今回もツッコミどころ満載かもしれませんが、よろしくお願いします!
新大陸での初の狩猟を終え、『アルテラ』へ帰還したミレイナたち。
そんな彼女たちを出迎えたのは総司令だった。
「アンジャナフの狩猟、ご苦労だった」
「ありがとうございます」
「君には1つ頼み事がある」
「頼み事、ですか・・・」
ミレイナは首を傾げる。
「気が向いたらでいいんだ。ゾラ・マグダラオスの『痕跡』を追って欲しい」
「・・・いいですが。どうして私なんですか?」
「理由は単純だ。現役のハンターで古龍の相手をできる者が君以外に浮かばない」
現在の『アルテラ』に滞在する1期団から5期団。
確かにハンターは多くいるものの、1期団は高齢で引退。
2期団は鍛治職人、3期団は学者が多い。
4期団にもハンターはいるが、ミレイナほどのハンターはいないらしい。
「こればかりをやれ、と言ってるわけではないさ。空いた時間やクエスト中に見かけた際に奴の『痕跡』を持ってきてくれればいい。君には君の目的があるんだろう?」
「・・・」
ミレイナは黙る。
「ふっ。何にせよ、初のクエスト達成ご苦労だった。また君には依頼を準備しておこう」
総司令は踵を返し、行ってしまった。
「・・・帰りましょう」
ミレイナはオトモ2人に声をかけ、シェリーの待つマイルームへ歩き始めた。
数日後。
毎日依頼をこなしているミレイナ。
しかし、この日は特に何もなく、昼間から食事場でいつもの如くビールを堪能していた。
「っくはぁーーーー!!料理長のビールは最高よ!!」
ジョッキを机に強く置く。
「いい飲みっぷりだ。・・・だが、お前が来てから酒の手配量が前の3倍だ」
「気にしない気にしない!お金はあるから!」
「そういう問題じゃねぇ」
どうやら料理長もミレイナの酒癖には手を焼いているようだ。
「ミレイナさん」
「んー?」
後ろから声をかけられ、振り返るとフレッドがいた。
「フレッドくん!久しぶりね!元気だった?・・・って、その腕!?どうしたのよ!?」
ミレイナのハイテンションに若干引き気味の彼は左腕を首から下げた布で吊っていた。
どうやら腕を折ったらしい。
「また飲んで・・・。これはちょっとヘマして・・・」
恥ずかしそうに笑うフレッド。
「無茶しすぎた?」
「いや、そんなことは」
「私のせいなんです!」
「貴女は?」
フレッドの背中から不安な顔をした少女が顔を出した。
「そ、その・・・。プケプケというモンスターの狩猟中にリオレウスが割り込んできて・・・。兄さんは私を庇って腕を・・・」
申し訳なさそうに呟く少女。
「そうなのね。貴女はフレッドくんの妹さんね。話は聞いてるわ」
「わ、わわっ・・・!ミレイナ様に知って貰えてるなんて・・・」
「・・・えっと。名前教えてもらえる?」
はっ、としたように少女は頭を下げながら名前を言う。
「ソフィーです!」
「そこでミレイナさんに頼みなんだが・・・」
フレッドが口を開く。
「そのリオレウスでも狩ればいい?」
「・・・その発想はなかった・・・。じゃなくて俺が復帰するまでこいつを鍛えてくれないか?」
「鍛える?」
むしろミレイナにはその考えがなかったようで首を傾げる。
「ああ。俺もソフィーも狩りの経験値が全くない。その間スキルアップしてもらいたくて・・・。というのは建前で・・・」
「ん?」
歯切れを悪くするフレッドに更に首を傾げるミレイナ。
「実は俺たちのバディの受付とオトモなんだけど・・・。ゾラ・マグダラオスの背に打ち上げられたのがトラウマになったみたいで、先日の出航で本国に帰ってしまったんだ」
「ええ・・・」
フレッドは頭を下げる。
「どうかお願いします!せめてソフィーだけでも面倒を見て貰えませんか!」
「いいわよ」
ミレイナは即答だった。
