復讐の舞姫   作:梨善

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こんにちは!

今回は作成失敗後、ミレイナとソフィーはどうしているのか、そういうお話です。

頑張るソフィーを見守ってください!


私、頑張ります!

あぁ・・・。これは夢だ・・・。

 

何度も見たこの地獄のような景色。

何度味わっても薄れない絶望。

 

そして、その中心には片角の悪魔。ヤツは吠え、こちらに跳び掛かる。

 

それは夢の終わりの合図。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

捕獲作戦が失敗して1週間が経つがミレイナはあれから目を覚まさない。

ソフィーはベッドに眠るミレイナが起きるのを隣で見つめ、じっ、と待っていた。

 

「起きないな」

 

一緒に見守るフレッドがソフィーに話しかける。

 

「うん・・・。私のせい、だよね・・・」

「それは違うって何度も言っただろ」

「だけど・・・」

 

拳を強く握るソフィー。

 

「私がもっと強かったら・・・。先生が任せるようなハンターだったら・・・」

「・・・今は考えても仕方ないさ。ミレイナさんのところに依頼は今日も来てるんだろ?」

「うん。沢山来てる。今はこんなだから1人でもできそうなものをシェリーが選んでくれて、私がやってるよ。・・・それでもクリスさんとマイラさんに手伝って貰ってやっとだけど・・・」

「そうか。俺は行くよ。1期団の人がそろそろ立つって言ってるから」

 

フレッドは偶然知り合った『ソードマスター』の異名を持つハンターと共に新大陸を歩き回っているらしい。

 

「兄さんも行くんだ・・・。寂しくなるなぁ」

「今回はすぐ拠点に戻るって話だ。ソフィーなら大丈夫さ。起きたらミレイナさんによろしくって伝えてくれ」

「うん。伝えておくね」

 

フレッドは自分の荷物を持ち、ミレイナの部屋を後にした。

 

「ソフィーさん、ご飯ができたニャ。後、シェリーさんが今日の依頼の話をするみたいニャ」

 

マイラがやって来て、ソフィーを呼ぶ。

 

「あ、はい。今行きます」

 

ソフィーは立ち上がり、もう一度ミレイナを見つめる。

 

「私、頑張りますから」

 

ソフィーは歩き出し、マイラに着いて行く。

 

クリスタルとシェリーは既にテーブルを囲んで、マイラの作った料理を食べていた。

 

「ソフィー、これ。今日の依頼です」

 

シェリーは食べながら依頼書をソフィーに渡す。

 

ミレイナが眠っているこの1週間で2人にも少しばかりの進展があった。

作戦が終わってすぐは険悪な空気が漂っていたが、2人ともミレイナを慕っているし、年も近いためか、ふとしたきっかけで仲は良くなり、互いを呼び捨てで呼び合うようになった。

 

ソフィーは書類を受け取り、内容に目を通す。

 

「え?『陸珊瑚の台地』?」

 

依頼書に書かれている土地は未だに開拓が進んでいない『陸珊瑚の台地』

依頼内容はこの土地で遭難し、行方の掴めない3期団一行の捜索だ。

 

「これを私が?無理だよ・・・」

「またですか・・・。その依頼書、誰宛だと思います?」

「先生宛でしょ?」

 

当然の質問に首を傾げるソフィー。

 

「よく読んでください」

 

シェリーに言われるまま、再び書類に目を通す。

 

「これ、本当?」

「本当ですよ。最近の活躍を見込んで、総司令が直々に貴女へ依頼を出したんです」

 

ソフィーは初めて自分に依頼が来たこと、自分の努力が周りに評価されていたことに感激する。

 

「ソフィーはちゃんとやっています。貴女はしっかりハンターとして役目を果たせているんですよ」

 

シェリーはソフィーを見つめ、微笑む。

 

「自分に自信がなさすぎるのはたまにムカつきますが、ソフィーなりに自信をつけようと頑張っているのは私が1番分かっています。その証拠にリオレイアやアンジャナフは狩れるじゃないですか。だから」

