スクスタクエスト〜空と海と大地と呪われしYAZAWA〜 作:『シュウヤ』
次回冒頭で少しだけ触れて、新章突入します!
修道院に着くと、今にも落ちそうな橋が目の前で燃えていた。
「う……」
一瞬尻込みしたが、
「でぇぇぇぇぇいっ!」
意を決して全速力で渡りきる。幸いにも橋が落ちる事はなかったが、すでにあちこち崩れ始めていた。
穂乃果達が建物へ突撃しようとしたその直前、宿舎の扉が勢いよく開け放たれる。
「果南ちゃん、どこ行ったの……⁉︎」
「千歌ちゃん!」
千歌は院長の建物を見つめると、
「禍々しい、気……? ううん、そんなレベルじゃない……。こんなのまるで、地の底の悪魔みたいだ……!」
絶望的な声で呟く。
「オディロ院長……っ!」
千歌は、すでに半ば崩れかけている橋を強引に走り抜ける。
「うっ……うわわっ……!」
千歌が走り抜けるとほぼ同時に、限界を迎えた橋が大きな水柱を上げて崩れ落ちた。
「ハァ……ハァ……ハァ……!」
間一髪で橋を渡った千歌は、建物の扉に飛びつく。だが、その扉はビクともしない。
「中からカギが……⁉︎ そんな……」
千歌は思いっきり扉を叩くが、そんな行為を拒むかのごとく扉は微動だにしない。
「果南ちゃん達は中にいるの……⁉︎ 分からない……! とにかく、早くしないと……!」
焦る千歌の耳に、
「──どいてっ!」
大声が届いた。
「へ? ──うわぁっ!」
慌てて跳んだ千歌の目の前で、
「でりゃあ!」
曜の斧が振り下ろされた。千歌の侵入を拒んだ扉も、強引な物理攻撃には耐えられない。木屑を撒き散らして、粉砕された。
「非常事態だから許してね!」
「勿論だよ! ありがとう!」
建物の中へ飛び込んだ六人は、目の前で倒れていた騎士団員へ駆け寄る。
「はやく……院長さ、まを……」
「何があったのか、詳しく教えてよ!」
「やつは、強い……。果南さま……も、あぶな、い……」
そこで、騎士団員の意識は途絶えた。
「くっ……果南ちゃん……オディロ院長……!」
千歌はすぐそばの階段を見やると、
「上にいる。みんなも来て!」
一気に駆け上がる。
「──うわあぁあぁぁぁっ!」
すると、階段から騎士団員が一人転げ落ちてきた。
「うわっ!」
「あ、の道化師……誰か……院長を……っ」
意識を失った騎士団員を介抱したい気持ちを抑え、階段を駆け登る。
二階に到達して最初に見たのは、宙に浮いて杖を構える道化師──ドルマゲス。そして、
「かはっ……!」
不可視の攻撃によって壁まで吹っ飛ばされた果南の姿。
「果南ちゃん!」
「やら、れたよ……。全部、あの道化師の、仕業……。あいつは……強い……。ゲホッ! ……だからって、あいつの思い通りになんて……!」
駆け寄った千歌に、果南はか細い声で伝える。
「……命令だよ、千歌……! 院長を連れて、早くここから……」
「果南ちゃ──」
ドルマゲスが、杖を振るう。
「ぐぅ…………っ!」
先ほどの果南と同じように、壁に叩きつけられる千歌。
「クックック……。これで邪魔者はいなくなった」
不気味な笑顔を浮かべるドルマゲス。
「オディロ、院長……!」
「案ずるな、果南。わたしなら大丈夫だ」
狙われの身であるオディロは、落ち着いた声をかける。
「わたしは、神に全てを捧げた身。神の御心ならば、わたしはいつでも死のう。──だが、罪深き子よ。それが神の御心に反するならば、お前が何をしようと、わたしは死なぬ! 神のご加護が、必ずやわたしとここにいる者達を悪しき業より守るであろう!」
高らかに言い切ったオディロに、ドルマゲスは変わらぬ不気味な笑みを浮かべる。
「……ほう、随分な自信だな。ならば試してみるか?」
「──このままじゃ危ない……!」
飛び出そうとした穂乃果を遮って、
「──ちょっと待ちなさいよ!」
にこが大きな声を出して進み出た。
「久しぶりじゃない、ドルマゲスッ!」
「これはこれは、トロデーンの城にいた、素晴らしい踊り子さんではありませんか。あの可愛らしかった姿の面影もない、変わり果てたお姿で」
皮肉にも慇懃な態度を取るドルマゲス。それが、にこの神経を逆なでする。
「うるっさいわよ! 誰のせいだと思ってんの! いいから元の姿に戻しなさいっ!」
ドルマゲスはそれには答えなかった。魔力を解放し、切っ先の鋭い杖をにこ目掛けて振りかぶった。
