ついに大規模な捕獲作戦が始動します!
果たして上手くいくのでしょうか?
『古代樹の森』の奥底へ進行して行ったと推測されたゾラ・マグダラオス。
ゾラ・マグダラオスの進行を止め、捕獲するために『アルテラ』の人々は進行ルート上の大渓谷に頑丈な木で作り上げた巨大な障壁を2つ建設した。
物資班と技術班がいつ現れるか分からないゾラ・マグダラオスを気にしながら急ピッチで作業を進めている。
障壁は完成し、後はあの巨体に対抗する装備である『大砲』、『バリスタ台』を次々に設置していく。
この2つの障壁と装置を使い、ゾラ・マグダラオスの動きを止め、弱った所を捕獲するのが今回の作戦だ。
「作業の進みはどうだ!」
総司令の声が響く。
「細かい調整だけです!」
若者が技術班リーダーからの伝言を伝える。
「そうか。ハンター諸君!」
作業を手伝っていたハンターたちが作業を止め、総司令に向き直る。
「この作業が終わり、ヤツが現れた時が君たちの本業だ。キリがいい者から順に休息をとってくれ。ただし、しばらくしたらまた作業に戻ることだ」
「「はいっ!」」
若いハンターたちの返事が渓谷に響く。
その中にはもちろんソフィーの姿もあった。
一方、ミレイナは・・・。
「もう最高!あれとこれと!あぁ〜、幸せ〜♡」
テーブルの上に並んでいるのは大量の料理。
この料理を作っているのは料理長とその弟子のアイルーたちとマイラ。
このために特設された食事場で忙しく動いている。
「このために生きてる・・・!私はこのために・・・!」
ミレイナは料理を次から次に口へ運んでは幸せな顔をする。
「はぁ・・・。ご主人は食べ物に目がなさすぎニャ。イビルジョーもきっとビックリニャ」
クリスタルが呆れながらミレイナを見る。
「そこまでないわよ〜。ほら、クリスも食べましょう。本当に美味しいんだから」
「ボクはもう食べたニャ。大体他のハンターたちが手伝ってるのにご主人は食べてばかり。やる気あるのかニャ?」
「ハンターの仕事は狩りよ。食べれる時にたくさん食べて、飲んで、休む。・・・そもそも私があんな作業できると思う?」
「・・・ご主人は片っ端から壊しそうニャ」
「そこは否定するところでしょ!?料理長、ビール!」
ミレイナがビールを注文すると弟子のアイルーがジョッキを運ぶ。
「ありがとう。ンクッ、ンクッ・・・。ぷはぁ!!これがあれば狩りが捗るというものよ!」
「ああ、やっぱりここに居た・・・」
料理を一心不乱に食べ続けるミレイナを見て、ソフィーはため息をついた。
「先生・・・」
「あら、ソフィーちゃん。お疲れ様」
「作業はあらかた区切りが付きましたよ。後はゾラ・マグダラオスが現れるのを待つだけです」
「そう・・・。料理長、ご馳走様。お代、置いておくわ」
ミレイナは立ち上がり、キャンプ用のテント群に歩き始める。
「どこに行くんですか?」
「準備しようかなって。そろそろ始まるわよ」
「え?」
「まあ、気を張っても仕方ないわ。気を引き締めるのは狩りの最中だけ。じゃ、また後で」
ミレイナは手を振り、自分のテントに行ってしまった。
陽が登り始める。
技術班の作った障壁の端で1人、ミレイナは腰を下ろし、朝日が登っていくのを見つめていた。
朝日を浴びながら、常に持っているモンスターの黒い棘を見つめる。
「ここのどこかに・・・。新大陸のどこかにいる・・・」
先日対峙し、撃退したボルボロスなのだが、無数の棘に串刺しにされ死んでいた、とキャンプ設営をした技術班から報告を受けた。
彼らがその時採取した『痕跡』とミレイナの持つ棘。
サイズは違うが、同種のモンスターで間違いない。
そして。
「・・・来るわね」
ミレイナが呟くと導虫が青い光を纏い飛び出す。
