スクスタクエスト〜空と海と大地と呪われしYAZAWA〜 作:『シュウヤ』
通常攻撃しか見てなかったのに……。
修道院を出た三人は、
「な、何よあんた達。そんなに慌てて」
そこで待機していたにこと凛に顛末をかいつまんで説明する。
「ドルマゲスかもしれない道化師が修道院長の部屋に⁉︎」
「そ、それはヤバいにゃ! 早く行かないと!」
「私達は行っても足手まといになるだけだし……頼むわよ」
「任せて!」
穂乃果は大きく頷くと、千歌の言葉通り川沿いの土手を駆け出す。
「にこちゃん達も、修道院で何か変化がないか見ておいて。様子見るだけなら、ここからでも見えるし」
「分かったわ」
「気を付けてにゃ」
「キニコちゃん達もね。ピリピリした騎士団員に魔物と間違われたりしないでよ?」
「そんなドジ踏まないわよ」
親指を立てて、曜と愛も穂乃果を追う。
大きな川の中央に浮かぶ小島には、立派な建物が建っている。今の所変化は見られないが、どうなるかは分からない。
「急がないと……」
穂乃果は突き当たりまで進むと、
「──ここ?」
ようやく足を止めた。
昔の修道院、と言われたが、あるのはほんの少しの建物の残骸だけ。とても修道院と呼べるような規模のものではない。
「ここ……だよね?」
「多分……」
「愛さん的には、あの石碑が怪しいと見た」
愛が指差した先には、真ん中にぽつんと立つ小さな石碑。白いシンプルなものだが、穂乃果の持つ指輪と同じエンブレムが彫られている。
穂乃果が近付いてみると、エンブレムの中心に小さな穴が空いているのが分かった。
「もしかして……」
穂乃果が指輪を穴にはめてみると、
ズズズズズ…………と地鳴りのような音が響き、地下へと降りる階段が現れた。
「は〜……どういう仕掛けなんだろ」
「魔法の一種……なのかな?」
「まあとにかく、道は開けた! 早く行こう?」
「……うん」
階段を降りた三人は、
「……う」
立ち込める瘴気のような空気に顔をしかめた。
「聞いた話によると、昔この修道院で伝染病が蔓延したんだって。それで沢山の人が亡くなって、それでこの修道院を捨てて今の修道院を建てたらしいよ」
いつの間にそんな情報を手に入れたのか、愛が口を開く。
「それにしたっていやーな場所だね……」
「同感。早く抜けちゃおう」
しかし当然、打ち捨てられた廃墟。魔物が巣食っている。
[がいこつたちがあらわれた!]
白骨化した、剣を持った兵士のような魔物。
「やっぱりいるんだね!」
穂乃果は剣を構え、斬りかかっていく。
[穂乃果のこうげき! がいこつAに23のダメージ!]
[曜のこうげき! がいこつAに26のダメージ!]
[愛のこうげき! がいこつAに21のダメージ! がいこつAをたおした!]
「くっ……結構タフだよ!」
[がいこつBのこうげき! 穂乃果は8のダメージを受けた!]
対するダメージはさほど痛くないものの、数で責められては厳しそうである。
[穂乃果はかえん斬りをはなった! がいこつBに28のダメージ!]
[曜は蒼天魔斬をはなった! がいこつBに36のダメージ! がいこつBをたおした!]
[がいこつたちをやっつけた!]
「ふぅ……これは気を引き締めないとかもね」
[ハエ男があらわれた!]