あっけなく了承されたことに驚き、フレッドは目を丸くする。
「一緒に何かやる人がいれば楽しいし、こっちに来て最初に知り合ったフレッドくんの頼みなら断りたくないしね。私でよければ喜んで引き受けるわ」
「・・・ありがとう!」
「ありがとうございます!」
フレッドとソフィーはまた頭を下げる。
「でも、フレッドくんは怪我が治るまで何をするの?もしよかったらフレッドくんの面倒も見るわよ。マイラが」
「・・・それは気が引けるよ。適当なバイトでもやるつもりだよ。市場で何か探すさ」
「そうなのね。じゃあ、ソフィーちゃんは私の部屋に行きましょう。紹介しないと行けない人いるから」
「は、はい!よろしくお願いします!」
フレッドは手を振って1階層に降りていく。
ミレイナは立ち上がり、料理長にお代を払う。
「それじゃ、行きましょうか」
「はい」
返事はしたものの、ソフィーは何か言いたげにモジモジしている。
「どうかした?」
「あ、あの・・・。随分昔の事なんですけど、ココット村でのゲリョスを覚えていますか?」
ソフィーの質問に首をひねり、思い出すミレイナ。
「ココットのゲリョス・・・、ゲリョス・・・。確か綺麗なペンダントを取り返しに狩猟したような・・・。一緒に女の子もいて、その子を助けたっけ・・・」
「それです!私はその時、ミレイナ様に助けられた子供です!」
「え?」
遡ること6年前。
『ギルド』の認定を貰ったばかりのミレイナはココット村にしばらく滞在する期間があり、その時にペンダントを盗んだゲリョスの狩猟を頼まれていた。
依頼主は盗まれた女性。
その女性の娘の少女が1人で巣に向かい、ペンダントを取り返そうとしていたのだが、ゲリョスに見つかったところを助けたことがある。
それがそのソフィーだったのだ。
「ああ!よく見ると面影が!大きくなったわね!」
「今の私があるのはミレイナ様のお陰なんです。あの時の姿に憧れて私はハンターを目指してきました」
「私に憧れた、か・・・。照れくさいわね」
恥ずかしそうに頬をかくミレイナ。
「ここに来たのだってミレイナ様が新大陸に渡るという噂を聞いたからなんです。まさか先に兄さんが出逢っているのは予想外でしたが・・・。しかもタメ口なんて・・・」
ソフィーはミレイナの熱狂的なファンのようだ。
その熱量にミレイナは少し苦笑いする。
「あ、あはは・・・。その様付けはやめてくれる?私はそんな人間じゃないわ」
「ですが・・・」
「その敬語もダメ。むず痒いわ」
ソフィーは手を顎に当て、考える。
「分かりました。では、先生!ミレイナ先生と呼びます!でも、敬語だけは変えません!尊敬する人に汚い言葉は使えませんので!」
「はぁ・・・。分かったわ。あまり変わってない気がするけど・・・」
話しているとミレイナの部屋の前に到着する。
「ここが私の部屋よ。先に言っておくけど、気を悪くしないでね?」
「どういうことですか?」
「まあ、すぐに分かるわよ。ただいまー」
ミレイナが部屋の中に入ると元気のいい声がする。
もちろん、シェリーだ。
「お姉様!!おかえりなさいませ!!・・・なんですか?その雌は」
「め、メス・・・!?」
ソフィーを見た瞬間にシェリーはゴミを見る目をする。
ミレイナの言ったことはこれだったのか、と堪えるソフィー。
「貴女ねぇ・・・。この子は今日から私の相棒なんだからね。次そんな目したら受付の子を変えて、貴女を海に流すわ。そうね、ラギアクルス辺りが美味しく食べてくれるわよ」
「ああっ!?申し訳ありません!!」
美しい土下座を披露するシェリー。
ミレイナはため息をついて、ベッドに腰掛ける。
「小さな椅子とかしかないけど、それに腰掛けていいわ」
「は、はい!」
緊張し、動きがぎこちないソフィー。
椅子に座るとキョロキョロして落ち着きがない。
