まえがき
第8話と第9話は、空行が多いうえに一行が短いので、ページが縦に長いです。ごめんなさい。
―― チェイサー ――
ショウジョウトキが、編隊に合流した。
ショウジョウトキ「戻りました」
ト キ 「おつかれさま。大活躍だったわね」
ショウジョウトキ「なんか、精神的につかれたんですけど……」
―― 機内 ――
左斜め前に、飛行場が見えてきた。
ツチノコ 「ランウェイは
キタキツネ 「そこまでやるの?」
ツチノコ 「手順通りやる。ま、他に飛行機もいないし、カタチだけのものだがな」
キタキツネ 「みんな見てるかな」
飛行場のエプロンに、たくさんの観客がいるのが見えてきた。ツチノコは、観客を見つめた。
ツチノコ 「…… “ ちゃんとなおった ” んだよな?」
キタキツネ 「なおったよ。いたくない」
ツチノコ 「……コースを滑走路へ。高度を下げてパスする。……まだギアは下ろさない。ファンサービスだ」
キタキツネ 「ふぁんさーびす……まっすぐじゃおもしろくない。……ツチノコ、アイビスにつないで」
ツチノコ 「なんだ? ローパスだけだぞ?」
ツチノコは、トランシーバーをつかんで、キタキツネに向けてボタンを押した。
キタキツネ 「アイビス、がんばってついてきてね(大きめの声)」
―― チェイサー ――
チェイサーのふたりは、トランシーバーを耳に当てていた。
ショウジョウトキ「ついてきて?」
ト キ 「なんだかすごそうね」
―― 機内 ――
ツチノコ 「おまえ何する気だ!」
キタキツネ 「ちょっと遊んでみる。シートベルト、しめて」
ビーバー 「オレっち、嫌な予感がするッス……」
ギンギツネ 「シートベルトはしめてるわよ?」
キタキツネは、ギンギツネの言葉を聞くと、スロットルを上げた。
プロペラの音が変わる。
―― 機外 ――
飛行機、速度を上げ、飛行場の前へと差し掛かる。
―― チェイサー ――
ショウジョウトキ「速くなってるんですけど!」
ト キ 「旋回するわ、ついていくわよ」
―― 機外 ――
飛行機、機体を大きく傾けて右に急旋回。
―― 機内 ――
ツチノコ 「なにしてんだオマエエエ!」
キタキツネ 「かぜがきもちいい」
―― 管制塔の屋上 ――
はかせ 「なにを始めたのです?」
助 手 「緊急着陸のはずですが……」
―― 機外 ――
飛行機、右に360度旋回して円を描くと、飛行場の前で切り返し、今度は左に急旋回。
―― 機内 ――
ギンギツネ 「きもちわるい……」
ビーバー 「またこわれちゃうッスよ!」
キタキツネ 「だいじょうぶ。やさしくするから」
―― チェイサー ――
チェイサーのふたりは、飛行機を、左右やや後方から追いかける。
ショウジョウトキ「けがしたあとなんですけど!」
ト キ 「大きいのに、よくこんな旋回できるわね」
―― 管制塔の屋上 ――
助 手 「応急処置したばかりですが……きれいな旋回なのです」
プレーリー 「さすがキタキツネどの!」
―― 機外 ――
飛行機、旋回を終え、直線飛行に戻り、ゆっくりと上昇していく。
―― 機内 ――
キタキツネ 「もっかい……」
ツチノコ 「やめろおおお!!」
ギンギツネ 「またぁ! またなのぉ!(泣きそうな声)」
キタキツネ 「準備運動やめる」
―― 機外 ――
飛行機、上昇を終え、左に180度旋回して反転。
―― 機内 ――
キタキツネ 「ビーバー、スモークつかうよ」
ツチノコ 「スモークぅ!?」
ビーバー 「ああ、やっちゃうんスね……」
ビーバー、不安そうな表情になる。
キタキツネ 「やっちゃう」
―― 機外 ――
飛行機、ゆっくりと降下を始める。
―― 機内 ――
