ひこうじょう(通常版)   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 くにむらせいじ (SAY_Y 又は SEY_Y)です。
 このテキストは、小説とも台本とも違う、変な書き方をしています。読みづらかったらごめんなさい。
 第1話前半は「ツチノコ視点版」を強引に三人称にしたため、読みづらいかもしれません。
 第4話までは地味で固い話です。

 この話(第1話)と最終話のあとがきに、オリジナル設定が書いてあります。設定画があります。



第1話「いつか」

 

 黒い巨大セルリアンとの戦いのあと。キョウシュウの東海岸。

 

 ツチノコが、長大で平坦な、舗装された直線道路を歩いていた。

 

 ツチノコは直線道路から脇にそれて、広場へと出た。広場は少し傷んだコンクリートの舗装だった。広場の先には、かまぼこ型の大きな建物があり、そのわきにくっつくように、低い“塔”があった。塔の上の階の大きな窓ガラスは、下に傾いていた。

 ツチノコは、大きな建物の正面の、大きな引き戸を開けようとしたが、扉は動かなかった。

 彼女のピット器官の透視映像では、建物の中にぼんやりと何かが映っていた。※1

 彼女は建物の横にあるドアを開けようと、レバーをガチャガチャといじった。彼女がレバーを下駄で蹴り上げると、バキッと音がして、ドアが少し開いた。※2

 

 ツチノコが建物の中に入った。そして、目を見開き、固まった。

 

 飛行機があった。それは、小型の双発のプロペラ機だった。白と青のツートンカラーに、ジャパリパークのシンボルマークが描かれていた。フロントガラス、屋根、客席の窓を覆うように、灰色の、布製のカバーがかけられていた。※3

 

 ツチノコは、飛行機を調べ、建物内を探索した。飛行機の状態は比較的良好だった。棚や箱に、何かの部品や、工具がたくさんあった。本棚に、たくさんの本が残されていた。本を開いたツチノコは、眉をひそめて、すぐに本を閉じた。

 本には飛行機の整備の方法や、整備の記録が書かれていた。

 

 ツチノコが、大きな建物に繋がっている塔、管制塔の階段を上った。塔の2階の大きな窓ガラスから景色を眺めることができた。目の前にあったのは、長大で平坦な道路、滑走路だった。

 ツチノコは、そこにあった操作卓のスイッチなどをいじってみたが、何も起きなかった。

 

 大きな建物の裏の、少し離れた場所に、円筒形の大きなタンクがあった。

 

 

 その後、ツチノコは飛行場に通ったり泊りこんだりして、飛行機や建物を調べて、飛行機の整備を始めた。

 

 ツチノコが、飛行機の機長席(左側)に座って、整備マニュアルを手に、スイッチやつまみをいじったが何も起こらず、彼女はため息をついた。

 

 ツチノコがピット器官を使って、エンジン周辺の内部を透視した。電気系統がわずかに熱をもっており ※4 、内部が見えたが、複雑な内部の情報が彼女の頭に流れ込んできた。

ツチノコ  「くっ……」

 彼女は片手を頭に当てて、顔をしかめて、よろけた。

 

 ツチノコが、主翼下のパネルを開いた。複雑な内部を少し眺めて、顔をしかめて、バタンとパネルを閉じた。

 

 

 飛行機が発見されてから数日後。格納庫。

 

 ツチノコがロッカーを開けると、そこには作業服やエプロンがハンガーにかかった状態で数着入っていた。その中に、茶色のレザージャケットがあった。レザージャケットの内側には、小さな肩掛けバッグ ※5 が掛かっていた。 近くに、焦げ茶色のカウボーイハット(ソフトハット) と、茶色のブーツがあった。

 

 

 別の日。管制塔の2階。

 

 壁際の床に、アルミ製の箱が置いてあった。それは低い椅子ほどの大きさで、肩掛け用のひもがついていた。箱の表面には、何かのシンボルマークや文字のステッカーが、いくつか貼られていた。

 ツチノコのピット器官の映像には、箱の中にごちゃごちゃしたものが暗く写っていた。

 彼女は箱の蓋の二つの止め金を外して、蓋を開けた。

 ツチノコは、目を見開いて驚いた。※6

 箱の中には、デジタル一眼レフカメラや交換レンズ、一脚などの撮影機材※7 が詰まっていた。

 

 

 ある夜。格納庫。

 

