スクスタクエスト〜空と海と大地と呪われしYAZAWA〜   作:『シュウヤ』

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第1話

森の中に、開けた場所があった。薪が積まれていたり、切り株があったりと誰かが目的を持って森を切り拓いた場所だった。

その切り株の一つに、少女が腰掛けていた。地図を持って、これからのルートを確認している所だった。

「ふむふむ、これがこうなって、こうだから……真っ直ぐ行けば何とかなるよね!」

あまり大丈夫そうではなかった。

そこへ、

「おーい、穂乃果ちゃ〜ん!」

「そろそろ出発しようじゃん?」

別の誰かから声がかかった。

穂乃果がそちらを振り向くと、二人の少女が手を振っていた。

「うん、じゃあ休憩終わり! 曜ちゃんに愛ちゃん、行こう!」

穂乃果は勢いよく切り株から立ち上がると、

「あれ? あの二人は?」

辺りをキョロキョロと見渡した。

「私ならここにいるわよ」

すぐ近くの茂みから、さらに別の声が聞こえてくる。

現れたのは、人間とおばけキノコを足して二で割り損ねたようなモンスターだった。遠目から見れば人間に見えるが、近付くと頭がキノコだったり、そこから小さなキノコがツインテールのように生えていたりと、不気味な様相をしていた。大きさも、一メートル程度しか無い。

「で、出たな魔物!」

思わず剣を構えそうになった穂乃果に、

「私だっつってんでしょ」

キノコ人間は疲れたようにツッこむ。

「あ、なーんだにこちゃんかぁ〜」

「……アンタ、わざとやってないでしょうね」

「そんな事ないよ! 穂乃果がにこちゃんを見間違えるわけないじゃん!」

「数秒前の発言に責任を持ちなさいよ!」

拳を震わせて叫んだにこに、

「ま、まあまあ」

曜がなだめる。

「その見た目も、多分無くはないかなって思う人もいるかもしれないからさ?」

「中途半端なフォローは、余計に相手を傷付けるってのを覚えときなさい」

げんなりしたにこは、

「……で? もう一人は?」

この場にいないもう一人の姿を探す。

「にこにーと同じように、どっか隠れてるんじゃないかと思うわけよ」

そう愛が答えた直後、ガサガサと茂みが揺れる。

「おっ、噂をすればじゃない?」

全員がそちらに視線を向けると、

「!!!」

「!!!」

「!!!」

青い身体をした魔物、スライムが三体飛び出してきた。

 

[スライムが現れた!]

[スライムが現れた!]

[スライムが現れた!]

 

「うわっ、スライムだ!」

 

[スライムのこうげき! ミス! 穂乃果はダメージを受けない!]

 

穂乃果はスライムの体当たりを左腕で防ぎながら、背中の《兵士の剣》を抜く。その横では、曜が《石のおの》、愛が《ブロンズナイフ》を構える。

「に、にこは戦えないから任せたわよ!」

にこは三人の後ろに引っ込み、成り行きを見守る。

「もービックリしたじゃん!」

穂乃果は憤慨しながら、スライムに駆け寄ると剣を振り下ろす。

 

[スライムAに8のダメージ! スライムAを倒した!]

 

その一撃でスライムは力尽き、ひっくり返って光の粒子となって消えた。

「流石は穂乃果ちゃん。私も負けてられないね!」

 

[曜のこうげき! スライムBに7のダメージ! スライムBを倒した!]

 

曜も斧を振るい、スライムを一体仕留める。

「愛さんも負けてられないね!」

 

[愛のこうげき! スライムCに7のダメージ! スライムCを倒した!]

 

愛も短剣を振るって、最後のスライムを屠る。

 

[魔物のむれをやっつけた!]

 

特に問題なく、スライムを倒した穂乃果達。武器をしまうと三人でハイタッチする。

「ふう……いきなりで驚いたけど、弱っちい敵で良かったわね」

何もしていないにこは額を拭うと、

「それより、一体どこに行ったのよ」

改めて辺りを見回す。すると、

「呼んだかにゃ?」

「うひっ⁉︎」

背後から、唐突に声がかかる。

「凛ちゃん!」

そこに立っていたのは、猫の耳と尻尾、そして少し生えた三本ずつの髭を持つ凛だった。

「どこ行ってたの?」

「ちょっとそこまで、散歩をしてたにゃ」

「なーんだ。姿が見えないから、心配しちゃったよ〜」

「そろそろ、出発しようって言ってた所だったんだよ」

「了解にゃ! 早く、にこちゃんの呪いを解く手掛かりを探しに行こうにゃ!」

「って、凛ちゃんはいいの? 凛ちゃんも呪いにかかってるんだけど……」

曜の言う通り、にこほど人間離れはしていないが凛も充分人間とは異なる容姿である。

「ん〜、この見た目、猫さんっぽくてちょっと気に入ってるの。にこちゃんみたいにキノコじゃないし!」

強調された後半のセリフ。

「まっっったくよ! 何でにこがキノコなのよ!」

「まあまあ、ちょいと落ち着こうじゃないキニコちゃん」

「誰がキニコだ!」

 

