今回でゾラ・マグダラオス捕獲作戦は終わりです。
いつものように拙い文章ですが、最後までお付き合い下さい。
ゾラ・マグダラオスの進行は止まらない。
最後の障壁の前でハンターたちは持てる装備全てを使い、ゾラ・マグダラオスの体力を奪おうとするが、ヤツが弱る気配は一向に見えない。
「早く!早く止まってよ!先生が・・・」
ミレイナの言いつけを守り、障壁でゾラ・マグダラオスを迎え撃つソフィーが焦ったように呟く。
「落ち着くニャ。マイラもいるし、ご主人を信じるしかないのニャ」
ゾラ・マグダラオスの背でハンターたちの離脱の誘導をしていたクリスタルとマイラ。
しかし、2人は途中ではぐれてしまったが、クリスタルはソフィーと鉢合わせ、障壁にてゾラ・マグダラオスを迎撃している。
「ですが!私が見た時にはもうボロボロだったんですよ!」
「ここぞって時のご主人の底力は凄いニャ。それを信じるのニャ」
「・・・はい」
「こいつ・・・」
肩で荒い息をしながら黒いモンスターを睨む。
体中傷だらけのミレイナ。
何度も即死するような攻撃を躱し続けるも、飛び散る棘で傷を増やしていた。
防具の7割近くが血で赤くなり、輝く銀の長髪にも血が付いていた。
モンスターも少しずつ弱り続けてはいるものの、攻撃の手を緩める様子はない。
モンスターはミレイナへまたしても跳びかかり、トドメを刺そうとする。
「くっそ・・・。しつこいのよ・・・」
大剣を盾にし、何度目かも分からない攻撃を受け止める。
「くっそっ!」
縦斬りを繰り出すも難なく躱されてしまう。
「やっぱり大剣だと・・・」
あのモンスターは素早い。
振りが遅い大剣ではなかなか決め手の入らない状況にミレイナは歯ぎしりをする。
ポーチの中を手探りで漁るが、『回復薬』などの傷を癒すアイテムも底を尽きようとしていた。
「ご主人様!」
「マイラ!?」
モンスターの足元をくぐり抜け、棘を砕きながらミレイナの元に駆け寄るマイラ。
「傷だらけ・・・。遅くなって申し訳ないニャ」
「マイラ、離脱したんじゃ・・・」
「ワタシはご主人様のオトモなんだニャ」
「・・・ありがとう」
マイラが来たことにより、ミレイナの表情は少し明るくなる。
「クリスは?」
「途中ではぐれたニャ。多分、ソフィーさんと一緒だと思うニャ」
「そう。だったらソフィーちゃんは大丈夫ね」
すると、ゾラ・マグダラオスが大きく揺れる。
無数に刺さった『バリスタ弾』には強靭なワイヤーが括りつけられており、それによってゾラ・マグダラオスの動きを止めたのだ。
「とにかく、私たちでコイツをどうにかしないと。やるわよ、マイラ」
「はいニャ。2人で狩りだなんて昔を思い出すニャ」
「そうね。あの頃とは随分変わってしまったけど、いつも通りやるわよ」
ミレイナはモンスターへ向かって走り出す。
残り少なくなった『怪力の種』をかじり、アドレナリンの分泌量を増やし、一時的に筋力を高める。
そして、マイラの『はげましホルン』の音色により、ミレイナの力は更に上がる。
ミレイナの抜刀斬りはモンスターの眉間を的確に捉え、刃が甲殻を切り裂き、青白い稲妻が焼く。
「マイラ!」
ミレイナは前方にローリングし、マイラを呼ぶ。
「とったニャ!」
マイラはミレイナの攻撃した箇所へ飛び込みながら、『獰レイアネコレイピア』を傷口へ差し込む。
その一撃でモンスターは仰け反る。
「ナイス!」
そのチャンスに漬け込み、ミレイナは溜め始める。
「倒れなさいよ!!」
真・溜め斬りがモンスターの後ろ足に直撃する。
グォッ・・・!
