スクスタクエスト〜空と海と大地と呪われしYAZAWA〜   作:『シュウヤ』

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トロデーン城のBGM、『この想いを…』っていうんですが大好きなんですよね。切ないんだけど心に染みるというか。


第34話

 穂乃果の案内で、トロデーン城内を歩く一行。

 完全にイバラと一体化して開かなくなってしまった扉や、イバラが巻きついた衝撃で瓦礫の山が形成されている場所など、迂回を強いられる箇所が多い。そして何より、

 

[魔物のむれをやっつけた!]

 

 呪いの影響なのか、城内であろうとモンスターが蔓延っている。

「お城が、こんな危険な場所になってるだなんて……」

「私らが出発した頃は、モンスターなんていなかったのに」

「お城の人もみんな優しかったんだにゃ……」

 城での思い出がある三人は少なからずショックを受けており、

「人をこんな姿に変えるなんて……」

 千歌達も変わり果てた従者達を見て言葉を失っていた。

 城内のいたる所で散見される彼らは、体色がイバラと同じ緑色に変色しており、腕は蔓状の植物そのもの、脚は床を這うイバラと同化していた。瞳は白く濁り光は無く、ほぼ全員、恐怖や驚愕の表情のまま凍りついていた。幸いなのは、徘徊するモンスターが『人』と認識せず目もくれていない事だった。傷つけられた姿は、一人も見ていない。

 呼び掛けても触っても反応は一切ない。だが、

「……温もりはある。多分、死んではないんだね」

「じゃあ、ドルマゲスを倒して呪いを解けば……」

「この城もこの人達も、きっと元通り!」

 にこ達もね、の声に、少しだけ明るさが戻る一行。

 

 

「──あ、ここだね図書館」

 穂乃果は一つのドアの前で立ち止まると、恐る恐るドアノブに手をかける。──幸い、ドアは問題なく開いた。

「……うわ」

 狭い通路に所狭しと並べられた本棚に、誰が言うでもなく声が出る。

 イバラの浸食が控えめだったのか、多少床に本が散乱する程度で大きな被害は見受けられない。奥のガラスのなくなった窓枠から、満月による月明かりが差し込んでいた。

「……これは、簡単じゃないわね」

 無限にも思える書物の山を眺めながら、にこは呟く。

「そもそも、あの船に関する情報があるかも分からないんだよね……」

「ネガティブ言ってても始まらない! 行動あるのみ!」

 愛は喝を入れると、

「モンスターが出るかもしれないし、アタシは入り口付近。千歌と曜は奥の窓側。にこにーと凛は、真ん中辺りをほのほのと一緒に探す!」

 テキパキと指示を飛ばす。

「オケー?」

 五人も気合いを入れ直すと、それぞれ持ち場へ散って行く。

 

 

 

 

 しばらくの時間、静寂が流れる。聞こえてくるのは、ページを繰る音、僅かに移動する足音、読書が苦手な者の声なきうめき。

 

 

 全員が調べた冊数を数えるのを諦めた頃、

「──あっ!」

 穂乃果の声が静寂を切り裂いた。

「これ! この本見て!」

 集まってきた五人に、穂乃果は本の表紙を見せる。

 色褪せていて装丁もくたびれているその本には、『荒野に忘れられた船』と書かれている。

「そ、それ……!」

「へへーん!」

 得意げな笑みを向けてくる穂乃果に若干の悔しさを滲ませながら、

「……早く読んで調べるわよ!」

 にこは本をひったくるとテーブルへと向かった。

「あ、にこちゃん酷い! 見つけたの穂乃果なんだからね!」

「見つけるのが目的じゃないのよ!」

「近くにいたのに見つけられなかったからって、にこちゃん大人げないにゃー」

「アンタは黙ってなさい!」

 その光景に愛は肩をすくめると、

「他にもあるかもしれないし、アタシ達はもうちょっと探しておこっか」

「そうだね。一冊の本を大人数で読んでも仕方ないし」

「何か分かったら、また呼んでねー」

 三人は再び本棚に向き直る。

 

 

 

 