「どうしたの?」
「そ、その緊張して落ち着かなくて・・・」
「そんなに?」
「そ、そりゃそうです!ずっと憧れてた先生の自室なんて・・・。緊張しますよ!」
「んー。マイラー、いるー?」
ミレイナはマイラを呼ぶとトコトコと庭からやってきた。
「ご主人様、お帰りなさいニャ。そちらはお客様ニャ?」
「ええ。後でクリスも呼んで紹介するわ。それで、リラックスできる飲み物、出せる?」
「すぐ入れてくるニャ!」
マイラは走って自分のキッチンに向かう。
「ま、ゆっくりしましょう。シェリーはそこに正座よ」
「そんな!?」
待つこと数分。
マイラはお盆にティーカップとポットを載せてやって来た。
クリスタルもマイラを手伝っていくつかのハーブの葉などを持っている。
「お待たせニャ!紅茶を入れるからもう少しお待ちくださいニャ」
人数分のティーカップに紅茶を注いでいくマイラ。
「わぁ・・・。いい匂い・・・」
ソフィーは匂いを嗅いで満足そうだ。
紅茶を入れ終わったマイラは皆の前にカップを置く。
「それじゃ、飲みながら。クリス、マイラ。この子はソフィーちゃん。フレッドくんの妹よ」
「よろしくニャ」
クリスタルが頭を下げる。
「そして今日から私たちと一緒に狩りをする仲間よ」
「どういうことニャ?」
クリスタルは首を傾げる。
マイラも同様だ。
「そのままの意味よ。この4人でこれから狩りをしていくの」
オトモ2人は顔を見合わせ、何度か瞬きをする。
「うーん。ボクはいいと思うニャ」
「ワタシはご主人様が仰るなら・・・」
クリスタルとマイラも賛成のようだ。
「決まりね。じゃあ早速、行きますか!」
「え、え?」
立ち上がったミレイナとは反対にソフィーは今から何をするのか分からず、あたふたしている。
「早速って・・・。クエストですか?」
ソフィーは不安な顔をしながらミレイナに尋ねる。
「いいえ、探索よ。ちょうど頼まれていることもあるしね。ソフィーちゃんは準備したら食事場の止まり木まで来てね」
「は、はい!」
ソフィーは状況を全ては飲み込めていないようだが、元気のいい返事をしてミレイナの部屋を出ていった。
「ご主人がこんなことするなんて珍しいニャ」
クリスタルは少し疑問を持った声の調子でミレイナに話しかける。
「いいじゃない。ただの気まぐれよ」
「ご主人様のことだから何かあるはずニャ!」
マイラは笑いを堪えるように呟く。
「なんでもいいじゃない!ほら、私たちも準備するわよ」
そそくさとアイテム類の準備を始めたミレイナ。
そんな彼女を2人のオトモは笑って見つめていた。
ソフィーと合流したミレイナは『古代樹の森』にやって来た。
ソフィーは『ジャナフシリーズ』を身に纏い、背には太刀、『鉄刀』を担いでいた。
「マイラとクリスは好きに探索して。私はソフィーちゃんの腕前を見るから」
オトモ2人は手を上げて、ベースキャンプから出ていく。
「さて、私たちも行くわよ」
「はいっ。先生」
歩き始めたミレイナの後ろをソフィーは着いていく。
「何か手頃のモンスターはいないかしら」
「あ、あまり強力なのは避けてもらいたいかなー、なんて・・・」
ソフィーは少し震え声で呟く。
「大丈夫よ。危ないと思ったら助けるから」
「1人なんですね!?やっぱり!」
「あら?これって・・・」
ミレイナはモンスターの足跡を見つける。
『導虫』も反応している。
付近にいるモンスターの『痕跡』のようだ。
「じゃあ、コイツ。探しましょうか」
ミレイナは『痕跡』を籠に入れ、モンスターの探索を始めた。
森を進み、導虫が誘導し、到着したのは古代樹の根の上。
独特な成長をした根は斜面と高台を作っている。
「居たわよ」
身を低くし、2人はモンスターを見据える。
4足歩行でトカゲのような顔。
体を覆う体毛は青白く、棘の鋭い。
