スクスタクエスト〜空と海と大地と呪われしYAZAWA〜 作:『シュウヤ』
一度は道を間違えたものの、愛の確かな記憶で順調に洞窟内を進んでいく一行。
長い廊下の先の壁にドアを発見し、
「ドア発見!」
穂乃果が駆け寄ってドアノブに手をかける。
「んっ……!」
だが、押しても引いてもビクともしない。
「開かない……鍵がかかってる感じはしないんだけど……。壁そのものみたいに重いの」
「また上に上げるとか?」
「あ、なるほど!」
リーザス地方で得た知識を試そうと穂乃果が再びドアに向き直った瞬間、
──ドアが飛び出してきた。
比喩ではなく、ドアが壁から吹っ飛び目の前に立っていた穂乃果を跳ね飛ばした。
「うっひゃぁっ⁉︎」
ゴツッ、といい音を響かせた穂乃果は一メートルほど宙を舞い、着地はしたもののたたらを踏んで、
「あ──」
その先にポッカリと空いた穴に落下した。
「ちょっ……!」
「穂乃果ちゃん⁉︎」
慌てて穴に駆け寄る曜と千歌だったが、すぐにドスンッ、という大きな音と、
「いっったーい!」
元気そうな悲鳴が届いてきた。
一方愛は、
「……なーるほど」
穂乃果を跳ね飛ばしたドアが元通り音もなく壁に吸い込まれていくのを見た。ドアと壁を繋ぐ、巨大なバネも。
「ここを作った好事家っていうのは、よっぽどステキな性格だったらしいね」
キツい皮肉を反響させて、愛は穂乃果が落ちた穴へと飛び降りる。
「──よっ」
身軽に着地すると、すぐ横で尻もちをついた状態の穂乃果を見つける。
「ほのほの、大丈夫だった?」
「うぅ、大丈夫。だけど……」
「だけど?」
「私、ここ嫌い!」
「うん、愛さんも嫌い」
性格の悪い罠によって一つ下の階へ落とされた一行は、
「んー、ちょっとここから登るのは難しいかな〜」
たった今落ちてきた穴を見上げる。ジャンプしても届きそうにない上に、壁は染み出した地下水によって滑りやすい。
「ま、行き止まりじゃないし地理的にさっき通った道を行けば戻れそうだね」
脳内の地図と照らし合わせた愛は長い通路を指差しながら言う。
「──ねえ、あれは?」
不意に、千歌が声を上げた。
三人が視線を向けると、千歌は一点を指差していた。三人がそちらを見やると、一つの宝箱。
『…………』
先ほどから騙されてばかりの穂乃果も、流石に突撃したりはしない。
だからと言ってあからさまに置かれた宝箱をスルーできるほど好奇心は抑制できず、
「ま、モンスターならまた倒せばいいし。ほのほのみたいに油断してなければ大丈夫でしょ」
「酷いよっ!」
愛が宝箱に歩み寄る。
「「「…………」」」
その後方で、三人は念の為に武器を構えて待機。
「じゃ、開けるね」
鍵はかかっていなかったようで、愛は宝箱の口を掴んで勢いよく持ち上げる。
蝶番の軋んだ音が響き、三人は矛先を前に向ける。
だが、
「おっ?」
対して愛は何やら楽しそうな声を上げた。そして宝箱に手を入れると、
「ほら、見て見て!」
振り返って中身のモノを見せてきた。
「……杖?」
愛が手に持っていたのは、小さな赤い宝玉が輝く一メートルほどの杖だった。
「コレ、お宝ってヤツじゃん? なんか、持つと魔力伝わってくる!」
「ホントに?」
「まあ、この中で一番魔法に長けてるの愛ちゃんだからね」
「──ほっ!」
愛が杖を振りかざすと、その宝玉の先から火の玉が発射された。
「うひゃ⁉︎」
それは穂乃果の前髪をかすめて、濡れた壁にぶつかると小さな水蒸気を上げて消滅した。
「うん、これは武器として使えそうだね!」
上機嫌で杖を扱う愛に、
「…………」
危うく前髪が無くなりかけた穂乃果は腑に落ちない表情でそれを眺める。
「あー……まあ、結果オーライって事で?」
「穂乃果得してないもんっ!」
穂乃果の叫びは、石壁に反響して消えていった。
・穂乃果
LV21
はがねのつるぎ
くさりかたびら
せいどうの盾
鉄かぶと
スライムピアス
・曜
LV20
鉄のオノ
せいどうのよろい
鉄の盾
ヘアバンド
金のブレスレット
・愛
LV20
まどうしの杖
おどりこの服
キトンシールド
とんがりぼうし
金のロザリオ
・千歌
LV20
ホーリーランス
レザーマント
騎士団の盾
はねぼうし
聖堂騎士団の指輪