「うわ気持ち悪っ!」
「倒す倒す!」
「全力攻撃っ!」
[ハエ男をやっつけた!」
ハエのような顔で飛び回る小柄な男のような魔物は、哀れ集中砲火を浴びて倒れ伏せた。
「こんなのまでいるなんて……一刻も早く抜けよう!」
当初の目的を忘れかけている穂乃果が、大きな声で嘆いた。
院内の階段を更に降りると、見るからに毒々しい色をした水たまりが広がっていた。
「……触ったら気分悪くなりそう」
「それだけで済めばいいけど……」
「極力触りたくないよねー」
幸いにもここは廃墟。散乱する壊れた家具を集め、即席の足場を作る三人。脆くなっていたり、そもそも腐っていたりと危険な足場を慎重に渡っていく。
「──っぷはぁ〜!」
「何とかなったね〜」
「もう一度は、愛さんもごめんだなー」
毒沼に落ちる事なく渡りきった三人は、安堵の息を吐く。
「……ううん、休んでる暇はないよ。こうしてる間にも、ドルマゲスが院長を狙ってるかもしれないんだもん!」
自らを奮い立たせるように、勢いよく立ち上がる穂乃果。
「ほのほのは強いよね〜」
「まったくだよ。一緒にいるだけで元気貰える」
愛も曜も、苦笑しながら立ち上がる。
「きっともうちょっとのはずだから、もう一踏ん張り! 頑張ろ〜!」
「「おー!」」
毒沼を超えたすぐ先の階段を登ると、小さな通路。その先には両開きの扉があった。明らかに今までと違うその扉の雰囲気に、
「お、もしかして出口じゃない?」
穂乃果は勢いよく扉を開ける。
「…………」
そしてそこに立っていた、ゾンビのような聖職者と目が合った。
「失礼しました〜」
パタン、と閉まる扉。
「って何で閉めちゃうの!」
当然曜からのツッコミが入る。
「だってだって! 目の前にゾンビがいるんだもん! ビックリするよ!」
「そうは言っても、この修道院跡地の門番って感じなんじゃないの? 闘わないと、修道院長さんが危ないままだよ?」
「うっ……確かに」
穂乃果は意を決して覚悟を決めると、
「──でりゃっ!」
もう一度扉を開け放つ。
するとそこに立っていたゾンビは、
「おおおヲ……おヲォォおォ……!」
地の底から湧き上がるような声で喋り出す。
「苦しイ……くるシい、苦シイ……。神ハいずコにおらレル……? こノ苦しみハ、イツマデ続く?」
杖を持つ手が、ワナワナと震えている。
「おヲオぉお……! 死ンだ死んダ死んだ死ンダのだ! ミナ、苦しミながら死んデ行ッた! あノ恐ろシぃ病ガ我ラを、コの修道院ノ全テを死に包ンだ! 苦シイ、クるしイ、クルシイ……!」
「……もしかして、伝染病で亡くなった、昔の修道院長さんなのかな? そんな話聞いた気がする」
「……何だか、可哀想だね。凄く、苦しそうで」
「……二人共」
シャリン、と剣を抜く穂乃果。その瞳は、真っ直ぐ前を見据えていた。
「──行くよ」
「……分かった」
「勿論」
「我が苦シみぃッ! 我等ガ苦シミっ! おマエにも、味わワセてやるゥゥゥッ!」
[なげきの亡霊があらわれた!]
「闘って、楽にしてあげよう!」
[なげきの亡霊は仲間を呼んだ!]
[くさった死体とがいこつがあらわれた!]
「仲間も呼ぶんだね……」
「集中攻撃されると厄介だし、横から倒していこう」
「オッケー」
[穂乃果はかえん斬りをはなった! くさった死体に28のダメージ!]
[愛の攻撃! くさった死体に25のダメージ! くさった死体をたおした!]
[なげきの亡霊はベギラマを唱えた!]
[穂乃果は27のダメージを受けた!]
[曜は28のダメージを受けた!]
[愛は28のダメージを受けた!]
「くっ……強力な魔法……!」
[がいこつのこうげき! 穂乃果は8のダメージを受けた!]
「この……っ好き勝手させるかぁ!」
曜の斧の一振り。
[曜は蒼天魔斬をはなった! がいこつに38のダメージ! がいこつはマヒして動けなくなった!]
がいこつの動きが止まる。
「おっ、痺れた……? これはチャンスだよ!」
「分かってる!」
[穂乃果は全身に力をためた! 穂乃果のテンションが5上がった!]
「ほのほの、気を付けてね」
[愛はホイミを唱えた! 穂乃果のキズが回復した!]
「ありがとう愛ちゃん!」
[がいこつはしびれて動けない!]
[なげきの亡霊のこうげき! 愛は20のダメージを受けた!]
「おっと、今度は愛さんピンチだね……」
呪文からの連撃で足元がふらついた愛。
「愛ちゃん⁉︎」
「大丈夫?」
「ヘーキヘーキ。それより二人は攻撃に集中しなさいって」
[愛はホイミを唱えた! 愛のキズが回復した!]
立て直した愛を確認し、穂乃果は再度臨戦態勢。
[穂乃果は全身に力をためた! 穂乃果のテンションが20上がった!]
「私も!」
[曜は全身に力をためた! 曜のテンションが5上がった!]
「愛さんもサポートしちゃうよ!」
[愛はピオリムを唱えた! 穂乃果のすばやさが25上がった!]