ビーバー 「やめましょうよぅ……まだテストが……」
ツチノコ 「まてえ! スモークってなんだ!」
キタキツネ 「あったほうがたのしいよ」
ビーバー 「どうなってもしらないッスよ……」
ビーバー、座席の下にある、黄色と黒の縞模様が入ったレバーをつかむ。
キタキツネ 「スモーク、おん!」
ビーバー、レバーを引く。
ツチノコ 「スモーク、って」
―― 機外 ――
ツチノコ 「なんだぁ!!」
飛行機のエンジンの排気管から、ボン、と一瞬黒煙が噴き出す。
プロペラの音と、エンジンの音が変わり、大きくなる。
排気管から、虹色のきらめきと、細かな光の粒が吹き出して、航跡を描き始める。
―― 機内 ――
急加速により、搭乗員が座席の背もたれに押し付けられる。
ツチノコ、機外を見る。エンジンの排気口から、四角い泡のようなきらめきが、高速で噴き出している。
ツチノコ 「サンドスター!? どうやった!? また改造しやがったのか!!」※2
―― チェイサー ――
ショウジョウトキ「サンドスター出てるんですけど!」
ト キ 「ひこうきが、フレンズになったわ」
―― 機内 ――
ビーバー 「やっちゃったぁ……」
キタキツネ 「ちょっとくるしいけど、がまんだよ」
―― 機外 ――
飛行機、左に急旋回。さっきと逆の動き。傾きは90度に近く、旋回半径が小さい。主翼がわずかに上に反る。翼端からベイパー ※3 が発生し、白いすじ状の航跡を引く。すじ状のベイパーは長くのびず、すぐに消えていく。主翼の上面にもわずかにベイパーが発生するが、機体が白いため、はっきりとは見えない。同時に、2本 ※4 の、サンドスターの航跡も引かれていく。
―― 機内 ――
ギンギツネ 「なに、なにぃ、これぇ……」
ギンギツネ、うつむいて、苦しげな表情。
ツチノコ 「くっ、腹に力入れろお!」
―― 機外 ――
2本の、サンドスターの航跡(スモーク?)は、ベイパーとは違って、長く空に残る。
―― エプロン ――
ハシビロコウ「え? なにこれ……」
オオカミ、スケッチ(クロッキー)を続けている。絵に、サンドスターの線が描き足された。
オオカミ 「隠し玉さ」
―― 管制塔の屋上 ――
プレーリー 「やった! 成功であります!」
はかせ 「さぷらいず?」
―― 機外 ――
飛行機、飛行場の前で切り返し、右に急旋回。
―― チェイサー ――
ト キ 「わっ!」
ショウジョウトキ「急に変えないで!」
―― 機内 ――
搭乗者全員、苦しげな表情。
ツチノコ 「血がっ、さがるうぅ……」
ギンギツネ 「ちょっとくるしい、どころじゃ、ないわよぅ……」
―― 機外 ――
サンドスターの航跡が、水平に8の字を描き終わる。だが旋回は終わらない。
―― 管制塔の屋上 ――
助 手 「
はかせ 「パワーがないとむりなのです」
助 手 「キタキツネが本気を出したのでは?」
―― 機外 ――
飛行機はそのまま旋回を続け、ベイパーとサンドスターを引きながら、らせんを描いて上昇していく。
―― 管制塔の屋上 ――
はかせ 「まだ半分も出していないのです」
プレーリー 「ぐるぐるであります!」
―― 機内 ――
ビーバー 「い、いしきが……とんじゃうッス……うう……」
ギンギツネ 「……くっ……う、うううぅ……ぅ…………」
―― 機外 ――
縦のらせん状になったサンドスターは、キラキラと光りながら、ゆっくりと空に溶けていく。
―― チェイサー ――
ショウジョウトキ「もう無理なんですけど!」
ト キ 「だめ、ついていけない」
チェイサー、飛行機のスピードと急旋回についていけず、引き離されていく。
―― 管制塔の屋上 ――
