スクスタクエスト〜空と海と大地と呪われしYAZAWA〜   作:『シュウヤ』

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ストーリー、まだ全体の三分の一も進んでない気がするんだよなぁ……


第30話

 剣士像の洞窟の出入り口に戻ってすぐ、

「“ビーナスの涙”は手に入ったんでしょうね⁉︎」

 待ち構えていたにこが詰め寄ってきた。

「にこちゃん、ずっと一人でここにいたの? モンスターだって出るのに……」

「当たり前でしょ! さあ早く行くわよ!」

 先導するにこに続き、四人も疲れた身体に鞭打ち駆け出した。しかし、心なしかその足取りは軽かった。

 

 

 

 

 璃奈の待つ民家へ戻った一行は、

「何っ? お前ら、本当に“ビーナスの涙”を取ってきたってのか? てっきり諦めて立ち去ったのかとばかり……ちょっと見直したぜ」

 驚く門番を横目に、愛を先頭に中へ入る。

「──ほら、りなりー。約束通り、“ビーナスの涙”を持ってきたよ」

 変わらず奥のゆり椅子に座る璃奈に、愛は宝石を手渡す。

「……凄い、これは間違いなく本物。流石は愛さん。璃奈ちゃんボード、『惚れ惚れ』」

 素早く顔のボードを差し替える璃奈。

「さ、これで約束は守ったよ。猫の子、返してもらうよ」

「…………」

 しかし璃奈は一瞬動きを止める。

「……私が言ったのは、『返すのを考えてあげる』って事だけ。──だから、今考えた。やっぱりあの子は返せない。この宝石も、いらない」

 そう言って璃奈は、“ビーナスの涙”を突っ返す。

「んな……っ、話が違うじゃない!」

 後ろで一歩詰め寄ったにこに、

「魔物さんとは話はしてない」

 璃奈はバッサリ。

「ぬぁんですって⁉︎」

「ま、まあまあにこちゃん。どうどう」

 なだめる曜を尻目に、愛は璃奈に向き直る。

「……りなりー、昔の事を怒ってるんだよね。アタシがこの宝石をあげるって約束を守れなかったのをさ」

「…………。そんな事は、言ってない」

 璃奈は返すが、その手に持った『璃奈ちゃんボード』は表情に変化がない。

「……あの時の事はさ、申し訳なく思ってるよ。愛さんの実力が足りないばっかりに。──でも、今回の事はアタシ一人の問題じゃないんだよ。今は仲間と一緒。引く訳にはいかない」

 愛は深く頭を下げると、それから両手を床についた。

「お願い、りなりー。アタシはどうなってもいいから、凛を返して欲しい」

「……!」

 よほど驚いたのか、璃奈は手に持っていたボードを取り落とした。隠れていた素顔が明らかになったが、その表情はどこまでも透明。

「…………」

 成り行きを見守る穂乃果達。ほとんど変化がない璃奈の表情からは、無言の思考を読み取る事もできない。

「私の知ってる愛さんは、そう簡単に頭を下げる人じゃなかった。よっぽど、大切な仲間に巡り合えたんだね」

 口を開いた璃奈は、落としたボードと床に転がった宝石を拾い上げる。

「──私の負け」

「! りなりー、それじゃあ……」

 顔を上げた愛に、

「仕返しにちょっと困らせてみようと思ってたけど、やっぱり愛さんには敵わない。猫の子の凛ちゃんは、自由の身。──この“ビーナスの涙”は、貰うけど」

 璃奈は『笑顔』を向ける。

「ありがとうりなり〜っ!」

 勢いよく抱きついた愛に、小柄な璃奈の身体は引き倒される。

「──璃奈ちゃんボード、『にっこりん』」

 

 

「──で、肝心の凛はどこにいるのよ!」

「横の部屋にいる。私の寝室」

 聞くやいなや駆け出したにこは、璃奈が示した部屋のドアを蹴破らん勢いで開ける。

「凛っ! 無事⁉︎」

「あ、にこちゃんだにゃ。にこちゃんもここで寝るの?」

 そこにいたのは、ベッドでトランポリンのようにはしゃぐ凛の姿だった。

「……アンタ、何やってんのよ?」

「ここのベッド、フッカフカにゃ〜。これならぐっすり寝られるにゃ!」

「……なんか、心配してた私がバカみたいじゃないのよ。ああ力抜けるわ……」

 額を押さえたにこは、盛大なため息を漏らした。

 

 

 

 

 まだ外に出たくないと渋る凛をにこは無理矢理引っ張り、家の外へ。

「──お、無事に返してもらえたんだな」

 すると、そこに立っていた門番が話しかけてきた。

「実を言うとな、その猫娘は客人だから失礼ないようにしろって璃奈さまから言われててな」

「『客人』……」

「ま、何だかんだ言ってもアンタらを信じてたって事だな。──あ、今のは璃奈さまには秘密にしておいてくれよ?」

「──全部聞こえてる」

「り、璃奈さま⁉︎」

 ドア越しに、通りの良い声が響く。

「お、お許しくだせぇ! オレはここを追い出されたら行く場所が……」

 慌てる門番を置いて、再び六人になった一行はそこを離れる。

 

 

「──ん〜〜〜! 何だか変に回り道しちゃったね。これからどうする?」

 大きく伸びをした千歌。

「そろそろ、情報屋が戻ってきてる頃合いかもな〜。一度パルミドに戻ろっか。どちらにせよ、ドルマゲスの情報が無いと目的地も定まらないし」

 愛の言葉に、反対意見もないメンバーは頷く。

「パルミドねぇ……。できれば、あの街には近づきたくないんだけどね」

「にこちゃん、最初はあんなに行きたがってたのに」

「目の前で仲間が誘拐されるような街に、好んで入るバカなんていないでしょうが」

「まあ犯人のキントは懲らしめたし、怪しそうな人は愛ちゃんが脅迫したから大丈夫でしょ!」

「人聞き悪いな〜ほのほの! ただの聞き込み調査だって!」

「……ナイフ突きつける聞き込みは、されたくないなぁ〜……」

 

 

 

 

 

 

・穂乃果

LV21

はがねのつるぎ

くさりかたびら

せいどうの盾

鉄かぶと

スライムピアス

 

・曜

LV20

鉄のオノ

せいどうのよろい

鉄の盾

ヘアバンド

金のブレスレット

 

・愛

LV21

まどうしの杖

おどりこの服

キトンシールド

とんがりぼうし

金のロザリオ

 

・千歌

LV21

ホーリーランス

レザーマント

騎士団の盾

はねぼうし

聖堂騎士団の指輪


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