魔法少女リリカルなのは ~朱槍の魔道士〜   作:がっしー

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第74話投稿です。

水樹奈々さんご結婚おめでとうございます!!!
さらに翌日には花澤香菜さんと小野賢章さんのご結婚。
おめでたいことが続いて嬉しい限りです。
おかげで上手く筆が進まなかった今回の話がかけました。
因みに奈々さんが今年で40歳という事実に驚きました。(花澤さんも31歳に驚き)

それはともかくどうぞ


望まない再会、集いし英雄達

時空管理局

 

―――バリンッ!!!

 

評議会のメンバーが住まう部屋に破砕音が響き、2人分の床に溶液と脳が飛び散る

 

「な、…なぜ……ナゼだ!!?」

 

唯一残った最後の一人が同士を殺した女性局員に取り乱しながら質問する

 

「ご老体に無理をされては、よくありませんからね。――そろそろお休みを」

 

女性局員は相手を労る言葉をかけるも自分の右手に装備してい武装、ピアッシングネイルに付着した溶液を舐める

 

「貴様は、ジェイルの……!」

 

今になって女性局員の正体に気づいた男は喉元まであの男の手が伸びていた事実に驚愕する

 

「貴方が見つけ出し、生み出し育てた異能の天才。"失われた世界"の知恵と限りなき欲望をその身に秘めた、アルハザードの遺児。開発コードネーム―――アンディミデッドデザイヤ(無限の欲望)、ジェイル・スカリエッティ。彼を生み出し、力を与えてしまった時点でこの運命は決まっていたんですよ」

「ぐぅ…ぐぐぐ……」

「どんな首輪をつけようと、いかなる檻に閉じ込めようと。扱い切れるはずもない力は破滅を呼ぶものです」

 

直後、女性局員の姿が局の制服から戦闘機人の戦闘服へと変化する

 

「馬鹿な…バカな!!!!!」

「おやすみなさい」

 

逃げられぬ状況に絶望する男に戦闘機人――ドゥーエ――が見送りの言葉をかけ、ピアシッングネイルを振り下ろした

 

 

 

 

 

ゆりかご内部

 

先の見えない通路を突き進むなのはとヴィータ。2人を阻むべくガジェットが現れる

 

<Gigantform>

「いくぞ、アイゼン!」

<Jawohl! Kometfliegen>

「ウオォォォオオオ!!!」

 

しかしヴィータが先に動き、ガジェット達を1つ残らず破壊していく

 

「ヴィータちゃん。あんまり飛ばしすぎると…!」

 

ゆりかご内部に突入してから全ての戦闘を1人で終わらせるヴィータになのはが声をかける

 

「はぁ…はぁ…うるせぇよ…。センターや後衛の魔力温存も、前衛の仕事のうちなんだよ」

「…うん」

 

しかし息を荒らげながら強気な言葉を放つヴィータになのははそれ以上言葉を続けるのを渋る。すると2人の前に通信用のモニターが現れる

 

『突入部隊。機動六課、スターズ分隊へ!駆動炉と玉座の間。詳細ルートが判明しました!』

「っ…真逆方向!」

 

判明した目的地の場所を知り、息を飲むなのは

 

「突入隊のメンバーはまだ揃わねぇか!?」

『各地から緊急招集していますが、あと40分は……』

「…仕方ねぇ。スターズ01とスターズ02、別行動で行く」

『了解しました。急いで応援を揃えます』

「ヴィータちゃん!!?」

 

通信が終わり、ヴィータの突入の判断になのはが驚きの声を出す

 

「駆動炉と玉座のヴィヴィオ。片っぽ止めただけで止まるかもしれねぇし。片っぽ止めただけじゃ止まらねぇかもしれねぇんだ。……こうしてる間にも外は危なくなってる」

「だけどヴィータちゃん。ここまでの消耗が!」

「だから、あたしが駆動炉にまわる。お前はさっさとヴィヴィオを助けてこい」

「でもっ!」

「あたしとアイゼンの1番の得意分野、知ってんだろ?」

 

