スクスタクエスト〜空と海と大地と呪われしYAZAWA〜   作:『シュウヤ』

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作曲担当と迷ったのですが、あの子達ピアノなのでね。二人いるし。


第22話

開いた窓枠の影の先には、不思議な世界が広がっていた。

下は一面透き通った水で覆われ、それでも底が見えないほど深い。空は暗黒だが、視界は明るい。満月から新月まで、周期の通りに満ち欠けした十二個の月がゆっくりと回転している。

『…………』

空いた口が塞がらない穂乃果達が立っているのは、水面から生えている丸い石の台座。何個も連なったそれが、先へと伸びている。

「──ここは、一体……」

「夢……じゃないんだよね?」

「愛さんもキャパオーバー……」

混乱を極める三人に、

「──ねえ」

千歌が指を伸ばした。

「あそこ。建物がある」

真っ直ぐ伸びた人差し指の先、ひときわ大きな台座の上に、青紫色を基調としたクリスタルで彩られた建物が鎮座していた。

『…………』

異様な存在感を放つ建物に息を飲む四人。

「……行く?」

確認だと曜が三人を見るが、

「行くしかないよ! だって他に道無いもん」

穂乃果が即答。

確かに連なる台座は建物のある台座へと続き、その先には見当たらない。

「……一応、戦闘の用意だけはしておこうか」

四人は頷きあうと、それぞれ武器を確認してゆっくりと歩き出した。

そして穂乃果が建物のドアノブに手をかけると、ゆっくりと回す。

──中に入るとすぐ、ポロロロン、と柔らかな音色が響いた。咄嗟に身構えた四人だったが、

「……ハープ?」

すぐに楽器の正体に気付く。

「──私は、月の光のもとに生きる者」

そして聞こえてくる、何者かの声。

流れるような長い金髪と、優しいながらも隙の無い微笑み。

「私は絵里。ようこそ、私の世界へ」

絵里と名乗った女性は、小さく手招き。一瞬迷ったが、敵意は無いと判断し四人は歩み寄る。

「ここに人間が来るなんて、随分久しぶりの事ね。月の世界へようこそ」

「月の世界?」

「ここは、願いを持つ者によって開く月影の窓が繋ぐ別の世界。あなた達は、一体どんな願いを持ってここに来たの?」

「願い……? あ、えっと──」

説明しようとした穂乃果を、絵里は制する。

「語る必要はないわ。──そうね、あなた達の靴にでも訊いてみましょうか」

靴?

首を傾げる穂乃果の前で、絵里はハープを奏でる。すると、穂乃果の足元が光を放った。

「うわわわっ⁉︎」

「──なるほど。アスカンタの王様が、生きながら死者に会いたいと願ってる、と……」

「え、ええ⁉︎ まだ何も言ってないのに⁉︎」

当てずっぽうではあり得ないほどピンポイントで当てられた穂乃果は、驚愕の表情を浮かべる。

「そんなに驚く事かしら? ──ああ、そうね、説明してなかったわ」

絵里はクスリと笑うと、

「記憶は、人だけのものだと思ってる?」

「え?」

「その服も家々も家具も、空も大地も、みんな、過ぎゆく日々を覚えているのよ。話す事ができないから、夢見ながら微睡んでるとでも言うのかしらね」

「はぇ〜……そうだったんだ……」

冗談で笑い飛ばすには、目の前で起きた現象に説明ができなかった。

「その夢──記憶を、月の光は形にする事ができるのよ。死んでしまった人間を生き返らせる事はできないけど、あなた達の力にはなれると思うわ。さあ、私をお城へ連れて行ってちょうだい」

「う、うん」

トントン拍子に進む話に、穂乃果は最後まで理解が追いついていない。言われるがまま、頷くしかなかった。

 

 

 

 

アスカンタ城へ戻ってきた一行は、眠りこける衛兵を尻目に階段を登る。

玉座の間では、相変わらずパヴァン王が肩を震わせ泣いていた。

──ポロロロン、と絵里がハープを響かせると、気付いてこちらを向く。

「嘆きに沈む王様、この部屋に刻まれた面影を、月の光のもと再び蘇らせてあげるわ」

絵里は目を閉じると、ハープを演奏し始めた。

 

 

すると、半分身体の透けた一人の女性が、玉座の間に出現した。

パヴァン王は何が起きたか分からないと戸惑っていたが、ゆっくりとドレスの女性へと歩み寄っていく。

「……これは、夢? 幻? いや……違う。違う……覚えている。これは……君は……」

『──したの? あなた……──どうしたの? あなた』

「…………シセル! ──会いたかった。あれから二年、ずっと君の事ばかり考えていたんだ。君が死んでから……」

『まだ今朝のおふれの事を気にしているの? 大丈夫、あなたの判断は正しいわ。あなたは優しすぎるのね。でも、時には厳しい決断も必要。王様なんですもの。ね? みんなあなたを信じてる。あなたがしゃんとしなくちゃ。アスカンタは、あなたの国ですもの』

