スクスタクエスト〜空と海と大地と呪われしYAZAWA〜 作:『シュウヤ』
城を出ると、
「遅いわよ」
にこが腕を組んで立っていた。
「にこちゃん?」
「穂乃果の話だと、その歩夢って子かなり苦労してるみたいじゃない。──努力は、報われるべきものなのよ」
「へえ、にこにー言うじゃん」
「でもいいの? 寄り道になっちゃうのに……」
千歌の少し申し訳なさそうな声は、
「だったら、急いでパパッと片付ければいいじゃない。簡単な話よ」
にこにスパッと返される。
「よーし、じゃあ急いで頑張ろう! まずは、歩夢ちゃんのおばあちゃんに話を聞きに!」
元気に手を突き上げた穂乃果を見ながら、
「にこちゃん珍しいにゃ」
「……何がよ」
「『呪い解くのが最優先』とか言いそうなのに」
「それは変わらないけど、トラペッタにいたユリマの時も思ったのよ。尽くしてる人間が報われないのは、見て見ぬ振りしたくないの」
「──にこちゃ〜ん、凛ちゃ〜ん、早く早く〜!」
「あいつらだって、見捨てるとは思わないし」
「穂乃果ちゃんに、感化されてきてるにゃ〜」
「うっさいわよ」
橋のそばに建つ一軒家まで戻ってきた穂乃果達。
「一本道とは言え、アスカンタ城からここまでは結構距離あるよね〜。確かに簡単には里帰りできないわけだ」
「だからって、二年はやりすぎだと思うけどね」
そう言いながら、老婆の話を聞く。
「え? ええ、お城のメイドの歩夢なら、確かにわたし達の孫娘ですよ。その様子ですと、無事に会えたようですね」
「あー、その事なんですけど……」
曜は簡単に要件を伝える。国王の事と、おとぎ話の事を。
「はあ、まあ年寄りですからねぇ。アスカンタの古い昔話の事なら何でも知っておりますよ」
老婆は意図を汲み取れないまま、それでも話はしてくれた。
「願いを叶える昔話なら、この家の前を流れる川の上流にある不思議な丘の話ですねぇ。満月の夜に一晩あの丘の上でじーっと待ってると、不思議な世界への扉が開くと言いますがねぇ」
「不思議な世界?」
「ただのおとぎ話ですし、本当かどうだか分かりませんよ。王様が元気になって欲しい気持ちは分かりますがねぇ……」
案の定、というほど曖昧な内容だったが、
「何も無いかもしれない。でも、何かあるかもしれない!」
「ま、ほのほのならそう言うと思ったよ」
「他に方法も無いもんね」
「よし、ダメ元で行ってみようよ!」
四人は老婆に礼を言うと、建物から出る。そしてそこで待機していたにこと凛に顛末を説明。
「──願いの丘? そこがおとぎ話の舞台って訳ね。ここから近いんでしょ?」
「うん、この裏手の土手を歩けばすぐだって」
「じゃ、ちゃっちゃと行って来なさい。魔物が出るんなら、私と凛は留守番だわ」
「ベッドで寝て待ってるにゃ〜」
川向こうにある教会に視線を送る凛。
「くぅ〜、ずるいなぁ」
「いつもと逆なんだからいいでしょ。はいはい行ってらっしゃい」
抗議の目を向けた穂乃果を軽くあしらい、にこは手を振る。
「所詮おとぎ話なんだし、期待はしてないわよ。こっちはこっちで作戦考えるから、気楽にやって来なさい」
「にこちゃん……。うん! 分かった!」
穂乃果は大きく手を振ると、土手を下って歩き出した。
土手をしばらく進むと、
「もしかして、ここかな?」
崖にぽっかりと空いた空洞に辿り着いた。
「……どう見ても洞窟だよね」
「丘って言うから軽いハイキングな感じかと思ってたけど……」
「ちょっと気を引き締めた方がいいかなぁ」
四人は装備を確認し直し、洞窟内に足を踏み入れた。
洞窟、とは言うものの内部が空洞になっているだけなので、あっちこっちから光が差し込み視界は意外にも明るい。そして簡易的に作られた石段を登ると、今度は完全に丘の上。
「へー、見晴らしいいね〜」
大自然を一望できるその景色に、愛ははしゃぐ。
「これ、瓦礫だよね。こっちには欄干……?」
曜は、周囲に散らばる人工物に怪訝な顔をする。
「昔は誰か住んでたりしたのかな? あの旧修道院みたいにさ」
愛の言葉に、三人は顔を曇らせる。
「あーごめんごめん。そんな暗い意味じゃないって。魔物が住み着いちゃったから、ここにはいられなくなったんじゃないかって話だよ〜」
朗らかに言いながら、愛は武器を構えた。
「──こうやって出てくるから、ね!」
[サイコロンがあらわれた!]