判断としては正しいと理解しつつもなおも食い下がろうとするなのはにヴィータは自分のデバイスを掲げて見せる

 

「――破壊と粉砕。鉄槌の騎士ヴィータと黒鉄の伯爵グラーフアイゼン。砕けねぇ物なんぞこの世にねぇ」

 

そう言いきるとヴィータは背を向け駆動炉側へと進み始める

 

「一瞬でぶっ壊してお前の援護に行ってやる。さっさと上昇を止めて表のはやてと合流だ」

「………うん。気をつけて、絶対直ぐに合流だよ!」

「あったりめぇだ」

 

その姿を見てなのはも覚悟を決めヴィヴィオのいる玉座の間へと足を進めた

 

 

 

 

 

 

ミッドチルダ 廃棄都市区画

 

「ハッ…ハッ…ハッ…っう!」

 

結界が張られた、老朽化の激しいビルの通路をかけるティアナ。背後から放たれるエネルギー弾を咄嗟に柱を背にし隠れ難を逃れる。数秒後、ガジェットを引連れ現れた

 

「フフン!ハチマキとコンビでどうにか半人前、4人でようやく一人前のへっぽこガンナーさんが仲間と引き離された気分はどうっスか〜?」

「チンク姉の痛み、ハチマキの代わりにお前に返してやる!」

 

相手を煽るウェンディと敵討ちの代わりと燃えるノーべの2人はゆっくりと、しかし確実にティアナとの距離を詰めていく

 

(こっちは結界の中、ライトニングもスバルも分断距離と戦力負担はかなり大きい……)

 

一対多と言う中遠距離型に絶望的な状況の中、ティアナは呼吸を整え現状を分析する

 

「(……背中を見せたらその瞬間に終わる。)ハァー…。ッ!」

「ん?」

「およ?」

 

意を決して柱から幻術を使い4人に増えたティアナが飛び出す。ノーべとウェンディは突然相手の数が増えた事に僅かに驚くが放たれた魔力弾を軽々とかわす

 

「馬鹿の一つ覚えが!見えてんだよ!!」

「!? キャァ!」

 

前回の本局での一戦から幻術魔法を解析していたのか、幻術には目もくれず本体のティアナを蹴り飛ばす

 

「クウッ、この!」

「おっと」

 

吹き飛ばされながらせめて一撃と魔力弾を撃つもウェンディがエリアルレイヴを盾にしてノーべを守る。その隙にティアナはビルの吹き抜けから上階に退避する

 

「前より弾丸が鋭いッスね」

「あんな豆鉄砲。1発2発くらいなんてことねぇ」

「ま、そうッスけど」

 

再び距離を取られるが2人は会話をする程の余裕を見せる

 

(このまま防戦一方。結界破壊班が来るまで何としても生き延びなきゃ…)

 

一方ティアナは追撃が来ないことに安堵しながらこのまま守りに入り消耗戦へと考えを巡らせていた時だった、上から自分に更にもう一体の戦闘機人が現れたのは

 

「なっ!痛ッ…ハァ!」

 

痛みに顔を歪めながら弾をばらまき土煙を起こし煙幕として瓦礫に隠れる

 

「ディード、あんたも!?」

「オットーの指示。あの幻術使いは確実に仕留めておかないと面倒だって」

 

下から登ってきた2人、ウェンディがディードの参戦に驚くが当のディードは淡々と説明する

 

「ッ…、よりによって足……」

 

声を押し殺しながら斬られた足を見るティアナは瓦礫の隙間からノーべ達の様子を伺う

 

(それに戦闘機人3機、それにガジェットまで………これは無理、かな……)

 

一対二ですらギリギリであったのに敵の数は増え、さらに走るどころか歩くことすらままならない怪我を受けティアナの心は折れそうになる

 

『大丈夫だよ。ティアならきっと出来るって!』

「ぇ…」

 

突然、この場にいないはずの相棒の声が聞こえ思わず周囲を見回すティアナ

 

『ティア強いもん!ゼッタイ、ゼッタイ大丈夫!!』

『一緒に頑張ろうね。ティア!』

「私はこんな時までアイツのこと思い出してんのよ…」

 