「この反応が古龍なのね」
棘をしまい、ミレイナは立ち上がり、他のハンターたちが集まっている場所に向かう。
「先生!導虫が・・・!」
ミレイナを見つけたソフィーが慌てて寄ってくる。
「ええ。古龍だとこんな反応をするみたいね」
「はい・・・。なんだか、不気味ですね」
「おい!あれ!」
1人のハンターが大声をあげ、渓谷の遥か先を指さす。
微かに響いてくる足音と振動。
1つの山がゆっくり動きながらこちらへ向かってくる。
「来たわね・・・」
熔山龍ゾラ・マグダラオス。
目的のモンスターがその姿を現した。
「総員、配置につけ!何としてもマグダラオスを捕獲するのだ!」
「「おぉおおおおおおおおお!!」」
総司令の命令と共に、ハンターたちが一斉に『大砲』と『バリスタ台』に向かっていく。
砲弾の轟音。
弾の発射音。
人々が生き残っていくための知恵と力はゾラ・マグダラオスの体力を少しずつ奪っていく。
しかし、あの巨体だ。
『大砲の弾』、『バリスタ弾』を受け止め、ゾラ・マグダラオスは障壁の前まで進行し、自分の通行の障害となる壁に体をぶつける。
「うわっ!・・・すっごい衝撃・・・」
バリスタを撃っていたミレイナはその振動で地面に手をつく。
「・・・障壁は・・・。無事そうね」
ゆっくり立ち上がり、再びバリスタを撃ち始める。
だが。
「障壁が破られました!」
ゾラ・マグダラオスは何度もその巨体を障壁にぶつけ、とうとう破壊したのだ。
「慌てるな!2つ目の障壁へ先回りする。ハンターたちは翼竜に掴まり、ヤツに取り付くのだ!」
ハンターたちは一斉に翼竜に掴まり、ゾラ・マグダラオスの背を目指す。
「私たちも行きますか・・・。クリス!マイラ!ソフィーちゃん!」
3人は手分けして『大砲』に弾を運搬していた。
運搬をやめ、ソフィーは指笛を、クリスタルとマイラはミレイナの元へ駆け寄る。
「行きましょうか」
ミレイナの足にオトモ2人は掴まり、ソフィーの翼竜とミレイナの翼竜は並行して空を飛ぶ。
「えっと・・・。排熱機関を壊すんですよね。それってどれなのでしょう?」
「確かに。先に行った人たちが見つけてくれるとありがたいんだけどね」
ソフィーの質問にミレイナも悩む。
とにかくミレイナは先にゾラ・マグダラオスに乗り移ったハンターたちが集まっている箇所、向かっている先を探す。
「あれ。多分あれよ。あの赤い大きなやつ」
ミレイナの指さした燃えるように赤く、蒸気を出している岩のような外殻。
そこにハンターが数人集まり、攻撃をしていた。
「みたいですね。私たちも行きますか?」
「そうね。あれを探し回ってみましょう」
何事もなくゾラ・マグダラオスの背に降りたミレイナたち。
「ひと月前、だったかしら。ここでフレッドくんを助けたのは」
「もうそんな前になるんだニャ」
ミレイナとマイラは感慨深そうに呟く。
「物思いにふけてる場合じゃないニャ」
クリスタルが2人を注意する。
「分かってるわよ。それじゃ、排熱機関を探しましょうか」
壁を登り、上を目指す。
時折激しくゾラ・マグダラオスが暴れるのは他のハンターが排熱機関の破壊に成功した証拠だろう。
「って!どこにもないじゃない!」
頂上まで登ったものの、排熱機関と思わしき外殻は見つからない。
ミレイナは不満の声をあげる。
「他の人たちが全部壊しちゃったのかもしれないですね」
しゃがみこんでゾラ・マグダラオスの背を見つめるソフィー。
彼女もどこか不満げだ。
「まあ、全ハンター総動員だから取り分が無くなるのも仕方ないか・・・。1度降りましょう。何か見つかるかもしれないわ」
「そうですね」
その時だった。
ミレイナは見た。
黒い何かが大きな翼を羽ばたかせながらこちらへ飛んでくるのを。
