スクスタクエスト〜空と海と大地と呪われしYAZAWA〜 作:『シュウヤ』
リーザス村を出た一行は、
「ほら、あそこに見えるだろ?」
ポルクが示した左側を見た。
視界の先には、三つ羽根の風車が回る建物。
「あそこがリーザス像の塔だ。マリー姉ちゃんは多分、あそこに……」
「よし、行こうみんな!」
幸先よく進み出した穂乃果達だが、塔までは遠くはないが近くはなく、道中にモンスターもいる。
[サーベルきつねが現れた!]
「タホドラキーが現れた!]
[タホドラキーが現れた!]
鋭い細剣を持った狐と、緑色をしたドラキー。
[サーベルきつねのこうげき! 穂乃果は7のダメージを受けた!]
「うっ、速いねあのモンスター」
先手を打たれて怯んだが、穂乃果は気をとり直して武器を構える。
[穂乃果はかえんぎりを放った! サーベルきつねに19のダメージ!]
「やっぱり、場所が変わればモンスターの生息も変わるんだね。気をつけなきゃ」
[曜のこうげき! サーベルきつねに20のダメージ! サーベルきつねを倒した!]
[愛のこうげき! タホドラキーAに18のダメージ!]
[タホドラキーAのこうげき! 曜は2のダメージを受けた!]
「おや、あまり強くない?」
意外なダメージの低さに驚きを見せたが、
[タホドラキーBはルカナンをとなえた!」
[穂乃果の防御が9下がった!]
[曜の防御が10下がった!]
[愛の防御が9下がった!]
普通のドラキーとは、やはり違う行動を取ってくる。
[タホドラキーAのこうげき! 愛は6のダメージを受けた!]
「ちょっとダメージ増えてる! 他のモンスターといっぺんに出てきたら、厄介かも……」
「長引くと不利になりそう。早く倒そう!」
今後も戦闘が続く以上、一つの戦闘に時間をかけてはいられない。穂乃果は柄を握り直すと、武器を振り上げた。
[穂乃果のこうげき! タホドラキーAはひらりと身をかわした]
「くぅ……避けられた!」
「ほのほの、どいて!」
「へ?」
[愛はメラを唱えた!]
「うわぁっ!」
飛来した火の玉を見て、穂乃果は慌てて逃げる。
[タホドラキーAに18のダメージ! タホドラキーAを倒した!]
「愛ちゃん! びっくりしたよ!」
「やーごめんごめん。呪文なら避けられないかと思ってさ」
「あはは……こんなんで、大丈夫かな」
[曜のこうげき! タホドラキーBに22のダメージ! タホドラキーBを倒した!]
[魔物のむれをやっつけた!]
幼い故に戦力にならないとはいえ、穂乃果達の戦闘をやきもきしながら見ていたポルク。安全が確認できるやいなや、
「さあ行くぞ! 時間が無いんだって!」
すぐに駆け出す。
「そんなに急がなくても……」
「まあまあ、人の命が最優先って事で、ね?」
「全部解決したら、またゆっくり戦えばいいじゃん?」
非常事態ではあるものの、勝利の余韻に浸れない三人は若干のモヤモヤが残ってしまう。
そして戦闘は一回で済むはずもなく、
[おおきづちが現れた!]
[リリパットが現れた!]
[かぶとこぞうが現れた!]
木のハンマーを持った一頭身のモンスターに、頭巾をかぶった弓矢を携えたモンスター、大きなツノを持ったカブトムシのようなモンスターが立ちふさがった。
「……あれ? あの左のハンマー持ってるモンスター、どこかで見た事ない?」
「あ、本当だ。滝の洞窟で道を塞いでたモンスターにそっくり」
「もしかして、お仲間なのかな?」
「話したら、前みたいに戦わなくてよかったりするかも? おーい、穂乃果達強いから、度胸に免じて見逃してくれるー?」
[おおきづちのこうげき! 穂乃果は12のダメージを受けた!]
