スクスタクエスト〜空と海と大地と呪われしYAZAWA〜   作:『シュウヤ』

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前にも言ったけど、バトルロードは書きません。


第45話

 白みかけた空、《ルーラ》でラパンハウスへ戻ると、

「あっ、戻ってきた! 中で花陽ちゃんが待ってるよ、早く行ってあげて!」

 入り口に立っていたことりが大きく手を振った。

 その案内のまま建物内へ入ると、変わらず花陽は書類が山積みのデスクに座っていた。

 だがすぐ四人の存在に気付くと、ペンを置いてこちらに笑顔を向けた。

「どうやら無事、私の友達を導いてくれたみたいですね」

「あ、うん。『道に迷ってる』って、ああいう意味だったんだね」

 花陽は頷くと、

「あなた方があの子に会ったあの不思議な木は、太古より命を司る木と呼ばれているんです。そのせいか、時々自分が死んだ事に気付かない魂が道に迷って辿り着いてしまう事があるんです……」

「死んだかどうかも気付かないって、ちょっと怖くなっちゃうね……」

「はい……。でも、これであの子も自分の死に気付き、無事に冥界へ向かってくれるでしょう」

「冥界……」

「魔物と人間は、違う存在なんです」

 花陽は少し悲しい笑顔を見せると、

「あの子……バウムレンは、私が最初に心を許しあったキラーパンサー。小さい頃からずっと一緒でした。あの子がいたから、今の私がある……。そう、思ってます」

 自分の胸に手を置いた。

「あの子のおかげで、今の仕事がある。とっても忙しくて、幸せな毎日」

 目の前の書類の山に視線を落とした花陽。「──でも、だからこそ、止める訳にはいかなかったんです」

「なるほどねぇ……。人間と魔物の絆、か……」

「ちょっと感動しちゃったな」

 花陽は立ち上がって大きく頭を下げる。

「今回は本当にありがとうございました。あの子との思い出は、ずっと胸に残り続ける。──もし何か困った事があったら、いつでも言って下さいね」

 

 

 ラパンハウスを出た四人は、

「──そういえばさぁ……」

 愛の声で歩みを止めた。

「なんか、モンスターをどうとか言ってた人、他にもいなかった?」

「んー……?」

「いたような、いなかったような……」

「いや、待って心当たりあるよ……。確か、眷属がなんとかって……」

「「「「う〜ん…………」」」」

 四人は数秒悩んだのち、

「「「「──あっ!」」」」

 同時に声を上げた。

 

 

 

 

 以前に貰った善子のメモを頼りに、マイエラ修道院、璃奈の家、トロデーン城の近くのモンスターを倒した一行。倒された三体の魔物は、一目散に善子のもとへと走り去っていく。

「これで全部だけど……」

 剣をしまった穂乃果は、魔物が走り去った方角を見つめる。倒すまでは言われていたが、そこから先の指示は受けていない。

「とりあえず、向かってみるのがいいんじゃない? 『次は何すればいいですかー』って訊けば教えてくれるでしょ」

「あの独特な言い回し、理解するのもちょっと骨折れるんだよね……」

「えー? 愛さんは面白くて好きだけどなー」

「じゃあ通訳は愛ちゃんに任せた!」

「それとこれとは別問題」

「あ、ズルい」

 

 

 

 

 善子と出会った場所へ《ルーラ》で飛んだ一行は、周囲に人影がない事を確認して再び屋上へと坂道を登る。

 以前会った時と同じ場所同じ格好で、件の人物はそこに立っていた。

「クックック……来たわね」

 善子はピンと立てた指二本を目元に当てた謎のポーズで、怪しげに呟く。

「今日あなた達が来る事は分かっていたわ。風がしきりにウワサをしていたもの……」

「ホント? 凄い! 風とお話できるんだ!」

「本気にしちゃダメよ穂乃果。きっとそういう設定でやってるんだから」

「設定ゆーな! ──コホン……、私の頼みを、見事に全て片付けてくれたようね。ありがとう」

 素直にお礼は言えるのかと、一同は少し驚く。

「あなた達の瞳の奥に眠る溢れる才能を感じとった、私の目に狂いはなかったようね。お礼に、この建物の中に案内してあげましょう」

 気になっていたでしょう? と善子は微笑む。

 そこは否定できないので、頷くしかない。

「さあ、ついて来なさい」

 

 

 鍵のかかった扉の前で一行に向き直った善子は、

「この扉の先には、あなた達の知らない世界がある」

「えっ、それってもしかして、月影の世界みたいな……?」

「何よそれ? そんなフワッとしたんじゃないわよ」

「話し方とかキャラ作りはフワッとしてるのに」

「キャラとか言うんじゃないわよ! 入れてあげないわよ!」

 逆ギレされてしまったので、すみませんでしたと頭を下げる。

 善子は咳払いをすると、再び芝居がかった口調で、

「今日があなた達の記念日となるはずよ。──さあ、行きましょう」

 扉の鍵を開けた。

 

 

 

 

 中に入ってすぐ目の前は、酒場のようなカウンターだった。お客の姿はほとんど見えない。そして右奥には、意味ありげな鉄格子。奥はすぐ階段になっており、下へと続いている。当然、入り口は閉まっていた。

「──あら、善子ちゃん? 中に入ってくるなんて珍しいじゃない。どういう風の吹き回し?」

 入り口すぐ近くに立っていた女性が、善子に気付いて声をかけた。流れるようなロングヘアが美しかった。

「善子じゃなくてヨハネ! ──フッ、あなたに説明するほどでもないわ」

「じゃあこれからは、ヨハネって呼んであげないわよ」

「…………。素晴らしい才能を持つ者を、見つけたのよ」

「あ、もしかして大会の参加者? 善子ちゃん自ら見つけてくるなんて、いつぶりかしら」

 大会?

