まえがき
また空行が多いので、ページが縦に長いです。ごめんなさい。
修復後の、初飛行の日。少し雲があったが、快晴だった。
―― エプロン ――
エプロンには、たくさんのフレンズが集まっていた。飛行機は、左側を観客の方に向けて、駐機していた。
ツチノコ 「なんでこんなにいるんだよ……」
ツチノコは、飛行機の陰(右側)に隠れていた。 ツチノコは、フードの上から焦げ茶色のカウボーイハット(ソフトハット) をかぶり、茶色のレザージャケットを羽織っていた。いつもの下駄ではなく、茶色のブーツを履いていた。
ビーバー 「点検終わったッスか?」
ビーバーが、飛行機の後方から声をかけた。
ツチノコ 「問題ねえよー」
オオカミ 「こっちも問題ないよ」
脚の陰にしゃがんでいた、オオカミも答えた。
プレーリー 「ツチノコどのー、出てこないと乗れないでありますよー」
飛行機の反対側(左側)にいたプレーリーが、胴体下からツチノコの方を覗き込んでいた。
初飛行のメンバーは以下の通り。
・ 機 長 : ツチノコ
・ 副操縦士 : キタキツネ
・ 機上整備員 : アメリカビーバー・オグロプレーリードッグ
・ 付き添い : ギンギツネ
・ チェイサー(随伴機): トキ・ショウジョウトキ ※1
・ 管 制 ※2 : アフリカオオコノハズク(はかせ)・ワシミミズク(助手)
・ 地上整備員・記録係 : タイリクオオカミ
・ 地上整備員・マーシャラー: ハシビロコウ
初飛行のコールサインは以下の通り。※3
・ 飛行機(キングエアC90GT改): ビーチ83(ビーチエイトスリー)
・ 管 制 : キョーシュータワー
・ ト キ : アイビス1(アイビスワン)
・ ショウジョウトキ: アイビス2(アイビスツー)
搭乗者が、飛行機の前に集まった。ツチノコは顔を赤くしていた。キタキツネは、ギンギツネのうしろに隠れていた。
飛行機のそばに、はかせと助手が飛んできた。
助 手 「ついに、この時がきたのですね」
はかせ 「待ちくたびれたです」
ツチノコ 「はかせ、その……お願いがあるんだが……」
はかせ 「なんですか、いっしょには乗りませんよ」
ツチノコ 「ジャパリまん持ってたら、一つくれないか? あとで必ず返すからさ」※4
オオカミ 「本来は私の役割なんだが、あいにく持ってないんだよ」
はかせ 「意味がわからないのです。というか、なんなのですかその恰好は?」
ツチノコ 「考古学者に飛行機っつったらこの恰好なんだよ!」
全員の搭乗が完了した。
―― 機内 ――
ビーバー 「そう、そのさきっぽを、差し込むッス」
ギンギツネが、ベルトの金具を、中央のバックルに差し込んだ。カチリと音がした。
ギンギツネ 「なんでいすに縛り付けるのよ?」
ギンギツネは、客席の、前から2列目左側に座っていた。
ビーバー 「それはシートベルトといって、安全のための装備ッス」
ビーバーは、ギンギツネの向かい側、客席の、前から1列目左側に座っていた。この席は、後方を向いており、機長席(ツチノコ)と背中合わせになっていた。
ギンギツネ 「あんぜん?」
―― エプロン ――
ツチノコが、コックピットわきの窓をから顔を出し叫んだ。※5
ツチノコ 「おまえらー!! 近寄るんじゃないぞー!!」
ハシビロコウが飛行機の前に立ち、観客の方を向いた。
ハシビロコウ「みんな、離れて!」
オオカミ 「このロープから前には、絶対に出ないでね」
オオカミは、観客の整理にあたっていた。
ハシビロコウが手を上げ、パイロットにハンドサイン(エンジンスタート)をおくった。
ガスタービンの始動音と共に、飛行機の左のプロペラが、ゆっくりと回り始めた。観客からどよめきが起こった。プロペラは徐々に回転数を上げっていった。続いて右のプロペラが回り始め、回転数を上げっていった。
―― 機内 ――
長い点検作業が始まった。エンジン回転数、温度、燃料、計器類、操縦装置、電気系統………。
同じ点検を2回。ツチノコとキタキツネのふたりで確認した。
―― エプロン ――
ハシビロコウのハンドサインで、ツチノコが、各舵面を動かした。舵面が正常に動いていることを、ハシビロコウが確認して、両腕で大きな丸を作った。
点検作業を終えた飛行機が、エプロンから滑走路へとゆっくりと移動していった。滑走路に乗ると左へ曲がり、滑走路の北の端までゆっくりと移動していった。
―― 機内 ――
ギンギツネがあたりを見渡した。隣と後方に、空席があった。