 ──一通り読み終えたにこは、本を閉じると大きなため息を一つ。

 あらかた探し終えた千歌達も、椅子に座ってそれを眺めていた。

「……結局分かったのは、大昔はあの辺りも海だったって事だけね」

「それが分かってもねー。今もあそこが海だったら、何の苦労もしなかったんだけどねぇ」

「そしたらここまで戻ってこられなかったかもよ?」

 軽口を叩いてみるが、進展はゼロだったのだ。空気は重い。

「──ん?」

 ふと顔を上げたにこは、月光が作る窓枠の影が伸びているのを見た。現実的にありえない速度で、壁に向かって真っ直ぐと、綺麗な形のまま窓枠の影が伸びていく。

「な……何よあれ⁉︎」

 声を上げたにこの視線を追って、他の五人も異常に気付く。

「まさか……」

「これってもしかして……⁉︎」

 初見の凛は若干の怯えを見せたが、四人には心当たりがあった。一度、見ている。月夜が綺麗な、丘の上だった。

「ど、どうしてここに……?」

 恐る恐る、壁に作られた窓枠の影に近づく。まるで、扉のような。

「ち、ちょっと穂乃果! これがなんだか知ってるの⁉︎」

「う、うん。前にアスカンタの王様助けた時に……」

「ああ、なんか不思議なハープで演奏してどうとかってヤツ……?」

 あの時説明はされたが半信半疑だったので、記憶が曖昧なにこ。

「……で、それがどうしてここに出てくるのよ。アスカンタのお伽話じゃなかったの?」

「語り継がれたのがアスカンタだけで、他の場所で起こっても不思議じゃないと思う」

「千歌ちゃん?」

「それにだって、今のこのトロデーン城は、『普通じゃない』場所なんだから」

 目に映るイバラを見ながら、一同は納得。

「乗るか反るか。──乗るしかないっしょ!」

 穂乃果は頷くと、影に手を置く。

「──じゃあ、行くよ」

 

 

 

 

 窓の先は、一度見た世界。しかし見慣れない世界。そこに立っていた者も、同じ者。

「──あら……? 月の世界へようこそ、お客さん」

 振り返った絵里は、ハープの音を奏でる。

「月影の窓が、人の子に叶えられる願いは生涯で一度きり。再び窓が開くなんて、珍しいわね」

 絵里の言葉に『二度目はない』のかと不安に駆られたが、

「さ、いかなる願いがキミ達をここに導いたのかしら? 話してちょうだい?」

 どうやら門前払いされる気配はないようで安堵する。そういえば前回は、願いを叶えたのは自分達ではなくパヴァン王だった。

「実は──」

 説明しようとしたにこを、穂乃果は止める。

「あ、大丈夫だよにこちゃん。この人には言わなくても分かるから」

「は? いやでも、今話せって……」

 ハープを奏でた絵里は、小さく頷く。

「──なるほど、ね。あの船の事なら知っているわ。かつては月の光の導くまま、大海原を自在に旅した。覚えてるわ」

 勝手に進んだ話ににこが驚愕していると、

「穂乃果達の靴から話を聞いたんだって」

「……もう、何でもアリね……」

 絵里は微笑むと、

「再びあの船を海原へと走らせたいのね? それなら簡単な話よ」

「ほ、本当⁉︎」

「ええ。キミ達も知っているでしょう? あの場所はかつて海だった。その太古の記憶を呼び覚ませばいいだけよ」

 簡単に言っているようだが、穂乃果達には方法がサッパリである。

「アスカンタで王妃の記憶を見せたように、大地に眠る海の記憶を形にすればいいだけよ」

「あー……なるほど」

「……穂乃果ちゃん、絶対分かってないね」

 乾いた笑顔で濁した穂乃果には気にも留めず、絵里は演奏を始める。神秘的な音色が辺りを包み込み、

 ──バツッ!

 っと。乾いた音が響いた。

「……やっぱり、この竪琴じゃ無理なのね」

 見ると、絵里の持つハープの弦が切れてしまっていた。

「大地の記憶を呼び覚ますくらい大きな仕事となると、楽器もそれに相応しいモノが必要なようね」

 絵里は思案顔を見せると、正面の穂乃果と目が合った。

「──あなた……。その気配……かすかだけど、確かに感じるわ」

「えっ?」

「──“月影のハープ”、ね……。昼の世界に残っていたのね。あの楽器なら、この大役も立派に務めてくれるはずだわ」

 何やら独り言を呟いた絵里は、

「よく聞いて。大いなる楽器──“月影のハープ”は、地上のどこかにあるわ。その楽器なら、きっとあの船を蘇らせる事ができるはずよ」

「それを探して持ってくればいいんだね!」

「話が早くて助かるわ」

 優しく微笑む。

「いや、ちょっと待ちなさいよ。どこかってどこよ? 世界のどこかにある楽器一つ探してこいって、言ってる事無茶苦茶よ」

 にこの正論に我に返るが、

「心配には及ばないわ。ハープの気配は、キミ達全員から……いえ、人の子四人全員から感じるわ。つまり、キミ達四人が歩いてきた道、そのどこかに。縁の深い者が、導き手となるはずよ」

 絵里が言葉を続ける。

「にこだって人間なんですけど……」

 という抗議はスルーされた。

「もし願いを叶えたいのなら、私の元に“月影のハープ”を持ってきてちょうだい。そうしたら、船を動かすのは約束するわ」

「……分かった! 待っててね、すぐ持ってくるから! 絵里ちゃん!」

「──あら、ふふ。私をそんな風に呼ぶなんて、長い記憶の中でも初めてね」

 

 

 

 

 

 

・穂乃果

LV23

はがねのつるぎ

鉄のむねあて

せいどうの盾

しっぷうのバンダナ

スライムピアス

 

・曜

LV22

鉄のオノ

せいどうのよろい

鉄の盾

サンゴのかみかざり

金のブレスレット

 

・愛

LV23

まどうしの杖

おどりこの服

キトンシールド

毛皮のフード

金のロザリオ

 

・千歌

LV23

ホーリーランス

レザーマント

騎士団の盾

スライムのかんむり

聖堂騎士団の指輪

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