たったったっ
七宮「う、うぅ・・・ぐす」
七宮(私なんてことしちゃったんだろう・・・みんなに合わせる顔がないよ・・・)
七宮「きゃっ」
ずる!すてん!
七宮「いたた・・・」
キャンプ場からどれくらい離れたのだろう。自分がどこにいるのかも分からない。勢いで飛び出してきちゃったから携帯も持ってきてないし、もしかしたら結構まずい状況かもしれない。
七宮「はぁ・・・」
体に力が入らなくて、そのまま地面に座り込む。息が整ってくるのと一緒に思考も少しずつ冷静になってきた。
がさがさ!
七宮「わ!な、なに!」
目は慣れてきたけど、この場所で唯一の光源が木に覆われてしまっているせいで、数メートル先に何があるのかもよくわからない。
七宮「怖い、怖いよ・・・」
それでも、「助けて」なんて口に出せなかった。今の私を誰が助けるというのだろう。きっとこうなって当然の人間なんだ。でも・・・
心の片隅で、馬鹿な私は考えてしまう。
勇者なら、私のことを見つけてくれるかもしれない
自分で自分が嫌になってしまう。やっぱり私はまだ願っているのだ。あれだけのことをしておきながら、勇者との未来を・・・
七宮「だめだよ・・・だめだよ・・・」
頭を振って考えを追い払う。このままじゃ本当に‘’嫌な子‘’になってしまう。邪魔者にはなってしまったけれど、ほら、これは運が悪かったんだよ。だって、勇者だよ?魔王と勇者の恋なんて、始まる前から結末は決まってるじゃない。
とりとめのない思考が頭の中をグルグル回る。森の中に一人でいるという恐怖と、まとわりつく寒さに足がすくんだ。
──────────テントそば─────────
冨樫「七宮のやつ、やっぱりまだ・・・いや、今はそれどころじゃない、はやく連れ戻さないと!」
がさごそ
冨樫「おい!丹生谷!丹生谷!起きてくれ!」
丹生谷「うぅん・・・ん~・・・ん?きゃあ!」
ばき!
冨樫「いってぇ!!!ちょ、ちょっと待っ──」
丹生谷「何してんのよこの変態!!!」
どか!!
丹生谷「小鳥遊さんというものがありながら!いくら私が可愛いからって!!」
冨樫「違う!違うんだよ!七宮が一人で森に──」
丹生谷「何が違うですって!テントを間違えたとでも・・・七宮?」
冨樫「え、えっと、口喧嘩みたくなってな、七宮が怒ってどこかに行っちゃったんだよ。」
丹生谷「はぁ・・・やってくれたわね、富樫君」
冨樫「い、いや、全部俺のせいってわけじゃ」
丹生谷「そんなのどうだっていいわ。さっさと探すわよ」
冨樫「あ、いや、丹生谷は残ってくれ」
丹生谷「は?ならなんで起こしたのよ」
冨樫「誰かしらに教えておきたかったんだ。失踪なんて洒落にならないだろ?大丈夫だと思うけど、朝になっても戻ってきてなかったらその時は頼む」
丹生谷「そういうことね・・・せいぜい気をつけてね、七宮になにかあったら承知しないから」
冨樫「あぁ」
たったったっ
丹生谷「七宮・・・」
────────────山奥─────────────
冨樫「七宮!七宮!・・・くそ!」
暗闇に向かって叫ぶが返事がない。
冨樫「おーい!七宮!返事しろ!!」
キャンプのまわりには動物も多く出ると言われていた。何も持たずに歩くのは無謀にも程がある。見つけたらなんて声をかければいいのか、大人しく一緒に帰ってくれるかも分からないけど、放っておくわけにもいかない。
冨樫(どうすれば良いんだよ・・・)
自分の好きな人が、例えば六花が他の奴を好きになったとして、俺はどうするんだろう?六花に突然別れようと言われたら?いや、どちらも違う。自分の好きな人にはもう恋人がいて、でもそいつを諦められなくて・・・それでも耐えてくれていたのに俺たちが天体観測なんかに連れ出すような真似して・・・
考えていたってしょうがない。まずは七宮を見つけないと
冨樫「おーい!七宮!!」
────────────山奥─────────────
七宮(どれくらい時間たったのかな・・・)
ここに座っていても始まらない。どうせキャンプには戻らなきゃいけないのだ。でも、まるで体の震えが心にまで伝わっているみたいに、どんどん弱気になっていく。
がさがさ
七宮「きゃっ!うぅ・・・」
がさがさ!
七宮「ち、近づいてる?」
キャンプは火があったから動物は来なかったけど、今私は携帯も懐中電灯も持っていない。もし凶暴な動物だったら・・・
がさがさ! ばっ!
七宮「きゃあ!!」