遂に黒いモンスターは転倒する。
「マイラ!畳み掛けて!」
2人は自身のできる最高の攻撃を容赦なくモンスターへ叩き込む。
ミレイナが2度目の真・溜め斬りを頭部に当てた時にモンスターは立ち上がる。
例のごとく、前足を地面に叩きつけ、腕の棘を周囲に撒き散らす。
「このっ・・・!再生が弱まるどころか早くなってる!」
ミレイナは大剣を水平に薙ぎ払い、飛び散る棘を砕く。
「ご主人様!毒が入ったニャ!」
よく見るとモンスターの口からは紫色のヨダレが流れ始めた。
全てのモンスターは自身の身が毒で蝕まれると口から唾液と共にその毒を外部へ吐き出す。
この黒いモンスターも同様のようだ。
マイラの持つ武器はリオレイアの毒を分泌する棘から作られている。
その毒はこの黒いモンスターにも通用した。
そして、ミレイナは段差から飛び降り、ジャンプ溜め斬りを翼に当てる。
モンスターに乗り移ることはできなかったが、確かなダメージを与えたことにより、モンスターは仰け反る。
「このタイミングなら・・・!」
ミレイナは前足を狙い、大剣を振りかぶり、溜め始める。
だが・・・。
グオオオオオオオオオオオ!!
モンスターは2本足で立ち上がり、大咆哮をあげ、そのあまりの音量と衝撃にミレイナとマイラはその場で蹲る。
モンスターの全身の棘は瞬時に伸びきり、禍々しい艶が生まれる。
そして、翼を大きく広げ、飛び上がり、ミレイナたちを睨む。
「マイラ!こっちに!」
マイラは慌ててミレイナの足元に駆け寄る。
「来る!」
モンスターは2人へ急降下する。
それに合わせミレイナは大剣を盾にし、自分と足元のマイラの身を守る。
モンスターのそれは着地とはとても呼べるものではない。
地面に激突し、強引に体をコマのように横回転させながらゾラ・マグダラオスの背を抉る。
恐らくこれがこのモンスターの切り札。
今までとは比べ物にならない衝撃がミレイナを襲う。
「ぐっ・・・うぅ・・・!」
耐えたと思ったのも束の間。
モンスターは全身の棘を四方八方に撒き散らす。
激しく何度も棘が『召雷剣【麒麟帝】』を叩く。
しかし、棘を受け止めきれなかったミレイナの体は宙に浮く。
「きゃあっ!!」
「ご主人様!!」
ろくに受け身も取れず、背に叩きつけられるミレイナ。
「・・・ぅ・・・ぁ・・・」
うつ伏せのまま手探りで『召雷剣【麒麟帝】』を探すが、見つからない。
それもそのはず。
ミレイナの愛刀は彼女が吹き飛ばされたと同時にゾラ・マグダラオスの背から落ちていったのだから。
「・・・なぃ・・・。どこ・・・?」
ミレイナは無理矢理体を起こし、付近を見渡すが、彼女の視界の半分が赤く染まっていた。
「・・・血が、目に・・・」
ミレイナの頭からは血が流れ出し、視界を染める。
見えにくいまま、目の前を見るとマイラがミレイナの前に立ち、モンスターと睨み合っていた。
「・・・マイラ、私を置いて逃げなさい・・・」
「イヤニャ!」
「・・・いいから。私はもうダメみたい・・・。やっぱりコイツには・・・、勝てなかった・・・」
「まだチャンスはあるニャ!2人でここから帰ってまた頑張るんだニャ!」
「・・・マイラ・・・」
ゾラ・マグダラオスを拘束していた『バリスタ弾』が外れる。
大きな揺れにモンスターも僅かに体をよろめかす。
どうやら少しは弱っているようだ。
「・・・アイツも相当効いてるみたい。今ならまだ逃げれるわ」
「聞かないニャ!」
なお、拒否し続けるマイラ。
すると、何かが空を裂く音が聞こえる。
それは『バリスタ弾』だ。
何百ものバリスタがゾラ・マグダラオスに突き刺さり、その何発かが黒いモンスターにも刺さる。
しかし、モンスターは全く動じず、刺さった『バリスタ弾』を体を振るい、落とす。
「おぉおおおおおおおおおおお!!」
聞きなれない声がした。
ゾラ・マグダラオスの頂上から駆け下りてくるハンターが2人、ミレイナの元へ駆け寄ってくる。
1人は旧式の『レイアシリーズ』を身に纏い、『飛竜刀【翠】』を背負ったハンター。
もう1人は『ジュラシリーズ』を身につけ、チャージアックス、『ディア=ルテミナ』を手に持っている。
「ミレイナさん!!」
「フレッドくん・・・?」
ミレイナが聞いた声は間違いなくフレッドのものだ。
「1期団の人、頼みます!」
「うむ」