ギンギツネ 「もっと乗れたんじゃないかしら? もったいないわね」
キタキツネ 「犠牲は少ないほうがいいから」
ギンギツネ 「また不吉なことを……」
キタキツネ 「いいよ、ギンギツネといっしょなら」
ギンギツネ 「……そう……」
ギンギツネは目を細めた。
プレーリー 「ビーバーどのといっしょなら、かまわないであります!」
プレーリーは、ビーバーの隣、客席の、前から1列目右側に座っていた。この席は、後方を向いており、副操縦席(キタキツネ)と背中合わせになっていた。
ビーバー 「オレっちも同じッスよ……」
ビーバーは頬を赤らめた。
ツチノコ 「おまえらなんで死ぬのが前提なんだよ!」
―― 機外 ――
飛行機がUターンして、機首を滑走路の離陸方向に合わせた。ブレーキをかけたまま、左のエンジンの出力を上げ、すぐに落とした。今度は右のエンジンの出力を上げ、すぐに落とした。
―― チェイサー ――
トキとショウジョウトキが、飛行機の真上でホバリングして待機していた。
―― 機内 ――
ツチノコとキタキツネは、もう一回、一通りの点検を行った。
ツチノコ 「全て正常。滑走路上に障害物は無いな?」
キタキツネ 「だいじょうぶ」
ツチノコが窓の外、やや右を見た。その視線の先、格納庫の上あたりに、はかせと助手が浮かんでいた。
―― 管制(空中) ――
助手「鳥はいませんね。チェイサーの位置も予定通り。少々横風気味ですが、問題ないでしょう」
はかせ 「くりあーど、ふぉー、ていくおふ(離陸に支障なし)、なのです!」
はかせが緑色の巨大な旗を上げた。
―― 機外 ――
プロペラの音が変わった。ブレーキリリース。飛行機が動き始めた。
―― チェイサー ――
ト キ 「行くわよ」
ショウジョウトキ「ええ」
トキとショウジョウトキが、飛行機を追った。トキが左側、ショウジョウトキが右側についた。
飛行機は徐々に速度を上げていった。
―― 機内 ――
ツチノコが一瞬、操縦桿を引くのをためらった。
キタキツネ 「はやく上げて」
―― 機外 ――
機首が上がり、すぐに主脚が路面から離れた。飛行機はやや急な角度で上昇した。すぐにフラップを上げた。
―― エプロン ――
観客から歓声があがった。
ハシビロコウ「やった! ついにやったよ! ……えっと、オオカミさん?」
オオカミは小さなスケッチブックを持ち、ページをめくりつつ無言でスケッチ(クロッキー)していた。飛行機だけではなく、観客や景色なども描いていた。それは、とても粗いが形はしっかりとわかる絵だった。
―― 管制 ――
はかせ 「本当に飛んだのです……」
助 手 「……ちょっと角度が急なのです…………何か変ですよ」
―― 機外 ――
離陸した飛行機は、左に傾いていった。※6
―― チェイサー ――
ト キ 「速い! 置いていかれる!」
ショウジョウトキ「なんか、傾いてるんですけど!」
―― 機内 ――
キタキツネ 「戻して、かたむいてる」
ツチノコ 「わかってる!」
ツチノコは、操縦桿を大きく右に倒した。
キタキツネ 「強すぎだよ」
―― 機外 ――
飛行機は、水平を通り越して、少し右に傾いた。そして、またゆっくりと左へ傾いた。
―― 機内 ――
ツチノコ 「だめだっ!」
ビーバー 「ツチノコさん!パワーを落として!!」
ツチノコは、ほぼ全開だったスロットルを戻した。
―― 機外 ――
機体はゆっくりと水平を取り戻した。だが今度は左右(翼を振る方向)にふらつき始めた。
―― 機内 ――
ツチノコ 「おさまらねえ! ……なんでっ!」※7
キタキツネ 「おちついて、まんなかに」
ツチノコが、操縦桿を動かすのをやめ、中央に保つと、機体は安定を取り戻した。
ツチノコ 「さすがだな……」
―― 機外 ――
チェイサーが飛行機に追いついた。飛行機が中央、左がトキ、右がショウジョウトキの3機編隊を組んだ。コックピットとチェイサーのやり取りがしやすいように、アブレスト(横一列)編隊を組んだ。チェイサーは飛行機を見ながら、間隔を保って飛行した。※8
―― 管制 ――
助 手 「安定したようですね」
はかせ 「何なのですかあのスピードは……遠すぎてよく見えないのです」
―― 機内 ――
ビーバー 「やっぱり、シミュレーターとは違うんスね……」
プレーリー 「でも力強く飛んだであります!」
ビーバー 「……オレっち、ちょっと涙が出てきたッスよ」
キタキツネ 「へたな離陸だったね」