はかせ 「チェイサーがおいていかれたです」
助 手 「猛禽に頼むべきだったのでは?」
はかせ 「キタキツネのお遊びは、想定外なのです」
―― チェイサー ――
ト キ 「まんなかへ行くわよ!」
チェイサー、飛行機を追うのを諦め、飛行機の旋回中心へ移動。ホバリングに移る。
ショウジョウトキ「はあ、はあ、ついてきてとか、むちゃぶりなんですけど!」
―― 機内 ――
キタキツネ 「スモーク、かっと」
―― 機外 ――
飛行機、らせん上昇を終了。ゆるい旋回に移る。
―― 機内 ――
ビーバー 「はあ……」
ビーバーが脱力した。
キタキツネ 「ビーバー、スモークとめて」
ビーバー 「わわっ!」
ビーバー、慌ててスモークのレバーを戻す。
―― 機外 ――
サンドスター噴射ストップ。
飛行機、高度を落として加速。
―― 管制塔の屋上 ――
はかせ 「ツチノコはなにをやってるですか?」
助 手 「なにもできないのでしょう」
―― 機内 ――
キタキツネ 「スモーク!」
ビーバー 「はいっ!」
ビーバー、スモークのレバーを引く。
―― 機外 ――
サンドスター噴射スタート。
飛行機、機首を引き起こして急上昇。垂直、を通り越して、背面になる。
―― 機内 ――
ビーバー 「さかさまになってる!」
ツチノコの帽子が飛ぶ。
ツチノコ 「もうやめろぉ!!」
―― 機外 ――
ツチノコ 「やめてくれええ!!」
飛行機、そのままの勢いで降下に転じ、水平飛行に戻る。サンドスターが、垂直の円になった。
サンドスター噴射ストップ。
―― 管制塔の屋上 ――
助 手 「宙返り」
はかせ 「基本なのです」
プレーリー 「うつくしいであります……」
―― エプロン ――
観客からどよめきが起きている。
ハシビロコウ「鳥だ……。おおきな鳥だよ……」
オオカミが、上空を見て、サラサラと描いて、すぐにページをめくる、を繰り返している。スケッチブックに、サンドスターの線、垂直の円を描く。
―― チェイサー ――
ト キ 「好きにやらせるしかないわね」
ショウジョウトキ「そうですね」
―― 機外 ――
飛行機が再度上昇して反転、滑走路に向けて急降下。
サンドスター噴射スタート。
滑走路上を、エプロンから見て左から右へ、低高度で通過しつつ、観客の前でグルグルと右回りに2回連続ロール(横転)。サンドスターが、二重らせんを描く。すぐに回転方向を変えて、左回りに2回連続ロール。
―― 機内 ――
ツチノコ 「本当に……壊れ……ちま……」
ビーバー 「目が回るッス……」
―― 機外 ――
飛行機、サンドスターの噴射を止めてまた上昇。
―― 管制塔の屋上 ――
プレーリー 「今のぐるぐるも、すごいであります!」
助 手 「エルロンロール、途中で逆回転」
はかせ 「壊れるです」
―― 機外 ――
飛行機、クイックに反転して降下。サンドスターの噴射をスタート。エプロンから見て右から左へ、滑走路上を通過。通過しながら、水平 → 90度横倒し(腹見せ)→ 背面 → 横倒し(背中見せ)→ 水平と、90度ずつ一時停止しながらのロール。
―― 管制塔の屋上 ――
はかせ 「
助 手 「キレのいい動きですね」
プレーリー 「かっこいいであります!」
―― チェイサー ――
ショウジョウトキ「楽しそうですね」
ト キ 「踊ってるわ」
―― 機内 ――
ビーバー 「エアショーになってるッスよ……」
ビーバー、困惑とあきらめの混じった様子。
―― 機外 ――
飛行機、サンドスターの噴射を止めてまた上昇。反転して降下。サンドスター噴射スタート。
―― 機内 ――
キタキツネ 「よーいしょっと(ちょっと早口)」