その声が幻聴と気づき足の痛みなど忘れ膝を抱えて蹲る

 

『一緒に行こう。夢を叶えに…』

「…………うん」

 

少しの沈黙の後、深く頷いたティアナの顔に不安は消えていた。

一方上空ではキャロとエリオがフリードの背に跨り空を飛び、同じ様にガジェットⅡ型に乗るルーテシアと羽を広げ飛翔するガリューと対峙していた

 

「貴方はどうして?なんでこんなことをするの?!」

「こんな所で、こんな戦いをする理由は何なんだ!」

「―――」

「「………」」

 

魔法を撃ち合い牽制しながら2人は問いかけるもルーテシアは無言を貫くも、その顔から漏れる悲痛な感情はエリオ達に僅かな戸惑いを受けた

 

 

 

 

 

 

 

ミッドチルダ 上空

 

「―――、旦那!アイツら…」

「ああ」

 

廃棄都市から僅かに離れた。地上と空の防衛網に悟られにくい高度を進んでいたゼストとアギトは進行先に立ちはだかる存在、シグナムとリインに気づくと距離を置き、シグナム達の前で停止する

 

「局の騎士か」

「本局機動六課、シグナム二尉です。全所属は首都防衛隊…貴方の後輩と言う事になります」

「そうか」

 

シグナムの言葉にゼストはこれといって慌てる様子もなく相槌を打つ

 

「中央本部を壊しにでも行かれるのですか?」

「古い友人に、…レジアスに会いに行くだけだ」

「……それは復讐の為に?」

「言葉で語れるものでは無い。道を開けてもらおう」

 

短い問答を終えゼストが構えを取る

 

「…言葉にして貰わねば、譲れる道も譲れません!」

 

対するシグナムもレヴァンティンを鞘から抜き刀身に炎を纏わせる

 

「!」

「?…アギト、どうかしたか?」

「な、なんでもねぇ。グダグダ語るなんてな!騎士のやることじゃねぇんだよ!」

 

声を上げたアギトに気になりゼストが問うが、アギトは気を取り直しユニゾンする

 

「騎士とか!そうじゃないとか!お話しないで意地を張るから、戦う事になっちゃうんですよ!」

 

そのアギトの発言を聞き、シグナムの横で静かにしていたリインがムッとした顔で反論し同じくユニゾンする

 

『うっせぇバカチビ!剣精アギト。大義と友人ゼストが為に、この手の炎で―――推して参る!!!』

『祝福の風、リインフォースツヴァイ。管理局の一員として貴方方を止めさせてもらいます!!!』

「行きます!」

「ウム!」

 

真実を知る為に。自分の信じる正義の為に。

両者は激突した

 

 

 

 

 

スカリエッティ研究所

 

トーレの質問に否と返したフェイトとミハル。その答えにトーレは少しだけ残念な顔をするが直ぐに表情をやめ元の鋭い眼光を向ける

 

「……残念です。ならば、「待て」――」

 

武器を構えようとするトーレとセッテに対しミハルが待ったをかける

 

「いや、このまま戦ってもいいがその前に、出できたらどうだ」

 

頭上にクエスチョンマークを浮かべるその場の全員。ミハルは気にした様子もなく通路の奥にいるであろう男に問いかけた

 

「―――おやおや気づかれていたか」

「ッ!スカリエッティ!!!」

 

先程のトーレ達と同じように暗がりから現れたのは今回の事件の元凶、ジェイル・スカリエッティ。フェイトが声を荒らげ名を呼ぶも当の本人はそれを無視しミハルに視線を向ける

 

「あぁ…感動の再会だ。息子よ」

「あぁ…だが、親子として話すのは拘置所の面会室でだ。親父」

「―――――」

 

両者の言葉に、心の片隅にあったミハルがスカリエッティの子供ではないと言う可能性がなくなり。フェイトは苦々しい顔をする

 

「なに、ゆりかごが軌道ポイントに到達するまで約2時間20分、ここで妹達と楽しく過ごすといい」

「……あと2時間弱、だったら――」

 