ビーバー 「ツチノコさん、こんな激しくしたらこわれちゃうッスよ」
ツチノコ 「しかたねーだろ! こんなの予測でできん!」
プレーリーが、ビーバーを見た。
プレーリー 「こわれちゃう……昨夜も聞いたでありますな」
ビーバー 「……やさしくしてくれたじゃないッスか」
ビーバーは、プレーリーを見て笑った。
ビーバー 「……あ」
ギンギツネ 「やっぱりそういう関係だったのね……」
ビーバー 「ぁぅぅ……」
ビーバーは顔を赤くして手で覆い、うつむいた。
ツチノコ 「……オレも、そうすりゃ良かった……」
キタキツネ 「なに? なんのはなし?」
ギンギツネは、やわらかい表情で、窓(左側)の外を見た。空と海が広がっていた。
ギンギツネ 「なんだか騒がしいけど、わるくないわね…………」
―― 機外 ――
飛行機は直進を続け、軽く左右に旋回するのを繰り返した。
―― 機内 ――
ツチノコ 「旋回して戻るぞ。キタキツネ、トランシーバーのテストを」
キタキツネが、窓枠にくっつけてあったトランシーバーを手に取った。そして、右の窓の外を見た。ショウジョウトキが飛んでいた。
キタキツネ 「アイビス、ビーチエイトスリー、きこえる?」
―― チェイサー ――
チェイサーのふたりは、トランシーバーを耳に当てた。
右側を飛んでいる、ショウジョウトキが手を振った。
ショウジョウトキ「ビーチエイトスリー、アイビスツー、きこえます」
左側を飛んでいる、トキが手を振った。
ト キ 「ビーチエイトスリー、アイビスワン、こっちもだいじょうぶよ」
―― 機内 ――
飛行機側のトランシーバーから、激しいノイズと、ボコボコボコという風の音が聞こえてきた。
トキ(無線)「……ち…だ……………」
キタキツネ 「アイビス、きこえないよ」
ツチノコ 「一方通行か……。キタキツネ、左へ180度旋回、と」
キタキツネ 「左へ、180度旋回するよ」
―― 機外 ――
飛行機は、ゆるやかに左へ旋回していった。チェイサーのふたりは、それを追った。
―― 機内 ――
キタキツネ 「気持ちいい飛びかた…………ツチノコは下手だけど、やさしくて、すごく気持ちいいときもある」
ツチノコ 「変な言い方するな!」
キタキツネ 「ん?」
キタキツネが何かに気づいて、右の翼を見た。
プレーリー 「きっと、飛行機の操縦も、フレンズによって得意なことが……」
バンッと音がした。
プレーリー 「ちが、ぅ……」
ツチノコ 「なんだぁ?」
―― 機外 ――
飛行機が、ガクンと、右に大きく傾いた。
―― チェイサー ――
ショウジョウトキ「また傾いてるんですけど!」
つづく
※1 猛禽に頼むべき、という意見もあったのですが、ツチノコたちと知り合いで、飛行能力が近いペア、ということで、トキとショウジョウトキが選ばれました。
正直に言うと筆者の都合です。猛禽のフレンズは良く知りませんごめんなさい。登場人物を、アニメ1期に登場するフレンズに限定して書いているせいでもあります。
※2 管制といっても、無線が無いためあまりやることがありません。
※3 無線がないので、コールサインは形だけのものです。ただし、飛行機とチェイサーは、トランシーバーを持っています。
※4 チャック・イェーガー氏です。
※5 コックピットわきの窓は多分開くはずです。顔を出せるかは微妙です。
※6 カウンタートルク? …………多分こんなことにはならないと思います。ただ、エンジンの出力を上げているという設定なので、起きる可能性はあるかと。
※7 飛行機の操縦にはタイムラグがあり、揺れを抑えようとしてむやみに操縦装置を動かすと、かえって機体を揺らしてしまうことがあるそうです。
※8 隊形は、飛行機の後ろからふたりが追いかけ、デルタ(三角)隊形になり、デルタからアブレスト(横一列)隊形へ変換するという流れです。
アブレストはデルタよりも難易度が高く、しかも高速で飛行する飛行機とフレンズでは飛行特性が違うと思います。アブレストで飛行機と安定した編隊が組めるのは、トキとショウジョウトキの飛行能力が高いからです。
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
『―― エプロン ――』、『―― 機内 ――』、『―― 管制 ――』とか、視点を切り替えるのは、うまくいったのでしょうか……。 客観的に見られないので不安です。加筆修正で、書き方を少し変えました。