『──ねえねえ聞いて! 宿屋の犬に仔犬が生まれたのよ! わたし達に名前をつけて欲しいって!』

振り返ったパヴァン王は、玉座に座る自分の姿を見つけた。

「あれは……僕? ──そうだ、覚えてる。一昨年の春だ。──では、これは過去の記憶?」

『宿屋に仔犬が? 君は? 何かいい名前を考えてるんじゃないかい?』

『わたしのは、秘密』

『どうして。君が考えついたのなら、その名前がいいよ。教えてくれ』

『あなただって、ちゃんと思いついたんでしょ? 仔犬の名前』

『でも、それじゃ君が……』

『ばかね、パヴァン。あなたが考えた名前が、世界中で一番いいに決まってるわ。わたしの王様。自分の思う通りにしていいのよ。あなたは賢くて、優しい人。わたしが考えてたのは、あなたが決めた名前にしよう、って。それだけよ?』

記憶の二人が消えた玉座にパヴァンは座り込む。

「……そうだ。彼女はいつだって、ああして僕を励ましてくれた。──シセル、君はどうして……」

『──シセル、どうして君はそんなに強いんだい?』

『お母さまがいるからよ』

『……母上? だって君の母上は、随分前に亡くなったと……』

『──わたしも、本当は弱虫でダメな子だったの。いつもお母さまに励まされてた。お母さまが亡くなって、悲しくて、寂しくて……。でも、こう考えたの。わたしが弱虫に戻ったら、お母さまは本当に居なくなってしまう。お母さまが最初からいなかったのと、同じ事になってしまうわ……って。励まされた言葉。お母さまが教えてくれた事。その示す通りに頑張ろうって。──そうすれば、わたしの中にお母さまはいつまでも生きてるの。ずっと』

「──シセル。僕は……僕も、君のように……」

シセル王妃の姿は再び消え、最上階へと続く階段へと現れる。

『──ねえ、テラスへ出ない? 今日はいい天気ですもの。きっと風が気持ちいいわ。ね?』

記憶に手を引かれ、パヴァンは最上階の展望台へと出る。

世界は夜明け。色付き始めた景色が出迎えてくれた。

『ほら、あなたの国がすっかり見渡せるわ、パヴァン。アスカンタは美しい国ね』

「……ああ、そう……だね。シセル、そうだね」

『わたしの王様。みんなが笑って暮らせるように、あなたが──』

そこまで話した記憶は、日の光を浴びて消えてしまう。

「私の魔法は、月の光が無ければ使えないの」

「最後、王妃さまが何て言おうとしたか分からなかったね……」

「そうだけど、ホラ見てみて」

「──覚えてるよ。君が教えてくれた事全て、僕の胸の中に生きてる。すまない、シセル。やっと目が覚めた。ずっと心配をかけてごめん」

パヴァンは空を見上げると、

「──長い長い悪夢から、ようやく目が覚めたんだ」

 

 

お城を覆っていた黒い垂れ幕がスルスルと畳まれていく。そしてその代わりに、エンブレムの入った色鮮やかな垂れ幕がかけられた。

すぐに気が付いた城下町の人々は、晴れやかな表情でそれを見つめていた。

 

 

「──シセルが僕に教えてくれた事、もう二度と忘れはしまい」

お礼にと朝食に誘われた四人は、豪華な料理が並ぶ食卓でパヴァンの話を聞いていた。

「夢のような出来事だが、僕は信じます。ありがとう、ありがとう……」

元気になってくれてよかったと、四人は一安心。──夜が明けたその後、絵里は静かに月の世界へと帰っていった。

「皆さんと歩夢のおかげで、僕はようやく長い悪夢から目が覚めた。これからは、王の勤めに励みます」

絵里の話を出さない辺り、パヴァンも何かを察している様子だった。なので穂乃果達も、余計な事は言わない。

「本当にありがとう。──もし、この先何か困った事があったら、いつでも言って下さい。必ず、その時は僕があなた方の力になります。約束しましょう」

「王様の協力が得られるなんて、心強いね〜」

「これからの旅もどうかお気をつけて。またいつでも遊びに来て下さい!」

食事を終えた四人は、にこやかに見送られて城をあとにした。

豪勢な食事に満足しながら談笑していると、

「──あああっ!」

突然穂乃果が大声を上げた。

「え、何、どうしたのほのほの?」

当然驚いて三人は身を引いたが、

「…………にこちゃんの事、すっかり忘れてた……」

その言葉で、

「「「──ああっ!」」」

同時に声を上げた。

 

 

 

 

 

 

・穂乃果

LV18

はがねのつるぎ

うろこのよろい

せいどうの盾

ターバン

スライムピアス

 

・曜

LV18

鉄のオノ

せいどうのよろい

せいどうの盾

ヘアバンド

金のブレスレット

 

・愛

LV18

ダガーナイフ

くさりかたびら

せいどうの盾

とんがりぼうし

金のロザリオ

 

・千歌

LV17

ロングスピア

騎士団の服

騎士団の盾

はねぼうし

聖堂騎士団の指輪

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