「うん・・・!頑張るから・・・」

 

泣きそうな声のソフィー。

自分の頑張りを認めて貰えて感極まっている。

 

腕で零れそうな涙を拭い、マイラの料理を次々に平らげていく。

 

「ご馳走様でした!私、準備ができたらすぐに行くから!」

「あっ!ソフィー!」

 

ソフィーはそう言うと、自分の部屋に走って行った。

 

「他にも情報はありますのに・・・。あの子は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アステラ』の北部に位置する『陸珊瑚の台地』

そこ一帯は色鮮やかな草木、そして大きな珊瑚に囲まれ、幻想的な光景を生み出している。

 

ここでもまた独自の生態系が作られており、一風変わったモンスターたちが数多く生息している。

 

「すごい・・・」

 

その景色を翼竜に掴まり、空から見下ろすソフィー。

 

「あの下、何があるんだろう・・・」

 

無数に広がる珊瑚を囲うように広がる奈落。

底が見えないほど深いその高低差に身震いをする。

 

ソフィーはゆっくり珊瑚に降り立つ。

 

「新しい場所・・・。胸が高まる感じ。私、好きかも」

 

気持ちが高揚しているソフィー。

こんな浮かれた状態で敵しかいない、モンスターの領域に入る訳にはいかない。

彼女は頬を叩き、気を引き締める。

 

「強く叩きすぎた・・・。痛い・・・」

 

頬を撫でながらゆっくり歩いていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未開の地というだけあって、『古代樹の森』や『大蟻塚の荒地』ほど道ができていない。

草を踏み倒しながらソフィーは進む。

 

「失敗しちゃったなぁ・・・。手がかりとか色々聞いてくるんだった・・・。疲れた・・・」

 

3期団の捜索は定期的に行っているらしいが、かれこれ10年以上手がかりが掴めていないらしい。

 

ソフィーはその場に腰を下ろし、水筒を取り出し、水を飲みながら、携帯食料を1つ口にする。

 

「美味しくない・・・。先生もこれの味嫌いって言ってたし、分かるなぁ。マイラさんのご飯が食べたいよ・・・」

 

文句をいいながら1つ食べ切る。

味はイマイチだが、ソフィーの疲れをとり、少しの空腹を満たす。

 

「今まで兄さんや先生たちと狩りをこなしてたから本当に1人だけって初めてだなぁ・・・。ちょっと寂しいかも・・・」

 

弱気に呟くソフィー。

そんな彼女に近づいてくる影があった。

 

「え?」

 

キィヤァアアアアアアアアア!!

 

青い鱗とベージュ色の皮。

大きな翼をはためかせ、頭部の耳のような独特な長い角を持つ。

そのモンスターの特徴なのだろうか、翼を動かす度に周囲の空気を凍結させていた。

 

「飛竜種!?」

 

ソフィーは慌てて立ち上がり、『鉄刀【禊】』に手をかける。

 

「狩るしかない、よね・・・」

 

しかし、モンスターはソフィーのその後ろを見ている。

視線に気づいたソフィーは恐る恐る後ろを振り向く。

 

その姿は鬼。

獣の様に4足歩行でゆっくりと空に浮かぶ、青いモンスターへ近寄る。

赤い皮膚には筋肉の筋が荒々しく浮かび、1つの足に夥しい数の爪が生え揃っており、口の牙も荒々しくむき出しになっている。

 

オォオオオオオオオオオン!!

キィアアアアアアアアアア!!