スカリエッティからこちらの敗北までの時間を聞いたミハルは、何を思ったのか突然、自身のデバイスを上空に投げた

 

『――』

 

投げられたデバイスに、この場の全員がほんの僅かな時間視線を向ける。次の一瞬、室内に一陣の風が吹いき――

 

「1秒でも早くお前を捕まえて、ゆりかごを止めないとな」

 

――拳を構えた状態のミハルがスカリエッティの正面にいた

 

「なに!?」

「ドクター!」

 

戦闘機人の中でも高い機動力を持つトーレとセッテが認識できず抜かれた事に驚くきながらも慌ててミハルに攻撃を仕掛けようとする。しかし、ミハルの拳がスカリエッティに届くのが早い

 

(決まる!)

 

確信を持った一撃―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コッン―コッン―

(――――――ゥ!!?)

 

しかし、拳を振り抜こうとした直前。かすかに聞こえた足音にミハルの全身の毛が逆立ち、体が硬直する

 

「ハァ!」

「っ、クソ!」

 

トーレ達の妨害が入り、ミハルは悪態をつきその場を離れ元の位置に戻りると、慣性に従い落下してきたデバイスをキャッチする

 

「ミハル!1人で無茶した「スカリエッティィィイイイイイイイ―――――!!!!!」…っ!」

 

先行したミハルを注意しようとしたフェイトの声は施設内を反響する程の怒号にかき消された

 

「……おやおやどうしたんだい?突然大声を出して」

「テメェ――――」

 

先程の大声で耳を塞いでいたスカリエッティがわざとらしくヤレヤレといった様子に、更に声をあげようとしたミハルから表情が消え去った

 

 

 

――コツン――コツン

 

 

再び足音が響く。今度はミハルだけでなく全員が聞こえたのか、先のスカリエッティの時のように通路の奥に自然と視線が向けられた

 

「――スカリエッティ。言ったはずだ敵が来たなら教えろと」

「すまないね。息子との再開が嬉しくて忘れていたよ」

 

現れたのは前回の機動六課襲撃の際にヴィヴィオと共に連れ去られたクー・フーリン。しかし、その風貌は全くといっていいほど変わっていた

 

「………クー・フーリン……さん……?」

「ア?…誰かと思えばミハルとフェイトか。なんだスカリエッティ、俺に殺して欲しい敵はコイツらか?」

「そうだね。出来れば生け捕りが好ましいが。君はそんなこと気にしないだろ?」

 

かつて出会った際の気さくな雰囲気など微塵も感じさせない冷酷な目に、フェイトは本人なのかと問いかけるもクー・フーリンは2人を一瞥しただけで大した興味もなくスカリエッティと話を続ける

 

「了解した。さて――殺すか」

「ぇ?」

 

会話を終えたクー・フーリンがそう呟き。未だ状況が理解できないフェイトに飛びかかり、その手に持つ朱の槍を振り下ろした

 

「フン!」ゴンッ!

 

しかし、両者の間に入り込んだミハルがフェイトを両断しようとした凶刃をデバイスで受け止めた

 

「……ほぉ?」

「オラァ!」

 

ガチギチと鳴る鍔迫り合いをミハルが押し勝ち、クー・フーリンが互いの間合いギリギリの距離に着地する

 

「…俺が相手をしてやるよ、兄弟子(クソ兄貴)

「……フン。おいスカリエッティ、悪いがコイツとサシでやらしてもらうぞ」

 

あからさまな挑発をするミハルに、クー・フーリンは分かりながらもその挑発に乗る

 

「そうかい?なら彼女の方は娘達に任せてようか」

「勝手にしろ。確かこっちに性能テスト用の部屋があったな」

 

(マスター)でもあるスカリエッティからも許可を貰ったクー・フーリンは視線を壁に向け歩き出す

 

「あぁ、今扉を「必要ない」」

 

スカリエッティが手元で何か操作しようとするのを一蹴し、クー・フーリンは壁に向かって槍を左右に振い、鋼鉄で出来た壁は切り裂かれ、まるで牙や爪で切り裂かれた痕の様にえぐれた形に変形した穴が出来上がった

 