 

 

 

その後一行は、近くの街トラペッタへ到着した。

「はー疲れたわ。早く宿で休みたいわね……」

街へ入ってすぐ、にこは宿を探す。

「穂乃果達は、この街にマスター・ライラスって魔法使いがいるはずだから情報を集めてくれる?」

「その人誰なの?」

「にこ達に呪いをかけた、あのドルマゲスに魔法を教えた師匠らしいわ。ドルマゲスの行方を知ってるかもしれないのよ」

「ふーん。で、その人どこにいるの?」

「……いや、だからそれを探してくるんでしょうが」

どこまで本気で言っているのか分からない穂乃果のセリフに、にこは呆れる。

「とりあえず、酒場にでも行ってみよっか」

「お〜いいねえ。ちょうど何か飲みたかったんだよ〜」

「お酒はダメだよ?」

宿はにこと凛に任せて、穂乃果達三人はひとまず酒場を目指す。

 

 

「ここかな?」

ジョッキの看板がかかった建物を発見すると、穂乃果は喧騒が漏れるドアを開ける。

店内には十人弱の客がいたが、チラリと穂乃果達を見やると興味はそれっきりだった。

「これ、どうすればいいんだろう……?」

「とりあえず、マスターに聞いてみようかな?」

「やっぱ酒場には、色んな情報が入ってくるからね〜。マスターは情報通だと思うよ」

三人はカウンターに立つ酒場のマスターの元へと向かう。

「あれ、誰かと話してるね」

話しかけようと思った穂乃果だったが、どうやら先客がいた。

「……なあ希さんや、ヤケ食いはやめようよ」

「ええやん、減るもんやないし」

「いやいや、うちの食材は減ってるよ。あとアンタの懐具合もね」

「それで何か、問題あるん?」

「大アリだよ。アンタの当たらなくなった占いなんて、1ゴールドの価値も無いんだよ」

「なぁ〜にぃ〜? いつからウチの占いが当たらなくなったんや。そんな事ないで!」

「……まあ、それならそれでいいよ。でももしちゃんと占っていたら、昨日の火事は防げたんじゃないのかい?」

「……そんなん、ウチの知った事やない」

「まったく……そのせいでマスター・ライラスも行方不明だっていうのに」

「……ウチは帰るで」

希と呼ばれていた少女は、ふてくされたように立ち上がると酒場を出て行った。

「どうしたんだろう?」

「さあ……」

事情が分からない三人は、気にはなるが首をひねるしかない。

それから改めて、酒場のマスターに話を聞く。

「さっきの話で、何となく分かったんじゃないかな。昨日マスター・ライラスの家が火事になってね。本人は行方不明になっちゃったんだよ」

「そ、そうだったんですか……」

「あの、それで、さっきの人は一体……」

曜の質問に、マスターは小さく息を吐く。

「彼女はこの街の占い師の希っていうのさ。昔はどんな探し物でも百発百中の凄腕占い師だったのさ。……それが今じゃ、あんなに落ちぶれちゃってね」

「何か理由とか、あったりする感じ?」

「さあねぇ。本人は何も言わないし、占い自体もパッタリやらなくなっちゃったし」

マスターからの話は、そこまでだった。

丸テーブルを囲った三人は、顔を合わせる。

「どうする?」

「色々気になる事はあったけど、ひとまずマスター・ライラスに関する情報はゲットできたね」

「とりあえず、一旦にこにーの所へ報告に戻る感じでいいんじゃない?」

そうだね、そうしようと三人は頷き、立ち上がった。その時だった。

「た、た、た、大変だぁっ!」

青年が一人、血相を変えて酒場へと転がり込んできた。当然、店内全員の視線はそちらへ向く。

青年は一拍呼吸を整えると、

「ま、魔物だ! 魔物が街へ入ってきたんだ!」

大声で言い放った。

 

 

店内は騒然。その多くが野次馬精神だったが、バタバタと店から出て行く。

「ま、魔物だって」

「と、とりあえず行ってみよう!」

「だよね。もしかしたら、退治を手伝えるかもしれないっしょ」

愛は、腰の短剣を確かめる。

三人は頷くと、町民のあとを追った。

 

 

 

 

