復讐の舞姫   作:梨善

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お久しぶりです、うみみです。

やることが多く、なかなかこの作品に着手できずに、更新が遅くなりました。
申し訳ありません。

今回もよろしくお願いします!


ミレイナの過去

3期団の研究施設にて、3期団長はいつものようにくつろぎながら、書類に目を通していた。

 

「・・・うん。頼み事はこれで終わりね。ご苦労様」

 

3期団長は目の前に立っているソフィーに告げる。

 

「えっと・・・。じゃあ、私は?」

「『アステラ』に戻っていいわよ。総司令にこっちは無事ってことと、こちらの方針を伝えて。内容はこれにまとめてある」

 

ソフィーは3期団長から紙が挟まれたファイルを受け取る。

 

「これで貴女への依頼は終わりよ。後はこちらで進めるわ」

「はい。こちらこそ、お世話になりました!」

 

ソフィーは元気よく頭を下げる。

 

パオウルムー狩猟後、なんだかんだここで依頼ごとをこなしていると1週間以上の経っていた。

『陸珊瑚の台地』に生息するモンスターの殆どの狩猟を。たった1人で成功したソフィーの腕は格段に上がっていた。

 

「また何かあったらこっちからお願いするから。次に来る時は貴女の先生も一緒にね」

「はい!」

 

ソフィーはしばらくぶりに『アステラ』へ帰還するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・緊張する・・・」

 

ソフィーが『アステラ』に帰還すると既に夜になっていた。

ミレイナのルームの入口に立っているソフィーはポツリ、と呟く。

ここに立ち止まって数分経つが、彼女はソワソワしたり、頻りに髪型を気にしたり、と落ち着きがない。

 

「よ、よし・・・!」

 

ソフィーは意気込み、扉に手をかけ、開ける。

 

「こ、こんばんは〜・・・。戻りました」

 

顔を覗かせると部屋には誰もいない。

一応自由な出入りが認められているが、恐る恐る中に入る。

 

「もうみんな寝ちゃったのかな・・・」

 

静かな部屋を歩き、ソフィーは何となく庭へ向かう。

 

「あ・・・」

 

今夜は満月。

その月の白い光が庭を照らし、幻想的な景色を生み出す。その庭にはミレイナが居た。

ミレイナなのだが、寝巻きにしている長袖のシャツを着て、月明かりに照らされながら、美しく、静かに舞を踊っていた。

 

「先生・・・?起きたんだ・・・」

 

無事、目覚めたミレイナに安堵すると同時にソフィーは見たことのない舞を踊るミレイナの姿に見惚れ、見つめ続ける。

 

「あら?」

 

ミレイナはソフィーに気づいた。

 

「見られちゃったわね」

 

ミレイナは照れくさそうに言う。

 

「あ、いえ。覗き見をしていた訳じゃなくて・・・」

 

慌てて弁解するソフィーだが、ミレイナは微笑む。

 

「いいのよ。元々人に見せるため、神様に見せるための儀式の舞なんだから」

 

月を見つめながらミレイナは語る。

その姿は昔を懐かしむような寂しさがあった。

 

「あの!」

「何?」

「教えてくれませんか?先生の昔のことと、故郷のことを。先生があの黒いモンスターに執着する理由を」

「・・・」

 

ミレイナはしばらく考える。

 

「・・・そうね。少しだけ」

「ありがとうございます」

 

ミレイナは庭のベンチに腰掛け、その隣にソフィーを座るように促す。

ソフィーが腰掛けると、ミレイナはふーっ、と息を吐く。

 

「何から話そうかしら。・・・まずは私の故郷よね。私の故郷はユクモ村から少し離れた小さな村。そこはユクモの地を統べる古龍、アマツマガツチを祀る村だったの」

「アマツマガツチ・・・。聞いたことがあります。嵐龍と呼ばれて、現れると嵐を呼ぶ大型の古龍ですよね」

 

ソフィーは以前読んだことのある文献の1文を口にする。

 

「ええ。私の村では年に数回、アマツマガツチが現れないことを願いつつ、敬意を示すための儀式をしていたわ。さっき私が踊ってたのはその儀式の舞よ」

「じゃあ、先生って巫女、なんですか?」

「そんな立派なものじゃないわよ。私なんてたまたまその家に産まれただけだから。・・・まあ、村では『舞姫』なんて呼ばれててね。こう見えて箱入り娘だったのよ?」

「・・・あんまり想像できないです」

 