 

狼のような咆哮を上げる赤いモンスター。

それに感化され、青いモンスターも再び吠える。

 

「やばっ!逃げないと・・・」

 

1頭ならなんとか相手をできるかもしれない。

だが、名も知らぬモンスターが2頭現れたとなると話は別だ。

ソフィーはタイミングを見計らい、離脱を決める。

 

「始まった!」

 

赤いモンスターは青いモンスターに飛びつき、組み合い始めた。

 

「そこのアンタ!こっちへ来な!」

 

声のした方を振り向くソフィー。

 

そこには大きな荷物を背負い、ゴーグルもマスクをし、顔を隠している。

声から察するに初老の女性だろう。

 

「あ、貴女は・・・?」

「いいから!」

「は、はい!」

 

ソフィーは言われるまま言葉に従う。

 

「いい子だ。着いてきな!」

 

前を走る女性。

ソフィーもその背中に着いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまで来れば大丈夫だ。この辺はヤツらのテリトリー外だからね」

 

肩で息をしながらゴーグルとマスクを外しながら女性は話す。

 

「あ、ありがとう、ございます・・・」

 

ソフィーも同じく息を切らしながら、礼を言う。

 

「いいのよ。アンタは1人かい?」

「はい・・・。3期団の捜索を頼まれて・・・」

 

ソフィーの言葉を聞くと女性は驚いた顔をした。

 

「まあまあ。運がいいわね。案内するわ」

「え?3期団の方たちの行方を知ってるんですか?」

「まあね。ここからそれなりに歩くよ」

「は、はい!あの、貴女は?」

「ああ、私かい?そうだね・・・。みんなはフィールドマスターと呼ぶわ」

「フィールド、マスター?」

 

聞いたことがない言葉にソフィーは首を傾げる。

 

「この辺の生態の調査をずっとやっててね。気づいたらそう呼ばれるようになってた。お婆ちゃんだったり、おばさんだったり、好きに呼んでいいさ」

「はぁ・・・」

 

おどけて話すフィールドマスターと名乗った女性。

ソフィーはよく分からない、と言いたげに首をかしげた。

 

「とにかく行くよ。まだモンスターはうようよいるからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

途中、赤い鱗と大きな目をしたシャムオスと呼ばれる小型モンスターと数匹遭遇したものの、あっさりと撃退したソフィー。

フィールドマスターに案内され、到着した場所にあったのは不時着した飛行船だった。

 

「これが?」

「そうさ。詳しい話は中に入ってからするわ」

 

彼女に続いて飛行船の中に入るソフィー。

そして、ソフィーは同時に疑問を持った。

なぜこんな施設があるのに、救援を呼ばなかったのか、と。

 

「さて、アンタ。聞きたいことが山ほどある、と言いたげな顔だね」

「分かりますか?」

 

あっさりと心境を読まれてしまったソフィーは驚く。

 

「そんなに顔、出てました?」

「まあね。それは3期団長に聞くといいさ」

 

自分からは語ろうとしないフィールドマスターに疑問を持ちながら、ソフィーは奥へと進んでいく。

 

研究所の上層階。

そこには竜神族の女性が独自のスペースを作り、くつろいでいた。

 

「あら。その子は?」

「この子は『アステラ』から来たのさ。アンタたちを探しにね」

「そうなの。それはご苦労ね。貴女、名前は?」

「そ、ソフィー、です・・・」

「そ。私は3期団の団長を務めているわ」

「あ、貴女が?」

 

若い見た目にソフィーは驚く。

しかし、彼女は竜神族だ。

長寿で聡明なのだから、当たり前のことだ。

 

「ええ。見ての通り、3期団は学者が中心でね。レイギエナが飛び回って帰りたくても帰れないうえに、使いも出せない。だから、ここをそのまま研究施設にしている訳」

「レイギエナ?」

 

聞いたことのないモンスターの名前にソフィーは首を傾げる。

 

「あの青い飛竜種さ。この『陸珊瑚の台地』の頂点に君臨するモンスター。またの名を風漂竜」

「そ。ちなみに、この空中研究施設を叩き落としたのも、レイギエナよ」

「そ、そうなんですね・・・」

 

特に関心がなさげに3期団長は告げる。

すると、ソフィーは1つの疑問が浮かんだ。

あの青い飛竜種がレイギエナと分かったのはいい。そうなると、あの赤い狼のようなモンスターは一体何者なのだろうか。

 

「しばらくはまだここにいて研究を続けるつもりよ。それで、『アステラ』はどうしてるの?」

「あ、はい。つい先日、ゾラ・マグダラオスの捕獲作戦を決行しました。ですが、失敗に終わり、追跡中です」

 