『レイアシリーズ』のハンターは太刀を抜き、的確に黒いモンスターの前足を斬り、棘を砕く。
しかし、その棘は瞬時に再生する。
「1人じゃ・・・、危ない・・・。私も・・・」
意地でも立ち上がり、モンスターに人を寄らせようとしないミレイナ。
「何言ってるニャ!そのまま寝てるんだニャ!」
「マイラの言う通りだ。ここから出よう」
フレッドはミレイナの肩を持ち、立ち上がらせる。
「ダメ・・・。アイツを・・・」
「いい加減にしろよ!」
怒鳴るフレッド。
その声にミレイナは驚く。
「何がアンタをそこまでさせるんだ!そんなボロボロの体で武器も無い!そんな状態のアンタにできることなんてないんだよ!」
「・・・・・・」
ミレイナは何も言い返せない。
突如大きな揺れが起きる。
「な、なんだ!?」
ゾラ・マグダラオスは急に立ち上がる。
その場の誰1人、立つことはできなくなり、ゾラ・マグダラオスの背から振り落とされる。
黒いモンスターは両翼を大きく広げると、1度吠え、どこかへ飛び立って行った。
「クソッ!ミレイナさん!」
落ちていく4人。
フレッドはミレイナを咄嗟に抱きしめ、落下の衝撃から守る。
落ちいていく中でフレッドは見た。
ゾラ・マグダラオスが立ち上がり、障壁を押し潰すその瞬間を。
「ガッ!?」
ミレイナを庇い、背から渓谷の谷に落ちたフレッド。
「ぅぐっ・・・。ミレイナさん、大丈夫か?」
「ええ・・・。ありがとう、フレッドくん・・・」
フレッドの腕の中のミレイナはいつもの陽気で明るい姿はどこにもなく、長く浅い呼吸を苦しそうに続けていた。
「ヤバいな・・・。とにかくみんなの元へ行かないと。マイラも乗ってくれ」
フレッドはミレイナを右肩に担ぎ、マイラは左肩に乗る。
「貴殿、これは彼女のものか?」
『レイアシリーズ』のハンターが『召雷剣【麒麟帝】』を持ち、フレッドに見せる。
「ああ。悪いがそれを持ってくれないか?流石にもう持てそうにない」
「承知した」
フレッドは指笛を吹き、翼竜を呼ぶ。
「降ろして・・・。恥ずかしい・・・」
少しだけ身をよじらせるミレイナ。
自分の体の傷が開くよりも担がれている今の方が嫌なようだ。
「それだけ言えるならまだまだ元気だな。よし行こう」
「お〜ろ〜し〜て〜・・・」
フレッドはミレイナの話も聞かず、『アステラ』の人々がいる高台に翼竜に掴まり、向かうのだった。
「お姉様!?」
高台に降り立ったフレッドたちの元へ真っ先に駆け寄ってきたのはシェリーだった。
その後ろにはクリスタルとソフィーの姿もあった。
「ああ・・・。なんて酷い・・・」
シェリーは口を押さえ、呟く。
「フレッドくん・・・、降ろして・・・」
「だけど・・・」
「いいから・・・」
「ああ・・・」
フレッドはミレイナに言われるまま、ゆっくりと降ろす。
「・・・おっ、とと・・・」
地に足をつけるとミレイナはそのまま尻餅をつく。
「あ、はは・・・。体が言うこと聞かないわ・・・」
「お姉様!喋らないでください!傷も酷いんですから」
「ごめんね、シェリー。ソフィーちゃん、いる?」
「・・・はい」
名前を呼ばれたソフィーはゆっくりミレイナの前に出る。
「ごめんね、酷い事言って」
「そんな・・・。私の力が足りないのがいけなくて・・・」
「そうです!この女にもっと腕があるならお姉様は怪我をせずにすんだんです!貴女がいればお姉様が傷つくだけなんですよ!」
シェリーはソフィーに怒りを向ける。
ソフィーもその事を十分に理解しているのか、その場で俯く。
「やめなさい、シェリー。それと、ね、ソフィーちゃん。ありがとう、私の言ったことをちゃんとやってくれて」
「・・・先生」
「先生、か・・・。私をまだそう呼んでくれるのね・・・。もっとカッコいいとこ、見せたかったなぁ・・・。これから私も頑張、るから、ね・・・」
「先生!!」
「お姉様!!」
そう言うとミレイナは横に倒れ、意識を失った。
障壁は壊され、ゾラ・マグダラオスは地面に潜り、その姿を消した。
捕獲作戦は失敗したのだった。
ボロボロになったミレイナ。
彼女があの黒いモンスターに固執するわけとは一体・・・。
まだまだ戦闘描写も慣れませんが、少しでも場の状況が皆様に伝わっていればと思っています。
感想、評価等お待ちしています。
次回またお会いしましょう!