穂乃果も曜も愛も飛び出すが、一瞬間に合わない。
「──死ね」
発射された杖は、寸分違わず飛来すると、その身体を易々と貫いた。
──にこの前に立ち塞がった、オディロの。
「え……な、ん……」
引き抜かれる杖。既に、オディロはピクリとも動かない。
「……悲しいなあ。お前達の神も運命も、どうやら私の味方をして下さるようだ……。──キヒャヒャ! 悲しいなあ、オディロ院長よ。──これで、ここにはもう用は無い」
ドルマゲスは魔力を放つと、窓の一つを粉砕する。
「さらば皆さま。ご、き、げ、ん、よう。キヒャヒャヒャハハハッ!」
そして、気味の悪い笑い声を残して夜の闇へ消えていった。
翌日。降りしきる雨の中、オディロ院長の葬儀が執り行われた。
果南がその夜にあった事を全て公開してくれたおかげで、穂乃果達の疑いは晴れた。しかし、それとは対照的に穂乃果達の表情は暗い。
「……オディロ院長は救えなかったし、ドルマゲスも逃しちゃった」
「……毎回、後手後手に回っちゃう」
「今回は、何とかしてやるって思ってたんだけどなぁ……」
修道院の宿舎で一晩過ごした穂乃果達は、深くため息をついた。
「──みんな、起きてる?」
そこへ、千歌が部屋を覗き込んだ。
「あ、千歌ちゃん」
「……昨日も言ったけど、オディロ院長の事は、みんなのせいじゃないからね。それどころか、みんなが駆けつけてくれなかったら、果南ちゃんもどうなってたか分からなかった。ありがとう」
「そんな、お礼を言われる事なんて何も……」
「かもしれないけど、言わせて欲しいの。──ありがとう」
深く頭を下げた千歌に、穂乃果達は顔を見合わせる。
「それで、その団長の果南ちゃんが呼んでるよ。部屋まで来て欲しいって」
それじゃ、と部屋から出ていく千歌。
用事は分からないが、とりあえず果南のいる部屋へ向かう。
「よく来てくれたね。あらぬ疑いをかけて、本当にごめん」
頭を下げた果南に、疑いが晴れたのなら、と穂乃果も軽く流す。
「……真の敵は、ドルマゲス。あの道化師が全ての元凶……。何としてでも仇をとりたい……けど、私はマイエラ修道院の新しい院長。旅になんて出られない」
果南はかぶりを振ると、穂乃果を見つめる。
「──そこで、なんだけどね。キミ達も、ドルマゲスを追って旅をしているんだってね?」
「えっと、うん」
「非常に不躾なお願いで申し訳ないとは思うんだけど、私の代わりに、オディロ院長の仇をとってきてくれないかな」
「それは、勿論!」
穂乃果は、即答する。
「ドルマゲスを追う理由が、一つ増えた!」
「それを聞いて、安心したよ。……よろしく」
最後の言葉に込められた重みを、穂乃果は肌で感じ取った。
修道院の出入り口まで向かうと、
「あ、やっと来た!」
そこに、千歌が立っていた。
「千歌ちゃん、どうしたの?」
「……あー、えっとね……」
千歌はしばらく視線をウロウロさせながら言葉を濁していたが、
「──私も、旅に同行させて欲しい」
穂乃果の目を真っ直ぐ見て、そう言った。
「果南ちゃんは、院長としての仕事が忙しいけど、私はそんな事ない。むしろ、今自由に動けるのは私だけ。──だから、お願い!」
頭を下げる千歌。その揺れるアホ毛を見ながら、三人はどうするかと一瞬目配せ。そして、三人の答えが一致していた事を確信する。
「──千歌ちゃん」
穂乃果は一歩進み出ると、
「──よろしく!」
右手を差し出した。
「…………! ありがとうっ!」
パァっと顔を輝かせた千歌は、その手を強く握り返した。
「千歌っち、闘えるの〜?」
愛が軽口を叩くが、
「任せてよ! こう見えても、聖堂騎士団の一員なんだから! 絶対活躍してみせるよ!」
千歌はドンと胸を叩く。
「お、それは頼もしい」
「これからよろしくね、千歌ちゃん!」
[千歌が仲間になった!]
・穂乃果
LV17
どうのつるぎ
うろこのよろい
せいどうの盾
ターバン
スライムピアス
・曜
LV16
石のオノ
たびびとの服
うろこの盾
ヘアバンド
金のブレスレット
・愛
LV17
ダガーナイフ
くさりかたびら
せいどうの盾
皮のぼうし
金のロザリオ
・千歌
LV15
ロングスピア
騎士団の服
うろこの盾
はねぼうし
聖堂騎士団の指輪