ソフィーの説明に2人は顔をしかめる。

 

「そう。とうとう『アステラ』も動き出したのね。私たちも動き出すべきかね」

 

フィールドマスターはやはり、とでも言いたげに呟いた。

 

「そのようね。さしあたってはゾラ・マグダラオスの追跡とこの施設の復旧ね。今できることは・・・。そうね、貴女」

「は、はい!?」

 

3期団長に指を刺され、ソフィーは肩を跳ねさせる。

 

「ハンターよね。この近くに生息しているモンスターを狩って来てほしいの」

「ま、まさか・・・。あのレイギエナとかいう飛竜を・・・」

 

ソフィーは怯えながら訊ねる。

そんな彼女を見て3期団長は愉快そうに笑う。

 

「惜しいわね。同じ飛竜だけど、レイギエナと違って可愛いわよ」

「可愛いんですか!?」

 

ソフィーは目をキラキラさせて食いつく。

 

「あらあら。女の子ね」

 

フィールドマスターは優しく微笑む。

その事に気づき、はしゃぎかけていたソフィーは恥ずかしくなり、顔を赤くして俯く。

 

「じゃあ、このモンスターの狩猟をお願いね」

 

3期団長が差し出した、モンスターの資料をソフィーは受け取り、内容を読む。

 

「パオ、ウルムー?」

 

資料に描かれたモンスターの絵を見る限り、白い体で首周りが鬣に覆われているようだ。

 

「可愛い・・・。早速行ってきます!」

 

ソフィーは走り出し、研究施設を飛び出していった。

 

「若いわね」

「ええ。若いわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソフィーが辿り着いたのはクラゲのような環境生物が浮かび、風変わりな樹木が生え揃っている。

 

そんな中、ソフィーはまたしても肩を落とし、ドボドボ歩いていた。

 

「またやっちゃった・・・。どこがパオウルムーのテリトリーか聞いてくるんだった・・・。飛竜種だし、飛び回るんだから足跡も見つけにくいのに・・・。可愛いんだろうなぁ。躊躇っちゃいそう」

 

近くの木の下に腰を下ろし、その周辺を飛び回っている環境生物を見つめる。

 

「あのピンクの鳥、可愛いなー。捕まえちゃおうかな・・・」

 

ソフィーはスリンガーに『捕獲用ネット』を装填し、撃ち出す。

網は鳥を覆い、1匹捕まえた。

 

「えへへ。可愛いなー」

 

捕まえた鳥を網から出し、掌に乗せる。

その鳥はドレスサンゴチョウといい、この周辺に生息する生物だ。

ドレスサンゴチョウは逃げる様子もなく、ソフィーを見つめている。

 

「あ、これ。食べる?」

 

ポーチから『携帯食料』を取り出し、軽く崩すと、ドレスサンゴチョウを乗せている手に散りばめる。

ドレスサンゴチョウは『携帯食料』をついばみ、食べ始める。

 

「ふふっ。美味しい?・・・って美味しくないか・・・」

 

項垂れるソフィー。

すると、ドレスサンゴチョウは突然飛び立って行った。

 

「あぁっ!・・・ん?」

 

そして、ソフィーは気づく。

自身を大きな影が覆い隠しているのを。

慌ててソフィーは上を見上げるが、その影の正体に首を傾げる。

 

「毛玉?」

 

空に浮いているのは白く、大きな毛玉。

その毛玉の中心からコウモリのような頭が生え、黒く、大きな瞳でソフィーを見つめる。

あれが浮空竜パオウルムーだ。

 

「わっ!か、かわ!」

 

しかし、ソフィーの期待は裏切られる。

その瞳は釣り上がり、口は大きく広がり、顔の半分を占める。

 

「いくない!」

 

ソフィーは叫び、『鉄刀【禊】』を抜く。

 

「可愛くないなら容赦しないよ!」

 

ギャルルルルルルル!!