「やれやれ、あまり施設を壊して欲しくないんだがね」

「こっちだついてこい」

 

呆れた様子のスカリエッティには目もくれず、クー・フーリンについてくるよう顎で壁の奥をさし先に穴の中に消える

 

「ミハル……」

「――フェイト、悪いがスカリエッティ達を頼む」

 

心配し、ミハルの元に駆け寄るフェイト。だがミハルはフェイトに目を合わせることなくクー・フーリンの後を追いかけようとする

 

「……」

「ッ、フェイト?」

 

しかしミハルの右腕をフェイトが掴み、ミハルが振り返る

 

「ミハル。無茶……しないでね」

「…………」

 

まるで祈るような言葉にミハルは意外と言った顔になる

 

「………ああ、大丈夫。俺を信じろ」

 

僅かな沈黙の後、ミハルの顔から微かに表情が戻り頷くと、空いた左腕でフェイトを抱きしめる

 

「うん。信じてる」

「それじゃ、行ってくる」

 

抱擁を解き、ミハルはクー・フーリンが待つ穴の奥へと消えていった

 

「――いやはや素晴らしい。まるで魔王に挑む勇者とその想い人との会話だったよ」

「…スカリエッティ」

「だがこれは現実だ。物語の様に正義が悪を討つとは限らない」

「…だとしても、私たちは最後まで戦う!」

 

御伽噺のようにはならないと武器を構えるスカリエッティ達3人。しかしフェイトはバルディッシュを構えトーレとセッテに向かって駆け、戦いが始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッドチルダ 都市部外周部

 

「グッ!……耐えるんだ!ここを突破されればミッドチルダがまた炎に包まれるぞ!」

「し、しかしナカジマ陸佐!これ以上はバリケードが持ちません!」

 

四方ミッドを襲いかかるガジェットを食い止める最終防衛線。その1つを、ゲンヤ・ナカジマが隊長として務める陸士108部隊の面々は苛烈なガジェットの侵攻に窮地に立たされていた

 

「ッ隊長!ガジェットが!!!」

 

悲痛な部下の声を聞きゲンヤは視線を上に向ける。そこにはバリケードの1つとして停車した大型車両の屋根に乗り上げてたガジェットのカメラアイがゲンヤ達を見下ろしていた

 

「………ここまでか」

 

歯を食いしばりガジェットを睨みつけるも、ゲンヤの口からは諦めの言葉が漏れ出る

 

「―――――――私が来た、」

 

しかし、背後から聞こえた声にゲンヤは驚きながらも振り返る。何者かが跳躍し、屋根に居座るガジェットに手に持つ剣を構えた

 

「私は見た、ならば次は勝つまでのこと!黄の死(クロケア・モース)!!!」

 

次の瞬間。十数もの斬撃がガジェットを捉えバラバラの残骸へと姿を変えた

 

「やれやれ。何とか間に合ったようだなナカジマ三等陸佐」

「カ、カエサル少将ッ、危ない!」

 

残骸を足元に佇む男。―――カエサルの登場にゲンヤは驚くも、その背後から新たなガジェット数機がカエサルに襲いかかり危険を知らせる

 

暁の時を終える蛇よ、此処に(ウラエウス・アストラペ)!!!」

 

直後、カエサルの背後に極大の火柱が現れ。カエサルを襲おうとしたガジェット達はその高温に溶けたガラス細工の如き姿に変貌した

 

「カエサル様!お気をつけ下さい。貴方様に何かあれば地上本部の再興は不可能になります!」

「分かっているクレオパトラ。それに私も、これ以上前には出る必要はない」

「――カエサル少将、危ない所を感謝します。しかし、前に出る必要が無いとは?」

 

思わぬ救援に感謝を述べるゲンヤだが、カエサルの言葉に疑問を持ち質問する

 

「言葉通りだナカジマ陸佐、今更私1人が戦線に加わった所で大した効果は期待できまい。――しかし100なら?1000は?10000ならどうだ?」

「まさか援軍ですか!?ですが地上本部にもうそれだけの戦力は……本局も到着までまだ時間が…」

「いいや違うぞナカジマ陸佐。管理局ではない」

「では一体―――」

「た、隊長!アレを!」

 

言及しようとするゲンヤ。すると近くにいた隊員が声を上げ後ろを指さし、ゲンヤは振り返る

 

ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!