―― 機外 ――
飛行機、エプロンに腹を見せるように、90度横倒しになる。機首は少し上を向いている。
―― 管制塔の屋上 ――
助 手 「こんどはナイフエッジなのです」
はかせ 「なぜおなかを向けるのです?」
―― 機外 ――
飛行機、腹を見せて、90度横倒しのまま、エプロンから見て左から右へ、滑走路上を通過。
―― 管制塔の屋上 ――
はかせ 「ふつうは背中なのです」
助 手 「海側にも見せる、ということでしょう」
プレーリー 「親切でありますな!」
―― 機外 ――
飛行機、サンドスターの噴射を止めて、上昇。
―― 機内 ――
ツチノコ 「好きにしてくれ……」
―― 機外 ――
飛行機、反転して降下。サンドスター噴射スタート。エプロンに背中を見せる向きで、90度横倒しになる。
―― 管制塔の屋上 ――
はかせ 「またナイフエッジなのです」
助 手 「こんどは背中なのです」
プレーリー 「シャッターチャンスであります!」
―― 機外 ――
飛行機、背中を見せて、90度横倒しのまま、エプロンから見て右から左へ、滑走路上を通過。
―― 管制塔の屋上 ――
助 手 「なぜそんな言葉を知っているのです?」
はかせ 「カメラを持っているフレンズなんて…………海側にいたです」
―― 機外 ――
飛行機、サンドスターの噴射を止めて、上昇。今度はややゆるい上昇で、高高度へ、どこまでも上昇していく。
―― チェイサー ――
ト キ 「ひこうきーはー…そらをーのぼーるー……♪」※5
つづく
※1 こういうのは、筆者が知識不足なので、いい加減です。
※2 サンドスター噴射について説明します。
飛行機の燃料タンクの一つに、サンドスターを混ぜた燃料が入れてありました。(サンドスタータンク)
客席(前から1例目、右側)の下のレバーを引くことで、サンドスターを混ぜた燃料をエンジンへ送り込めるようになっています。サンドスターを混ぜた燃料をエンジンで燃やすと、一時的に推力が増します(謎のパワーアップ)。回転数アップよりも、排気による推力増加が大きいです。
また、排気にサンドスターのキラキラが発生して、長く後方に流れます。すじ状になったサンドスターは、ゆっくりと広がって、風に流されながら、大気に溶けて消えていきます。線として見られる時間は、風などの条件によって違いますが、30秒くらいです。
※3 ベイパー(ヴェイパー、べーパー)とは、飛行機の周囲に発生する霧状のものです。飛行機のおこす気圧の低下により発生します。湿度が高い場所で、飛行機が激しい機動を行った際に発生しやすいです。今回は海上なので湿度が高く、ベイパーが発生しやすい条件でした。
筋状になって後方へ流れるものをベイパートレイルと呼ぶこともあります。これは長く後方に伸びず、すぐに消えてしまうことが多いです。回転するプロペラの、ブレードの先端から発生することもあります。似たものに飛行機雲(コントレイル)やアクロバット機のスモークがありますが、発生する原理が違います。
本当にキングエアC90からベイパーが出るのかはわかりません。そもそもこんな激しい機動を行うような飛行機ではありません。
※4 この飛行機のエンジンは二つあり、各エンジンには2本の排気管があります。それなので、サンドスターの航跡は4本発生するのですが、近い2本が混じり合うので、結果、2本の航跡が残ります。
※5 トキがアニメで歌っていた「わたしはートーキー…」の替え歌みたいな感じです。音数とか全然違うのですが、メロディらしいメロディもない歌なので、似たような感じ、ということです。
あとがき
次話が最終話です。