとアンジャナフは再び飛びかかってくる。
それを左に避けると、アンジャナフとの距離はまた開く。
しかし、アンジャナフはその勢いのまま、顎で地面を抉りながら前進していく。
「・・・えぇ・・・」
ミレイナは立ち止まり、その光景に声を漏らす。
「顎、折れないのかしら?」
「そんなこと言ってる場合ニャ!?」
アンジャナフは立ち止まり、再び咆哮をあげるとその場から去っていった。
「場所を変えるようね。追いましょう。クリスは大丈夫?」
「もうバッチリニャ」
「よし、追いましょう」
アンジャナフが移動した箇所は関所が近い海岸。そこで待ち構えていた。
背中の皮膜は閉じ、口からの炎もこぼれていない。
怒りは治まったようだ。
アンジャナフはミレイナを見つけると一直線に走り、強靭な顎で噛み砕こうとする。
ミレイナは懐に飛び込み、噛みつきを躱す。
「ふっ!」
そのまま抜刀切り。
クリスタルとマイラは左足に攻撃を加える。
ミレイナも左足の方へローリングし、タックルを行う。
そして強・溜め斬りを放つ。
グガァァァァ!!
その一撃でアンジャナフはよろめく。
しかし、すぐさま再び咆哮をあげ、また怒る。
「・・・っく」
その咆哮で耳を塞ぐ。
アンジャナフはまたしても怒り状態に突入する。
ミレイナたちを見据えたまま数歩後ずさる。
「次は何をする気・・・」
アンジャナフは頭を振り、大きく息を吸う。
周囲の温度も上がっていく。
「まさか、炎ブレス!?」
慌てて飛び退く3人。
そして、アンジャナフは炎を吐き出す。
火炎放射のように吐き出す炎は地面を燃やし尽くす。
「思ってたのと全然違う!?」
火球のようなブレスと思っていたミレイナは思わず叫ぶ。
しかし、ブレスを放っているアンジャナフは無防備だ。
その頭に抜刀切り、強・溜め斬り、真・溜め斬りを放つ。
「こいつでどう!!」
渾身の一撃は容赦なくアンジャナフを殴り飛ばす。
ボン!という爆発音。
アンジャナフの口内の炎が爆発し、その巨体は倒れる。
ミレイナは『あかねさす紫微両断剣』を納刀し、再び頭に抜刀溜め切り、強・溜め斬り、真・溜め斬りを全て最大まで溜めて繰り出す。
「これでぇ!!」
真・溜め斬りの最後の一撃。
ミレイナには確かな手応えがあった。
生物の命を奪い、その生涯に終止符を打つその手応えが。
ガ・・・、グルル・・・。
短く、弱々しい声を上げて、アンジャナフは動かなくなった。
「・・・おしまいっと」
さっ、と『あかねさす紫微両断剣』を納刀し、剥ぎ取りを始める。
「やっぱり初めて見るモンスターは手強いニャ」
クリスタルが呟く。
「そうね。でも、やっと新大陸に来た、て感じね」
「あいつはいるかニャ?」
マイラの言葉にミレイナの表情は強ばる。
「・・・一応、調べてみるわ」
ミレイナはポーチから何かを取り出す。
それはモンスターの黒い棘のようなもの。
腰の導虫の籠に入れる。
「どう・・・?」
導虫が反応することを願い、見守る。
しかし、導虫は何も反応しなかった。
「・・・いない、か」
「仕方ないニャ。根気よく探すしかないニャ」
クリスタルも少し残念そうだが、できるだけ明るくミレイナに声をかける。
「そうね。じゃあ、帰りましょうか」
ミレイナはスリンガーに『弾』を装填し、上空に発射する。
緑の発煙弾。
これを撃つことで『アステラ』に狩猟が終了したことを知らせる。
「研究班がくるまでここで待ちましょうか」
ミレイナは近くの岩に腰をかける。
そのミレイナの膝にマイラが丸くなって寝転がる。
「マイラ、お疲れ様」
マイラの頭を撫でながら、今日クエストのことを労う。
「お安い御用ニャ」
クリスタルもミレイナの近くにやって来て、彼女の足元に腰を下ろす。
「クリスも頑張ったわね」
「あんなやつの攻撃を食らうなんてボクもまだまだニャ」
悔しそうに言うクリスタル。
その姿は喧嘩に負けて悔しがる小さな子供のように見えたミレイナはクスクス笑う。
「ふふっ」
「何が面白いのニャ?」
「何でもないわ。ゆっくりしましょう」
青い空を見上げ、研究班の到着を待つのだった。
戦闘描写は難しいですね・・・。
ミレイナの戦法は私の大剣使用時のスタイルを元にしています。
案外溜めなくても火力が出るのが大剣のいいところですね。