 

そこにいたのは一個連隊はいるであろう数の騎士が、隊列と足音を乱さず此方に行進する姿であった

 

「騎士団!?それに掲げられているあの国旗はッ!」

 

現れた騎士団に目を見開くゲンヤ。しかしそれ以上に軍隊が掲げる旗に衝撃を受けた

 

「――第6管理世界、最大国家ブリテンの騎士達。率いるは、かの騎士王と円卓の騎士」

「き、騎士王!それに円卓の騎士!?」

 

援軍として現れた騎士団についてカエサルが口を開き、ゲンヤは飛び出したビックネームに素っ頓狂な声を上げた

 

「い、一体どのようにして騎士王を……」

「……数年前。騎士カリムの預言を知ってから、部下を派遣し各管理世界の国家に緊急時、援軍を送ってもらう協定を取り付けておいたのだ」

「預言通り、管理局が襲撃されたらという条件でしたけれど」

ザッ!ザッ!―――パカラッパカラッ

 

そう話をしている内に騎士団がゲンヤ達の前10m程の距離を取り停止すると、馬に乗った3名の騎士が前に出る

 

「カエサル少将、クレオパトラ少尉。道中の案内感謝する」

 

その1人、漆黒の鎧に右肩にマントを付けた偉丈夫が馬に乗ったまま頭を下げる

 

「いや、口約束にも近い協定を守っていただいたこちらこそ感謝しなければならんよ。アグラヴェイン卿」

「いいえカエサル殿。口約束とはいえ、守らなければ私達騎士の名折れ。むしろ開戦から参戦できなかった事を恥じるばかりです」

「ベディヴィエール卿……感謝します」

 

偉丈夫――アグラヴェインと互い頭を下げる状況に右手が義手の美青年――ベディヴィエールが深々と頭を下げていると

 

「カエサル殿。話はまた後ほど、アグラヴェイン。私の槍を」

「ハッ、我が王」

 

すると唯一無言を貫いていた獅子を思わせる白銀の鎧を着た騎士王の言葉に、アグラヴェインは鞍に備え付けられた荷から1本の槍を取り出し、剣を捧げるように騎士王に差し出す

 

「お受け取りください」

「えぇ」

 

槍を受け取り、空を飛び交うガジェット達にその穂先を向ける

 

「聖槍、ロンゴミニアドよ。その力の片鱗を示せ!」

<―――>

 

掛け声に答えるように聖槍から魔力弾が放たれる。ガジェットに直撃した魔力弾は弾け、周囲のガジェットを巻き込み連鎖的に爆発が起こる

 

「アグラヴェイン、ベディヴィエール。私と騎士1500と共にこの防衛戦を本陣として他防衛の援護に」

「「ハッ!」」

「トリスタンとランスロットは西部方向に騎士1000を連れ被害の大きい防衛戦の援護を」

「分かりました」

「我が剣にかけて」

「ガウェイン、モードレッド、ガレスは東部に同じく騎士1000と共に」

「Yes,my lord」

「了解した」

「せ、精一杯頑張らせていただきます!」

 

王からの命を受け、今回の出陣に参戦した円卓の騎士達は各自命じられた場所へと部下を連れていく

 

「……カエサル少将。北部と南部への増援は?」

 

しかし騎士王が部下達を送った地区を聞きゲンヤはカエサルに小声で問いかける

 

「安心したまえ、北部、南部共に別の管理世界の援軍が向かっている。それに北部は聖王教会がある――簡単にはやられんさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッドチルダ北部―聖王教会―

 

「まったく、騎士カリムも無茶を言う。騎士団をスカリエッティ確保に出動させたが為に、聖職者の我々にガジェットの対処を願うとは…」

「しかし神父綺礼、今私たちが動かねばミッドのみならず各世界の無辜な民が苦しむ事になります。それは止めなければ」

 