あれはモンスターだ。
全身に黒い棘を生やし、頭には白く、太い1対の大角。
どの種にも当てはまらない独特な骨格と風貌。
間違いなく古龍だ。
「嘘・・・」
「先生?」
「逃げなさい」
「え?」
ミレイナの言ってる意味が分からないソフィーは間の抜けた声を出す。
「ここにいるハンターみんなに離脱するように言って、貴女も逃げなさい!」
「どういうことですか!?」
「説明してる暇はないの!分かったのなら早く!クリス!マイラ!」
「「はいニャ!」」
クリスタルとマイラはミレイナの肩に飛び乗る。
頂上からゾラ・マグダラオスの尾を目指して斜面を滑っていく。
「なんで?なんでアイツがここに・・・」
黒いモンスターはゾラ・マグダラオスの尾に4本足で着地し、おぞましい咆哮をあげる。
「あれ!不味いニャ!」
マイラが指さした方を見ると、モンスターが着地した場所にはそこで待機していたハンターたちがいた。
「そこの貴方たち!早く逃げなさい!」
ミレイナは叫ぶ。
だが、ハンターたちにその声は届いていない。
ハンターたちは各々の武器を抜刀し、モンスターに向かう。
「やめなさい!クソっ・・・」
ハンターたちは4足歩行の未知のモンスターに果敢に攻め入るが、黒い棘に武器を弾かれてしまう。
バァオオオオオオオオオオ!!
モンスターは前足を強く振り下ろし、ハンターの1人を吹き飛ばす。
後ろから回り込んだハンターには長い尾を振り回し、なぎ倒す。
「でゃあああああああああああ!!」
ミレイナは滑っている壁を蹴り、モンスターへ向かって大きく跳ぶ。
背中の『召雷剣【麒麟帝】』を抜刀し、空中で溜める。重力と溜めた力を存分に使い、モンスターへ振り下ろす。
だが、その一撃は空を斬り、地面に重鈍な音を響かせる。
モンスターは上から攻撃してきたミレイナに気づき、後ろへ大きく飛び退いていたのだ。
少しの距離を空け、ミレイナと黒い棘のモンスターは見合う。
「クリスとマイラはそこの人たちを逃がすのに専念して」
「ご主人様は1人で大丈夫ニャ?」
心配そうに尋ねるマイラ。
だがミレイナはニッ、と笑う。
「私を誰だと思ってるのよ」
「・・・すぐ助けにいくニャ!」
そう言うとマイラはクリスタルと共にハンターたちを逃がし始めた。
その場に残されたのはミレイナだけ。
モンスターは荒々しい息を吐きながらミレイナを睨み続ける。
「やっば・・・。どうしよ・・・」
大剣を構えるミレイナの腕は小刻みに震える。
体中を嫌な汗が伝い、不快感もある。
「震えが止まらない・・・。武者震い、て訳じゃないわよね、これ。あんなこと言ったくせに怯えてる・・・。怖いなんて思うのもいつぶりかしら・・・。でもね」
ミレイナは大剣を納刀し、モンスターへ全速力で駆け出す。
「私はお前を殺さないと気が済まないのよ!!」
突っ込んでくるミレイナを迎撃するために前足を振り下ろす。
「・・・っ!」
ミレイナは前方に飛び込むようにローリングし、前足を紙一重で躱す。
起き上がる反動と共に大剣を抜き、モンスターの胴体に抜刀斬りを当てる。
が、手応えはまるでない。
すぐさまその場から抜け出し、モンスターを視界から外さないように立ち回る。
黒いモンスターは溜める動作もなく、ミレイナに飛びかかってくる。
「くっそ!」
慌てて大剣を盾にその攻撃を受け止める。
「おっも、いっ!!」
何とか踏みとどまり、モンスターの腹へ潜る。
次は腹ではなく、尾に抜刀斬り。
先程より手応えを感じたミレイナは尾に張り付き、少しずつダメージを蓄積させていく。
グオッ・・・。
縦斬りでモンスターは怯む。
すぐさま強・溜め斬りを後ろ足に叩き込む。
だが、またしてもモンスターはその場から跳び、ミレイナと距離をとる。