何より目を引くのは大きな尾。
全体的なフォルムは狼のようだ。
「あれって、トビカガチですか?」
「ええ。ソフィーちゃんにはあれを狩って貰うわ。あいつの狩猟経験は?」
「な、ないです・・・」
そのモンスターの名はトビカガチ。
別名『飛雷竜』と呼ばれ、牙竜種に分類されるこのモンスターはアンジャナフ同様、新大陸で存在が発見されたモンスターだ。
「そう。じゃあ、ソフィーちゃんの実力が分かるわね。じゃあ、太刀の特徴はもちろん、分かってるわよね?」
トビカガチから目を逸らさずに、ミレイナはソフィーに尋ねる。
「・・・はい。攻撃をして武器に溜まっていく錬気を使って気刃斬り、気刃大回転斬りを駆使して、適切な間合いで戦う、ですよね」
「その通り。そして柔軟な立ち回りね」
答えてくれたソフィーに笑顔で頷く。
「それじゃ、頑張って。大丈夫、自身持って」
ミレイナはソフィーの背中を叩き、喝をいれる。
「・・・っ!はいっ!」
ソフィーは駆け出し、トビカガチの後ろに回る。
すぐさま抜刀縦切りを尾に当てると、トビカガチは彼女に気づく。
トビカガチは息を吸い込み、咆哮をあげる。
「・・・ふっ!」
ソフィーはそれを見越していたようで、円を描きながら距離を取り、衝撃をいなし、そのまま踏み込みながら薙ぎ払う、見切り斬りを披露する。
そして、そこから気刃大回転斬りを繰り出したソフィー。
その一撃でトビカガチを切り抜け、刀身は白い光を帯びている。
太刀の特徴は攻撃を繰り返すことでその鋭さを増していく。
大回転斬りで錬気を放出し、強力な一撃を放つ。
そして、放った錬気は刀身に集まり、太刀に力を与える。
「上手く行った・・・!」
大回転斬り後の納刀を行いながら、ソフィーは笑顔を浮かべる。
憧れのミレイナの前で一連の流れが決まったことが嬉しいようだ。
「喜んでる場合じゃないわよ!」
「は、はいっ!」
ミレイナに叱られ、慌ててソフィーはトビカガチに向き直る。
再び抜刀縦切りを行うも、トビカガチは横に飛び、ソフィーの攻撃を避ける。
「このっ」
ソフィーはトビカガチの方向へ移動斬りをし、一定の間合いを保つ。
トビカガチは小さく首をすぼめ、正面に立つソフィーへ噛み付く。
彼女はトビカガチの側面にローディングし、体勢を立て直すと、太刀で突き、斬り上げ、斬り下ろす。
ソフィーへ正面に向いたトビカガチだが、ソフィーはすぐさま側面へと移動斬りをし、間合いはそのまま、位置を変え続ける。
「やっ!!」
移動斬りの反動を利用し、踏み込みながら気刃斬りを繰り出すソフィー。
その一撃でトビカガチは僅かに仰け反る。
そこへ左右へ薙ぎ払った後に斬り下ろす気刃斬り。通称気刃斬りⅢを行う。
その後気刃大回転斬りを浴びせ、ソフィーの『鉄刀』はその刃に橙色の錬気を纏わせる。
「2回目・・・。あと1回」
気刃大回転斬りによる錬気は3段階まである。
後1度、気刃大回転斬りを当てることで太刀はその全ての力を発揮できる。
ソフィーが太刀を抜き、攻撃を仕掛けようとした瞬間、トビカガチは咆哮をあげる。
「くっ・・・」
ソフィーは耳を塞ぎ、トビカガチを睨む。
さらにトビカガチは咆哮程ではないが、声を上げる。
すると、トビカガチの体毛が逆立ち、青白く光る。
数秒で光は消え、体毛も元に戻る。
「帯電し始めたわね・・・」
バレないように背の高い植物の茂みに座って隠れているミレイナが呟く。
「ソフィーちゃん。まだ完全には帯電していないから落ち着いて行くのよ」
「わ、分かってます!」
頭では理解しているようだが、ソフィーの声からは焦りが見える。
狩猟したことのないモンスターの力を溜めるような行動を見て不安にならないはずもない。
トビカガチは先程より動きが早い。
怒り出したのか、帯電による影響なのかは分からないが、確実に手強くなった。