普段の好戦的で酒ばかり飲むミレイナしか知らないソフィーは苦笑いを浮かべる。

 

「それもそうよね。・・・小さい頃は外なんて知らないし、人なんてあの村の人しか知らないで、適当に結婚して、子供を産んで死んでいく、なんて思ってた。でも、『舞姫』は同時にハンターをやらなければならない。現れ、災禍を起こすアマツマガツチを討伐するために。それを知った私は飛び跳ねて喜んだわ」

「どうしてですか?」

「ハンターになれば外に出れる。見たことない場所、知らない人、モンスターに沢山会える、そう思ったの。それが14歳の時だったわ」

「そんな年でハンターになったんですか?」

 

あまりにも若い年齢にソフィーは驚く。

 

「ええ。私がやりたい、って言ったのもあるわ。その時にマイラと出会ったの。あの子はずっと私のパートナーなの」

「そうなんですね。先生はずっとハンターをやってたんだ」

 

ソフィーは感慨深そうに呟く。

 

「そうね。もうこの生き方しかできないわね。それにハンターをやるのは楽しいから」

 

ミレイナは笑う。

このハンターという職業に満足しきっているようだ。

 

「じゃあ、あの黒いモンスターは・・・」

 

ソフィーはもう1つの聞きたいことをミレイナに質問する。

その瞬間、ミレイナの表情は暗くなる。

 

「あいつはネルギガンテというらしいわ」

「らしい?」

 

珍しく歯切れの悪い言い方をするミレイナ。

ソフィーもそれを不思議に思い、首を傾げた。

 

「私もあいつの事はほとんど知らないわ。ただ私が起きてすぐにシェリーがあのモンスターの名前を教えてくれたわ。この『アステラ』の古い書庫にあいつの記録が少しだけあったらしくて。それで調べて来てくれたのよ」

「流石シェリー。普段はあんななのに、仕事は本当に早い・・・」

「ええ。頼もしいわ。それで、あのネルギガンテについて私が知ってること。あいつは古龍を喰うのよ」

「え・・・?」

 

ソフィーはネルギガンテの生態に面をくらい、気の抜けた声を漏らす。

 

確かにモンスター同士の捕食の仕合はある。

だが、古龍が古龍を喰うという事例はない。

 

「見たのよ。昔、アマツマガツチが現れて、討伐に向かった時、ネルギガンテがアマツマガツチを捕食しているところを・・・。そして・・・」

 

ミレイナは声を震わせ、腕を握りしめる。

 

「いいえ。何でもないわ・・・」

 

ミレイナはそこで言葉を切った。

 

「あのネルギガンテもゾラ・マグダラオスを捕食に来たのよ・・・。・・・さ、中に入りましょう。夜は冷えるわ」

「・・・はい」

 

立ち上がり、 部屋に入るミレイナの後ろを着いて行くソフィー。

 

「コーヒーでも入れましょうか・・・。ソフィーちゃんは飲める?」

「え、えっと・・・。苦手です・・・」

 

申し訳なさそうに告げるソフィーへミレイナは優しく微笑む。

 

「だったらソフィーちゃんは紅茶にしましょうか。私が眠ってる間の話を教えて?」

「はい!」

 

ミレイナはキッチンへ向かう。

 

「あ、先生!」

「何かしら?」

 

ミレイナは立ち止まってソフィーへ振り向く。

 

「ただいま戻りました!」

 

忘れていた帰ってきた時の挨拶。それをミレイナに告げる。

 

「おかえり、ソフィーちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ〜。『陸珊瑚の台地』か。綺麗な所のようね」

「それはもう!」

 

この1週間、『アステラ』に何があったのか。ソフィー自身が何をしていたのかをミレイナに説明する。

 

時々はしゃいで話すソフィーの姿にミレイナは微笑みながらコーヒーをすする。

 

「先生!」

 

不意に呼ばれ、肩を跳ねさせるミレイナ。そして、ソフィーは頬を膨らませていた。

 

「もう、聞いてましたか!?」

「え、ええ・・・」

 

ミレイナとしては起きたら少し頼もしく成長していた相棒の姿に驚き、ぼーっ、としていた。

 