 六人は綺麗に揃って首を傾げる。

「今宵はきっと、歴史に名を残す日になるでしょうね。そんな記念日に立ち会えた事、感謝するのね、リリー」

「リリーじゃなくて梨子です! 全く……変なネーミングを他人に押し付けないでよね……」

 お冠の梨子を尻目に、善子は鉄格子の扉を開ける。

「さ、こっちよ。下で待ってるわ」

 階段を下っていく善子を見ながら、

「あのー……」

 穂乃果は梨子と名乗る女性へ話しかけた。

「ここって、何をする場所なんですか? さっきの大会って、一体……?」

「私が説明するより、善子ちゃんの方が詳しく教えてくれるはずよ。……まあ、言い回しが独特で理解できない部分があるかもしれないから……そこは補足してあげる。──それに、百聞は一見にしかず、ね」

「はあ……」

 結局はぐらかされてしまったので、それ以上の情報収集は諦めて鉄格子から続く階段を目指す。

「私達はやめておくわ。万が一戦闘になったら足手まといだし、地下から逃げ出すのは厄介だもの」

「分かった」

 念の為にこと凛とは別れ、四人で階段を降りていく。

 

 

 ──次第に、大きな声が聞こえてくる。

「これは……歓声?」

「──来たわね」

 腕を組んで待ち構えていた善子が、ニヤリと笑った。

「ようこそ。──モンスター・バトルロードへ」

「モンスター・バトルロード?」

 オウム返しした穂乃果に、善子は一歩横へずれる。

「リリーも言っていたと思うけど、実際に見てもらった方が早いわ」

 そこは、すり鉢状の空間だった。石組みの中央だけより大きく凹み、砂が敷き詰められた広い場所。さながら、

「コロシアム、ってヤツだね……」

 さらに四人を驚かせたのは、中心の広場で戦っている者達。

「モンスターじゃん……!」

 スライムやおおきづち、穂乃果達が幾度となく相手にしてきたモンスター達。四人の見知らぬモンスターもいた。

 目の前の光景に釘付けになった四人の背後で、善子が口を開く。

「驚いたかしら? ──ルールを簡単に説明するわね。『モンスター・バトルロード』とは、三匹のモンスターで構成されたモンスターチーム同士の戦い。自らの眷属を使役し、ラグナロクを勝ち上がる事が、この場での全てよ」

「凄い……! モンスターを戦わせられるなんて!」

「クックック……あなた達も、眷属を使役したくなったでしょう?」

「うんっ!」

 瞳を輝かせて振り返った穂乃果へ、

「二十万ゴールドよ」

 無慈悲な言葉が襲った。

「へっ……?」

「ここでの定めよ。世の危険な眷属を使役する事は簡単ではないの」

「そ、そんなぁ……。そんな大金持ってないよ!」

「……ああ、だからか……」

 何かに思い至った愛。

「何が?」

「さっき酒場にいたお客さん、それとここにいる人達も。見た事ある顔だなって思ってたんだけど、分かった。かなり有名なお金持ちの人達ばっかりだよ」

「そ、そっか……。お金持ちの娯楽って感じなのかな……」

 話を理解し、千歌と穂乃果は揃って肩を落とす。

「んー……でもさ、だったら何で、私達をここに入れたの? わざわざモンスター退治までさせて、ただこの施設を見せびらかしたいだけじゃ、ないよね?」

 曜の疑問に、愛も賛同。

「そうそう。アタシも思ってた」

「へぇ、案外キレるじゃない。そうでなくちゃ、このヨハネの名が廃るもの」

 善子は怪しく笑うと、

「二十万ゴールド、ヨハネが肩代わりしてあげるわ」

 そんな事を口にした。

「ほ、ホント⁉︎」

「ちょいちょい、流石に怪しすぎるって!」

「そうだよ! 代わりに何要求されるか分からないよ」

 反射的に身を乗り出した穂乃果を、常識人二人が引き止める。

「ええ、無論、無条件とはいかないわ。肩代わりする代わりに、こう誓ってもらうわ」

 一度言葉を切った善子に、四人は唾を飲み込む。

「──『このラグナロクを勝ち上がり、頂の景色を拝む』とね」

「えっと?」「つまり?」

「モンスター・バトルロードで優勝しろって事……かな?」

 動きがシンクロした穂乃果と千歌へ、曜が翻訳する。

「ご名答よ」

「それなら任せて! 絶対に優勝してみせるから!」

「クックック……決まりね」

 善子は怪しく笑うと、不思議な手の形を作り穂乃果達へ向けた。

「あなた達に、堕天使の微笑みがありますように」

 

 

 

 

 

 

・穂乃果

LV26

はがねのつるぎ

鉄のむねあて

ライトシールド

しっぷうのバンダナ

スライムピアス

 

・曜

LV25

鉄のオノ

せいどうのよろい

鉄の盾

サンゴのかみかざり

金のブレスレット

 

・愛

LV26

まどうしの杖

おどりこの服

ホワイトシールド

銀のかみかざり

金のロザリオ

 

・千歌

LV26

ホーリーランス

鉄のよろい

ライトシールド

スライムのかんむり

聖堂騎士団の指輪

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