 ツチノコが、いつものように飛行機をいじっていた。

 突然、ガチャガチャと音がした。音は、小さなドアから聞こえた。

ツチノコ  「うああ!!」

 再び、ドアからガチャガチャと音がした。

ツチノコ  「…………」

 ツチノコは、ドアに歩み寄り、ドアを開けた。

スナネコ  「おひさしぶりです」

 外には、スナネコが立っていた。その口調は、のんびりした感じだった。

ツチノコ  「スナネコ! おまえ、なんでここに!?」

スナネコ  「ひまだったので」

ツチノコ  「ひまって、遠いだろ……」

スナネコ  「ツチノコがいないと、ひまなのです」

ツチノコ  「……一日しか離れてないぞ」

 スナネコが、飛行機を見た。

スナネコ  「これが、ひこうき、ですか?」

スナネコ  「おっきいですねー」 

 スナネコは、飛行機を興味深そうに見ていた。ツチノコは、スナネコの横顔を、真剣な目で見ていた。

スナネコ  「鳥みたいだけど、飛びそうには見えないですね」

 スナネコは、ツチノコを見た。

ツチノコ  「オレも、そう思う」

 ふたりは、飛行機を見つめた。

 

 

 飛行機が発見されてから2週間ほどあと。図書館。

 

ワシミミズク(助手)「そんなもの、理解できるのですか?」

 ツチノコは、机に向かっていた。机の上には本が積み重なっていた。そのうしろには、はかせと助手が立っていた。本のタイトルは、『初歩の航空力学』、『飛行機はなぜ飛ぶのか』、『ガスタービン機関の仕組み』、『パイロット物語』、『航空工学概論』、『夜間飛行』、『航空機整備士を目指すには』…………。

アフリカオオコノハズク(はかせ)「おまえには無理なのです。飛行機は、ヒトの作ったものの中でも、最も高度な部類なのです」

ツチノコ  「うるせえ! 少しは手伝え!」

はかせ   「なぜそこまで飛行機にこだわるですか?」

助 手   「バスの改造は順調なのです。あれを飛ばす必要はないのです」

ツチノコ  「バックアップがあってもいいだろ? それにな……」

 

ツチノコ  「飛ばしたいんだよ!」

 

 

 遊園地のパーティーの数日前。飛行場。

 

サーバル  「すっごーい、なにこれ」

 海岸に、長大で平坦な、舗装された直線道路がのびていた。

かばん   「ヒトが作ったもの、かな、何のためにあるんだろう」

ラッキービースト(腕時計型。以下ボス)「コレハ、滑走路ダネ、飛行機ガ離着陸スルタメノ設備ダヨ」

かばん   「ひこうき? 紙飛行機のようなものかな?」

ボ ス   「飛行機ハ、空ヲ飛ブ乗り物ダヨ」

かばん   「そういえば、ミライさんが飛んできたって言ってましたよね」※8

ボ ス   「アノ格納庫ニ、予備機ガ残サレテイルカモシレナイネ」

 格納庫に入る一行。そこには双発のプロペラ機があった。

サーバル  「すっごーい、大きな鳥みたい!」

かばん   「真ん中の部分は、ちょっとバスに似てますね。ラッキーさん、これにヒトが乗って飛ぶんですか?」

サーバル  「えー、こんな大きいもの飛ぶわけないよ」

ボ ス   「飛行機ガ、飛ブ仕組ミヲ解説スルヨ」

 

ボ ス   「ココデハ無風状態ト仮定シテ解説スルヨ。エンジンニヨッテ、プロペラヲ回転サセルト、前ニ進ムチカラ、スナワチ推力ガ、生マレ、コノ推力ニヨッテ機体ガ前進スルンダ。機体ガ前進スルト、主翼ノ周リニ、空気ノ流レガ生マレルヨ。コノ空気ノ流レト、主翼の断面形状ニヨリ、主翼ノ上面ト下面ニ、気圧ノ差ガ生マレルヨ。コノ気圧ノ差ト、主翼ノ迎エ角ノ作用ニヨッテ、機体ヲ持チ上ゲルチカラ、スナワチ揚力ガ生マレルンダ。揚力ハ、機体ト空気ノ相対速度、スナワチ対気速度ガ早イホド、大キクナルヨ。機首ヲ上ゲテ、主翼ノ迎エ角ヲ大キクスルコトデモ揚力ガ大キクナルヨ。機体ガ加速シ、必要ニ応ジテ機首ヲ上ゲ、揚力ガ、重力ヲ上回ルト、機体ガ、路面カラ離レ、飛行機ハ、空ヲ飛ブンダ。チナミニ、現代ノ多クノ飛行機デハ、主翼ニ、フラップト呼バレル揚力ヲ増スタメノ…………」※9

 