「それでですね!そのツィツィヤックなんですけど」

 

饒舌に話すソフィー。そして、ミレイナは終わりそうにない話を楽しむことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、昨日の朝起きたばかりのお姉様と帰ってきたばかりのソフィーに今の『アステラ』の動きを説明します」

 

いつものように全員で机を囲いながら朝食をとるミレイナたち。

シェリーは分厚い資料に目を通しながら現在の報告を始めた。

 

「まず『アステラ』は次の捕獲作戦に向け、装備と施設、及び迎撃ポイントの見直しを進めています。未だにゾラ・マグダラオスの足取りは掴めておらず、難航とのことです。・・・ソフィー、聞いてるんですか?」

「あ、ごめん」

 

注意を受けたソフィーは必死に料理を口に運んでいた。

 

「・・・貴女、そんなに食い意地のある人でしたっけ?」

「ち、違うの!久しぶりに食べるマイラさんの料理が美味しくて。つい・・・」

「作った身としては嬉しい限りニャ!」

「はぁ・・・。程々に・・・。そして、お姉様立ちなんですが、『陸珊瑚の台地』にある3期団の研究施設に向かってください」

「どうして?」

「それが・・・」

 

ミレイナの質問にシェリーは曖昧に返事をする。

 

「詳細が書かれていなくて・・・。ただ、総司令からの司令のようです」

「はぁ・・・。だろうと思ったわ。仕方ない、行くわよ」

 

ため息をつきながらミレイナは立ち上がる。

それに合わせ、クリスタルとマイラも自分たちの装備を取りに行く。

 

ミレイナは自分の装備、『キリンXシリーズ』に身を包む。

 

「うん。綺麗になってる」

 

眠っている間に気を利かせて、修理とクリーニングに出してくれたシェリーに感謝しながら、武器を背負い、自室から再び広間に戻る。

ソフィーはと言うと、まだ食べていた。

 

「ソフィーちゃーん。置いていくわよー」

「ま、まっへふははい!」

 

慌ただしく飲み込み、ソフィーはミレイナへついて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミレイナは初めて降り立つ、『陸珊瑚の台地』に光景に目を丸くしていた。

色鮮やかな珊瑚礁にまるで海の中にいると錯覚してしまった。

 

「本当に綺麗ね」

「そうなんです!でも、昨日の今日で来るとは・・・」

「ハンターなんだからそんなものよ。さ、研究施設?ってところに行くわよ。案内お願いしていい?」

「はい!行きますよー!」

 

自信満々に歩いていくソフィー。

その後ろ姿を見てクリスタルは呟く。

 

「なんか、見違えたニャ。この1週間、余程いい経験をしたようニャ」

「確かに。ワタシたちが居てもどこか不安そうにしてからニャ」

 

マイラも同意見のようだ。

 

「昨日の夜にたくさん話を聞いたわ。ま、たまには倒れるのも悪くないわね」

「「それは困るニャ!」」

 

声を揃えて叫ぶ2人。

 

「わっ。何よ、2人して」

「なんとかなりはしたけど、ソフィーと

シェリーの仲は最悪だったニャ!」

「あの空間は耐えれるものじゃなかったニャ・・・」

 

震えながら話す2人。

 

「・・・よく分からないけど、仲良くなったんならいいじゃない・・・」

「ご主人様は寝てたからそんなことが言えるんだニャ・・・」

「ま、なんでもいいわ。ほら、ソフィーちゃんに置いてかれるわよ」

 

前を行くソフィーを追いかけながら、ミレイナはネルギガンテの『痕跡』を取り出し、導虫の反応を見る。

1度も足を運んだことのない土地ならばと思ったが、導虫は何のアクションも起こさない。

 

(あの時・・・。ゾラ・マグダラオスを捕食に来たネルギガンテに導虫は反応しなかった・・・。つまり、あいつは私が探している奴とは違う・・・)

 

「ご主人様?」

 

マイラがミレイナの顔を覗き込む。

 

「なんでもないわ」

 

余計なことは考えない、とミレイナは頬を叩くのだった。




全ては語られていませんが、ミレイナの過去が少しだけ判明した回でした。
舞台もアステラ周辺から離れ、陸珊瑚周辺へ。
どんなモンスターが彼女たちを待ち受けているんでしょうね。

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