聖王教会の正門前、固く閉ざされた門を背に2人の聖職者が会話のするなか。2機の大型ガジェットが2人に襲いかかる。しかしガジェットは襲いかかる直前、大小様々な大きさに切り裂かれた

 

「分かっている―――鍛錬は続けていたようだな?」

「勿論。貴方の技量には及びませんが、この数なら何とか」

 

何事もなかったかのように会話を続ける2人の両手には3対の直剣が握られていた

 

「「この魂に、憐れみを(キリエ・エレイソン)」」

 

祈りを捧げた聖職者2人は迫り来るガジェットの大群に向かい歩を進めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッドチルダ南部

 

「う、わぁぁぁぁ!!?」

「危ない!」ドバンッ!

 

ガジェットに襲われ絶対絶命となっていた魔道士の前に薄桜色の髪をした少女が自身の身の丈を超える盾を構えガジェットの攻撃を受け止める

 

「後ろで仲間が治療をしてます。下がって!」

「あ、あぁ。すまない」

 

命の危機を脱し呆然とする魔道士に黒髪の少年が語りかけ、傷口を抑えながら後退する

 

先輩(マスター)。やはり南部のガジェットは他とは動きが違います!」

「その通りだ。ミス・キリエライト」

 

シールドバッシュでガジェットをはじき返した少女、マシュ・キリエライトが先輩と呼ぶ少年、藤丸立香に報告する。するとキリエライトの言葉に同意すると共に、20代後半の青年が現れる

 

「報告では目標に向かっての進攻と妨害時の迎撃が主だったらしいが、目の前のガジェット達は隠れ潜み、弱った魔道士を優先して襲いかかっている」

「「ホームズ(さん)!」」

 

喫煙パイプをふかし現状を考察する青年、シャーロック・ホームズに安心したような顔をするマシュと藤丸

 

「4ヶ月前、オークションでの戦闘で召喚士による有人操作が確認されている。だが、先程その召喚士は現在、機動六課の魔道士と戦闘中の連絡が来た。――つまりアレは無人操作で間違いないだろう」

「じゃあ、あのガジェットの動きは一体…?」

「先の召喚士の報告と同時に次元犯罪者『黒ひげ』が現れたと報告があった。無論、部下とガジェットを大量に引き連れてね」

「そ、それはつまり。スカリエッティと黒ひげが協力関係を結んだということでは!?」

「その可能性が極めて高い。そして、その可能性が事実ならば別の可能性が浮上する。――――スカリエッティか協力関係を結んだのが、黒ひげ1人だけなのか?」

「「なっ!!?」」

 

ホームズの推察にマシュと藤丸は目を見開き絶句する中、ホームズは廃棄都市のビル群に視線を向ける

 

「――そこにいるのかね?『教授』」

 

 

 

 

 

 

 

南部廃棄都市ビルの一室

 

「フム…」

 

部屋の隅に多少の埃があるものの、比較的清潔な部屋の一室で中年の男性が椅子に座り、思考しながらチェスの駒を片手にミッド中央部側を見渡せる窓に視線を向ける

 

「先程援軍。数名程度なら問題ないと考えたが……私が組み直したガジェットをこうも抑え込まれるとはね。次の手を打つと『そこにいるのかね?『教授』』――」

 

想定以上の管理局の抵抗に業を煮やしたのか男が駒を盤上に置こうとした直前、ガジェットのマイクが拾った声に男の動きがピタリと止まる

 

「――――ク、ククク……ハハハハハ!!!!」

 

直後、椅子から立ち上がり高笑いする

 

「僅か数分!それもチューンナップしたガジェットと戦っただけで私の存在に気づくか!…いや、今はティーチ君が暴れているはず。それも踏まえればあるいは」

 

興奮した口調から指先で口髭を擦ることで落ち着きを取り戻し、思考を巡らせるとニヤリと笑みを浮かべる

 

「…よかろう。私の計算と君の推理、どちらが上か決めようか探偵…いや『名探偵』」

 

男が手に持った駒をチェスボードに力強く置く

 

「この私、ジェームズ・モリアーティを楽しませてくれたまえ!」

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