サーバル  「うみゃみゃみゃ、みゃ……」

 サーバルが倒れた。

かばん   「サーバルちゃん!」

かばん   「ラッキーさん、もういいですから! 大丈夫ですから!」

サーバル  「わたし、がんばりすぎちゃった……。わかろうとしたけど、だめだった……」

 サーバルの声は弱弱しかった。

かばん   「サーバルちゃん、大丈夫?」

サーバル  「海の、むこう、かばんちゃんと、いっしょに行きたかったな……はっ……」

 サーバルが意識を失った。……ように見えた。

かばん   「サーバルちゃん!」

かばん   「どうして、どうしてこんなことに」

 

ツチノコ  「何やってんだおまえら」

 飛行機の陰から、ツチノコが現れた。

かばん   「ツチノコさん! サーバルちゃんが!」

ツチノコ  「深刻な状況には見えんがなー」

サーバル  「ううう、あたまが、いたいよ」

ツチノコ  「とりあえずちょっと休め」

 

 飛行機の後部座席に座る三人。サーバルとかばんが隣り合う席に、ツチノコがかばんと向かい合う席に座っていた。

サーバル  「ツチノコ、さっきから気になっていたんだけど、その恰好なに?」

かばん   「僕も気になっていたんですが、なんか触れちゃいけないというか、聞けなかった」

 ツチノコは、フードの上から焦げ茶色のカウボーイハット(ソフトハット) をかぶり、茶色のレザージャケットを羽織っていた。いつもの下駄ではなく、茶色のブーツを履いていた。

ツチノコ  「考古学者に飛行機っつったらこの恰好なんだよ!」※10

かばん   「こすぷれってやつだね。でも、それならムチが必要なのでは?」

ツチノコ  「なんでお前はそんなこと知ってるんだよ!」

 ツチノコはしっぽを床にピシピシと打ち付けた。

かばん   「しっぽがムチの代わりなんだね」

サーバル  「よくわかんないけど、なんか似合ってない気がするな。フードの上からぼうしをかぶるのも変だし」※11

サーバル  「フードかぶってると落ち着くんだよ!」

サーバル  「ツチノコはここで何してたの?」

ツチノコ  「例の改造がうまくいかなかったら、こいつを飛ばそうと思ってな」

サーバル  「知らないところでがんばってたんだね、ツチノコはやさしいね」

 ツチノコは顔を赤くしてうつむいた。

かばん   「例の改造ってなに?」

ツチノコ  「それは……そのうち分かるから気にするな」

かばん   「それで、飛ばせそうなんですか?」

ツチノコ  「キビシイなー。あちこち傷んでるし、操縦も難しい。飛ばせたとしても、飛行中にトラブルが起きたらおしまいだからな。あの映画みたいになっちまう」

サーバル  「やっぱり飛べないのか……」

ツチノコ  「あれには間に合わんかもしれんが、燃料はある ※11 し、図書館で調べて、博士たちと協力して、時間をかけて整備すれば、いつかは……」

 

サーバル  「いつか、飛ばせるといいね」

 

かばん   「そういえばあのひと、ヘビが苦手だったよね?」

ツチノコ  「…………」※13

 

 

 

 つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

※1 赤外線の量が少なく、扉が厚いため、はっきりとは見えませんでした。『ピット器官』と表記していますが、アニメ1期4話で、ツチノコは、「ピット器官! ……だとかで……」と言葉を濁しているので、ピット器官とは違うものなのかもしれません。

 

※2 潮風で、錠が傷んでいました。

 

※3 フロントガラスだけでなく、インテークなどの開口部や、ピトー管などに、赤いカバーが付けられていました。

 

※4 ツチノコがいろいろいじったため、バッテリーにわずかに残っていた電気が、電気系統に流れたようです。また、部品の材質により、温度が変化するので、ツチノコのピット器官は、内部の形状を見ることができました。

 

※5 小さな肩掛けバッグは、ジャパリまんが一つ入る大きさです。バッグを掛けた上に、レザージャケットを着ます。

 

※6 ツチノコは、内部の透視ができていて、中身の予想はついていたのですが、箱が冷えていて中身がはっきりと見えず、重なって詰まっていたため、形が分かりにくかったようです。そして、予想以上のものが出てきて、驚きました。

 

※7 撮影機材の詳細は、『ひこうじょう PPP編』のあとがきに書いてあります。

 

※8 多分ヘリコプターなんじゃないかと思っています。

 

※9 真面目に解説したつもりですが、間違っているかもしれません。尾翼の解説がありませんが、それはこの後に続きます。カタカナばっかりで、だらだら長いと、読む気が無くなりますね。

 

※10 ツチノコは考古学者ではないですし、あの映画シリーズは、飛行機が中心の物語ではありません(印象的な使われ方をしていますが)。ツチノコ的には、気分の問題だったようです。

 

※11 ツチノコのフードはある意味頭なので、フードの上から帽子を被らせてもいいかな、と思います。あと、フードを脱いで帽子をかぶると、誰だかわからなくなる気がします。

 

※12 燃料は、格納庫裏の、少し離れた所にあるタンクに入っていました。飛行機内の燃料は抜かれていました。 ターボプロップなので、灯油でもエンジンを回せるかもしれません。

 

※13 ツチノコはヘビなんでしょうか?

