スクスタクエスト〜空と海と大地と呪われしYAZAWA〜 作:『シュウヤ』
酒場を出ると、すぐ近くを歩いていた男に話しかける。
「ねえ、猫みたいな見た目した女の子を見なかった⁉︎」
男は一瞬悩んだ素ぶりをすると、ニヤニヤした笑みを浮かべた。
「おう、見たぜ見たぜ。ほんのついさっきな」
「ホント⁉︎ どこ行ったか教えて!」
男は口を開きかけ、そこで一度止まる。それから、
「ヘヘッ、オレってば記憶力ねぇからよぉ。すぐ忘れちまうんだよなぁ。100Gあったら、思い出せるかもしれないんだけどよぉ〜」
「む……」
あからさまに金をせびる男に、穂乃果は顔をしかめる。
「だから、教えて欲し──」
男の声は、そこで止まる。
「──さっさと話した方が、お互い気持ちいいと思うんだよね?」
愛が、《ダガーナイフ》を男の首元で光らせる。前髪の隙間から覗く眼光は、この上なく鋭い。男は背筋を伸ばして早口に答える。
「物乞い通りに消えてくのをチラッと見ました!」
男が答えたのを確認して、愛は武器をしまう。
「だってさ、みんな。早く行こ」
「お、おお……愛ちゃん凄い……」
流石に驚きを隠せない三人は、やや戦慄する。
へたり込んだ男は、
「あ、アンタ何モンだ……?」
「ただの里帰り中の、通りすがりの旅人だよ」
先ほど歩いた物乞い通りで聞き込みを続ける四人。確かに目撃情報は他にもあったのだが、誘拐場所までは誰も知らなかった。おまけに、
「猫みたいな女の子? さあ、知らないね」
通りの終点で得られる証言は、驚きの内容だった。
「……本当に?」
愛が武器に手をかけたが、
「ホントだって! 嘘つく意味なんてねぇよ! おれは見てねぇ! ずっとここにいたから、通ったら気付くさ。だが見てねぇ!」
その男は首を振るだけだった。
「……つまり?」
「凛ちゃんはこの通りのどこかにいる、って事になるよね……」
四人は物乞い通りを振り返る。薄暗く小汚いこの通りには隠れるほどの建物は無く、小さな酒場がポツンと一軒建つだけである。当然、店内も捜索済みだが成果は無かった。
「凛ちゃん、どこ行っちゃったんだろう……?」
「くぅ……アタシがいながら、こんな失態を犯すなんて……」
手がかりなく行き詰まった四人に、
「なぁ──」
目の前でうろたえる男が話しかけた。
「これは関係あるか分からないんが……さっき酔いどれキントが、ここから街の反対側へ歩いてくのを見たんだ。やけにご機嫌だったのが気になってな。アイツ、いつも酒代求めてウロウロしてるからさ」
「『酔いどれキント』って?」
「パルミドじゃ有名なコソ泥さ。ケチなクセに酒好きで、盗んだ金でいつも酒を飲んでるんだよ」
「ソイツが……凛を?」
「さあね。その猫の女の子が金持ちなら、攫うかもな。……そんな金持ちが、パルミドに来るかは知らんが」
「…………」
「怪しいね……。そのキントって人」
「凛がそんなお金持ってるように見えたかは分からないけど、もしかしたら……」
「何か……心当たりが?」
「ちょっとだけ。とにかく、そのキントってのを探し出そう。この街のどこかにはいるはずだから」
「うん」「分かった」
街の反対側で聞き込みをする四人。時に金をせびろうとする輩もいたが、
「早く喋った方がいいと思うよ?」
愛のナイフ脅しでみな素直に答える。
途中で出入り口で見張るにこと合流し、
「凛は見つかった⁉︎」
「いや、まだ……」
「そう……。でも少なくとも、外には出てないわ。街の出口はここしか無いんでしょ? ずっと見てたけど、怪しいヤツは誰もいなかったわ」
「でね、にこちゃん──」
千歌は、現在の情報をかいつまんで説明する。
「……そのキントってヤツが怪しい訳ね。じゃあとっととソイツを見つけ出して、洗いざらい吐いてもらおうじゃない……!」
「濡れ衣って可能性もまだあるから、そこだけ気を付けてね?」
曜が一応注意をしたが、あまり効果は無さそうだった。
「──酔いどれキント? ああ、さっきその辺を歩いてたな。えらく上機嫌だったが……ははぁ、アンタ達何かを盗まれたって訳だ。そりゃご愁傷様だが、ここはパルミドだ。盗まれる方が悪いってな」