「・・・ふーっ。先生が見てる。カッコ悪いところは見せたくないもん」
ソフィーは息を吐いて、呟く。
己の武器を握り締め、トビカガチの細かな動作を見逃さないように注意する。
「・・・来る」
トビカガチは身を引き、予備動作を作る。
ソフィーはその場でトビカガチの腕を突き、見切り斬りの体勢に移る。
トビカガチは自慢の尾を大きく振り回す。
尾が通った後には青白い電気が待っていた。
「ソフィーちゃん!」
叫ぶミレイナ。
「大丈夫です!」
そのソフィーの声からは自信があることが分かる。
トビカガチの尾を上手くいなし、カウンターの見切り斬りを当てたソフィーは3度目の大回転斬りを命中させた。
思わずぐっ、と拳を握り、ガッツポーズをするミレイナ。
(・・・いけない、いけない。思いっきり観戦者になってたわ・・・)
軽く咳払いをし、再びソフィーを見るミレイナ。
ソフィーの太刀は赤い錬気を帯びている。
今の状態こそが太刀の真の力を発揮できる。
すると、トビカガチは高く跳び、木に張り付く。
「あっ・・・」
木に張り付いたまま電気を纏い始めた。
こうなってしまうと攻撃ができない。
ソフィーは納刀し、走って距離をとる。
薄らと体毛に電気を纏わせたトビカガチは木から跳ぶ。
手足を広げるとそこには滑空するための皮膜があり、数秒だが宙に浮く。
「ソフィーちゃん!避けて!」
「え?」
ソフィーはミレイナの呼びかけに疑問を持ち、トビカガチを見る。
トビカガチは手足をたたみ、地面へ急降下すると、着地と同時に体を回し、尻尾を振り回す。
「きゃあ!!?」
反応できなかったソフィーは吹き飛ばされる。
これがトビカガチが飛雷竜と呼ばれる由縁。
木々を飛び回り、電気を操る生態から呼ばれているのだ。
「ソフィーちゃん!?」
危ないと感じたミレイナは茂みから飛び出そうとした。
しかし、ソフィーは倒れたまま、手を突き出し、ミレイナへ来るな、と訴えかける。
「大丈夫、です・・・。やれますから・・・」
ゆっくり立ち上がり、太刀を構えるソフィー。
その間にトビカガチは帯電し終え、体毛が棘のように逆立つ。
「私は先生と違って未熟だから・・・。持ってるもの全部を使わないと・・・」
ソフィーは呟き、左腕のスリンガーに『弾』を装填し、撃ち出す。
撃ち出したのは『スリンガー閃光弾』。
眩い閃光でトビカガチの視界を奪い、その隙に『回復薬グレート』を飲み、傷を癒す。
「後は、これ・・・」
ソフィーがポーチから取り出したのは罠の装置。
それを地面に置くと、装置は起動し、穴を掘り始めた。
「よし・・・!」
ソフィーは駆け出し、赤く染まった太刀を振り下ろす。
視界が戻ったトビカガチは顔を振り、ソフィーを見据える。
「こっちだよ!」
ソフィーは斬り下がり、踏み込み気刃斬り、また斬り下がり、踏み込み気刃斬りを繰り返し、トビカガチを罠の方へ誘導する。
流石のトビカガチも鬱陶しくなったのか、宙返りの要領で尾を地面へ強く叩きつける。
「見えてるよ!」
ソフィーは見切り斬りでその攻撃をいなし、大回転斬りを再び当てる。
大回転斬りのモーションで納刀するが、すぐさま抜刀気刃斬り。
トビカガチはついに仰け反り、大きく怯む。
「貰った!!」
ソフィーは太刀を地面と水平に構え、錬気を放出させながら突き刺す。
そこからトビカガチを踏み台にし、高く跳ぶ。
「やぁああああああああ!!」
落下の勢いも加え、太刀を垂直に斬り下ろす。
その一閃は赤い軌跡を描く。
錬気が生み出したその軌跡は触れたトビカガチを何度も切り裂く。
これが気刃突きと気刃兜割。
太刀の最強にして最後の切り札。
トビカガチはあまりのダメージに足を引き摺りながら逃げていく。
どうやら自分の巣に逃げるようだ。
だが、その先には。
!?