 




 あとがき・設定

 読んでいただきありがとうございます。
 けもフレアニメ1期で、ツチノコは考古学者っぽいことをしていたので、インディージョーンズの恰好をさせよう、というところからスタートしたのがこのおはなしです。趣味に走った結果、飛行機が中心のおはなしになってしまいました。
 私は飛行機が好きなだけの素人です。いろいろ間違っているかもしれません。

 第1話はまとまりがないものになってしまいました。起きたことを並べただけです。
 最初の部分はセリフがないので、一人称の方が良かったかもしれません。



 使用機体の設定

 中古の ビーチクラフト キングエアC90(C90GT) に、ラッキービーストとリンクできる改修を施したものです。主にパークの職員の移動用に使用されていました。塗装は白と青のツートンカラーで、後部胴体側面とエンジンナセルに、けもフレのシンボルマークが入っています。垂直尾翼の右側には青緑色の羽、左側には赤い羽のマークがあります。
 コックピットはグラスコックピットではありませんが、計器の一部がディスプレイになっています。
 元々は3機あり、1機が島を去って、予備機が残され、残りの1機は本土の整備工場にあります。機番は、予備機がJA83JP、島を去ったほうがJA82JP、整備工場にあるのはJA81JPです。

↓こんな感じです。

【挿絵表示】
ビーチクラフト キングエアC90(C90GT) ジャパリパーク仕様

 本当は軍用機、戦闘機が好きなんですが、なぜこんな地味な飛行機を選んだのかというと、「ジャパリバスの飛行機版」にしたくて、「6~10人乗りで、扱いやすくて、小さな飛行場でも運用できて、比較的生産数が多く、現在国内で使用されていて、今後も使用され続けるであろう機種」を選んだ結果、この機体になりました。
 けもフレはファンタジーなんだから、オリジナルの飛行機でもいいじゃないか、とも思ったのですが、それだと映像を思い描くために「デザイン(設計)」をしなければいけないので、こうなりました。


 飛行場の設定

 公式設定では、多分飛行場は存在しないと思います(私が知らないだけで、実はあるのかも)。 この飛行場は海岸にあるという設定です。明確な位置の設定はありませんが、アニメ1期12話の、船が沈んだあたり(キョウシュウの東側?)に近いと考えています。
 ここの海岸に作られた理由は以下の通りです。
 ・フレンズのいる陸地の上を低空飛行するのを避けるため。
 ・島の中央部の山岳地帯への衝突、山岳地帯のおこす乱気流を避けるため。
 ・サンドスターの影響による気候や現象(強い日差し、強風、砂嵐、降雪など)を避けるため。
 ・長い平坦な土地が確保できるため。
 ・港に近いため。
 ・向かい側にゴコクエリアがあるので、波が弱い(かもしれない)ため。
 欠点は、潮風により設備や航空機が痛みやすいことと、津波が来たらアウトなことです。(防波堤はありますが、低いです。)
 滑走路は、海岸線に平行に走っていて、平坦な砂浜を利用し、少し海を埋め立てて建設されました。長さは1200mくらいです。滑走路番号は01/19です。 飛行場の位置が曖昧なため、海岸線と滑走路の関係がおかしいかもしれません。滑走路が短いため、ジェット機の運用は困難です。滑走路の海側に、簡単な防波堤があります。滑走路と平行にのびる誘導路は無く、エプロンと滑走路が直結しています。

 格納庫は、キングエアC90GTが2機入って少し余裕がある大きさです。ホイストがあります。格納庫裏の少し離れた所に燃料貯蔵タンクがあります(傷んでいましたが、中身は無事でした)。
 エプロン(駐機場)は小型旅客機(737クラス)が2機駐機できるくらいの広さです。
 管制塔は最小限のもので、格納庫と繋がっています。レーダーや無線設備もありますが、故障して機能していません。
 電源は、温泉の地熱発電や、太陽光発電が利用できました。

↓飛行場の設定画(地図)です。物の大きさの比率は、いい加減です。トラフィックパターンが書いてありますが、SS本編と矛盾するかもしれません。内容的に、この通り飛ぶ必要はないと思います。

【挿絵表示】


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