「こいつ・・・」
納刀し、次の一手を考える。
しかし、考える時間も与える気はモンスターにはないらしい。
おぞましい声をあげながら、ミレイナに向かって飛び込んでくる。
「こんの・・・!」
真横に転がり、なんとか避け、そのままミレイナは前足を狙う。
そこでミレイナは気づく。
このモンスターの棘が目で見て分かるほどの速度で成長していくのを。
「古龍っていうだけで、どいつもこいつもデタラメして・・・」
不意に黒いモンスターは背の翼を地面に叩きつる。
「・・・あっぶな」
翼はミレイナのすぐ目の前に叩きつけられ、小石を飛ばす。
ミレイナはふっ、と息を吐く。
しかし、安堵したのがいけなかった。
モンスターはそのまま翼で地面、いや、ゾラ・マグダラオスの背を削りながら進み始めた。
「なっ・・・!?」
突然の事で大剣でろくに防御もできず、ミレイナの体は吹き飛ばされる。
体を正面に向けたまま、両手足を地面につけ踏ん張るが、それでも数mほど飛ばされてしまった。
「・・・っく・・・。いたっ・・・」
左肩に攻撃を受けたミレイナ。
その肩からは鮮血が流れ、『キリンXベスト』肩口の白を赤く染める。
「繋がってるし動く。いける」
追い打ちをかけてくるモンスターに合わせて、ミレイナは抜刀溜め斬りを頭部に打ち込む。
ガキン!と弾かれる音。
やはりあの大角は頑丈で、ミレイナの一撃を容易く弾く。
「・・・硬っ。でも!」
もう一度振り下ろすと、ちょうど角の生え際。モンスターの眉間を刃が捉え、頭部の棘を砕く。
「っ!」
砕けた棘の欠片の大半がが頬をかすめ、1つが額に刺さる。
そこから血が流れ、嫌でも口に鉄の味がまとわりつく。
流石に今の一撃は効いたのだろう、モンスターは軽く後ろに仰け反る。
「早くなんとかしないと・・・。ゾラ・マグダラオスが第2障壁に辿り着く前に」
グォオオオオオオオオオオオオ!!
最初に聞いたのとは少し違う咆哮。
おそらく、怒ったのだろう。
口からは黒い吐息が漏れ、棘の再生が早まった。
証拠に今砕いた頭部の棘は白いが、他の部位に引けを取らない長さに再生している。
モンスターは仕切りに左前足を叩きつけ、ミレイナを踏み潰そうとする。
「そう何度も・・・!」
モンスターを中心にグルッ、と後ろに回り込み、尾へ攻撃を重ねていく。
「先生!」
「ソフィーちゃん!?」
ミレイナと反対の方向からソフィーが走ってくる。
「私も・・・」
「帰りなさい!」
モンスターから距離を取り、ソフィーに向かって叫ぶ。
「え・・・」
思わず立ち止まるソフィー。
「1人より2人の方が・・・」
「そんな次元じゃないの!トビカガチにボロボロになってるようなレベルじゃ足でまといなのよ!」
ソフィーは俯く。
確かに今の彼女の実力ではあっという間にやられてしまうだろう。
その間、ミレイナはソフィーに敵意が向かないように必死に注意を向ける。
「分かったのなら早く行きなさい!死にたいの!?」
その言葉にソフィーはピクっ、と肩を跳ねさせ、悔しそうな顔をしながら背を向け、走っていく。
「それでいいのよ・・・」
走っていくソフィーの背中を見て微笑むミレイナ。
抜刀斬りから強・溜め斬りを当て、モンスターを大きく怯ませる。
「後で謝らないと。せっかくできた相棒なんだもの。嫌われたくないわ」
ミレイナは呟き、モンスターに向かっていくのだった。
最後までお読み頂きありがとうございます!
障壁も壊され、謎のモンスターの乱入。
ミレイナも怪我をしている。
ミレイナが血相を変えて頑なにモンスターから他人を遠ざける理由とは?
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