豪快に笑う男に、にこはブルブル震える。
「凛は大切な仲間よ……! そんな笑い話で済む問題じゃ……!」
「おっと、怒らせちまったか。悪い悪い。……しかしキントのヤツ、ホントにどこ行ったんだ? ついさっきまでそこら辺にいたんだが……。ヤツの家はこの辺でもないしなぁ」
提供できる情報は全て話した、とばかりに男は去っていった。
「ああもう、どこにいるのよ……。そもそも、この街の構造が複雑すぎるのよ……!」
にこの怒りが爆発しそうになった時、
「──ねえ愛ちゃん、あそこは?」
穂乃果が指をさした。
「ん? あれは掘っ建て小屋だね。多分藁とかしまってる倉庫か何かだと思うよ。ほのほの、それが?」
「…………」
穂乃果は愛の言葉には答えず、ゆっくり小屋に近付く。
「ほのほの?」
穂乃果は黙ったまま、小屋のドアに手をかけた。
古い小屋だけあって鍵はかかっておらず、ギィ、と小さな音を立ててドアは開いた。
「どうしたのほのほ──」
愛の声は、途中で止まる。
「998枚、999枚……1000枚っと! オヤジのヤツ、目が利きやがるぜ。あの猫耳娘の希少性を一発で見抜くたぁ、流石は闇商人ってとこか。──ま、このキントさまにとっちゃ人攫いくらい朝飯前ってモンさ。フヘヘへ……──ヒック!」
頭巾を被った男が、小屋の奥で楽しげにぶつぶつ呟いていた。
『…………』
すぐにその男が犯人の『酔いどれキント』だと察した穂乃果達は、無言で男を取り囲む。
「──ヒッ⁉︎ う、うわあぁ誰だお前ら! ま、まさかあの猫耳娘の飼い主……⁉︎」
並々ならぬ圧力に気付いたキントは、飛び上がって壁にぶつかった。
「飼い主って何よ仲間よ!」
怒りを露わにしたにこが一歩詰め寄ると、
「う、うわぁ魔物だぁぁぁ! こ、殺されるっ!」
「誰が魔物よこの人でなし!」
「とりあえず話が進まないから、にこにーは下がっててねー」
ヒートアップしたにこの襟首を、愛が掴んで引き寄せる。
「ちょちょ……っ」
「──さて」
代わりに目の前に仁王立ちした愛は、《ダガーナイフ》を音もなく抜く。
「アンタが攫った猫耳の女の子は、アタシのた〜いせつな仲間なんだよね。今すぐ返さないと、無事じゃ済まないかもしれないよ?」
「「「…………」」」
すぐ後ろに立つ穂乃果達も、抜きはしなかったが鋭い視線で武器に手を置いた。
「あ、あわわわ……ゆ、許してくれぇ! まさか魔物の知り合いだとは知らなかったんだぁ……」
「それはもういいから、早く」
「こ、このとおり、娘を売った金は返すから、どうか命ばかりは……!」
「……“売った”?」
愛が眉をひそめる。
「……ひょっとして、物乞い通りにある闇商人の店の事?」
「へ、へえ、その通りです。よくご存知で……」
「アタシはここの出身なの。──よし、分かった。じゃあ売ったお金を渡して」
「そ、それはこちらに……」
キントは、持っていた皮袋を恐る恐る差し出す。
「……言っておくけど、誤魔化したりしたらタダじゃ済まないよ?」
袋を受け取った愛の目が細まり、
「せ、1000ゴールドです! 本当にこの金額で売ったんです!」
キントは震え上がって小さくなった。
「ま、そういう事にしておいてあげる」
愛はくるりと振り向くと、打って変わっていつもの明るい笑顔を浮かべた。
「──一安心、かな。今の話に出てきた闇商人って、実はアタシの知り合いなんだよね。アタシがこのお金を渡して頼めば、きっと凛は戻ってくるよ!」
「ほ、ホントなのね⁉︎」
愛はニッ、と笑うと、
「さ、こんなヤツ放っておいて闇商人のお店に行くよ!」
キントを一瞥すると小屋から出て行った。
・穂乃果
LV20
はがねのつるぎ
くさりかたびら
せいどうの盾
鉄かぶと
スライムピアス
・曜
LV19
鉄のオノ
せいどうのよろい
鉄の盾
ヘアバンド
金のブレスレット
・愛
LV19
ダガーナイフ
おどりこの服
せいどうの盾
とんがりぼうし
金のロザリオ
・千歌
LV18
ホーリーランス
レザーマント
騎士団の盾
はねぼうし
聖堂騎士団の指輪