トビカガチの足元が抜け、穴に落ちる。
ソフィーが先程仕掛けたのは対モンスター用の『落とし穴』。
トビカガチは穴から抜けようと足掻くが、上手く脱出できない。
ソフィーは錬気を放出させ、刀身が赤から橙に変わった太刀で再び気刃斬りを繰り出し、大回転斬りを当て、再び刀身を赤くする。
トビカガチは大きく跳び、穴から脱出すると、逃げるのをやめ、ソフィーに向き直る。
「もう一息・・・。頑張らないと・・・」
肩で息をしながらソフィーは太刀を構える。
帯電の影響で動きが素早くなったトビカガチの攻撃は完全に避けることが難しくなった。
噛み付きや、尾の攻撃がソフィーの体を掠めるが、彼女は怯まず、自分の攻撃を与えていく。
トビカガチの前足で目の前を薙ぎ払う攻撃がソフィーの腕を浅く引き裂く。
苦痛に顔を歪めながらも、移動切りで側面に立ち回ると、踏み込み気刃斬りをトビカガチの後ろ足に当てる。
「っく・・・!」
トビカガチはその一撃で倒れる。
ソフィーは気刃斬りⅢ、そして気刃突き。
トビカガチを蹴り、高く飛ぶ。
滞空中にちらり、とミレイナが視界に映る。
ミレイナは心配そうにソフィーを見ていた。
(・・・先生、そんな顔しないでください。綺麗なお顔がもったいないです)
ソフィーは小さく笑い、太刀を持つ手に力を入れる。
「これで!!」
渾身の気刃兜割。
その斬撃はトビカガチの弱点である尾を引き裂き、尾を部位破壊する。
つまり、ソフィーの渾身の一撃でトビカガチを完全に仕留めることはできなかった。
「まだ、ダメなの・・・?」
ソフィーの体は限界を迎えていたようで、膝から崩れ落ちる。
トビカガチは起き上がり、咆哮をあげると、ソフィーに強力な尾の一撃を浴びせようと、宙返りをする。
「あっ・・・」
頭では避ける、と命令を出しているが、ソフィーの体は言うことを聞かない。
(あぁ・・・。ダメだ・・・。先生にカッコ悪いところ、見せちゃったな・・・)
目を閉じ、襲ってくる激痛を覚悟する。
「・・・・・・あ、あれ?」
しかし、ソフィーには何も起きない。
恐る恐る目を開けるとトビカガチの尾を大剣の大きな刀身で受け止めるミレイナが立っていた。
「先生・・・?」
「頑張ったわね。立てる?」
笑顔で話しかけるミレイナ。
ソフィーはその光景で6年前のことを思い出す。
初めてミレイナと出会い、助けてもらった日のことを。
場所、モンスター、お互いの姿は違えど、あの時と同じ言葉と笑顔。
「ソフィーちゃん?」
「あ・・・。はい!」
ソフィーは頭を振って、意識を集中させる。
(今は狩りの最中なんだ。あの時のことを思い出してる暇はないの・・・!)
足に力を入れ、ふらつきながら立ち上がる。
「いい子ね。さあ、決めなさい!」
「・・・はい!」
ミレイナは大剣を押し出し、トビカガチを退ける。
「ソフィーちゃん!」
「行きます!」
ソフィーは走り出す。
間合いへ入ると、左から右へ薙ぎ払う気刃斬り。
1歩下がり、逆方向へ薙ぎ払う気刃斬りⅡ。
左右へ薙ぎ払い、斬り下ろす気刃斬りⅢ。
そして。
「はぁあぁああああああ!!」
そして気刃大回転斬り。
勢いよくトビカガチを切り抜ける。
カチャッ、と納刀する音と共にトビカガチはその場に倒れ、動かなくなった。
トビカガチの狩猟達成だ。
振り返り、倒したトビカガチを見るソフィー。
「・・・やっ、た?」
彼女はその場に座り込み、安堵のため息をこぼす。
「狩猟達成おめでとう、ソフィーちゃん」
ミレイナが歩み寄り、ソフィーの前でしゃがむ。
「先生・・・」
「頑張ったわね。上出来よ」
ミレイナはソフィーの頭を撫でる。
「えへへ・・・。どうでした?私、カッコよかったですか?」
「ええ!それはもう。2回目の兜割は思わず見とれちゃったわ!」
「やった・・・。よかっ・・・」
「ソフィーちゃん!?」
ミレイナの胸に倒れ込むソフィー。
彼女からは静かな寝息が聞こえる。
どうやら安心し、眠ってしまったようだ。
「もう・・・。兄妹揃ってよく寝る子たちね。・・・とにかくお疲れ様、相棒」
ミレイナは気持ちよさそうに眠るソフィーを抱きかかえ、ベースキャンプまで歩くのだった。
「・・・完全に観戦者になって展開がどうなるのか楽しんでた、なんて言えないわね」
太刀はシリーズを重ねる毎に強く、カッコよくなっていきますね。
兜割なんて、もう。
初見はカッコよすぎて言葉をなくしましたね!
ミレイナとソフィー。
2人のハンターライフをこれからもお楽しみください。