ずんぐりむっくりな青い体型に、変なお面を被ったようなモンスター。
「先手必勝っ!」
槍を構えた千歌は、猛スピードで突っ込む。
[千歌は疾風突きをはなった! サイコロンに26のダメージ!]
[サイコロンの目がサイコロのようにグルグルと動き始めた!]
お面のような部分が六つ目となり、目まぐるしく開閉する。そして、
[──6!]
六つ目全てが開眼。
[サイコロンはかまいたちLV6をはなった! 穂乃果は60のダメージを受けた!]
「ぐぅっ……⁉︎」
強力な一撃に、穂乃果の足元がよろける。
「ほのほの大丈夫⁉︎」
[愛はホイミをとなえた! 穂乃果のキズが回復した]
「ありがとう愛ちゃん。油断ならない強敵だよ……!」
穂乃果は剣を構え直すと、地面を蹴る。右下から斬り上げ直後に左下から斬り上げる。
[穂乃果ははやぶさ斬りをはなった! サイコロンに42のダメージ! サイコロンをたおした!]
「っふ〜……」
武器を戻した穂乃果は、大きく息を吐いた。
「あんなモンスターがいるんじゃ、確かにここにいた人は逃げ出すよね……」
「願いを叶えてくれる何かは、逃げてないといいなぁ……」
不穏な事を呟いた曜を軽く叩き、四人は頂上を目指す。
「──ここ、かな?」
坂道を登りきった一行は、頂上らしき場所で足を止めた。
時刻はすでに夜。煌々と輝く満月が、世界を照らしていた。
「家の残骸っぽいものはあるけど、これが願いを叶えてくれるとは思えないなぁ」
千歌は一つだけ残っている窓枠を撫でながら、反対側のボロボロの壁を眺める。
「隠し扉的なものも……ある訳ないよね。ただの地面だ」
曜も念の為辺りを散策するが、収穫は無い。
「やっぱり、ただのおとぎ話って事かぁ……。しょーがない。戻ってにこちゃん達と作戦会議を……って、愛ちゃん?」
普段は一番賑やかな仲間が沈黙している事に気付いた穂乃果は、首を傾げる。
「どうしたの?」
「……魔法だ」
「え?」
「この丘と、満月。何か強い魔力を感じる。ここ、何かあるよ。今、ここから離れちゃダメな気がする」
「何も感じないけど……」
「でも、四人の中で一番魔法が得意なの愛ちゃんだからね。愛ちゃんが言うなら、何かあるのかも」
謎のパワーを受け取る構えをする穂乃果と、その行動に苦笑しながら愛のフォローをする曜。
「でも、何かって何だろう? そろそろ夜も更けてきたし……。ほら、窓枠の影もあんなに伸びて」
千歌は、月光によって伸びる窓枠の影に視線を送る。
「そろそろあの壁に届きそうだね。まるで壁に窓ができたみたいに──」
千歌の冗談めかした声は、そこで途切れる。
壁に差し掛かった窓枠の影は、そこから本来あり得ない速度で動き出す。そして実物と同じ形の影を形成すると、そこで動きが止まった。隙間から、うっすらと光を漏らして。
『…………』
突然発生した超常現象に、四人は言葉を失う。
「──どう、する……?」
真っ先に言葉を発した千歌は、他の三人を見やる。
「どう、しよっか……?」
「どうもこうも、何が何だか分からなすぎて……」
穂乃果も曜も、未だ混乱した状態。
「邪悪な魔力は感じないし……調べてみる価値はあると思うよ」
愛は、いつになく真剣な眼差しで窓枠の影を見つめた。
「…………分かった。愛ちゃんがそう言うなら」
穂乃果もその視線を受け止めて頷くと、壁の前に立つ。──不思議な事に、月光を背にしているはずなのに、穂乃果の影は壁に映らない。足元で歪な形に崩れるだけである。
「──じゃあ、行くよ」
穂乃果は壁に手を当てると、強く力を込めた。
・穂乃果
LV18
はがねのつるぎ
うろこのよろい
せいどうの盾
ターバン
スライムピアス
・曜
LV18
鉄のオノ
せいどうのよろい
せいどうの盾
ヘアバンド
金のブレスレット
・愛
LV18
ダガーナイフ
くさりかたびら
せいどうの盾
とんがりぼうし
金のロザリオ
・千歌
LV17
ロングスピア
騎士団の服
騎士団の盾
はねぼうし
聖堂騎士団の指輪