 

浮いたまま特徴的な咆哮をあげるパオウルムー。

 

今の位置からではソフィーの攻撃は当たらない。

彼女は近くの段差を駆け上り、空中のパオウルムーへ一太刀浴びせる。

しかし、その攻撃にパオウルムーは何の反応も示さない。

 

「やっぱり、先生と違って力もないし、武器も弱いから・・・」

 

確かにミレイナならば今の一撃でモンスターをよろめかせ、空中での攻防を展開させていただろう。

 

「・・・気にしちゃダメ。先生と私は違うんだから・・・」

 

1度深呼吸をし、ソフィーは空中のパオウルムーを睨む。

動いたのはパオウルムーだった。

白い翼を動かし、ソフィーの側面に回り込むと、茶色の尾を使い、真下の地面を薙ぎ払う。

そして、その尾は伸びた。

 

「あ、危なっ!」

 

咄嗟に転がり、ソフィーは尾を避ける。

パオウルムーの尾はゴムに似た性質を持ち、伸縮するのだ。

 

「ど、どうしよう・・・」

 

パオウルムーは空中からなかなか降りてこない。

位置次第では段差から飛び、攻撃を当てることができるが、それでも状況は進展しない。ソフィーは防戦一方となっていた。

 

「せめて、降りてさえくれれば・・・」

 

少し息を切らしながらパオウルムーを見るソフィー。

すると、パオウルムーは高度を下げ、地面に足を付ける。

特徴的だった首元の大きな毛はなくなり、従来の飛竜の姿になる。

 

「チャンス!」

 

ソフィーはすぐさま距離を詰め、太刀を振り下ろす。瞬く間に気刃大回転斬りまで完走し、刃が白い光を纏う。

 

「まだまだ!」

 

気刃大回転斬りで納刀した武器をすぐさま抜刀し、移動斬りで位置をずらしながら、確実に錬気を溜めていく。

 

「よしっ。・・・!?」

 

すると、パオウルムーは突如走り出す。

速度はさほどないものの、ソフィーより大きな体躯。

その体にぶつかり、ソフィーは吹き飛ばされる。

 

「いったたた・・・。思いっきりくらっちゃった・・・」

 

なんとか受け身をとり、すぐさま起き上がるソフィー。

 

「パオウルムーは?」

 

視界から消えたパオウルムーを探し、付近を見渡す。

 

「あ、あれ?」

 

ソフィーが目にしたのは突進の勢いを殺しきれず、腹から地面に倒れ込むパオウルムーの姿。

あまり脚は発達していないようだ。

 

「なんか可愛い・・・。じゃなくて!そうと分かれば!」

 

ソフィーは再び仕掛ける。

狙うのは両脚だ。

 

何度も気刃斬りを浴びせ、ついにパオウルムーは転倒する。

 

「よしっ!」

 

真っ赤になった『鉄刀【禊】』の刃を水平に構え、錬気を解放させながら突き刺す。

 

「はぁああああああああ!!」

 

大きく叫んだソフィーは、パオウルムーを踏み、高く跳ぶ。

 

「フッ!!」

 

兜割で真っ直ぐに振り下ろした剣先はパオウルムーを斬り裂く。

飛び散る返り血を気にすることもなく、攻撃の手を緩めず、パオウルムーを攻め立てる。

 

「ダメか!」

 

パオウルムーはゆっくり起き上がる。

ソフィーはトドメを刺すことはできなかった。

 

ギャルルルルルルル!!

 

再び咆哮をあげたパオウルムー。

案の定、怒り状態になる。

モンスターが怒ると、いつもなら慌てたり、緊張で取り乱しているソフィーだが、今回は落ち着いていた。

ミレイナのいなかった狩りの時間がこういう時にソフィーを成長させていた。

 

ソフィーの狙いは変わらず脚。

それが分かっていたのか、パオウルムーは尾を横に振り回し、ソフィーが近づくのを妨げる。しかし、それは全く意味をなさず、あっさりソフィーの接近を許す。

ところが。

 

「わっ!?」

 