「痛いっ! そんな事なかった!」
「何やってるの穂乃果ちゃん……」
穂乃果の質問に対して、相手からの返事はハンマーだった。
「ぐぬぬ、しかも結構強いし……」
「滝の洞窟にいたモンスターも、本当に強かったのかもね。見逃してもらって正解だったのかな」
モンスターを目の前にして、攻撃されてもなおお喋りをする三人を見ながら、
「戦う気あるのかコイツら……」
ポルクは思わず漏らす。その言葉を、
「よーく分かるわその気持ち……」
同じく見守るだけのにこは深く頷く。
「……ずっと気になってたんだけど、お前モンスターじゃないんだよな?」
「失礼ね。このにこにーのどこがモンスターだって言うのよ」
「もう全体的に」
「ぬわぁんですって⁉︎」
「ねえ、凛は凛は?」
「お前は……まあ耳とか猫だけど、見た目は人間だし大丈夫だな。こっちのキノコは、村に入ってきたら間違いなくやっつけてたな」
「く、屈辱だわ……。こんなガキンチョに、言いたい放題言われるなんて……。ドルマゲス倒して呪いが解けたら、見てなさいよ!」
「だから誰なんだよそのドルマゲスって」
非戦闘員の三人が言い合っている間に、
[魔物のむれをやっつけた!]
穂乃果達はモンスターを殲滅。
「おーい、どうしたの〜?」
「仲良くなれた感じっぽくない?」
「仲良くなんてなってないっての! 早く行くわよ!」
「おい、道案内できるのおいらだけなんだぞ!」
「やっぱり仲良しに」
「「なってない!」」
十分ほどで塔のすぐ近くにやってくると、脇の茂みからまるで待ち伏せのようにモンスターが飛び出してくる。
[おばけきのこ達が現れた!]
「に、にこちゃん⁉︎」
「まさかの裏切り⁉︎」
「喧嘩売ってんのかあんたらは」
反射的に叫んだ穂乃果と曜に、にこは眉間を押さえる。
「でもよく見て、三体もいるよ。もしかして、にこにー分身できたの?」
「さっさと倒しなさい!」
三人はいたって真面目なのだが、傍目には茶番にか見えない。いっその事、予備の武器を持って自分が戦ってやろうかとにこは本気で考えた。
[魔物のむれをやっつけた!]
「イエーイ、にこちゃん討伐!」
「私じゃないっつってんでしょ!」
ようやく、リーザス像の塔へ到着した一行。
目の前に、両開きかと思われる扉が。
「試しに開けてみろよ。別にカギはかかってないからさ」
「む……じゃあ見ててよ」
ポルクに挑発され、穂乃果は扉を思い切り押す。
「ぐぬぬぬぬぬ…………!」
しかし、扉はビクともしない。
「ダメだぁ、動かない……」
「もしかして、引くんじゃないの?」
穂乃果の代わりに進み出た愛が、今度は思い切り扉を引いてみる。
「むむむ……っ、違うっぽいね」
だが、やはり扉は動かない。
曜にも正解は分からなかったので、三人は降参というようにポルクを見た。
ポルクは得意げな表情を浮かべると、何故か扉の前でしゃがみ込む。
「この扉はな、こうやって開けるんだよ!」
そして、扉を持ち上げた。上に。
『…………』
開いた口が塞がらない三人。
「驚いたか! この扉は、なんと上に開くようにできたんだ!」
「それは、確かに分からなかったなぁ……」
「両開きに見えるのも、トリックって事か……」
「いやー、これは流石の愛さんも一本取られた!」
「あの日、この扉が開いてたのを不思議に思ったサーベルト兄ちゃんが調べる為にこの塔に入って行ったんだ。そしたら……」
自然と途切れる言葉。
「……とにかく、おいらに手伝えるのはここまでだ。年に一度の聖なる日以外は、塔の中にもモンスターは出る。マリー姉ちゃんの事、頼んだぞ!」
最後まで横柄だったポルクだったが、その眼差しは真剣。
「任せてよ!」
穂乃果も、持ち前の笑顔を見せて胸を叩いた。
・穂乃果
LV11
どうのつるぎ
うろこのよろい
皮の盾
皮のぼうし
金のブレスレット
・曜
LV10
石のオノ
たびびとの服
うろこの盾
皮のぼうし
ーーー
・愛
LV10
ブロンズナイフ
皮のこしまき
皮の盾
皮のぼうし
ーーー