[曜のすばやさが20上がった!]
[愛のすばやさが28上がった!]
なげきの亡霊は、再び杖を掲げて呪文を唱える。
[なげきの亡霊はベギラマを唱えた!]
[穂乃果は26のダメージを受けた!]
[曜は28のダメージを受けた!]
[愛は25のダメージを受けた!]
愛の的確なサポートで立ち回ってはいるが、強力な全体攻撃を受け続ければとても愛一人ではカバーしきれない。
[穂乃果は全身に力をためた! 穂乃果のテンションが50上がった! 穂乃果はハイテンションになった!]
[曜は全身に力をためた! 曜のテンションが50上がった! 曜はハイテンションになった!]
[愛はホイミを唱えた! 曜のキズが回復した!]
[なげきの亡霊のこうげき! 穂乃果は18のダメージを受けた!]
「うぐっ……! ──でも、そろそろ反撃だよ!」
[曜は蒼天魔斬をはなった! なげきの亡霊に218のダメージ! 曜のテンションが普通に戻った]
[穂乃果はかえん斬りをはなった! なげきの亡霊に199のダメージ! 穂乃果のテンションが普通に戻った]
全力で放った二人の一撃だったが、敵を倒すまでには至らなかった。
「そんな……倒せなかった……!」
[なげきの亡霊のこうげき! 穂乃果は21のダメージを受けた!]
「くっ……!」
重なるダメージに、穂乃果の足元がふらつく。
「穂乃果ちゃん!」
[曜は“やくそう”を使った! 穂乃果のキズが回復した!]
「ありがとう曜ちゃん!」
それを横で見ていた愛は、
「愛さんだって、見てるだけのサポートじゃないんだぞ〜!」
何やら闘志を燃やして呪文を詠唱する。
[愛はイオを唱えた!]
[がいこつをたおした!]
[なげきの亡霊をたおした!]
[まもののむれをやっつけた!]
痺れたままのがいこつもろとも、愛の呪文で敵を一掃する。
「た、倒した……?」
「……っはぁ〜! 疲れた〜!」
「二人共、お疲れ様」
三人が互いを健闘し合うと、
「──おおヲぉお……っ! 神ヨ……。神ょおぉぉオ……!」
なげきの亡霊は、虚空へと手を伸ばす。
「いま、御許に参りマす……」
そして、光の粒子となって消えていった。
そして、
[穂乃果たちの体力が全回復した!]
疲れ果てていた穂乃果達の身体が、一瞬で元気になった。
「……祝福、って事なのかな」
「やっぱり、本当は悪い魔物じゃなかったって事だよ」
「天国に行けたといいね〜」
回復した事実とは別に、三人は晴れやかな顔で天井を見上げた。
「──さ、それはともかく先を急がなきゃ!」
三人は気を取り直し、脇にあった通路へと駆け出した。
その先にあったのは、頭上へと伸びるハシゴだった。ハシゴは目の見える範囲で途切れている。
「あそこが、出口って事なのかな」
「かもね。急ごう!」
三人は順番にハシゴを登る。先頭の穂乃果が一番上に到達すると、
ゴゴゴゴ、と石が擦れるような音がして光が差し込む。
「外だ……!」
穂乃果、曜、愛の順に外へ飛び出すと、
ゴゴゴゴ、と再び出口は閉まる。
明らかに人力でも機械仕掛けでもないのだが、
「何か聖なる力が働いてるって事なんだね」
原理までは分からない。
穂乃果は、目の前にそびえる建物の壁を見上げる。
「ここは……」
「多分、修道院長の建物の裏手だと思う」
「うん、さっき土手から見たから間違いないよ」
辺りは、すっかり夜。決して寒い季節ではないのだが、時折吹く風が不気味な寒気をもたらす。
「……嫌な寒さ。穂乃果ちゃん、気をつけよう」
「……うん」
人工的な音は何もない、静かな夜。その静寂が、かえって緊張感を煽る。
「……じゃあ、行くよ」
穂乃果は意を決して、建物のドアを開いた。
・穂乃果
LV17
どうのつるぎ
うろこのよろい
せいどうの盾
ターバン
聖堂騎士団の指輪
・曜
LV16
石のオノ
たびびとの服
うろこの盾
ヘアバンド
金のブレスレット
・愛
LV17
ブロンズナイフ
くさりかたびら
せいどうの盾
皮のぼうし
金のロザリオ