謎の風がソフィーの動きを止めた。

動きが止まったソフィーを目掛け、パオウルムーは突進する。

風圧により動くのが遅れたソフィーは慌てて避けようとするが、広げた翼にぶつかってしまう。

ぶつかったとはいうが、肩を少し当てられた程度。

 

「まだやれる!」

 

ソフィーは意気込み、転ぶパオウルムーに近づく。

すぐさまパオウルムーは起き上がると、再び謎の風がおこる。

 

「また!?」

 

風の軌道を感覚で追うソフィー。

その風はパオウルムーへ向かっていた。

 

「この風はなんだろう・・・」

 

再び風が舞う。

ソフィーはじっ、とパオウルムーを観察し、その謎を突き止めた。

 

「息を吸っているの?・・・なんて肺活量・・・」

 

そして、パオウルムーは再び首元を膨らませ、宙に浮く。

 

パオウルムーはその肺活量で空気を吸い、首にある空気袋を膨らませ、飛んでいたようだ。

 

「本当に独特な生態なんだ・・・」

 

感心するソフィーだが、そんな暇はない。

パオウルムーが空中にいる時点でこの狩りの流れは変わってしまったのだから。

 

宙を自由に動き、あらゆる方向からの攻撃をソフィーはギリギリで避け続ける。

 

「どうしよう・・・。こんな時、先生なら・・・」

 

避け続けながら頭をフル回転させ、今まで見てきたミレイナの行動を思い出す。

 

『いい?飛行が得意なモンスターと戦う時はできるだけ相手の得意な空中に行かせないように戦うの』

『確かにそうですね。でも、どうやるんですか?飛ぶ前に狩るのなんて無理ですよ』

『だから、コレを使うの。私の大好きな道具の1つよ』

 

「あった!」

 

ソフィーはポーチからアイテムを取り出す。

それは『スリンガー閃光弾』だ。

迷いなくスリンガーに弾を装填し、パオウルムーの目の前に撃ち出した。

 

強烈な閃光がほとばしる。

 

自分で使ったのは初めてのソフィーは思わず目を瞑る。が、すぐに目を開き、パオウルムーが閃光に驚き、地面に墜落したのを確認する。

 

「やった!これなら!」

 

目が見えなくなったことにより、上下の感覚を維持できなくなり、落ちたままもがくパオウルムー。

ソフィーは2度目の気刃兜割を頭部に入れ、再び太刀の連続攻撃を繰り出す。

 

それでもパオウルムーを討伐することはできず、モンスターは立ち上がる。

だが、パオウルムーも瀕死のようだ。

呼吸もゆっくりになり、白い毛皮は自身の血で赤く染まり始めていた。

 

「いける!もう一息!」

 

パオウルムーもやられる訳にはいかない、とでも言うように、ソフィーへ尾を振る。

 

「もう分かってるよ!」

 

ここで初めて見せる見切り斬り。

尾を的確に躱し、カウンターのように放つ薙ぎ払う。

その太刀筋は今日1番の冴えだった。

 

ギャッ!?

 

攻撃中に反撃を貰うことなど考えていなかったのだろう。

パオウルムーは声をあげ、仰け反る。

 

「これで!」

 

流れるように気刃大回転斬りに移行し、パオウルムーを斬り抜けるソフィー。

 

ギッ・・・、ギャッ・・・。

 

パオウルムーが崩れ落ち、動かなくなる。

 

カチン、と気持ちのいい納刀の音を響かせ、ソフィーはうーん、と背伸びをする。

 

「できた!私にもできたよ!これも先生のお陰だよ!」

 

初めてのたった1人での狩猟を達成できた喜びにはしゃぐ。

 

「さっそく3期団とお婆ちゃんに報告しないと!」

 

気分のいいソフィーは走って研究施設まで帰還するのだった。




今回もありがとうございます!

ソフィーが頑張る話でした。

ソフィーのパオウルムーの感想は私が初見で思ったことです。
浮いてる時は可愛いんですけどねぇ・・・。

次回もよろしくお願いします!
感想などもお待ちしています!
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