酒場を出た三人は、すぐに街の広場に人だかりを見つけた。

「あっちだ!」

穂乃果は背中の剣に手を回しながら、慎重に駆け寄る。だが、

「ん……? あっ、マズいよ穂乃果ちゃん!」

「こりゃ大変だ。ほのほの走って!」

曜と愛が慌てた様子で穂乃果を急かした。

「え、何⁉︎ どうしたの⁉︎」

思わずつんのめった穂乃果の目に飛び込んで来たのは、

「何なのよいきなり……」

「うわっ、化け物だ!」「こっちを見たぞ!」「何というおぞましい見た目!」「こっち見るな!」

キノコ人間に近いにこが、町民に囲まれている景色。その雰囲気は、和やかには見えない。

「出て行け!」「怪物は街から出て行け!」「そうだそうだ!」

そして、石を投げ始めた。

「ちょ、ちょっと⁉︎ 何すんのよ!」

顔を庇うように背中を丸めたにこの前に、

「こらー! にこちゃんに何するにゃ〜!」

凛が飛び出す。

「凛……」

「あら、これは可愛らしい猫人間だね」「どこから来たんだい?」「さっきの魔物の後だから、余計に可愛く見えるね!」

「へっ? そんな事言われると、照れるにゃぁ〜」

そう言いつつまんざらでもない凛に、

「…………ちょっと」

にこは低い声を出す。

そこへ、

「にこちゃん、大丈夫⁉︎」

穂乃果達が人混みを掻き分けて駆け寄った。

「大丈夫じゃないわよ! とりあえず、一旦この街から出るわよ! あと凛、後で話があるわ」

にこは逃げるように、街の外へと通じる門へと駆け出した。

「わわ、にこちゃーん!」

慌てて、穂乃果達もあとを追う。

「にこちゃん、可哀想にゃー」

一応、凛も。

 

 

 

 

トラペッタの街から出てすぐ、

「まったく、この超絶可愛いにこにーに向かって、化け物ですって⁉︎ 何様のつもりよ!」

案の定、にこは大激怒。

「ま、まあまあ。呪いのせいだから、ね?」

「にこちゃんが可愛いのは、私達が知ってるから」

「うんうん、愛さんが言うんだから間違いないよ!」

三人が必死でなだめて、なんとか冷静を取り戻すにこ。

「……で? マスター・ライラスは見つかったの?」

「それが……」

穂乃果は、酒場でのマスターの話を話す。

「行方不明って……。居場所は分からないの?」

「街の人は、誰も知らないみたいだよ」

「そうなのね……。まあ、いないなら仕方ないわ。元々、用があるのは呪いをかけたドルマゲス張本人なわけだし、また手がかりを探しましょ」

にこは組んでいた腕をほどくと、

「じゃ、もうこんな街とはおさらばしてさっさと行きましょ。マスター・ライラスがいないなら、ここにいる意味も無いわ」

出発の準備をする。

「お待ち下さい!」

そこへ、背後から声がかかった。

「ん?」

振り向いたそこには、穂乃果達と同じか少し上くらいの少女の姿。

「誰?」

「さあ……」

「私は、ユリマといいます。占い師希の助手をしています」

ユリマと名乗った少女は、小さくお辞儀。それから、

「実は、あなた方にお願いがあるんです」

「お願い?」

街を訪れてから一時間も経っていないよそ者に、何をお願いするというのか。

「ていうか、今のにこを見て何とも思わないの?」

先ほど、トラウマを植え付けられたばかりのにこ。何よりもそこが気になった。

ユリマはその質問には答えず、

「夢を、見ました。人でも魔物でもない者が、やがてこの街を訪れる。その者達が、そなたの願いを叶えるであろう、と……」

「それはまさしく、にこちゃんの事にゃ!」

「あんたも似たようなモンでしょうが!」

理不尽な現実ににこが叫び、

「……それはもういいわ。で、にこ達を夢に見たって、どういう事?」

「えっと……。詳しくお話しするので、私の家に来てくれませんか? 待ってますから!」

ユリマはそう言うと、街の中に戻って行った。

「何だろねー。ちょっと気になる事言ってたけど」

「希さんの助手って言ってたよね。さっき酒場にいた、あの人の事だよね?」

「んー気になるなぁ。にこにー、どうする?」

愛がにこに視線を送ると、

「人を見た目だけで判断しないその精神、気に入ったわ。話くらいは聞いてあげようじゃない」

何やら不敵な笑みを浮かべていた。

「と、いうわけで穂乃果達、ちょっとあのユリマってコの話聞いてきなさい」

「にこちゃんはどうするの?」

「私はここで待ってるわよ。また街に入って騒がれたら嫌だし」

にこはヒラヒラと手を振る。

「うん、分かった」

「じゃあ、ちょっと行ってくるね」

「あとでちゃんとあげるからね〜」

「待っててにゃ」

「……ちょっと待ちなさい」

流れるように歩き出した凛の肩を、にこは掴む。

「アンタも留守番よ」

「えー何でー? 凛は別ににこちゃんと違って嫌われてなかったもん」

「にこだって嫌われてなんかないわよ! 魅力に気付かれなかっただけよ!」

「物は言いようにゃ」

「何ですって⁉︎ とにかく、騒ぎになったら困るでしょうが! アンタも充分人間離れしてるんだし、大人しくここで待ってなさい!」

「ぶー、にこちゃんの意地悪〜」

頬を膨らましながらも腰を下ろした凛と、にこに向かって、

「じゃあ、待っててね〜」

穂乃果達はトラペッタの街へ戻った。

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